1

日本各地に「クラフトビール」を造るブルワリー(ビール醸造所)が存在し、数多くのご当地ビールが人気を博しています。最近では宅飲み需要も高まっていることもあり挑戦してみたいとは思うものの、いざとなると結局「何を選んだらいいのか分からない……」となることも多かったりするのでは?

今回は、ビアソムリエとしての肩書をもつクラフトビールの達人・くっくショーヘイさんに、味の好み別おすすめビールや、おつまみや料理との相性について教えていただきました。

いつもよりちょっと贅沢に晩酌したい際や食事に合うビールを探している際に、ぜひ参考にしてみてくださいね。

くっくショーヘイのイメージ

くっくショーヘイ(佐藤翔平)さん
フードペアリングインストラクター/ビアソムリエ/ビアジャーナリスト。1989年生まれ、宮城県出身。岩手大学卒業。10以上のお酒の資格と調理経験を活かし、フードペアリングを日々研究、実践中。「ビアジャーナリストアカデミー」「アカデミー・デュ・ヴァン」などで講師を務める。日本地ビール協会公認「シニア・ビアジャッジ」として国際ビアコンペでの審査も行う。待望の新刊「うまいビールが飲みたい! 最高の一杯を見つけるためのメソッド」(リトルモア)がアマゾンカテゴリベストセラー1位を獲得。

1. クラフトビールと普通のビールはどう違う?

ビールの種類はビアスタイルと呼ばれていて、その数は実に150種類以上。この中で、いわゆる普通のビールはその多くがラガーのピルスナーというビアスタイルに分類されます。透き通った黄金色、シャープなのどごしや、苦味が特徴です。

一方、クラフトビールは伝統的なものから革新的なものまで多種多様な味わいが楽しめるものが多いのです。上記のピルスナーはもちろん、色、香り、味わいなど、個性さまざまなビールが多く存在します。

どのブルワリーも個性や得意分野をいかしつつ、ビールを美味しくするための試行錯誤を重ねています。普通のビールが比較的万人ウケするようにつくられているのに対し、クラフトビールは職人が手間と時間をかけ、職人の技と魂をギュッと詰め込み表現するビールなのですね!

2. 味の好みから“お気に入り”を見つけよう!

Image: shutterstock

クラフトビールには膨大な種類があり、色や味、香りも様々です。自分の好みに合ったものを試してみるのがお気に入りのクラフトビールと出会う近道だといえるでしょう。

とはいえ、150種類以上もあるビアスタイルの中から自分のお気に入りとなるものを探し当てるのはとても大変。骨を折らずにお気に入りのクラフトビールを見つけるためには、くっくショーヘイさんが考案した「8つのカテゴリー」で当たりをつけるのが簡単です。

クラフトビールをそれぞれ近い味わいごとに分類したカテゴライズで、これを用いれば簡単に自分の好きな系統のクラフトビールを見つけることができます。特におすすめの銘柄と合わせてご紹介していきます!

①のどごしの良いビールが好きな方には「淡色ラガー」がおすすめ!

「淡色ラガー」はクラフトビール初心者でも手を出しやすい王道のビールです。甘みは控えめで、ビール特有の苦味が引き立ちます。キレやのどごしをダイレクトに感じることができる、日本人にもっとも馴染みのあるビールの味といえるでしょう。

クラシック/ベアレン醸造所

ドイツのドルトムントを発祥とするスタイルです。別名エクスポートと呼ばれ、輸出用に造られていた名残から、のどごしの良さの中にも飲みごたえを感じます。麦の奥深くしっかりとした味わいを楽しめるビールです。

②フルーティー&よりコクのあるビールが好きな方には「淡色エール」がおすすめ!

