モヒートやラムコークなどのカクテルでおなじみのラム酒。ブームになっているウイスキーの次に飲んでみたいお酒として、気になっている人も多いようです。
今回は東京・吉祥寺のラム酒専門バー「SCREW DRIVER」の店長、高橋彩子さんに外さないラム酒の選び方や初心者でも飲みやすいおすすめ銘柄を教えてもらいました。
「ラムは度数が高いこともあって挑戦しにくいと思われがちですが、他のスピリッツに比べると『まるい酒質』や『やわらかな甘み』が特長。
まろやかで飲みやすい銘柄も数多くあります。1本1,000円~2,000円台のリーズナブルな商品もあり、1本で何通りもの飲み方が楽しめるので、ある意味高コスパなお酒ですよ」
この記事では、初心者に絶対おすすめの入門ラム酒2本をまずはご紹介。さらに、ソーダ割りやロックなど飲み方に合わせたおすすめ銘柄などもセレクトしました。ラム酒の世界に足を踏み入れてみませんか?
高橋彩子さん
バーテンダー。日本ラム協会認定ラム・コンシェルジュ。常時600本のラインナップを誇るラム酒専門バー「SCREW DRIVER」店長。日本で唯一のウイスキーとスピリッツの品評会「東京ウイスキー&スピリッツ コンペティション」審査員も務める。各種アウトドアイベントへのバー出店やラムのワークショップ開催などを通じて、ラムの魅力を広めるべく活動中。
SCREW DRIVER
https://screw-driver.com/bar/
ラム酒の選び方
①【宗主国】で選ぶ
②【製法】で選ぶ
③【熟成度】で選ぶ
飲み方別・おすすめラム酒14選
【ストレート】におすすめ
【ソーダ割り】におすすめ
【ロック】におすすめ
【モヒート】におすすめ
【ラムコーク】におすすめ
【最初の1本はコレ!】飲みやすいラム酒2選
これからラム酒を知っていきたいという人におすすめしたい2本を、まずはご紹介。どちらもアルコール感がきつすぎず、角がとれたまろやかな味わいで飲みやすい銘柄です。
①バカルディ|エイト
飲みやすくてコスパ最強。ファーストラムとして圧倒的におすすめ!
美味しいラム酒を飲んでみたいという全ての初心者におすすめしたいのが、バカルディ エイトです。
スムースなのに複雑さのあるバランスのとれた味わいで、とても飲みやすく最初の1本におすすめです。
8年熟成されているので樽感(樽の香り)もあり、普段ウイスキーを飲んでいる人にもおすすめできますよ。『ラム酒ってこんなに美味しいんだ』と思ってもらえるはず。
他のダークラムと比べてもコスパが非常に良いので、デイリーに楽しみやすいところも魅力です。
「東京ウイスキー&スピリッツ コンペティション」にて2019年と2020年に連続して金賞を受賞し、高く評価されています。どんな飲み方でも美味しい「万能タイプ」であることもポイント。買ったはいいけど飲みきれなかったということも避けられます。
初心者から上級者まで気軽に楽しめるラム酒なので、こちらを足がかりにしてもっと甘いもの、すっきりしたもの、熟成されたものなど、好みのラム酒を探求していくとよいでしょう。
宗主国 | スペイン系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
②ディプロマティコ|リゼルヴァ イクスクルーシヴァ
「お酒はあまり飲まない」という人にもおすすめしたい、まろやかで上品な逸品
入門編としておすすめしたいもう1本は、ここ数年で人気が上昇しているメーカー、ディプロマティコのラム酒。
まろやかで、甘みも上品。アルコールの角がとれているので、普段お酒を飲まない方にも「飲みやすい」「美味しい」と気に入っていただけることが多い銘柄です。
樽感も感じられてバランスもいいバカルディ エイトは、どちらかというとお酒好きな人向き。対してディプロマティコは、ラムらしいまるさと柔らかい甘みがあり、普段あまりお酒を飲まないという人でも飲みやすいのが特徴です。
宗主国 | スペイン系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | — |
アルコール度数 | 40度 |
▼「買っても飲みきれない?」と心配な方は、こちらをチェック
【コラム】プロがリアルにやってる6通りの楽しみ方。買っても飲みきれない人必見!
ラム酒とは?
Image: Shutterstock
ラム酒はサトウキビを原料とする蒸留酒。ジャマイカ、プエルトリコ、キューバなど中米のお酒というイメージがありますが、世界中で作られていて、4万銘柄以上存在すると言われています。
ラム酒の選び方
では、4万銘柄もある中から、好みの1本をどう選べばいいのでしょうか?高橋さんによれば、選ぶ際の注目ポイントは次の3つ。
②製法
③熟成度
全てを網羅して把握していくというよりも、どれか1つを足がかりにして選んでいくのがわかりやすくおすすめだそう。
①宗主国で選ぶ:お酒初心者向け
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ラム酒は産地ではなく、かつて産地を支配していた宗主国によって味わいの特徴が分類できます。
▼宗主国による3つの分類
宗主国で分類すると、ラム酒はイギリス系、スペイン系、フランス系の3つに大別でき、それぞれの国を代表するお酒の特徴が反映された味わいを持っています。
たとえばイギリス系のラムはスコッチウイスキーの製造技術などを用いて造られるので、しっかりと重厚感のある味わいとスモーキーな香りが楽しめるラムが多い傾向があります。
初心者は飲みやすいスペイン系から始めるのがおすすめ。記事の冒頭で紹介した2銘柄もスペイン系のラム酒です。フランス系のラム酒は豊かな香りや味わいの変化が楽しめるので、ストレートで飲むのがおすすめです。
・イギリス系
