コーヒーの淹れ方で、日本で一番ポピュラーなのはペーパードリップ。コーヒードリッパーにペーパーフィルターをセットしてコーヒーの粉を入れ、お湯を注いでコーヒーを抽出します。
このときに使うコーヒードリッパー、「なんとなく」で選んでいる人も多いのではないでしょうか。色々な種類があるコーヒードリッパーですが、実はタイプによって出来上がるコーヒーの味わいに違いが出るんです。
「コーヒーをあっさり淹れたいなら円錐形、どっしり淹れたいなら台形のドリッパーが向いています。両方を淹れ分けられる、ある意味万能なフレームドリッパーが最もおすすめ。初心者にも上級者にも使いやすいですよ」
そう教えてくれたのは、カフェ店主の梁川健人さん。
今回は、数が多くて違いがわかりにくいドリッパーの特徴や代表的なブランド、おすすめドリッパー、最近注目のアイテムまでを解説してもらいました。保存版の徹底ガイドです!
梁川健人(やながわ・けんと)さん
カフェ「喫茶 八蔵」店主。スペシャリティコーヒーの専門店に勤務。コーヒーのドリップや焙煎補助などの業務を経験した後、出張喫茶としてさまざまなイベントで珈琲を提供し、人気に。百貨店への期間限定出店なども行う。2018年にオープンした「喫茶 八蔵」では、産地や農園までこだわったスペシャリティコーヒーを丁寧にドリップ。その味わいを求め、地元はもちろん遠方からも多くの人が訪れる。
喫茶 八蔵(HP)
https://www.hachikura.net/
喫茶 八蔵(Instagram)
https://www.instagram.com/hachikura2015/
■おすすめNO.1
梁川さんが愛用するのは、フレームドリッパー
■おすすめ商品
プロのおすすめコーヒードリッパー10選
-万能タイプ
-初心者向け
-ステンレス
-どっしり濃厚
-あっさりライト
-デザイン・おしゃれ・アウトドア
■ドリッパーの基礎知識
そもそもどんなタイプがあるの?
主要7タイプの特徴
人気のステンレスドリッパーの特徴は?
■レビュー
セラミックドリッパーの使い心地は?
ダイソーのドリッパーは使える?
■Q&A
材質の違い・カリタとメリタの違いなど
【おすすめNO.1】梁川さんが愛用するのは、フレームドリッパー
ドリッパーの種類や選び方はいろいろあるのですが、まずは、梁川さんに愛用のドリッパーを教えてもらいました。初心者にも上級者にもおすすめだというのは、フレームドリッパーです。
「プロユースできる高機能なドリッパーですが、いろんな意味で万能なので、初心者の方をふくめ、あらゆる方に使いやすいと思います。
浅煎り~深煎りまでさまざまなタイプの豆に対応できますし、湯の注ぎ方次第であっさり~どっしりなど、幅広い味に淹れわけられるのが特徴ですね」
「一般的な円錐タイプのペーパーフィルターをセットして使います。空気とお湯の通りが非常によいので、効率よく抽出できるのが魅力。さっと洗えてすぐ乾く、メンテナンスのしやすさも気に入っています」
自分の好みの味がまだわからないという方、とにかく美味しく淹れられるドリッパーが欲しいという方にはおすすめ。自分の好みに合わせて選び分けたいという方は、このあとの解説をどうぞ。
【選び方】デザインで選んでOK! まず淹れてみることが大事
「初めてドリッパーを買うなら、第一印象で素敵だな、かっこいいなと思うものを選べばOKです。どのドリッパーがいいか迷ってしまいなかなか買えなくなるよりも、まずは一つ買ってみて、自分でコーヒーを淹れてみることが大切です」
市販されているメジャーなコーヒードリッパーはどれも優秀。その中から選べば大失敗することはないので、好みや求める味わい、機能に合わせて選びましょう。
いくつか候補があって選べない…という人は、コーヒーの味わいや豆の好みで選びましょう。
あっさりした味わいや、浅煎り~中煎りの豆が好きという人はフレームドリッパーやオリガミ、ハリオなどがおすすめです。どっしりした味わいや、深煎りの豆が好きという人はカリタやコーノがおすすめです。
ハリオとカリタはドリッパーもペーパーフィルターも入手しやすく、価格も数百円と手頃なので、「まずは買ってみる」のにぴったりです。
プロのおすすめコーヒードリッパー10選
万能タイプ、初心者向け、ステンレスなど、6つのカテゴリに分けておすすめのコーヒードリッパーを梁川さんに選んでいただきました。
どれを選んでもおいしいコーヒーが入れられることは保証済み。好みや求める味わい、機能に合わせて選びましょう。
【万能タイプ】
万能タイプは豆選びとお湯のかけ方を調整することで、「あっさり」から「どっしり」までの味わいの好みと、浅煎りから深煎りまでの豆の種類に幅広く対応できるドリッパーです。
ハニービーンズ|フレームドリッパー
自分の好みの味わいが作りやすい、最強万能型ドリッパー