同じく淡い黄金色ですが、ラガーのそれよりも味わい深いものが多いのが「淡色エール」。酵母やホップ由来のフルーティーな香りがあり、それらやホップの苦みとバランスを取るように麦由来の甘味やコクもより強く感じることができます。

代表的なスタイルはペールエール。最近はやりのIPAなどもここに分類されます。

伊勢角屋麦酒 ペールエール/二軒茶屋餅角屋本店

ビール界のオスカー賞とも言われる「The International Brewing Award」において、2大会連続で最高賞を受賞している、世界からお墨付きをもらったビールです。

飲みやすさと飲み応えのバランスが取れた逸品で、柑橘っぽいフレーバーが口の中に爽やかに広がります。

志賀高原ビール其の十 No.10/玉村本店

インペリアルIPAと呼ばれるビアスタイルで、その名の通りアルコール度数も7.5%と高め。ホップ由来の強い柑橘のようなフレーバーと苦みがありますが、甘味とのバランスも取れていて、アルコール度数の高さをそれほど感じずにスルスルと飲めてしまいます。

③苦味が苦手な方には「白ビール」がおすすめ!

苦味が控えめで口当たりがマイルドな「白ビール」。基本的にビールは大麦をメインに使用しますが、白ビールはそこに小麦を入れることにより、白くかすんだ見た目と口当たりの良いまろやかさを生み出しています。

全体的にマイルドに仕上げたビールで、ほんのりと霞みがかっているような見た目が特徴です。白ワインのようなフルーティーな香りと優しい口当たりから、女性人気も高いビールです。

門司港地ビール工房 ヴァイツェン/門司港レトロビール

ヴァイツェンはドイツ発祥のビアスタイル。小麦麦芽を贅沢に使用しているので、芳醇で優しい味わいに仕上がっています。バナナやクローブのようなヴァイツェン酵母特有のフルーティな香りを存分に楽しんで。

ビアへるん ヴァイツェン/島根ビール

同じくヴァイツェンでおすすめをもう一つ。こちらも国内外での評価が高く、数々のメダルを受賞しています。完熟バナナのような芳醇なフレーバーがたまりません! カクテルよりも甘くなく、普通のビールよりも苦味控えめでチャレンジしやすいです。

④落ち着いた麦の香ばしさが好きなら「琥珀色ビール」がおすすめ!

「琥珀色ビール」は中身をカラメル化した麦芽を使用したりして、ビスケットやカラメルのようなふんわりとした香ばしさを堪能することができます。香りや苦味などにおいて主張しすぎるところがなく、食事の邪魔にもならない非常にバランスのとれたビールです。

いわて蔵ビール レッドエール/世嬉の一酒造

アイルランド発祥のスタイルで、赤みのある色味が特徴です。イギリスで開催されるWBA(ワールド・ビア・アワード)という世界規模の大会で、部門優勝を果たした実力派のビール。カラメルっぽい甘さとクリーンなのごどしを味わうことができます。

⑤チョコレートやコーヒーが好きなら「黒ビール」がおすすめ!

「黒ビール」は、高温で焙煎し真っ黒にしたた麦芽を一部用いることで、ロースト風味焦げ味や苦味を際立たせたビールです。

チョコやコーヒーを飲んでいるようなほろ苦いロースト感が味わえます。

スワンレイクビール ポーター/天朝閣グループ

ワールドビアカップで金賞を獲得した、世界から認められたビールです。ビターな後味と濃厚で複雑な味わいはデザートとの相性が抜群! 麦の甘味やコクが際立ちます。

⑥カクテルが好きなら「フルーツビール」がおすすめ!

フルーツを使用したビールで、フルーツ由来の色味や味わいを楽しむことができます。カクテルのように甘い銘柄もあります。

使用しているフルーツもさまざまで、ベースにしたビールによって辛口のシャンパンのようなものから、どっしり甘いものまで幅広いラインナップがあります。

Y.MARKET BREWING Yellow Sky Pale Ale イエロースカイペールエール/おかだや

ペールエールをベースにゆずを使用したフルーツビールです。ゆず皮をたっぷりと使用しているので、爽やかさを感じられる仕上がりになっています。

⑦複雑な味を楽しみたい方には「長熟・濃厚系ビール」がおすすめ!