国を代表する酒 | スコッチウイスキー |
ラムの特徴 | 樽の香り、熟成感、円熟感が感じられる。重厚感がある。ウイスキーが好きな人にも好評。 |
・スペイン系
国を代表する酒 | シェリー |
ラムの特徴 | まろやかで奥行きのある甘み。初心者にもおすすめ。 |
・フランス系
国を代表する酒 | コニャック、ワイン |
ラムの特徴 | 上品でエレガント。サトウキビそのものを感じる、芳醇で豊かな香りが特徴。 |
②製法で選ぶ:お酒が好きな人向け
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①の宗主国に比べてややマニアックなのが、製法による選び方。普段からよくお酒を飲んでいて、お酒の製法にも興味がある人におすすめの選び方です。
製法には3タイプありますが、違いは原料となるサトウキビの扱い。絞りたてのサトウキビジュースをそのまま発酵させるか、糖蜜やシロップにしてから発酵させるかの違いです。
出典:日本ラム協会著『ラム酒大全』誠文堂新光社
①トラディショナル:一番クセが少ない
ラム酒の9割がこの製法。「糖蜜」を発酵させて作ります。糖蜜はサトウキビジュースを加熱・濃縮してできる糖液を遠心分離機にかけ、砂糖の結晶を取り出した際に残るものです。
②アグリコール:一番フレッシュで青い
サトウキビジュースをそのまま発酵させて作ります。サトウキビジュースは長期保存できないため、サトウキビの収穫時期にしかできない製法で、サトウキビ由来の青い風味が残る香り高いラム酒が多いことが特徴。
「好き嫌いの分かれる通好みの味。最初は苦手と感じたけれどじわじわと良さがわかって、最終的には虜になる人も多いです」
③ハイテストモラセス:①と②のハイブリッド式
サトウキビジュースを煮詰めたシロップを発酵させて作ります。
シロップはトラディショナル製法と異なり、砂糖の結晶を取り出すことなくサトウキビジュース100%で作るため、糖度が70~80%と高くなります。
糖分は発酵する際に酵母の餌となるので、糖度の違いは発酵の度合いに関わってきます。糖度の高いシロップを使ったハイテストモラセス製法のラム酒は、トラディショナル製法のラム酒とは異なる、ひとクセある味わいに。
アグリコールと同じく、サトウキビ由来の青い風味も残した味わい深さも特徴です。
③熟成度で選ぶ:ウイスキーが好きな人向け
Image: Shutterstock
ラム酒はサトウキビジュースを発酵・蒸留して作られますが、最後に「熟成」を経て完成します。熟成は味わいに大きく影響を与える要素で、短ければ軽くてクリアな口当たりになり、長いほど熟成感や樽感(樽の香り)が感じられ、味わいにも深みが出てきます。
熟成度は、熟成年数のこと。熟成するほど色が濃くなるラム酒の色になぞらえて、ホワイト・ゴールド・ダークの3つに分類されます。
・ホワイト
熟成期間 | 樽熟成はせず、ステンレスタンクで3ヵ月から1年未満寝かせる。無色透明。 |
特徴 | 軽くフレッシュな口当たり。カクテルに向く。 |
・ゴールド
熟成期間 | 大樽または、バーボン樽などで3年未満の熟成。 |
特徴 | ホワイトラムのフレッシュさを残しつつ、樽感も少し感じられる。まろやか。 |
・ダーク
熟成期間 | バーボン樽などで3年以上の熟成。 |
特徴 | 熟成期間が長いほど熟成感や樽感(樽の香り)が出て、味わいにも深みが出る。 |
普段、ウイスキーで熟成感や樽感を楽しんでいる人は、ゴールドとダークを飲み比べたり、ダークの中でも熟成させた年数違いで飲み比べるなどして、熟成度の違いを楽しんでみてください。
スコッチウイスキーは最低3年熟成させていることが必須条件ですが、ラムには熟成ナシの『ホワイト』や3年未満熟成の『ゴールド』があります。ウイスキーにはない分類なので、特にウイスキー好きの方には、未熟成ならではの軽やかな味わいを新鮮な感覚で楽しんでいただきたいですね。
一度は飲みたい、5つの王道メーカー
ラム酒の王道メーカーは主に5つ。主要メーカーの味わいを知りたい人は飲み比べてみてください。
バカルディ
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バカルディはキューバで生まれ、現在は本社をバミューダ諸島のハミルトンに置く、ラム酒のメーカーの中でも一番のビッグカンパニー。
ホワイトラムから長期熟成ラムまで種類豊富で、高コスパなのも特徴。価格面でも味わいの面でも初心者から飲みやすいものが多く揃っています。
▼バカルディのラム酒
アプルトン
Image: Shutterstock
ラム酒といえばジャマイカ! というイメージがある人も多いと思いますが、そんなジャマイカのラムキングがアプルトン。
歴史が古く、ビンテージものなども出ています。バカルディと同様種類が豊富なので、飲み比べをする楽しさも。
▼アプルトンのラム酒
ロンサカパ
Image: Shutterstock
グアテマラのラム酒メーカー。洗練されたボトルやまろやかで甘みが印象的な銘柄。とても飲みやすいので、ラム酒専門ではないバーやカフェなどでも置いてあることが多いです。
もしかしたらバカルディの次に飲んだ事がある人が多いかもしれないラム酒。
▼ロンサカパのラム酒
ディプロマティコ
Image: Shutterstock
ベネズエラのラム酒メーカー。もし王道メーカーを3つに絞るならバカルディ、アプルトン、ディプロマティコの3つになります。
ラムらしい柔らかな甘さが特徴的で、お酒を飲み慣れていない人にも好評。絶妙な甘さのバランスとまろやかな味わいは、普段はウイスキーなどドライなお酒を飲むことが多い人でも「甘すぎる」と感じることなく、美味しく飲めるでしょう。
▼ディプロマティコのラム酒
マウントゲイ