梁川さん愛用のドリッパーとしても紹介したのがこちら。フレーム状になっていて、全方向から空気が抜ける構造。空気とお湯の通りがよく、今回紹介するドリッパーの中では抽出度合いを一番コントロールしやすいです。お湯のかけ方によってあっさり~しっかりまで味わいを調節可能ですが、傾向としては柔らかくて優しい、飲みやすいコーヒーを淹れることができます。
豆は浅煎りから深煎りまで幅広く対応可能。洗いやすさや乾かしやすさも魅力です。
「私もお店で実際に使用しています。最初はポタポタとお湯を落としてゆっくり濃い抽出液を出し、後半はお湯の量を増やして一気に注ぐことによって、美味しい部分と、あまり残したくない渋みや苦みの部分のバランスが取れたコーヒーを淹れることができますよ」
▼合わせて使いたいフィルター
SRIWATANA|コーヒードリッパー
中煎り~深煎りまで幅広く対応できる、エコなドリッパー

ペーパーフィルター不要の、ステンレスのドリッパー。網目が細かいのでしっかりコーヒーの粉を濾すことができ、雑味の原因となる微粉が出ません。ペーパーフィルターを使わないので油分が感じ取れるしっかりしたコーヒーが淹れられます。
中煎り~深煎りの豆に幅広く対応できます。
「空気やお湯の通りがよく、デザイン性も◎。ペーパーフィルターを使わないのでエコでもあります」
【初心者向け】
コーヒーの淹れ方にテクニックが必要ない、「誰が淹れても安定したおいしさになる」機能をもつドリッパーを選びました。
クレバーコーヒー|ドリッパー
お湯を注いで混ぜ、待つだけ。テクニックも手間も不要

台湾生まれのコーヒードリッパー。サイフォンやフレンチプレスなどと同じ、お湯に粉を漬け込んで抽出する「浸漬法(しんしほう)」のドリッパーです。
「一気にお湯を注ぐだけなので、お湯のかけ方にテクニックは必要ありません。ドリップポットなしで、ヤカンや電気ケトルから直接お湯を注げることもメリット。見慣れないタイプではありますが、使い方は簡単です」
▼クレバーコーヒーの使い方▼
ドリッパーにペーパーフィルターをつけて、コーヒーの粉を入れ、お湯の全量を一気に注ぎきります。
30秒蒸らしたら、スプーンで軽く混ぜます。
蓋をして2分ほどおき、ドリッパーをカップやサーバーにのせると、底にある「弁」が外れてコーヒーがサーバーに注がれます(完成!)。
▼合わせて使いたいフィルター
カリタ|コーヒードリッパー 101-D
初心者でも味がブレにくく、どっしりとした味わい

