これからの季節に恋しくなるのが鍋料理。ささっと作れて美味しいうえに、体も温まるので寒い季節の定番でもあります。そんな鍋料理を彩ってくれるアイテムといえば「土鍋」ですが、せっかく購入するからにはおしゃれなものを選びたいという人も多いことでしょう。
そこで今回は、インテリアスタイリストの西森萌さんに、おしゃれな土鍋を紹介していただきました。注目ブランドのアイテムのほか、人数ごとにおすすめのアイテム、目的や種類別のおすすめ土鍋など、さまざまなおしゃれ土鍋が盛りだくさんです。
スタイリスト・西森萌さん
東京生まれ。文化女子大学(現 文化学園大学)卒業後、セレクトショップ勤務を経て、2009年よりスタイリスト岡尾美代子氏に師事。2011年より独立。『anan』『 Hanako』『CasaBRUTUS』『Tarzan』『リンネル』『大人のおしゃれ手帖』『天然生活』などの雑誌や書籍、広告で、温かく雰囲気のあるスタイリングを手がけている。
3おしゃれな土鍋の選び方
人数に合わせて選ぶ
人数別のおすすめおしゃれな土鍋
熱源い合わせて選ぶ
重さで選ぶ
自分の好きな雰囲気の土鍋を選ぼう
1土鍋とは?
Image: GettyImages
土鍋とは一般的に、「土」でできた鍋のこと。火にかけると土鍋全体に熱が伝わり、その熱でさまざまな食材を調理します。また、保温性が高く、余熱でも火を通すことができ、温度が下がっていくにつれ、その過程でも味が染み込んでいくという特徴も。長時間の煮込み料理にもおすすめです。
1950年代には、土や釉薬にリチウム鉱物のペタライトを用いた、割れにくく熱に強いリチア系耐熱陶器製の土鍋なども開発されたことで一般家庭に普及し、現在ではさまざまな種類の土鍋が展開されています。
土鍋のメリット・デメリット
火にかけられ、熱によって食材を調理する土鍋は、保温性も高く、余熱調理もできるので便利なアイテムですが、使用することのメリット・デメリットはどんなところにあるのでしょうか?
メリット | デメリット |
---|---|
・保温性が高い ・味が染み込むため、冷めても美味しい ・貫入(表面のヒビ)にダシが染み込むため、使えば使うほどダシが出る ・遠赤外線効果によって、食材の旨味を最大限に引き出してくれる ・金属製の鍋に比べて温かみがあるので、食卓が映える ・鍋料理以外にも、煮込み料理やご飯を炊くこともできる |
・重いものもある ・割れたり欠けやすい |
「土鍋は、鍋料理やおでんなどのほかに、お米を炊いたり、煮込んだりとさまざまな調理に使うことができるアイテム。水炊きやちゃんこなどの鍋料理のほか、おでんや煮物、蒸し料理などにもおすすめです。
温もりのある土鍋で料理を作ると美味しそうに見えますし、家族や友人などと一緒に料理を楽しむことができます。焦げついたりすることもありますが、それがまた味や個性になったりもします。」
土鍋のサイズ
土鍋を購入する際に出てくる単位として「号」「寸」というものがありますが、どれくらいのサイズかよくわからないと悩んでしまう人も多いことでしょう。
土鍋サイズの基本 | 「号=寸」 「○号=○×3cm」 |
基本的には、「号=寸」と覚えておけばOK。直径(口径)は「○号×3cm」で大体のサイズがわかります。7号の場合は、「7号×3cm=21cm」といった感じで覚えておくとよいでしょう。
ただし、ネットで購入する際にはサイズ表記には注意が必要。取っ手までを含めたサイズを直径としている場合もあり、取っ手を抜いたサイズは、「口径」と表記されることも。「直径」と「口径」の表記には注意をするようにしましょう。
また、「号」という表記は口径を表しているため、深さや容量に決まりはなく、個体差が生じます。そのため実際に店頭でサイズ感を確認することも大切です。人数分の目安を表記しているお店もあるので、それらも参考にしておくとよいでしょう。
2おすすめのおしゃれな土鍋ブランド5選
ここでは、インテリアスタイリストの西森さんが選んだおしゃれなブランドの土鍋をご紹介。見た目はもちろん、機能性も兼ね備えた優秀アイテムばかりです。
圡楽
ハンドル鍋(9寸)

三重県伊賀の丸柱で江戸時代から続く「圡楽」は、現在も伊賀の土を使い、手挽きろくろを回して、職人がひとつひとつ手作りをしている窯元。ハンドルのような取っ手が特徴的な土鍋は、伊賀特有の灰釉を使い、刷毛で大胆に模様をつけた味わいのあるアイテム。9寸は3~4人用のサイズです。
「魔法のランプのようなかわいらしい見た目の土鍋です。三重県伊賀の窯元さんの土鍋で、職人さんが手作りをしているため、雰囲気もひとつひとつ異なります。やわらかな黄みがかった色合いもいいですし、形も柄も大胆で素敵な土鍋です。」
かもしか道具店
土鍋 ふつう ホワイト