東カリブ海に浮かぶ島国、バルバドスのラム酒メーカー。最古のラム酒蒸留所だと言われています。
宗主国で言うとイギリス系で、王道メーカーの中ではウイスキーが好きな人に一番好まれるテイスト。コスパもよく、時々数量限定で出る熟成ボトルも人気です。
▼マウントゲイのラム酒
初心者向け・おすすめラム酒3選
高橋さんに初心者向けで飲みやすいラム酒を3本選んでいただきました。冒頭で紹介した鉄板ラム酒2選に加えて、初心者にはこちらもおすすめ。
とても飲みやすい1本、王道の味わいを知る1本、「クセ」を味わう1本の3種類。紹介順に飲めば、ラム酒初心者から中級者へと進めますよ。
①ドンパパ|7年
普段お酒を飲まない人でもすいっと飲める、甘くクセになるラム酒

最初に紹介するのは、この記事で紹介するラム酒のなかで一番甘みがあるという1本。ドンパパにしか出せない、甘酸っぱく乳酸のようなミルキーな味わいも手伝って、非常に飲みやすいのが特徴です。
甘くてリキュールのような感覚で飲めるので、普段お酒を飲まない方でも飲みやすいはず。「こんなに強いお酒、初めて美味しく飲めた!」というお客様も多いです。
他にはない非常に特徴的な味と香りなので、オーソドックスなラムの味わいとは少し違いますが、「飲みやすさ」で言えば突出している1本。
宗主国 | — ※フィリピンで生産 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
②アプルトン|エステート 12年 レアカスク
スムースかつ樽感のある、ジャマイカの王道ラム酒

