トップ画像提供:「氷舎mamatoko」
食べることが大好きな人たちの定番ごはんをきく「MY定番ごはん」。
第6回は、「世界でいちばん、かき氷を食べていると思います」と言う、かき氷専門店「氷舎mamatoko」のオーナー・原田麻子さんが登場。
かき氷への思いや、好きが高じてかき氷を仕事にした経緯などを伺いました。
かき氷は毎日4杯。きっかけは「雪山」
表現が合わないかもしれませんが、私の定番ごはんは“かき氷”です。毎日、4杯は食べます。
原田さんがここまでかき氷のトリコになった原点は、旅行中に食べた「本格抹茶のかき氷」でした。
大学時代、友人と京都を旅行しました。暑い日だったので、かき氷を食べて涼もうと『京はやしや』さんへ。そこで、巨大なかき氷『雪山』をいただきました。
それが、人生で初めて食べた本格抹茶のかき氷。もう、大感動してしまって! 都内に帰ってきてからも『京はやしや』さんへ頻繁に通いました。
以来18年間ずっと、原田さんはかき氷に魅了されているといいます。しかし、18年前はかき氷専門店が少なく、情報収集もスムーズではなかったのだとか。
SNSがなかった当時、唯一の情報源はかき氷専門のブログ「トーキョーウジキントキ」。かき氷愛好家もいまのように多くはなかったので、みんなこのブログを見ていたのでしょうね。行く先々で見かける顔ぶれは同じ。固定メンバーのようでした(笑)
自身でかき氷店をオープンする以前は、趣味として終業後などにかき氷を食べ歩いていた原田さん。いよいよ仕事にしようと思ったのはなぜだったのでしょうか。
開業前は会社員として、オンタイムはきっちり働いて定時で退勤。その足でかき氷店に通いました。でも、あるときから仕事中もかき氷のことばかり考えるようになってしまって。真面目に働いていましたが、このままでは社会人としてダメなんじゃないか?と……。それで開業準備をはじめたんです。
退職するまでの1年間は週末のみ、間借りでかき氷店を営業。そこで手応えをつかんだ原田さんは、2016年に「氷舎mamatoko」をオープンしました。

「氷舎mamatoko」のかき氷は、白雪のような柔らかい氷をなでるように整え、さらに上から氷をのせてまた整える……を繰り返してつくる。
オープン当初は住宅街の一角に店を構えて、店舗面積はたったの5坪。お客様は5人入ればいっぱいでしたが、一人でも続けられるように物件は小さくても良いという思いでスタートしました。
そのうちに、並んで待ってでも食べに来てくれる方が増えて、現在は少し広いお店に移転することができました。
産後の入院で“かき氷断ち”。久々に食べて「ココロが生き返った〜!」
「氷舎mamatoko」は、2021年11月に現在の店舗に移転。移転当時、原田さんは妊娠中でしたが移転準備も勢力的にこなして、無事に男の子を出産しました。
妊娠中と産後の授乳期は、かき氷も食べつつ、旦那さんの手づくりスープやお味噌汁などで栄養バランスに心がけていたのだとか。

冬季はスープも提供している。「ごぼうと濃厚ポタージュ」(450円)。
※2023年1月時点の販売メニューです。
とはいえ、入院中は食事が思いどおりにはいかず……。
病院にも業務用のかき氷機を持ち込めるようお願いしたのですが(笑)、当然ながらかき氷機は病院に持ち込めないので、6日間、かき氷を断ちました。
この15年、かき氷を食べない日はなかったので、好きなものが食べられないストレスと、日増しにひどくなる体のむくみで気が滅入ってしまって……。
退院後のかき氷をモチベーションに耐え、退院の日、待望のかき氷店へ出向いたそうです。そのときの感想を聞くと……
あのときのことは忘れられません。退院したその足で、3軒。ヨロヨロの身体で7杯を一気に食べて、それでも、ココロは生き返った〜!という満足感でいっぱいでした。協力してくれた旦那さんに大感謝です。
その後、栄養バランスは取りながら“かき氷生活”に戻ったら、嘘のように体のむくみが消えました(※)。18年間、外に出られないほどの体調不良もなくかき氷を食べ続けられているので、順応した体になったのかもしれません(笑)
※原田さんの個人的な体験談です
抹茶のかき氷は提供しない。専門店へのリスペクトがあるから

花梨とレアチーズ(1600円/税込〜)。
※2023年1月時点の販売メニューです。
お客様からよく聞かれます。「抹茶のかき氷は、ありませんか?」と。皆さん、好きですよね。でも、うちでは提供しないんです。
それは、かき氷を提供する店を隈なく食べ歩いてきた、原田さんなりのポリシーです。
かき氷に自店らしさを出していかないと淘汰されるので、“どこかで食べたことがあるようなかき氷”は提供していません。18年間食べ歩いているからこそ、他店のかき氷の味はリスペクトしたい。
特に、抹茶を本気でやろうと思ったら結構難しいと思うんです。お茶全般に言える事ですが……。抹茶粉を溶かして作るだけならできますが、そこにもやはり点(た)て方があると思います。シンプルで、一般的によくあると思うものほど違いが出てしまう。お客さんにはわからない事まで気づいてしまうので、抹茶へのハードルは高いですね(笑)
原田さんをかき氷の世界へ誘ったのは「本格抹茶のかき氷」。自身の原点となったかき氷への思いを忘れない、彼女の言葉には説得力があります。

お山のようなこんもりと丸い氷に、花梨(かりん)のシロップを大胆にかけていく、原田さん。
今は通年で開けているかき氷店が増えています。まだ寒さが残るこの時季しかない味のかき氷は、夏のかき氷とは違った魅力があります。『寒いのにかき氷を食べるの?』と思うかもしれませんが、本格かき氷を食べたことがないという方にこそ、一度体験していただきたいですね!

リーガルレッドコミス(洋梨)と焼きカスタード(1,600円〜)。
※2023年1月時点の販売メニューです。
かき氷専門店「氷舎mamatoko」オーナー。大学時代に京都で出会ったかき氷に感動して以来、かき氷の虜に。年間1,700杯近くを食べ歩き、かき氷の女王とも称される。2016年に「氷舎mamatoko」をオープン。現在はつくり手として、日々“よりおいしい”かき氷を探求し続けている。
Instagram:@achakoko
※店舗情報
「氷舎mamatoko」
東京都中野区本町6-31-2
営業時間:平日14:00-18:30頃/土・日曜日13:00-17:30頃(一部予約優先制。予約希望の方はこちらから)
定休日:水・金曜日
ハンディタイプのかき氷器を使ってみたらストレスがなさすぎた!