萬古焼ブランドの「かもしか道具店」が手がけた、丸くころんとした形がかわいい土鍋。両側の取っ手の裏面には、指を引っ掛けやすいようにくぼみがつけてあり、持ちやすい設計になっています。遠征赤外線効果でじっくり火を通すので、食材の旨味を引き出してくれます。
「いわゆる「土鍋」という形をしたかもしか道具店の萬古焼の土鍋です。シンプルで使いやすいデザインで、白と黒の2色が展開されています。2~3人用にぴったりのアイテムです。」
4th-market
アグラ鍋 9号

陶磁器に耐久性をもたせるペタライトを含んだ土は、熱膨張による破損を防ぐ反面、質感を抑えてしまう特徴がある中、「耐熱性とつやのある質感も出したい」という思いのもと、さまざまな工夫を重ねて実現したという土鍋。美しいつやのある土鍋は、温もりがありながらもほかにはない質感で、ギフトにもぴったりです。
「鍋本体が深めで、蓋が平らになっているというユニークなフォルムの土鍋です。やさしいベージュ、べっ甲のようなブラウン、黒の3色展開ですが、どの色もかわいいと思います。」
長谷園
伊賀土鍋 大

かつて琵琶湖の湖底だったという伊賀の地層から採れる陶土は、耐火性が高く、江戸時代から直火の土鍋をはじめ、土瓶などさまざまなアイテムが作られていましたが、その伊賀の粘土で作られる「長谷園」の土鍋は、遠赤外線効果や吸水性を生かし、調理や機能に特化しています。煮る・焼く・蒸す・焙るなど、熱効率がよく、プロの料理人にも愛されています。
「素敵な古民家の囲炉裏にありそうな、味わいのある土鍋です。長谷園の土鍋といえば、炊飯用のものが人気ですが、料理にも使える土鍋もおすすめ。飴色とホワイトの2トーンカラーがかわいいですね。」
三陶
カナエ だえん土鍋 2.0L

江戸時代中期から続く萬古焼の産地である三重県四日市市で、地元が誇る「四日市萬古焼」を全国に販売するとともに、日本中の陶磁器を取り扱う「三陶」が手がけた、だえん型の土鍋。煮物や焼き物、蒸し野菜など、季節を問わずに毎日の料理に気軽に使えるアイテムです。
「だえん型の土鍋は、洋風のお鍋のような雰囲気があるかわいいアイテム。おでんの串物なども入れやすい形状になっています。鍋料理はもちろん、グリルやオーブンにも使えるので、グラタンなどにもおすすめです。」
作家ものもおすすめ
作家が手がける土鍋は、フォルムもデザインもおしゃれなものが多いと語る西森さん。おすすめの作家の土鍋を紹介していただきました。
七尾佳洋 土鍋

「二人前にちょうどいいサイズで、深さがある土鍋です。丸みのある、ころんとしたフォルムがとてもかわいいですよね。深さがあるため、スープやポトフなどの汁物にもおすすめです。」
3おしゃれな土鍋の選び方
おしゃれな土鍋を選ぶには、どんなところをポイントに選ぶとよいかを伺いました。
人数に合わせて選ぶ
「土鍋を選ぶ際には、鍋を囲む人数に合わせて選ぶのがおすすめです。一人用なら6号前後、2~3人用なら7~8号、4人家族用なら9号くらいを選ぶといいと思います。大勢で囲む場合には、浅型の土鍋を選ぶと取り分けやすく、食材を並べた時にもきれいに見えます。」
人数別のおすすめおしゃれな土鍋
<1人用>
TOJIKITONYA 丸輪土鍋

古琵琶湖層から採れる陶土の土鍋は、耐火度が高く、古くから生活道具として愛されていて、遠赤外線効果により、食材の旨味を引き出し、料理をまろやかに仕立てる効果があります。また、原料に特別な耐火成分を追加していないため、一般的なペタライト含有の土鍋と比較し、貫入が入りやすいという特徴も。白と黒の二色展開です。
「惑星のような丸いフォルムがかわいい土鍋です。土鍋本体に縁のようなものがデザインされていて、どの部分でも持てるようになっています。レンジでの温めも可能です。」
<2~3人用>
萬古焼 丸土鍋 すのこ付き

