カビを手軽に取り除けるお掃除アイテム、カビ取り剤。サッとスプレーして水で流すだけで、お風呂場のカビもカンタンにキレイにできますよ。カビが気になる梅雨の時期などにも重宝します。
カビ取り剤の種類はスプレーとジェルに分けられます。初心者は安くて日常使いしやすいスプレーがおすすめ。ジェルはポイント使い向きで、しっかり密着して奥深くまで作用します。カビ取り剤は、間違った使い方をすると非常に危険なので、注意点をしっかり理解しましょう。
今回は、住生活ジャーナリストの藤原千秋さんが、カビ取り剤の基礎知識をまるっと解説。選び方や注意点なども丁寧に説明しています。また、藤原さんにお聞きした選び方のポイントを参考に、おすすめのカビ取り剤を厳選してご紹介します。
住生活ジャーナリスト
藤原千秋(ふじわら・ちあき)さん
「家のなか」の事をテーマにウェブ、雑誌、新聞等で執筆。大手住宅メーカー営業職を経て2001年よりAllAboutガイド。主な著・監修書に『ズボラ主婦・フニワラさんの家事力アップでゆるゆるハッピー!!』(オレンジページ)、『この一冊ですべてがわかる! 家事のきほん新事典』(朝日新聞出版)等。
カビ取り剤の役割・注意点
カビ取り剤の役割
「カビ取り剤は、強力な酸化力でカビの細胞を色素ごと破壊することでカビを見えなくするのが主な役割。表面の色素が破壊されることで私たちの目ではカビを感知できなくなりますが、見えない部分にカビの菌糸が残ることで、また生えてきます。カビ取り剤を使ってもカビはゼロにはできないもの、というのが基本的な考え方です」
注意点
カビ取り剤は、間違った使い方をすると健康に悪影響を及ぼします。注意点を理解して使いましょう。
- 目より高い位置に使わない
- 指定されている場所以外で使わない
- 換気をよくする
- 酸性の洗剤と同時に使わない
- 一度に大量・長時間使わない
- 手袋・メガネ・マスクをつける
- 商品の説明を必ず読む
「カビ取り剤の主成分の次亜塩素酸塩(次亜塩素酸ナトリウム)は、カビを殺すときの化学反応などにより塩素ガスを発生させることがあります。塩素ガスを浴びたり吸ったりすると気持ちが悪くなったり、命に関わったりすることも。
『塩素系』と呼ばれる一般的なカビ取り剤は、基本的にお風呂場や洗面所、トイレの便器など、使用後に水で洗い流せる場所でしか使えません。お風呂場用のカビ取り剤を、お部屋の壁や窓の周りに使う人もどうやら多いようですが、こういう使い方は基本的にNGです。
お風呂場で使用するときは目より高い位置に使うのは控えるとよいでしょう。カビ取り剤が垂れて目に入ると失明する可能性があるので危険です。
また、酸性の洗剤と同時ないし連続的に使うと激しく塩素ガスが発生します。同時ではないから大丈夫だろうと、酸性の洗剤(お酢やクエン酸なども含む)を使ったすぐあとにカビ取り剤を使うと、排水溝のなかで混じることも。そうなると、塩素ガスが浴室内に充満して喉や目の痛み、吐き気などの症状がでる可能性があります。
商品の裏の説明書きにはとても大事なことが書いてあるので必ず読んでから使いましょう」
▼商品裏の説明書きの例
カビ取り剤の選び方
カビ取り剤の種類は「スプレー」「ジェル」に分けられます。両者の特性を知って選ぶとよいでしょう。
スプレー:広範囲に使える。価格が安く、初心者向き

スプレーは、吹きかけて使います。お風呂場の壁面など広範囲な場所に向いています。液体に近い成分で、垂れやすいのがデメリット。
ジェル:垂れずに密着。中級者~上級者向き