台形で穴が小さく、空気やお湯の通りがゆっくり。円錐形のドリッパーと比較すると、お湯がドリッパーに留まる時間が長いのが特徴です。お湯と粉が触れている時間が長いので、味わいとしてはどっしり傾向。深煎りの豆に向きます。
台形のドリッパーは『ある程度の量のお湯を注ぐ→しばらくとどまった後、落ちる→またお湯を注ぐ』を繰り返して抽出していきます。この淹れ方だとお湯のかけ方による味のブレがあまりないので、初心者でも安定して同じ味のコーヒーを淹れることができます。
ただし浅煎りの豆を長い時間お湯に留めると酸っぱくなってしまうので、深煎りのコーヒー豆を使うことをおすすめします。
▼合わせて使いたいフィルター
【ステンレス】
ステンレスのドリッパーには細かい網目があるため、ペーパーフィルターが不要。ペーパーフィルターを通さないので、コーヒー豆のもつ油分をそのまま味わえるのが特徴です。エコなこともメリット。
SRIWATANA|コーヒードリッパー
中煎り~深煎りまで幅広く対応できる、エコなドリッパー

ペーパーフィルター不要の、ステンレスのドリッパー。網目が細かいのでしっかりコーヒーの粉を濾すことができ、雑味の原因となる微粉が出ません。ペーパーフィルターを使わないので油分が感じ取れるしっかりしたコーヒーが淹れられます。
中煎り~深煎りの豆に幅広く対応できます。
「空気やお湯の通りがよく、デザイン性も◎。ペーパーフィルターを使わないのでエコでもあります」
【編集部おすすめ】
E-PRANCE|ステンレスフィルター

SRIWATANAのドリッパーと同じく、網目が細かく、微粉が出にくい構造。中挽きから中粗挽きの深煎りのコーヒー豆の抽出に適しています。円錐型なので、スタンドを外せばさまざまなコーヒーポットやカップにそのまま使えます。持ち手は扱いやすい耐熱性のシリコン製。使用した後は熱湯に浸け、中性洗剤で付属ブラシを使って洗えば、すぐきれいになります。
【どっしり、濃いコーヒーが好きな人向け】
濃いコーヒーが好きな人は、お湯にコーヒーの粉を漬け込むドリッパー(浸漬法タイプ)や、お湯が留まる時間が長い台形のドリッパーを使いましょう。どちらもコーヒーの粉がお湯に触れている時間が長いので、どっしりとした味わいのコーヒーを淹れることができます。
クレバーコーヒー|ドリッパー
お湯を注いで混ぜ、待つだけ。テクニックも手間も不要

初心者向けとしても紹介した、お湯に粉を漬け込んで抽出する「浸漬法(しんしほう)」のドリッパーです。
使い方は簡単で、ドリッパーにペーパーフィルターをつけて、粉を入れ、お湯を全量一気に注ぎきります。30秒蒸らしたあと軽く混ぜ、蓋をして2分ほどおきます。ドリッパーをカップやサーバーにのせると底にある「弁」が外れてコーヒーがサーバーに注がれます(完成!)。
▼合わせて使いたいフィルター
カリタ|コーヒードリッパー 101-D
初心者でも味がブレにくい、台形3つ穴タイプ

こちらも初心者向けとしても紹介した、カリタの3つ穴ドリッパー。穴は3つですが小さめなので、円錐形のドリッパーよりも空気や湯の通りがゆっくり。お湯と粉が触れている時間が長いので、味わいとしてはどっしり傾向。深煎りの豆に向きます。
注いだお湯がとどまることなく落ちていく円錐形に対し、台形のドリッパーは湯がとどまるのが特徴。「ある程度の量のお湯を注ぐ→しばらくとどまった後、落ちる→またお湯を注ぐ」を繰り返して抽出していきます。湯がとどまる分だけ成分が多く抽出されるため、どっしりした味わいになります。
「浅煎りの豆を長い時間お湯に留めると酸っぱくなってしまうので、深煎りのコーヒー豆を使ってください」
▼合わせて使いたいフィルター
【あっさり、ライトなコーヒーが好きな人向け】
ライトなコーヒーが好きな人は、空気やお湯の通りが良いドリッパーを使ってさっと淹れるのがおすすめ。お湯とコーヒーの粉が触れている時間を長くしすぎないことでおいしい部分だけを抽出し、あっさりしつつおいしさを引き出したコーヒーを淹れることができます。
ハニービーンズ|フレームドリッパー
抽出度合いをコントロールできるので、ライトに淹れやすい