三重県四日市市の萬古焼職人がひとつひとつ手作りしている土鍋。取っ手が丸く、大きいので、ミトンを使っても持ち運びがらくにできます。耐熱陶器製のすのこが付いているので、鍋料理だけでなく、蒸し料理やステーキなどにも使うことができ、季節を問わず、通年で使えるという優れものです。
「専用のすのこが付いているので、蒸し料理ができるだけでなく、ステーキなどにも使える萬古焼の土鍋です。持ち手が丸く、フォルムもかわいく、機能性も抜群なところがいいですね。」
<4人以上用>
万古焼 銀峯貫入土鍋 10号

5~6人用としてたっぷり入る10号サイズの萬古焼土鍋は、鍋の表面全体に貫入の入った趣きのあるシリーズ。土鍋の他に、同じデザインの荒入れや取り鉢などもあるので、そろえて使っても◎。飽きのこないシンプルなデザインです。
「表面にひび、亀裂のようなものが入った銀峯貫入シリーズの土鍋です。私の実家でも使っていたものですが、昔ながらのシンプルなデザインなので、長く愛用することができます。5~6人用の10号サイズなので、友人などを呼んで鍋を囲む際に役立ちます。」
熱源に合わせて選ぶ
「自分の家のコンロの熱源に合わせた土鍋を選ぶようにしましょう。
「土鍋の大半は直火対応ですが、IHには対応していないものが多い印象です。しかし一部のセラミックなどを使った土鍋はIHに対応しています。
「IH対応のものでも、土鍋の底面がザラついているものの場合、IHを傷つけてしまうこともあるので注意が必要です。」
重さで選ぶ場合
「土鍋はどうしても重いものが多いですが、中には軽量をうたっているものもあり、洗う際には、軽いものの方が洗いやすいと思います。ただ、棚の上の方に置いたりしなければ出し入れする時にも支障はないと思うので、重くても使い勝手のいいもの、自分の好みのデザインのものを選ぶことをおすすめします。」
自分の好きな雰囲気の土鍋を選ぼう
「産地や加工などで自分の好みがある方は、それらを選ぶといいと思います。産地や加工などに詳しくない方は、自分の好きな雰囲気の土鍋を選ぶといいでしょう。今は、陶土の土鍋だけでなく、セラミック製のものがあったり、形状もさまざまなものが展開されているので、自宅のキッチンや食卓に合うものを選ぶのもおすすめです。」
4目的・種類別おすすめおしゃれな土鍋
Image: Shutterstock
ここでは、目的や種類別に西森さんが選んだおすすめのおしゃれな土鍋を紹介。見た目だけでなく、使い勝手もよく便利なアイテムをピックアップしていただきました。
日本製
粉ひき 萬古焼 土鍋8号

耐熱製品の生産地である三重県で作っている、三鈴窯の土鍋。モダンなデザインのため、和食はもちろん洋食にもぴったりで、季節を問わず通年で使えるアイテム。お手入れの際には、金属たわしでゴシゴシ洗えるというのもうれしいポイントです。
「スタンダードな土鍋らしい形状で、底がフラットなので安定感があるタイプです。たっぷりと大きく浅めな土鍋なので、料理の取り分けがしやすく便利です。」
RESTFOLK 萬古焼土鍋8号

三重県四日市市で作られ、日本の伝統工芸にも指定されている萬古焼の土鍋は、ご飯や料理を引き立てるような深い黒色で、日本の食卓に馴染むアイテム。お米を炊いたり、鍋料理に使えたりと、年中活躍してくれます。陶土の40%以上にリチウム鉱石を含み、耐久性や耐熱性にも優れた土鍋です。
「炭のような質感で、ニュアンスのある黒なのでとてもおしゃれな土鍋です。土鍋本体の底部分が平らなので、安定感もあります。」
IH対応
キントー KAKOMI IH土鍋

直火だけでなく、IHやハロゲンヒーター、ラジエントヒーター、電子レンジ、オーブンなどさまざまな熱源に対応した土鍋で、季節を問わず1年中使うことができます。付属のすのこをセットして火にかけるだけで、ヘルシーな蒸し料理を調理することも可能。蒸す、炊く、煮るが楽しめるモダンなデザインの土鍋です。
「IH対応の土鍋の中には、土鍋の底がザラついているので、IHを傷つけてしまうものもありますが、この土鍋は表面がつるっとしているので、安心して使うことができます。専用のすのこも付いているので、蒸し料理の調理も可能です。」
直火対応
佐橋製陶所 萬古焼 洋風土鍋

三重県四日市市で生産され、日本の伝統工芸品でもある萬古焼の土鍋は、浅型でシックな黒の使いやすいデザイン。掴みやすい丸型の取っ手もかわいく、ユニークなフォルムが特徴的です。遠赤外線効果で旨味を引き出し、美味しい料理を楽しむことができます。
「オールブラックがかっこいい、特徴的なデザインの萬古焼の土鍋です。丸みのある取っ手がかわいいですよね。4~5人用なので、家族で鍋を囲んで食べる時にぴったりのサイズです。」
軽量
土鍋9号 超軽量浅