ジャマイカの、王道中の王道のラム。冒頭で紹介したバカルディ エイトよりも軽い口当たりです。甘みが得意でなくすっきりとしたドライめなお酒が好きな人はこちらがおすすめ。
ジャマイカのラム酒の特徴は、香ばしい樽のような香りと熟成感、円熟感です。ウイスキーが持つ樽香に近い部分があるので、普段からよくウイスキーを飲む人には飲みやすいと思います。
また、ウイスキーと比較すると価格が低めなので、この値段でこの円熟感ならウイスキー好きにとっては「コスパがいい」と感じられるかも。
宗主国 | イギリス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 43度 |
③デパズ|プランテーション
青っぽい「クセ」をじわじわ味わう。ラムの世界を広げる1本

冒頭で紹介したラム酒2銘柄など、スタンダードなラム酒を味わった次のステップにおすすめなのがデパズ プランテーション。
サトウキビジュースをそのまま発酵させて作るアグリコールラムなので、サトウキビ本来の香り高さとエレガントな味わいが楽しめます。
最初のひと口から「甘い!飲みやすい!」と感じるのではなく、グラスで静かに香りを嗅いで、ゆっくと味わいながら飲むうちに、じわじわとその美味しさがわかってくるタイプのラム酒。
このクセの部分が美味しいと感じられるようになったら、ラム酒の世界がさらに広がります。
宗主国 | フランス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | アグリコール |
アルコール度数 | 45度 |

ラム酒は買っても飲みきれないかもと購入を躊躇しがちですが、「一度開栓しても保存が効くし、飲み方は何通りもありますよ!」と高橋さん。
実際によくやるというキャンプを例に、飲み方アイデアを教えてもらいました。1本でいろんな飲み方を楽しむなら、万能タイプの「バカルディ エイト」がおすすめです。
13:00 ソーダ割り
キャンプ場に到着し、タープやテントの設営を始める前にみんなで乾杯! 日中の暑い時間帯は、ソーダ割りにしてビールのように楽しみましょう。
15:00 モヒート・ラムコーク
設営が終わってひと息。これからお酒を楽しもう、という始まりのタイミングにはモヒートやラムコークがぴったりです。
19:00 ロック・ストレート
日が暮れて、焚き火を眺めながらゆったりと過ごすひとときには、ロックやストレートで。ラム酒の樽感や熟成感を感じながらグラスを傾けます。
22:00 ホットバタードラム
最後はお湯割りにして、蜂蜜とバターを入れるカクテル「ホットバタードラム」に。暖かい牛乳で割って、蜂蜜を垂らしても。
飲み方別・おすすめラム酒14選
ラム酒はストレート、ソーダ割り、ロック、カクテルなどさまざまな飲み方で楽めるお酒。そこで、「この飲み方をするなら、このラム酒!」という飲み方別のおすすめを高橋さんに教えてもらいました。
【ストレート】におすすめのラム酒
Image: Shutterstock
ストレートは、ラム酒の香りや味わいとじっくり向き合える飲み方。熟成年数が比較的長く、複雑な味わいを持つラムがおすすめです。冷やすと香りを感じにくくなるため、「常温」で味わって。
▼ストレートを120%堪能する、飲み方テクニック

スニフターグラスやテイスティンググラスと呼ばれるグラスを使うのがおすすめ。底は広がり、飲み口はすぼまっている形状で香りがグラス内にたまるため、より香りを感じやすくなります。なければ、できるだけ小さなグラスを選びラム酒と鼻の距離が近くなるようにして。
①アプルトン|エステート 21年
ジャマイカ最古のラムメーカーが誇る、長期熟成のダークラム