万能タイプとしても紹介したフレームドリッパーは、あっさりした味わいが好みの方にもおすすめ。全方向から空気が抜ける構造で空気とお湯の通りがいいので、湯を多めに注ぐことですっきりと淹れることができます。
「ライトなコーヒーを淹れたい場合は、浅煎りの豆がおすすめです」
▼合わせて使いたいフィルター
【デザイン・おしゃれ・アウトドア】
デザイン性が高いもの、おしゃれなもの、アウトドアに最適なものなど、変わり種を紹介。変わり種といっても、おいしいコーヒーが淹れられるものばかりです。
イルカナ|富士山ドリッパー
逆さにすると富士山が。オールマイティーなフレームドリッパー


フレームドリッパーの一種ですが、使わないときは逆さまにして置くと富士山が浮かび上がります。富士山を有する山梨県と静岡県の企業が共同開発したそう。
「ハニービーンズのフレームドリッパーと同じく、空気とお湯の通りがよく、抽出度合いを調整しやすいドリッパーです」
▼合わせて使いたいフィルター
コーノ|名門 フィルター カラードリッパー
ビタミンカラーが7色展開。サーバーや計量スプーンも揃えたくなる!

主要タイプで紹介したコーノのドリッパーのカラーモデル。カラーはレッド、ブラック、チョコレート、ホワイト、イエロー、ライトグリーン、チェリーピンクの7色展開です。
「円錐形のなかでは空気とお湯が留まりやすく、比較的どっしりとした味わいのコーヒーを淹れることができます。コーノはコーヒーサーバーや計量スプーンにもカラフルな商品があるので、揃えて使うのもおすすめです」
▼合わせて使いたいフィルター
KUOTIAN|おしゃれガラスコーヒーフィルターセット
セットで使えば統一感のあるこなれた雰囲気に

スタイリッシュさと機能を兼ね備えた、コーヒードリッパー 、ドリップスタンド、コーヒーサーバー、コーヒーフィルターのセット。コーヒーを淹れるときに必要な道具が一気に4つ揃います。らせん状のドリップスタンドがエレガントな雰囲気です。
「ドリッパーは内側にスパイラル状のリブがあり、ハリオのものに近い形状をしています。フレームドリッパーよりも若干空気やお湯の通りがゆっくりなので、その分しっかり目の味わいのコーヒーを淹れやすいドリッパーです」
▼合わせて使いたいフィルター
ユニフレーム|コーヒーバネット cute
アウトドアでお気に入りのコーヒーを飲みたい人に
コイルのような構造で、薄くコンパクトに収納できるフレームドリッパー。他のフレームドリッパーと同様、空気とお湯の通りが良い商品です。ステンレスのワイヤーのみで作られていて、耐久性にも優れています。
「アウトドアシーンで大人気のフレームドリッパー。外でも気軽にお気に入りのコーヒーを楽しめます。シンプルな構造でお手入れが簡単なのも嬉しい点です」
シェラカップと組み合わせても使いやすい形状。円錐形のペーパーフィルターをセットして使います。
▼合わせて使いたいフィルター
ミュニーク|Tetra Drip Sサイズ
たためば薄くコンパクトに。どこへでも持ち歩けるドリッパー

