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2022年4月に道路交通法が改正され、電動キックボードの規制が緩和されることになりました。

2年以内の施行に向けて一部地域でシェアサービスの実証実験が展開されるなど、各所で取り組みが広がっています。シェアリングサービスを利用した方や電動キックボードに乗っている人を見かけた方も多いのではないでしょうか。

そんななか、道交法の改正が施行されると電動キックボードをとりまく規制はどのように変わるのか、これからの移動手段のありかたはどうなっていくのかについて、日本電動モビリティ推進協会(JEMPA)会長の鳴海さんにお話を伺いました。

かいサポ編集部が選んだ、公道で乗れる電動キックボードも紹介します。

鳴海禎造さんのイメージ

鳴海禎造さん
glafit株式会社代表取締役。一般社団法人 日本電動モビリティ推進協会代表理事。
2017年、次世代モビリティメーカーを目指し「glafit株式会社」を設立。自転車型電動バイクやキックボード型電動スクーターの開発・販売を行う傍ら、次世代に向けた電動モビリティのありかたを提言する業界団体「日本電動モビリティ推進協議会」を電動モビリティ企業6社共同で立ち上げる。政策提言やルール作り、啓蒙活動など電動モビリティとそれを取り巻く環境整備に幅広く携わる。

■現在、電動キックボードで公道を走行するためには?

道路運送車両法の保安基準に適合した構造や装置を備えた電動キックボードを使用し、原動機付自転車(原付)のルールに従って乗る必要あり。

詳しくは→「道路交通法の改正でどう変わる?
■改正された道路交通法施行後はどう変わる?

新たな区分「特定小型原動機付自転車(特定小型原付)」として、今後定められる保安基準に適合した装備を備えたものであれば、公道と歩道(条件あり)で走行が可能に。

詳しくは→「道路交通法の改正でどう変わる?

Image: Amazon.co.jp

かいサポおすすめ公道走行可能な電動キックボード6選

キックボードを選ぶときにはどういったことに注意する必要があるのでしょうか。

公道を走るためには、公道走行に適した保安基準の電動キックボードに乗る必要があります。道路運送車両法によって定められている保安基準は、かなり細かく設定されているため、購入した電動キックボードに後から保安部品を付けて基準に適合したものにすることは、メーカーの開発エンジニアでもない限りほぼ不可能です。
電動キックボードで公道を走行したいのであれば、買う時点で確実に日本の公道走行に対応した車種を選ぶ必要があります。
公道走行ができない電動キックボードの場合、大きな工場の敷地内の移動手段として使ったり、キャンプ場の施設などアウトドア環境で使ったりすることが考えられます。

Segway Ninebot J-MAX

Image: Amazon.co.jp

折りたたみできる公道走行可能な電動キックボード。最高速度25km/hで航続距離は約65km。通勤通学や買い物などの移動に。

サイズ 展開時:1167 × 472 × 1203mm
折畳時:1167 × 472 × 534mm
本体重量 約21.7kg
航続距離 約65km
最高速度 25km/h
充電時間 約6時間
耐荷重 25~100kg
モーター定格出力 350W

SUNPIE S1 電動キックボード

Image: 楽天

公道走行仕様の電動キックボード。簡単に折りたたみできるので収納時にも便利です。Bluetooth接続でスマホ連動も可能。

サイズ 展開時:約1307 × 520 × 560mm
折畳時:約1307 × 520 × 1275mm
本体重量 約24kg
航続距離 95km(環境温度25℃、体重75kg、満充電、18km/hの速度で平坦な道に走行)
最高速度 30km/h
充電時間 約7時間(充電器1個使用)/約3.5時間(充電器2個使用)
耐荷重 150kg
モーター定格出力 500W(瞬間最大1000W)

※最高速度、走行距離、上昇角度などは、使用者体重、走行道状況、天候などにより変わります。

SWALLOW ZERO9

Image: 楽天

公道走行が可能な保安基準を満たした一台。国内で最終組み立てを行い、国内で専門の技術スタッフによる全台検査が行われています。折りたたみ可能。

サイズ 展開時:1100mm × 700mm × 900mm?1130mm
折畳時:1100 × 200 × 390mm
本体重量 20.6kg
航続距離 ?40km
最高速度 40km/h
充電時間
耐荷重 100kg
モーター定格出力 600W

E-KON grande PLUS

Image: 楽天

同シリーズから定格出力がよりパワフルになった、公道走行に対応したモデル。航続距離も約50kmと、現シリーズの最高スペックになっています。

サイズ 1210 × 200 × 670mm
本体重量 約22.5kg
航続距離 約50km
最高速度 38km/h
充電時間 7~8時間
耐荷重 約120kg
モーター定格出力 500W

COSWHEEL MIRAI T

Image: 楽天

サドルが付け外しできるので、立ち乗りと座り乗りの2WAY使用が可能な電動キックボード。保安基準をクリアしているので公道走行が可能です。

サイズ 展開時:(約)1180 × 680 × 1240~1390mm/
     シート高:630~780mm
折畳時:(約)1180 × 680 × 470mm
本体重量 約25kg
航続距離 約30~40km(標準10Ah バッテリー)
約60~70km(20Ahバッテリー ※別売)
最高速度 約39km/h
充電時間 約3.5時間
耐荷重
モーター定格出力 500W

FUGU INNOVATIONS JAPAN Meister F

Image: 楽天

保安装備を備えた電動キックボード。折りたたみできるので、車などで持ち運ぶ際も便利です。安定感のある8.5インチの大型タイヤを使用しています。

サイズ 展開時:1100 × 480 × 1215mmmm
折畳時:1100 × 480 × 500mm
本体重量 約14.3kg
航続距離 約30km
最高速度 約19km/h
充電時間 約4時間
耐荷重 約90kg
モーター定格出力 0.25kW

道路交通法の改正でどう変わる?