21年以上長期熟成させた、アプルトンブランドのフラッグシップ。複雑な香りとスムースな飲み口が魅力で、口に含むと様々な味わいが感じられる余韻の長さが特徴です。
ジャマイカのラムは「21年」と書いてあれば最低21年熟成されているという意味。アプルトン エステート 21年は21~30年熟成されたラム酒がブレンドされているので、書いてある年数よりもさらに芳醇な熟成感が楽しめます。
小さな樽で少量生産される希少なラム酒。樽が小さいということは、それだけ樽の影響を受けやすく、より香りが芳醇に、色が琥珀色に変化しやすいのが特徴。樽が多い分だけ手間もコストもかかるので、こだわりが感じられます。
複雑な香りは、ゆっくり時間をかけて熟成された原酒をブレンドして作られるエステート 21年だからこそ。
一口含むと樽由来のナッツ、コーヒー、糖蜜、ジンジャー、ブラックペッパーなどいくつもの味が層を成して現れます。じっくり向き合って飲みたい、まさにストレート向きのラム酒です。
宗主国 | イギリス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 43度 |
②ディクタドール|XO インソレント
バニラの香りと強い甘み。芳醇な味わいの熟成ラム

バニラや蜂蜜のような香りが感じられ、ひと口飲んで「うまい!」と言いたくなるコロンビアのラム酒。
「アプルトン エステート 21年」とは対照的に甘みの強いラムで、バニラや蜂蜜のほか、チョコレートやキャラメル、コロンビアコーヒーの香りも感じられます。
25~30年熟成されていて、非常に長い余韻が特徴。いつまでも口の中で味わっていたいラム酒です。
サトウキビジュースの一番搾りだけを使用して、ウイスキーと同じ単式蒸留器で蒸留し、シェリーやポートワインが入っていた樽で熟成させるなど、製造にもこだわりがこめられています。
宗主国 | スペイン系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | ハイテストモラセス |
アルコール度数 | 40度 |
【ソーダ割り】におすすめのラム酒
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スッキリ爽やかで、度数を下げることで飲みやすくなるソーダ割り。ソーダで割るとラム酒の香りや味わいが薄くなってしまいがちなので、香りが強く特徴的なものがおすすめです。また、甘いタイプのラム酒はソーダで割ると味がぼんやりしがち。甘みのないタイプのほうが美味しく飲めます。
▼バーテンダー直伝、美味しいソーダ割りの極意
グラスは薄い飲み口のタンブラーがおすすめ。ソーダ割りの味をダイレクトに感じられます。氷をグラス一杯に入れたのち、ラム1:ソーダ4の割合で注ぎます。
ダークラムは何も絞らずに、ホワイトラムはくし形や輪切りにしたライムを入れて飲むのもおすすめです。
①ディロン|トレ ヴューラム VSOP
リンゴのフレーバーが華やか。乾杯にもぴったりの人気ラム酒

カリブ海のフランス領マルティニークのラム酒。ソーダ割りにするとリンゴのようなエレガントなフレーバーが開く華やかな1本です。
とにかく香りがよく、上品な味わいで気に入っていただけることが多い、人気のラム酒です。オーク樽で熟成された奥深い風味もあり、コニャックを越えると称賛されることも。
フランス政府からA.O.C.(原産地統制呼称法)に唯一認定されていて、フランスでは三つ星以上のレストランだけで飲める、最高級のラム酒です。
宗主国 | フランス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | アグリコール |
アルコール度数 | 43度 |
②マウントゲイ|ブラックバレル ダブル カスク ブレンド
スモーキーなアロマが力強い、骨太なラム酒

王道ブランドでも紹介したマウントゲイのラム酒。ソーダで割っても焦げ感がしっかり残り、飲み応えのあるソーダ割りになります。
樽を真っ黒に焦がしてからラム酒を入れて熟成させているので、ほどよい香ばしさが感じられる、ラム酒では珍しい1本です。しっかりと飲みごたえのある味わいを好む方に人気。
宗主国 | イギリス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 43度 |
③イエラム|サンタマリア ゴールド
芳醇な香りで、沖縄料理とも合う国産ラム