3枚のステンレス板を三角錐のような形に組み立てて使うドリッパー。収納時はシャツの胸ポケットに入るほど薄くコンパクトになり、重さは25gと超軽量。キャンプ、登山、サイクリング、旅行など、どこへ行くにも邪魔になりません。
「3点で支えるので安定感があります。ドリッパーとしてはフレームドリッパーに近く、空気やお湯の通りがよいので、自分で好みの濃さに調整しやすい商品です」
中央の部分に円錐形のペーパーフィルターをセットして使います。
▼合わせて使いたいフィルター
コーヒードリッパーって、そもそもどんなタイプがあるの?
もっと詳しくコーヒードリッパーの仕組みが知りたいという方に向けて、基礎知識を徹底ガイド。まずは、ドリッパーの種類について説明していきます。
ドリッパーにはさまざまな種類があるように思えますが、大きく分けると2タイプ。仕上がりの味わいによって分類でき、
・「どっしり」淹れられるタイプ
・「どっしり/すっきり」の両方淹れられるタイプ
の2つに分かれます。
コーヒードリッパーの主要7タイプ
Image: Amazon.co.jp
上の図は主要7タイプのドリッパーをコーヒーの味わい別に並べたもの。上に行けばいくほど、すっきりとした味わいのコーヒーが淹れられるドリッパーで、下に行けばいくほどどっしりした味わいになります。
「フレームドリッパー」「オリガミ」「ハリオV60」「コーノ」の4つはお湯のかけ方によって味わいを自分で調整しやすく、「すっきり」も「どっしり」も淹れられるオールマイティーなタイプです。
これらのドリッパーは、形状や穴の大きさによって特徴が分かれています。次に詳しく解説します。
ドリッパーによって「形状・穴の大きさ」が違う
Image: Amazon.co.jp
ドリッパーのタイプの違いは、形状や穴の大きさによって分類できます。
▼形状
形状には円錐形と台形があり、円錐形は一つの穴に向かってお湯が集約されていくので、湯通りが均一になります。一方、台形はお湯が集約されず、滞留してゆっくり落ちていく構造になり、円錐形よりもどっしりとした味わいになります。
▼穴の大きさ
穴の大きさが大きいと湯通りは早くなり、すっきりとした味わいになります。反対に小さいと湯通りがゆっくりになるので、どっしりとした味わいになります。
左がコーノ、右がステンレスドリッパー。比較するとコーノの穴は大きめ。
穴の数は1つと3つがありますが、穴の数で特徴が変わるというより、穴の面積(大きさ)によって抽出時間が変わってくるため、数よりも面積(大きさ)に注目してください。小さな穴3つより、大きな穴1つのほうが抽出時間が短いということです。
穴の面積が大きいほど湯が落ちる速度が速くなるため、抽出時間が短く、すっきりした味わいになります。
主要7タイプの特徴を紹介
ここからは、主要7タイプのコーヒードリッパーの特徴を一つずつ見ていきましょう。同じ円錐形や台形をしていてもそれぞれ構造や機能が異なるので、淹れやすさやコーヒーの味わいに違いが出ます。
①フレームドリッパー
自分の好みの味わいが作りやすい、最強万能型ドリッパー
主要7タイプの中では最も味わいをコントロールしやすい、万能型のドリッパー。そのため、記事中では梁川さんの愛用・万能タイプ・あっさりしたコーヒーが好きな人向けと、複数箇所で登場しています。
フレーム状になっていて、全方向から空気が抜ける構造。空気とお湯の通りがよく、お湯のかけ方によってあっさり~しっかりまで味わいを調節できます。傾向としては柔らかくて優しい、飲みやすいコーヒーが淹れられます。豆は浅煎りから深煎りまで幅広く対応可能。
ドリッパーの形 | 円錐 |
穴の大きさ | 大きい |
②オリガミ
オールマイティー+おしゃれさが人気のドリッパー

紙を折ったような深いリブによって、フィルターとの間に空間を作っているドリッパー。フレームドリッパーの次に空気とお湯の通りが良いので、煎りの浅い豆を使ったあっさりとしたコーヒーにも向きます。同時に、お湯のかけ方によってしっかりした味わいのコーヒーを淹れることも可能な、オールマイティーなタイプ。
豆は浅煎りから深煎りまで幅広く対応可能です。
「浅煎りの豆を扱うコーヒーショップでもよく使われています。抽出度合いをコントロールしやすいことに加えて、スタイリッシュな形や15色以上あるカラーバリエーションも特徴です」
ドリッパーの形 | 円錐 |
穴の大きさ | 大きい |
③ハリオV60
抽出度合いをコントロールしやすく、コスパも◎

内側にスパイラル状のリブがあり、フィルターとドリッパーが密着することなく、お湯と空気が抜ける仕組みになっています。全7タイプのドリッパーのなかではフレームドリッパー、オリガミに次いで空気とお湯の通りが良く、あっさり~しっかりまで抽出度合いもコントロールしやすいといえます。
上述の2つよりはわずかにお湯の抜けがゆるやかなので、お湯とコーヒーの粉が触れている時間がやや長くなることにより、どっしりめの珈琲が美味しく淹れやすくなります。豆は浅煎りから深煎りまで幅広く対応可能です。
「抽出をコントロールしやすいドリッパーを試してみたい方におすすめです。数百円で購入できますが、機能は文句なし! 気軽に扱えることも魅力で、私も自宅で愛用しています。
うちのお店に来てくださるお客さまの所持率も高い、人気のドリッパーです。
ドリッパーの形 | 円錐 |
穴の大きさ | 大きい |
④コーノ
ややどっしり傾向のコーヒーが好きな人向け