4~5人家族や友人たちと鍋を囲むのにちょうどいい9号サイズの土鍋。軽量なので、コンロへの上げ下ろしもらくにでき、料理を入れた状態でも無理なく持ち上げることができます。吸水率が低いため、カビの心配がなく、料理のにおいも染みつきにくいのが特徴。モダンなフォルムとカラーリングで、和洋問わず、さまざまな料理との相性がいい土鍋です。
「重量が約 1750gの土鍋は、ミッドセンチュリーのような北欧風デザインのタイプ。耐熱皿のような雰囲気もあるので、土鍋のまま食卓に並べても違和感がなく、料理が美味しそうに見えると思います。」
大きいサイズ
東屋 布袋鍋

昔から焼きものの里として知られる、三重県伊賀地方で作られる伊賀焼の土鍋。蓄熱性が高く、素朴な風合いのある土鍋は、火からおろした後でも冷めにくいという特徴があり、じんわりと火が通り、熱を逃しにくいため、炊飯にも最適です。
使い込むほどに貫入が入り、それぞれの味わいや雰囲気を楽しむことができるアイテムです。
「伊賀焼ならではの、ざらっとした質感と、グレーの色合いがおしゃれでかっこいい土鍋です。丸みのあるフォルムですが、たっぷりと大きいサイズなので、家族や友人と鍋を囲む時におすすめです。」
ギフトにぴったり
長谷園 利休十草 中サイズ

天保3年(1832年)に始まり、伊賀地方で伊賀焼の伝統を守り続けてきた長谷園のスタイリッシュな土鍋。多孔質な伊賀の陶土でできているため、蓄熱力が高く、現代の暮らしに合わせたおしゃれなデザインと使い勝手のよさを追求したアイテムです。大人2人分にぴったりなサイズ感で、結婚や内祝い、引き出物などにおすすめ。
「ストライプのような柄が入っている伊賀焼の土鍋は、若い方から年配の方まで、年齢を問わずに使えるデザインになので、プレゼントにしても喜ばれると思います。」
信楽焼
AKOMEYA TOKYO 信楽焼 土鍋6号 瑠璃

人気ショップ「AKOMEYA TOKYO」の信楽焼の土鍋。滋賀県甲賀市で生産される信楽焼は、信楽周辺で採れる数種類の粘土を混ぜ合わせて作られていて、肉厚な焼きものに適しています。
耐火性が高く、焼いている時に現れる温かみのある緋色や、灰被り、焦げなどによって表面にさまざまな変化が出るのも魅力。素朴で味わい深い土鍋を探しているという人におすすめのアイテムです。
「お米を炊いたり、スープ料理にも使える6号サイズの土鍋です。ブルーがかった色味もとても綺麗で、1人用の鍋としても最適。丸みのあるフォルムもかわいいと思います。」
5土鍋を使う時の注意点
せっかくお気に入りの土鍋を見つけたら、長く愛用したいもの。土鍋を使う時に気をつけておきたいポイントを伺いました。
目止めをしっかりと行う
「目止めとは、土鍋にある目には見えない小さな穴(目)をふさぐ作業のこと。また、ひび割れや水漏れを防ぐ効果もあります。土鍋を使い始める時には、傷などがないかをしっかり確認し、目止めを行うようにしましょう。」
目止めの方法 |
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「目止めは定期的に行うのがおすすめ。わざわざ土鍋の目止めをしなくても、土鍋でお粥を炊いたり、雑炊を作ったりすることでも目止めになります。日々のお手入れの際には、しっかりと乾かしておくようにしましょう。」
土鍋が欠けたらサンドペーパーをかける
「万一土鍋が欠けてしまい、手に当たって痛いという時には、欠けた部分にサンドペーパーをかけるのがおすすめです。1000番や2000番のサンドペーパーで、欠けた部分をゆっくり擦り、なめらかにしていきましょう。」
土鍋におすすめのおしゃれな鍋敷き
岩手 わら鍋敷き

「東北地方のわら細工職人さんたちが編み上げているわらの鍋敷きです。引っ掛けられるので収納にも便利ですし、わらなので、熱い土鍋などを乗せても汗をかきにくく、長く愛用することができます。」
萬洋 籐製 鍋敷 丸(大)

「シリコンの鍋敷きでは土鍋をのせると溶ける恐れがあり、布製の鍋敷きの場合、熱い土鍋を置くと汗をかいてしまいますが、籐製の鍋敷きは汗をかきにくく、デザインも素朴で、どんな土鍋にも合わせやすいのでおすすめです。」
sarasa design鍋敷き フェルト

「洋風の土鍋におすすめなのがフェルト製の鍋敷き。フェルトの鍋敷きは安定性もあり、通気性もよさそうなのでおすすめです。」
構成・文/相馬香織