沖縄本島の北部に浮かぶ伊江島で作られている国産ラムで、伊江島産のサトウキビだけを原料として使用。ソーダ割りにすると、角のとれた丸いアルコール感と柔らかい甘みが引き立ちます。
日本で作られているということもあって、焼酎や泡盛のような香りが楽しめるラム。
ロックでももちろん美味しいですが、ソーダ割りにすると芳醇な香りがより引き立ち、味わいもすっきりとして沖縄料理とも相性抜群です。
宗主国 | — ※日本で生産 |
熟成度 | ゴールド |
製法 | ハイテストモラセス |
アルコール度数 | 37度 |
【ロック】におすすめのラム酒
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冷やすこと、水を加えることでアルコールの角がとれ、飲みやすくなるロック。どこかのタイミングで急に香りが開くこともあり、少し時間をかけて楽しめる飲み方です。
ラム酒自体にパワーがあり、氷が溶けて水っぽさが増しても味がぼやけないものがロック向き。
▼ラムのポテンシャルを引き出す、ロックの楽しみ方
飲むときは、ロックグラスがおすすめ。氷をグラスに入れ、30ml(大さじ2杯)を目安に入れます。
イギリス系には大ぶりのグラス、スペイン系は小ぶり、フランス系は薄はりの繊細なグラスを使うと、それぞれの特徴がより引き立ちます。
①エルドラド|12年 デメララ
どっしりとした樽の香ばしい香りと黒糖っぽさが特徴の、古き良きラムの代表格

南米ガイアナの人気ラム酒。黒糖っぽさや、少しスモーキー感のある味わいです。
しっかりと太い味わいで、黒糖の甘み、蜂蜜の香り、スパイスの風味も感じられます。氷を入れて冷やすことで、黒糖っぽいまろやかな甘みが引き立ちます。
300年前と同じ製法で作られている、なめらかな舌触りの1本です。
宗主国 | イギリス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
②ナインリーヴズ|クリア
黒糖由来の華やかな甘い香りも感じられる、クリアなホワイトラム

滋賀県発の国産ラムで、サトウキビジュースを煮詰めたシロップをさらに煮詰めた、ブロック状の硬い黒糖を原料にして作られています。クリアかつ吟醸香のニュアンスを持つすっきりとした味わいが特徴。
ロックで飲むラム酒には熟成されたものを選ぶのが一般的ですが、ナインリーヴズのクリアは熟成されていないホワイトラムながら、ロックにおすすめしたい1本。繊細な味わいを楽しめます。
宗主国 | — ※日本で生産 |
熟成度 | ホワイト |
製法 | ハイテストモラセス(黒糖) |
アルコール度数 | 50度 |
③プランテーション|バルバドス XO
コニャックの名門が作る、フランス流の洗練されたラム酒

飲みやすい味わいで初心者にもおすすめできるロック向けのラム酒。コニャック作りの名門であるコニャック・フェラン社が手がけたラム酒のシリーズで、熟成が進んでいるのでストレートでも楽しめます。
バーボン樽由来のバニラやドライバナナの香りと、オーク樽由来のスパイシーな香りがブレンドされたとても良いバランスのラム酒。
ロックにすることで氷が溶けていくにつれて加水され、複雑な香りと味わいがよりまとまり、ゆっくりと変わる味わいの変化も楽しめます。
宗主国 | イギリス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
【モヒート】におすすめのラム酒
Image: Shutterstock
モヒートは、ミントの香りを邪魔しないホワイトラムをベースにするのが一般的ですが、熟成ラムもおすすめ。熟成によって醸し出される樽香・フルーツ香・フローラル香とミントの香りが溶け合い、複雑みのある美味しさに。
▼ラム専門店直伝! モヒートのレシピ
- グラスにミントの葉20枚程(ふわっとグラスに入れたときに1/3のあたりまで)、ラム40ml、ライムジュース10ml、さとうきびシロップ10mlを入れ、ペストルという道具やごますり棒などで潰す。
- 氷(できればクラッシュアイス)を入れ、ソーダを加えて軽く下から救い上げるように混ぜる。
- カットしたライムを絞り入れ、ミントを飾る。
①バカルディ|スペリオール
ライムやミントのニュアンスを持つ、モヒートにぴったりの1本

バカルディのホワイトラム、バカルディ スペリオール。角がなく飲みやすい味わいで、モヒートによく合います。
このラム酒はテイスティングをすると、ライムピールやスペアミントが感じられるというコメントが出てくるんです。ライムとミントはモヒートの材料でもあるので、相性は言わずもがな、というわけです。
メーカー側もカクテルに使われることを想定し、とてもスムースな味わいに仕上げているので、さまざまなカクテルに合わせやすい1本です。
宗主国 | スペイン系 |
熟成度 | ホワイト |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
②ハバナクラブ|3年
モヒート向けラム酒の大定番。ドライな味で大人っぽくなる