ドリッパーの内側全体にリブのあるハリオV60とは異なり、ドリッパーの真ん中から下に向かって短いリブがある構造が特徴。ドリッパーの上半分はフィルターとドリッパーが張り付く形になっていることから、円錐形の中では空気とお湯が留まりやすく、比較的どっしりめのコーヒーが美味しく淹れやすいのが特徴です。
豆は中煎り~深煎りのものがおすすめ。
「もともと「ネルドリップの味をもう少し手軽に楽しみたい」という目的で考案されたドリッパー。フレームドリッパー、オリガミ、ハリオV60と比較すると大きく異なるわけではありませんが、ややどっしりとした味わいのコーヒーを淹れることができます」
ドリッパーの形 | 円錐 |
穴の大きさ | 大きい |
⑤カリタ3つ穴
初心者でも味がブレにくく、どっしりとした味わい

主要7タイプの中では、2番目にどっしり淹れられるタイプ。穴は3つありますが小さめなので、お湯がドリッパーに留まる時間が長めです。お湯とコーヒーの粉が触れている時間が長い分だけ味わいはどっしり。深煎りの豆を淹れるのに向いています。
「スーパーなどでもよく売られているので、主要7タイプの中では一番入手しやすいでしょう。価格も数百円なので、どっしりめのコーヒーが好きな人の入門ドリッパーとしておすすめです」
ドリッパーの形 | 台形 |
穴の大きさ | 小さめ |
⑥メリタ
抽出時間が長いので、良くも悪くも豆の味が全部出る

台形かつ穴が1つだけなので、全7タイプの中で一番空気とお湯の通りがゆっくり。お湯とコーヒーの粉が触れている時間が長いので、豆の風味の全てが抽出された、どっしりと濃いコーヒーになります。
深煎りの豆の抽出に向いています。
「豆本来の味を味わいたい人向きですが、長時間抽出することできつい苦みや渋みも出てしまいます。そういった風味を避けつつどっしりとしたコーヒーを飲みたい場合は、カリタのドリッパーがおすすめ」
ドリッパーの形 | 台形 |
穴の大きさ | 小さい |
⑦ケメックス
鋭角な円錐形が特徴。しっかり目の味わいになる

