そんな人は少なくないのではないでしょうか。でも大丈夫。このROOMIEレビュー小説の主人公、社会人3年目の芽衣も同じです。
芽衣が、GWに始めた“無理なく自分を労わる習慣”とは――?
溶いた卵がフライパンに流し込まれる。
ジュワッと音を立てて広がっていく卵たちは、今日はどんな姿になるのだろう。
テーブルの上に「6」と書かれた食パン袋が置いてあるからおそらくスクランブルエッグかな。
*
少し離れた場所でオーブントースターが「チン!」と鳴った。丁度お湯も沸いたみたいだ。
赤いやかんは母のお気に入りで、毎朝たっぷりと湯を沸かす。いつもの音の数々が、我が家に朝を知らせてくれている。
トーストとスクランブルエッグ、ちぎったレタスとトマトのサラダ。バターとジャムはお好みで。
コーヒーは父、紅茶は母と私、コーンスープは妹。うちは基本的に朝はパンが多いけれど、時々和食の日もある。
「いただきます」
皆で手を合わせて食べる朝ごはんは、一口、また一口食べるごとに私を目覚めさせ、満たしてくれる。
トロリとした半熟のスクランブルエッグ。サクッと香ばしいトースト。濃厚なミルクティー。
お腹の中がじんわりと温かくなり、一日の始まりを後押ししてくれた気分になる。
もう一枚食パンを食べようとしたとき、先ほどから聞こえるアラーム音が気になった。なんだ、妹が消し忘れたのか。ああ、うるさいなあ。
何度も何度も流れてくる音に「早く消してよ〜」と口を開こうとした瞬間、我に返る。
違う。この音は、私のアラームだ。飛び起きて枕元に置いてある時計を手にとる。
「やばい!寝坊した」
**
なんとか間に合った電車の中で「はあ」とため息をついた。
社会人になって三度目の春。仕事には慣れてきたものの、最近は生活習慣があまりよくない。
つい夜更かしをしてしまったり、面倒で自炊をしなかったり。疲れでなかなか起きられず、いつも余裕のない朝を過ごしてしまう。
社会人が朝に余裕を持てない理由なんてごまんとあるのが現実だ。
今朝の夢を思い出す。
実家にいた頃に食べていた我が家の朝ごはん。社会人になる前まではあの朝ごはんを食べていたのに、一人暮らしになった途端に崩れてしまった。
素敵な朝ごはんに憧れて朝食作りに挑戦したことがあるものの、どうも続かない。今では朝に何も食べない毎日だ。
「芽衣、一口でいいから何か食べていきなさい」
寝坊して何も食べずに出かけようとしていたとき、いつも母は何かを勧めてくれていたっけ。
スティックパン、フルーツをひとかけ、コップ一杯の牛乳。
当時は「時間がないから!」と飛び出していたけれど、食べないとその日はいまいち調子が悪かった。
あえて朝食を食べない人も多いけれど、きっと私は何か食べたほうがいいみたい。
でも、いきなり朝食をあれこれ準備するのはハードルが高い。何を口に入れたらいいのだろう?
朝食習慣がついていない私が、いきなりパンやおにぎりを食べるのは続かなさそう。もっと手軽に、もっとシンプルに……。
なんでもいいのなら、何か飲んでみるところから始めてみようかな。
ふと思い出したのは、父のコーヒー、母と私の紅茶、妹のコーンスープ。
それと、毎日沸かしていたお湯。赤いやかん。
……例えば、体に良さそうな「白湯」なんてどうだろう。これなら材料を買いに行かなくていいし、沸かすだけ。健康にも良いと人気である。
白湯を想像した途端、「これなら私にもできそうかも」と思い、少しだけ明日の朝が楽しみになった。
***
翌日、本を参考にしながら白湯を作ってみた。
どうやら白湯には正しい作り方があるそうで、「綺麗な水をよく沸かすこと」が大切だという。
沸騰したらフタをとって、湯気が上がるようにする。
大きな泡がぶくぶく立つくらいの火加減がいいそうだ。そのまま不純物を取り除くために、十分〜十五分沸かし続けたら完成。
沸かしている間に、着替えやメイクをすれば効率的だ。
すぐに冷めないように、出来上がった白湯は最近買ったKINTOのタンブラーに入れておこう。
このタンブラーは保温性が高く持ち運びもしやすい。仕事のお供のドリンクとしても、ちびちび飲めるのが嬉しい。
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ふうふうと息を吹きかけて白湯を少し冷ます。ゆっくりと、すするように飲んでみると、お腹がじんわりと温かくなるのを感じた。
「美味しい」
五分から十分かけて飲む。じわじわと体が目覚めていくような感覚があった。
自分のための優しい時間も過ごせて、一日の始まりにそっと背中を押してもらったような気がした。
この一杯から始めてみる
この感じ、久しぶりだ。
私にとって朝ごはんは、「今日も頑張ろう」と思える存在だったのかもしれない。
まだまだあの頃の食卓には遠いけれど、少しずつ、少しずつ何かを食べる習慣をつけて、いつかあの日のような朝ごはんを作ってみたいな。
私の朝ごはんは、この一杯から始めてみよう。
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