何年も熟成して楽しめるほど、濃厚で複雑な味わいと高いアルコール度数を持つカテゴリーです。ワインを飲んだときのように喉が熱くなるようなとろりとした重みのある味わいを楽しむことができます。バーレーワインなどがここのスタイルに含まれます。

どっしりとした重さのあるビールなので、少しずつ飲むのに向いています。

ハレの日仙人/ヤッホーブルーイング

カラメルやドライフルーツ、シェリーやナッツなど、長期熟成によって生まれた複雑な香りと、10%を超えるアルコール度数も相まった濃厚な味わいが癖になります。比較的入手しやすく、ぜひビールの奥深さを感じてほしい逸品です。

⑧ワインや他のお酒が好きなら「個性的ビール」がおすすめ!

ビールの多様性を感じるいわゆる「その他」なビールたちです。麦芽やホップはもちろん、他のお酒の酵母や熟成容器などを使用したり……。酸っぱいものから燻製風味のものまで実に様々です。

たとえばワインやウイスキーの熟成に使用した木の樽にビールを入れて熟成させたり、(酒イーストビールという)日本酒の酵母を使用して発酵させるビールなどがあり、他のお酒好きにもきっとハマる味わいに出会えるはずです。

ビアへるん どぶろくビール おろち/島根ビール

日本酒好きな方におすすめなのが、「ビアへるん どぶろくビール おろち」。酒米麹と清酒酵母を使用した、日本酒の風味が感じられる和風のビールです。日本酒の深い味わいとビールののどごしの良さをあわせもちます。

富士桜高原麦酒 ラオホ/富士観光開発

ウイスキー好きな方におすすめなのが、「富士桜高原麦酒 ラオホ」。スモークした麦芽を使用していて、まるで燻製食品のような香りが立ち上ります。マイルドな口当たりの癖になるビールです。WBAなどのビールコンテストでの受賞歴もあり、世界的にも認められています。

ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ/Verhaeghe醸造所

赤ワインが好きな方におすすめなのが、「ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ」。甘酸っぱく爽やかな酸味と香りが特徴的なベルギービール。赤い果実のようなフルーティーさとバニラやバルサミコ酢のような独特の風味を感じられます。

3. おつまみ・料理と一緒に飲みたいクラフトビール

味の好みで選ぶのも良いけれど、ビールとのペアリング(相性)を押さえておけば、その日の料理メニューやおつまみによってクラフトビールを変えるなど、少し上級な楽しみ方もできそうです。

フードペアリングインストラクターとしても活動しているくっくショーヘイさんに、おすすめの組み合わせについても伺ってみました。

また、加えてそれぞれのビールにおすすめのビアグラスもあわせてご紹介します。家飲みがさらに格上げされる予感!

①スモークサーモンと一緒に

梅錦ビール ブロンシュ/梅錦山川

お刺身やお寿司、カルパッチョなど魚介系のおつまみとは苦味が少なく爽やかな「白ビール」を合わせるとGood! 伊予柑の皮を使用している梅錦ビール ブロンシュは、その柑橘の香りが魚介の生臭みを包み込みます。

おすすめのビアグラスは「厚めのタンブラー」「ヴァイツェングラス」など

白ビールの持ち味はなんといってもきめ細やかな泡! ヴァイツェングラスは泡を長く保持しやすくがおすすめです。また、ビールの温度を冷たく維持するため、手の温度が伝わりにくい「厚手のタンブラー」や「脚付きグラス」などもよいでしょう。

②オイルサーディンと一緒に

COEDO-Marihana-/協同商事 コエドブルワリー

ニンニクやオリーブなど香り華やかな洋食系のおつまみには「淡色エール」を合わせるのがおすすめ。「COEDO-Marihana-」のフルーティな香りはニンニクやオリーブ系の香りとよく合います。

おすすめのビアグラスは「ワイングラス」「チューリップグラス」

華やかな香りをより楽しみたいなら、丸みのあるグラスをチョイスしてみて! のどごしも併せて楽しみたいならグラスのふくらみ(横幅)が小さめのものを。

③チキン南蛮と一緒に

飛騨高山麦酒/ダークエール

ステーキや唐揚げなどこってり肉系のおつまみには、程よいロースト感を感じられる「琥珀色ビール」を合わせて。

芳醇で香ばしい香りと苦味の奥に感じられる甘やかさのバランスがとれたダークエールは、甘みのある肉料理や煮込み料理、ほんのり焦げた肉の香りによく合います。

おすすめのビアグラスは「タンブラーグラス」

琥珀色ビールはコップの形状に近い「タンブラーグラス」でカジュアルに楽しむのがおすすめです。温度が上がるにつれ、カラメルのようなほんのり麦を焦がしたような香ばしい香りが際立ちます。