サーバーとドリッパーが一体になったおしゃれなデザイン。専用のペーパーフィルターを折りたたんで差し込み、使います。
ケメックスは3人用と6人用で形が少し異なりますが、3人用は特に円錐の角度が鋭角。角度が鋭角だとお湯がコーヒーの粉を通過する時間が長めになるので、やや濃いめに淹れられます。
深煎り豆の抽出に向いています。
「微妙な違いではありますが、フレームドリッパーやハリオなどと比べてドリッパー部分の角度が鋭角で、お湯や空気の通りもややゆっくりです。しっかりめのコーヒーが好みで、インテリア性も重視している人向きです」
ドリッパーの形 | 円錐 |
穴の大きさ | 大きい |
人気のステンレス(ペーパーレス)ドリッパーの特徴は?
ここ数年で注目度と人気が高まっているステンレスドリッパー。ドリッパー自体に細かい網目があるため、ペーパーフィルターなしでコーヒーを淹れることができます。
「以前は目詰まりするイメージもあったんですが、ここ数年で機能がぐっと向上しているドリッパー。僕も注目しています。豆の微粉は通しませんが、空気やお湯の通りは良く、ペーパーを使わないためコーヒー豆の油分や味をしっかり出すことができます。金属の匂いは気になりません」
また、使い捨てのペーパーフィルターを使用しないため、環境保護の観点からも注目されています。
▼おすすめのステンレスドリッパー
セラミック(ペーパーレス)ドリッパーの使い心地は?【使用レビュー】
ステンレスドリッパーと同様、ペーパーフィルター不要で、エコの観点からも注目されているセラミックのドリッパー。カルキや不純物もろ過できる多孔質のセラミック素材でできていて、おいしいコーヒーが淹れられると話題ですが、実際のところはどうなの? という疑問を解消するべく、テストしてみました。
▼使ったのはこちらの商品
「思っていたよりもお湯の抜けはいいですね。ただ、同じくペーパーフィルター不要のステンレスドリッパーと比べると、目詰まりが気になります」
目詰まりした場合は、よく乾燥させてからガスコンロやオーブントースターで焼成し、ブラシで払う・冷まして湯通しをするなどして目詰まりを取り除くことができます。このお手入れが頻繁にあるとすれば、メンテナンスがやや面倒な印象です。
ダイソーのドリッパーは使える?【使用レビュー】
最近はダイソーのコーヒー器具も人気です。見た目は『カリタ|コーヒードリッパー』のような台形のドリッパーですが、穴は4つ。その実力のほどを梁川さんに検証してもらいました。
今回は、ダイソーのドリッパーにカリタのフィルターを使って検証しました。
「問題なくおいしいコーヒーが淹れられると思います。台形のドリッパーっぽいどっしり感がありつつも、すっきりとした味わいも感じられますね。味わいとしては台形ドリッパーと円錐ドリッパーの間にあって、ややしっかりめ。100円でこの性能とは、驚きました。
穴が4つあることが影響しているのか、同じく台形で穴が3つのカリタより落ちるスピードが速い印象を受けました」
コーヒードリッパーの Q&A|材質の違い・カリタとメリタの違いなど
コーヒードリッパーについて梁川さんが解説。ドリッパーの材質による違いは? カリタとメリタはどう違う?など、気になる項目について教えてもらいました。
Q.プラスチックと陶器、材質はどっちを選んだ方がいい?
A.購入しやすいプラスチックでOKです。
ドリッパーにはプラスチック、陶器、金属などさまざまな材質がありますが、材質が変わると「熱伝導率」が変わるため、味に影響します。熱伝導率とは、熱の伝わりやすさのこと。熱伝導率が高いと熱が伝わりやすく、お湯の温度変化が起きにくいので、ドリッパーとしては熱伝導率が高いものがおすすめです。熱伝導率の高い代表的な素材は銅です。
とはいえ、一番ポピュラーなプラスチック素材でも全く問題はありません。買いやすく扱いやすい材質のドリッパーを使って、気軽にコーヒーを飲んで頂くのがよいと思います。
Q.カリタとメリタはどう違う?
A.カリタは3つ穴、メリタは1つ穴。メリタの方がどっしり淹れられますがデメリットも。
どちらも台形のドリッパーで名前も似ている有名メーカーなので混乱しがちですが、穴の数に違いがあります。穴が3つのカリタに対し、メリタは穴が1つ。メリタのほうがより長くコーヒーの粉がお湯に浸かった状態になるので、カリタよりもどっしり重いコーヒーになります。
一つ知っておきたいのが、メリタは抽出時間が長いので、コーヒーの成分が溶け出していく中できつい苦みや渋みなど、あまり望ましくない味わいも抽出してしまう傾向にあることです。コントロールが難しいので、3つ穴で抽出時間がそこまで長くないため苦みや渋みが出にくいカリタをおすすめします。
Q.避けた方がいい形状、淹れにくいドリッパーはある?
A.作家ものなど、デザイン性の高い陶器のドリッパー。
見た目が優先で空気やお湯の通り、抽出効率などが優先されていないものもあるので、思うようなコーヒーが淹れられない可能性があります。
先に紹介した7つのタイプのドリッパーを製造する各メーカーは、おいしいコーヒーを淹れるために商品を研究開発しています。そのため、コーヒーに興味があって、おいしいコーヒーを淹れてみたいと思う人は、まずは7つのタイプの中から選ぶことをおすすめします。
また、陶器のドリッパーはお湯の温度が下がりやすいという点からも、あまりおすすめではありません。
写真:岡崎健志、編集:佐々木智恵美