Image: GettyImages

車両規格 法定最高速度 ヘルメット着用 免許 年齢制限
原付 制動装置、前照灯、後写鏡など道路運送車両法の保安基準に適合した構造や装置を備えたもの 50cc以下は30km/hまで
125cc以下は60km/hまで
必須 原付以上の免許が必要 16歳以上
特定小型原付 現在法整備中 20km/hまで 努力義務 不要 16歳以上

改正された道路交通法によって、新しく「特定小型原動機付自転車」という区分が生まれます。これは原付よりも自転車に近いイメージで、構造的に速度は20km/hまでしか出せず、16歳以上であれば免許不要で乗ることができるようになるものです。原付区分では必須だったヘルメットの着用義務も努力義務となるため、必ずしもかぶらなくてもよくなります。

新しく「歩道通行車」という区分も作られ、歩道を走ってもよい電動モビリティも規定されます。特定小型原付に区分される電動キックボードは基本的に歩道走行は不可ですが、規定の大きさのもので、一定の条件下で6km/h以下に制御し、それを表示した場合は自転車通行可能な歩道が通行できるようになります。

現在公道走行可能な電動キックボードは法改正後も原付区分であることは変わらないため、免許やヘルメットは必須です。特定小型原付として走行することはできません。

弊社は電動バイクでの「状態変更」という概念を産み出し、モビチェンという新しい機構を開発してきたこともあり、特定小型原付でも、要件にあうように開発を進めています。

今買うか、少し待って買うかどっちがいい?

Image: GettyImages

2022年4月に改正された道路交通法は、約2年のうちに施行される予定です。それまでは、いわば過渡期にあるともいえます。

今、電動キックボードを買った方がよいのか、または約2年待って法律が施行されたタイミングで入手するのか、どちらがよいのでしょうか。

2年ほどすると特定小型原動機付自転車という区分ができるので、特定小型原付に乗るという選択肢は増えますが、それが自分に合っているものなのか、そうでないのかというところで考えるのがよいでしょう。
例えば、特定小型原付のメリットとしては、免許が不要であることやヘルメット着用が努力義務であることがあげられますが、すでに免許を持っている人やヘルメットをかぶることに抵抗がない人であればその恩恵は少ないため、特定小型原付をあえて待つ必要はないかもしれません。特定小型原付のデメリットとして速度が20km/hしか出ないこともあげられます。
20km/h出れば十分だという人や、免許やヘルメットがいらない方がよいと思う人は特定小型原付を、免許を持っていて、ヘルメットをつけることに抵抗がなく、20km/h以上出したい方は原付区分で乗ることを検討してみてはいかがでしょうか。

なぜ法改正が行われるのか

Image: GettyImages

新しい車両区分が作られることは道路交通法施行約60年の歴史の中でもかなり大きな部類の変化ですが、この法改正は必ずしも電動キックボードのためのものではありません。
移動(モビリティ)の多様化を推進していくための一環として、国や警察が中長期的な視点で原付の下に特定小型原付のカテゴリーを設定したものといえるでしょう。

戦後の復興のなかで制定された法律

日本では、戦後の復興期に自転車にエンジンがついた自転車バイクと呼ばれるものが誕生し、爆発的に普及して国民の足となった歴史があります。
その当時は原付と自転車は明確に分けられていなかったのですが、その後の交通事情の変化などもあり、自転車バイクは自転車以上、オートバイよりも手軽なものとして原動機付自転車として規定され、そのまま今に至っています。
キックボードは遊具ですが、そこに電動機がついた瞬間、分類としては自転車以上のものになってしまいます。公道を走る場合は原付1種または原付2種の区分に該当するので、それに適合した保安基準など様々な条件を満たす必要が出てきます。

原付区分があるのは日本だけ

Image: GettyImages

欧米では電動バイクを手軽に楽しむ人も多く、シェアリングサービスなども日本に比べてかなり普及している印象があります。なぜ日本ではまだあまり普及していないのでしょうか。

日本では自転車以上、オートバイ未満のものはすべて原付の分類に入ってしまいます。一括りにはできませんが、海外では電動キックボードのような電動機がついた乗り物でも速度や排気量が一定以下であれば自転車扱いになる国も多く、そういった場合、免許やヘルメットなしで電動キックボードに乗ることが可能です。
欧米では電動キックボードのシェアリングサービスが盛んで、爆発的な広がりを見せていますが、日本で一気に普及しないのは、そういった日本独自の事情があるためです。

これからのモビリティのありかた

Image: GettyImages

この100年のあいだ、パーソナルモビリティといえばほぼ自転車しか選択肢がありませんでしたが、これから自転車以外の選択肢が一気に増える可能性があります。特定小型原付の認可に向けて様々な車両も出てくるでしょう。
これからは電動のものが主流になるかと思いますが、これまでは自転車の次はバイクや車といった乗り物になっていたのが、それらの中間の乗り物ができるので、若者の移動手段も広がるでしょう。免許が不要ということになれば、高齢者の免許返納の問題にプラスに働く可能性もあります。移動手段は今後より多様化していくことが期待できます。

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