ジェルタイプは、チューブ状の容器に入っているものが多く、細かい部分にも塗りやすいです。液だれしにくく、成分が長く密着するので、頑固なカビも落としやすいです。
「スプレーはすすぎが楽で、価格が安いので初心者にもおすすめ。成分が、液体に近いので目に入りやすかったり、服につきやすかったりするのがデメリット。
ジェルは、垂れにくいので長時間カビにへばりつく分だけ、奥深くまで作用するのがメリット。スプレーは水をかけるだけでカンタンに成分が落ちますが、ジェルだと成分が残るのでブラシなどでこすり落とす必要があります。
また、ジェルは時間が経つとどこに塗ったかわからなくなり、うまくすすげないことも。ジェルは高価なので、ピンポイントで使うのがおすすめ。掃除中級者から上級者向けですね。
こだわりのあるカビ取りをしたい人でなければ、スプレータイプのなかでも、機能性がシンプルなメジャーな商品を選ぶのがおすすめ。安価で日常使いしやすいですよ」
・スプレーだけでもカビ取りはできる?
広範囲に使えるスプレーと、ピンポイント使いに向いているジェル。スプレーとジェルは両方揃えて使い分けるのが必須なのでしょうか。
「タイルや目地に奥深く入り込んだカビには、ジェルのほうが向いています。ただスプレーで1回やって落ちなくても、3日後にもスプレーして水で流すことを繰り返せば、概ね3~4回でカビは消えるでしょう。スプレーだけでも、十分にカビ取りはできますよ」
・業務用のカビ取り剤とは?
「業務用のカビ取り剤は、次亜塩素酸ナトリウムの濃度が高く、効果が強力な傾向にあります。その分、危険性も高いので、上級者向けの商品です。なかには、量が多いものが業務用と称されることも」
カビ取り剤おすすめ7選
ここからはカビ取り剤のおすすめ商品をスプレー・ジェルに分けてご紹介。藤原さんにお聞きした選び方のポイントや、Amazon・楽天の人気ランキングなどを参考に厳選しました。
スプレータイプのカビ取り剤おすすめ4選
ジョンソン カビキラー 本体

カビ取り剤の超定番!安価で日常的に使いやすい
カビ取り剤の大人気ロングセラー商品。価格が安く、日常的に使いやすいです。初心者におすすめの一品。
効果にも定評があります。「独自の強力浸透成分」配合で、カビの根の奥まで浸透し、ゴムパッキンなどに生えたカビもしっかり落とします。ピンクのヌメリにも効果を発揮。
お風呂場の壁面だけでなく、洗面器・イス・フタ・シャワーホースにも使用可能。一度使えば、30日間新たな黒カビをみなくてすむことが期待できます。
スプレーのカビ取り剤をお風呂場の壁面に使ってみました。スプレーを振りかけて、5分待ってシャワーで洗い流すだけで、カビはかなりキレイに取れました。
▼Before
▼After
レック 激落ちくん GN黒カビくんカビとり泡スプレー

液だれのしにくさに定評のあるスプレー
スプレータイプのなかでは液だれがしにくいと評判。泡が密着しやすく、落とすのが難しい黒カビも除去しやすいです。
お風呂場の壁・床・排水溝・目地・パッキンなどに使えます。詰め替えがカンタンなのも魅力。スプレーヘッドを、新しい詰め方ボトルに挿すだけで交換ができます。
茂木和哉 茂木和哉カビとりジェルスプレー 320ml

垂れにくく広範囲に使える!テレビ・SNSで話題のジェルスプレー
洗剤のエキスパートの茂木和哉さんが手掛けた一品。ジェルとスプレーのいいとこ取りをしたジェルスプレーのカビ取り剤です。
スプレーで広範囲にまけて、ジェルのようにピタッと張り付いて垂れにくいのが魅力。しっかり密着して、タイルの頑固な黒カビも落としやすいです。
使い方もカンタンで、カビにスプレーして15〜30分後にシャワーで流すだけ。
コパ・コーポレーション スパイダージェル

液だれしにくい!業務用の高濃度カビ取り剤
強力な洗浄成分を配合した、頑固なカビも落としやすい風呂用カビ取り剤。
スプレーした瞬間にジェルになる特殊な成分を採用。広範囲へのまきやすさ、汚れへの密着力の両方を兼ね備えた1本。
TVでも多数紹介されている人気の商品。濃度が高いので、説明書をしっかり読んで使うとよいでしょう。
ジェルタイプのカビ取り剤おすすめ3選
ジョンソン ゴムパッキン用カビキラー

ゴムパッキン用カビキラー!安価で使えるジェルタイプ
リーズナブルなジェルのカビキラー。粘着ジェルがしっかり密着し、浴室のゴムパッキンのカビをキレイに落とします。垂れずに使えるので、タイル目地や扉のゴムパッキン、洗面台のつなぎ目などにも使用可能。
ペンのように使えるので、細かい場所にも塗りやすいですよ。ピンポイント使いしたい人にも向いています。
激落ち 黒カビくん カビとりジェル 100g

色付きで流し忘れの心配なし!刺激臭を抑えたタイプ
ピンクの色付きなので、塗り漏れや流し忘れを防止できるのが魅力。密着度が高く、黒カビもしっかり落ちます。ノズルも長めで使いやすいです
カビ取り剤に特有の刺激臭が抑えられているので、ニオイが苦手な人も安心。浴室内のゴムパッキンだけでなく、シリコンコーキング・タイル目地・シャワーカーテン・浴室小物にも使えますよ。
ウエキ カビトルデスPRO