モヒートを作るならバカルディかハバナクラブか、といわれるくらい、モヒート向きのラム酒として有名なハバナクラブ 3年。
バカルディ スペリオールと比べるとドライなラム酒です。そのため、ハバナクラブ 3年でモヒートを作るなら、ミントはすっきりとしていて少し辛いペパーミントがおすすめ。
バカルディで作る場合は少し甘みのあるスペアミントを使うと相性◎ですよ。
宗主国 | スペイン系 |
熟成度 | ゴールド |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
③マツサレム|グランレゼルバ 15年
香りよく熟成感も味わえる、モヒート向けの熟成ラム

キューバで生まれ、現在はドミニカ共和国で作られているマツサレム グランレゼルバ 15年は、熟成されたダークラムです。
モヒートは透明なホワイトラムで作るものだと思われがちですが、熟成タイプのラムで作ると奥行のある味わいに仕上がって美味しいんです。
「マツサレム グランレゼルバ 15年」で作るモヒートは香りがよく、熟成感も味わえます。真夏よりも、暑さの残る秋の日にしっくりくるモヒートになりますよ。
宗主国 | スペイン系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | — |
アルコール度数 | 40度 |
【ラムコーク】におすすめのラム酒
Image: Shutterstock
たくさんのスパイスを使用して作られているコーラに、ラム酒の丸いアルコール感や樽の円熟感が加わると、相乗効果で味わいに奥行きが出ます。オイリーな食べ物と相性がいいので、BBQやピザなどと合わせるのがおすすめ。
▼ラム専門店直伝! ラムコークのレシピ
- グラスに氷をめいいっぱい入れて、ラム40mlを入れ、静かにコーラを注ぐ。
- くし形にカットしたライムを絞り入れ、軽く下から救い上げるように混ぜる。
①パッサーズ|ブリティッシュ ネイビー ラム
パワーあふれる複雑な味わいが特徴の、イギリス海軍御用達のラム

ドライフルーツやスパイス、キャラメルなどのしっかりした香りと濃い味が特徴。1970年代までイギリス海軍が兵隊に一日のご褒美として支給していた「ネイビーラム」を復刻したラム酒です。
風味豊かな香りとなめらかで深い味わいが楽しめるラム酒。イギリス海軍が様々な港に寄る度にラム酒を樽に注ぎ足していったことに由来し、今も色々な国のラム酒がブレンドされています。
飲み応えがあるので、コーラで割ってもラム酒のフレーバーがしっかりと感じられますよ。
宗主国 | イギリス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
②ウイリアムグラント&サンズ|カリビアン ラム セイラー ジェリー
天然のシナモンやバニラのフレーバーが、ラムコークをより深い味わいに

この記事で紹介している唯一のスパイスドラム。天然のスパイスがブレンドされています。
ラム酒自体にシナモンやバニラのフレーバーがついているので、同じようなフレーバーを持つコーラとの相性はばっちり。コーラの味わいやフレーバーをより引き立ててくれます。
宗主国 | — ※バージン諸島(アメリカ領)で生産 |
熟成度 | — |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
③ダモワゾー|ブラン
ハマる人はどっぷりハマる。青っぽいクセのあるラムコークに

サトウキビジュースをそのまま発酵させたアグリコールラム。サトウキビ由来の、青っぽく素朴な感じのクセがあります。
この独特な青っぽい味わいとコーラを掛け合わせると、通常のラムコークとは全く違う、玄人好みの味わいのラムコークになります。
「年齢を重ねて、若い頃のようにラムコークを飲まなくなった」という人に飲んでみてほしい新発見の一杯になりやすい味ですね。
宗主国 | フランス系 |
熟成度 | ホワイト |
製法 | アグリコール |
アルコール度数 | 50度 |
ラム酒を選んでいると、スパイスドラム、ラムリキュール、ラムパンチといった言葉を目にすることがあります。それぞれどのようなものなのでしょうか。
スパイスドラム
バニラやシナモン、ナツメグなどのスパイスをつけ込んだラム酒。ラム酒の味がまだ荒々しかった時代に、味を調えるために生まれたもの。アルコール度数も30%台と一般的なラム酒に比べて低く、複雑な香りも楽しめる。
ラムリキュール
ラム酒に加糖したリキュール。ココナッツやパイナップルなどの香りを加え、フレーバーをつけている。カクテルベースとして使用。
ラムパンチ
ラム酒にパイナップル、マンゴー、ココナッツを漬け込んだもの。日本の梅酒のようなイメージで、カリブでは市場で自家製のラムパンチが売られている。地の物や、季節のフルーツをお好みで漬け込んで自由に仕込めるのも魅力のひとつ。ロックやソーダ割りで飲む。
*番外編:お菓子作りにおすすめの3本
お菓子作り向きのラム酒は、お菓子が熱いうちに染みこませても風味が飛ばないような、香りが強く、味わいのしっかりしたタイプ。価格が手頃で入手しやすいものを中心に、高橋さんにおすすめを選んでいただきました。
①ネグリタ|ダーク
街の洋菓子店でも使われている、プロ仕様のダークラム