④メープルナッツと一緒に

宮崎ひでじビール/栗黒 KURI KURO Dark Chestnut Ale

ナッツやスイーツなどの甘いものとは「黒ビール」や「フルーツビール」を合わせてみてください。コーヒーと一緒にデザートを楽しむような感覚でペアリングすることで、黒ビールの香りやロースト感がより一層引き立ちます。また、デザート感覚で飲めるフルーツビールもスイーツとの相性抜群。スイーツの甘さとフルーツビールのフルーティーさが絶妙にマッチします。

栗の上品な香りと重厚なコク、そしてコーヒーのような香ばしい香りをあわせもつ「栗黒 KURI KURO Dark Chestnut Ale」はまるで栗のデザートを食べているような深みのある味わいで、その濃厚さとナッツの甘さがよく合います。

黒ビールのおすすめのビアグラスは「パイントグラス」「ブランデーグラス」など

手の温度でじわりじわりと温めながら味わいの変化をゆっくり楽しんで。強い味わいのものは「ブランデーグラス」などで香りと味わいをゆっくり堪能するのもアリです。

フルーツビールのおすすめのビアグラスは「フルートグラス」

のどごしも楽しめるような軽やかな味わいのものは、「フルートグラス」に入れると炭酸を保持でき、カラフルな見た目もおしゃれに楽しむことができます。

⑤酢豚と一緒に

ハレの日仙人/ヤッホーブルーイング

スパイスや辛味のきいた中華、エスニック系のおつまみは「長熟ビール」との相性が抜群です。

熟成由来のドライフルーツやナッツなどの香りは香辛料との相性が良いですが、ハレの日仙人もそれと同じ感覚でペアリングをしてみて。香りや味の強いもの同士を合わせるというところもポイントです。

おすすめのグラスは「ブルゴーニュグラス」「ブランデーグラス」

アルコール度数が高い長熟ビールは、がぶ飲みには適しません。ブルゴーニュグラスに少しずつ注いで、温度変化や香りも堪能しながらゆっくり楽しむのがおすすめです。

⑥味付け燻製たまごと一緒に

富士桜高原麦酒 ラオホ/富士観光開発

さまざまな個性とのマリアージュの可能性がある「個性的ビール」。
たとえば燻製系のおつまみには、燻製風味の富士桜高原麦酒 ラオホが好相性です。香りや味わいが似通ったもの同士を合わせるのがコツです。

おすすめのグラスは「タンブラーグラス」など直線系のグラス

燻製香が強いものは香りが開きすぎると飲みづらくなってしまうことも。「タンブラーグラス」や、ウイスキーのロックグラスのようなふくらみのないグラスで楽しんでみては?

⑦ウォッシュチーズと一緒に

Hazy IPA/伊勢角屋麦酒

ネコニヒキ/二軒茶屋餅角屋本店

「Hazy IPA」や「ネコニヒキ」はまるでオレンジジュースやトロピカルフルーツのような香りが華やかなフレーバーと滑らかな口当たりの良さが魅力です。非常にジューシーな味わいと香りを楽しむことができます。

存在感のあるビールなので、チョイスするおつまみは香りが強いものでないと負けてしまいます。見た目の濁り具合、ジューシーな味わい、強い香りをとことん堪能したいなら、おつまみを用意せずシンプルにビールだけを楽しむのもあり!

おすすめのグラスは「ボルドーワイングラス」

ジューシーな香りと味わいを堪能しつつも、温度が伝わりづらい形状で。温度が上がりすぎたり、炭酸ガスが飛びすぎると飲み口を重く感じてしまうので、ブルゴーニュグラスより口径の狭い「ボルドーグラス」のようなものがおすすめです。

Photographed by Yo Noguchi

Ranking