密着力が高いと評判!防カビ効果が約1か月
やや高価ですが、防カビ剤が含まれており、約1か月間防カビ効果が持続。密着力が高く、頑固なカビにも強力に作用します。
赤い色付きで塗った場所がわかるので、洗い流し残しをしなくてすみますよ。低刺激臭タイプで、鼻にツンとくるニオイが抑えられています。
タイルの目地や窓枠のシリコンに生えたカビを、しっかり落としたい人向き。
Q&A|使い方・生やさないコツなど
Q.カビ取り剤の使い方のコツは?
A.「基本的な使い方はカンタンで、カビにスプレーして商品指定の時間に合わせて放置したあと、シャワーで洗い流すだけです。
1日でカビをすべて取ろうとすると、カビを除去したときに発生する塩素ガスをたくさん吸うことになるので、体調が悪くなりできなくなることも。
つるつるした場所の表面に生えたカビは、ブラシでこすって水で洗い流すだけでも落ちますが、カビの胞子が飛散して結果的にカビが増えることも。そのためカビ取り剤でカビを殺してから、こすり洗いしたほうがいいです。飛び散って目に入る可能性があるので、カビ取り剤の上からゴシゴシするのはNGですよ。
基本的に手袋・マスク・メガネは必須。しぶきを吸うと鼻や喉が痛むのでマスクをしてください。素手で触るのはNGなので手袋をしましょう。メガネは普通のものでもよいので、目に入るのを防ぐために極力かけてください。濃い色の洋服にカビ取り剤がつくと色が抜けてしまうので注意が必要」
Q.カビを掃除するタイミングは?
A.「放置したら増える一方なので、見つけたら即除去してください。カビは目に見えるまで育つのに時間がかかるので、すぐに対処したらカビはそこまで増えません。目地や排水溝などのわかりやすい場所だけでなく、シャンプーボトルの周辺や、浴槽のフタの隙間などのカビも、すぐに除去していくのが大切。
頑固なカビは、カビ取りをしてもカビが少し残ってしまうことも。そのような場合は、3日後にまたカビ取りの作業をするとよいでしょう。何回か繰り返すとじわじわ効果がでますよ」
Q.カビを生やさないコツは?
A.「カビは完全には除去できませんが、派手に生やさないことはできます。お風呂の掃除はこまめにやるとよいでしょう。
お部屋にカビを生やさないようにするには、加湿しすぎず、適切に換気することが大切。24時間換気扇を切らないで空気を循環させる、観葉植物を置かないなどの対策が有効です」
Q.カビ取り剤と防カビ剤との使い分け方は?
A.「防カビ剤はカビを落としてから使うとよいでしょう。くん煙の防カビ剤なら、カビ取り剤でキレイにしてから、乾燥した状態で使うと長期間効果を発揮します」
Q.お風呂の天井のカビの取り方は?
A.「カビ取り剤が目に入ると危険です。目より高い位置は消毒用エタノールを含ませたぼろ布などで拭き掃除するのが安全。消毒用のエタノールは揮発するのが早いため、塗り広げるのが難しい場合は手指用の消毒用ジェルを使うのもよいでしょう」
Q.カビ取り剤を使うのが怖い人はどうすればいい?
A.「カビを生えにくくする成分が添加されているお風呂用の洗剤は、比較的安全性が高いです。カビ取り剤は怖くて使いたくないという方や、赤ちゃんやペットがいるご家庭の人は検討してみるとよいでしょう」
Q.カビ取り剤の使用期限は?
A.「カビ取り剤は時間経過とともに、中身が劣化して効果がなくなっていきます。そのため、短期間で使い切るのがベター。半年以内を目安に使い切りましょう。カビの勢いが激しくなる梅雨時などに、ちょこちょこカビ取りを繰り返す使い方がおすすめです」
Q.お布団のカビを増やさないコツは?
A.「週に1回お布団を干して、シーツを洗う。とにかく気をつけるのが、加湿器の使いすぎ。冬場に加湿しすぎて、結露で濡れた窓のまわりに黒いカビが生えることも。
布のカビには、お風呂場で使われるような塩素系のカビ取り剤は当然使えません。布に生えたカビを取るのは非常に難しいので、増やさないように対策することが大切」
Q.お部屋の壁にカビが生えたらどうすればいい?
A.「お部屋の壁や窓の内側、押入れの中に生えたカビには消毒用エタノールを使うのがおすすめ。消毒用エタノールで拭いても、黒い色は抜けませんが、カビの量を増やさなくする効果はあります。
そもそもカビを増やさないことが大切なので、湿気が過剰になる洗濯物の部屋干しは寝室や和室などでしないほうがよいでしょう」