お菓子作りの定番ラム酒といえばこちらのネグリタ ダーク。街の洋菓子屋さんでもよく使われているラム酒です。
独特な磯の香りが特徴的。焼きたてのケーキに染みこませる事で、ふわっと香りを残し、バターやバニラの風味に上品な奥行きをもたせることができます。
ボルドーの銘菓として有名なカヌレ作りにもラムが不可欠ですが、カヌレ協会会長はネグリタ ラムを使ってこそ本物のカヌレであると推奨しているそうです。
ケーキに染みこませたり、カラメルに加えたり、レーズンをつけ込むといった用途に向いています。
宗主国 | フランス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | — |
アルコール度数 | 44度 |
②マイヤーズ|オリジナルダーク
手に入れやすくコスパもいい、お菓子作りの王道ラム酒

スーパーなどにも置いてあることの多いマイヤーズ オリジナルダーク。こちらもネグリタ ダークと同じく、お菓子作りに使われることの多いラム酒です。
ネグリタ ダークと似ていて、焼き菓子に染み込ませる事で風味豊かに仕上げることができます。比較的安価なので、たっぷり使いたいときにおすすめです。
ラムらしい丸いアルコール感と柔らかい甘みがあり、焼きたてのケーキに塗るのはもちろん、レーズンに漬け込んだり、生地に練りこんだりするのにおすすめです。
宗主国 | イギリス系 |
熟成度 | ダーク |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
③バカルディ|ブラック
焦げ感をプラスしたい時に使いたい

バカルディ社のダークラム、バカルディ ブラック。よく焦がした樽で熟成されたラム酒を使用しています。
さらりとしていて焦げ感が強く、フレーバーを感じ取りやすいラム酒です。
乳製品とも相性がいいので、カスタードクリームなど、クリーム系の用途に向いています。
宗主国 | スペイン系 |
熟成度 | 確認中 |
製法 | トラディショナル |
アルコール度数 | 40度 |
*深堀り解説:ラム酒の歴史について
砂糖の副産物として生み出されたラム酒の歴史は、砂糖の歴史と深い関わりが。どのようにしてラム酒は生まれ、広がっていったのか、少し深堀りして解説します。
▼ラム酒の歴史は、砂糖の歴史から始まる
ラム酒の歴史を知るには、まず砂糖の歴史から知る必要があります。15世紀ごろ、砂糖には高い価値がありました。そこでスペインをはじめとするヨーロッパ諸国は、砂糖の原料であるサトウキビ栽培に適した広大な土地を探し始めます。
▼コロンブスがカリブ海の島々を発見
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1492年にコロンブスが航海に出発し、カリブ海に浮かぶバハマのサン・サルバドル島やキューバ、イスパニョーラ島(現在のハイチとドミニカ共和国)などを次々と発見。
発見した島々がサトウキビ栽培に適した熱帯気候であったことから、コロンブスは1493年に行った2回目の航海でサトウキビの苗をイスパニョーラ島に持ち込み、移植します。
▼サトウキビ栽培と砂糖の生産が始まる
イスパニョーラ島で始まったサトウキビ栽培と砂糖の生産は、周辺のジャマイカ、キューバ、プエルトリコなどにもスペインの統治とともに拡大。その後、スペインに続きイギリス、フランスもカリブの島々に入植します。
▼ラム酒の誕生
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16世紀になると、砂糖の生産過程で取り除かれる「糖蜜」を発酵、蒸留させることでラム酒が誕生し、サトウキビのプランテーションで働く奴隷に配給され始めます。こうして生まれたラム酒は短期間で広まり、大西洋を横断する船乗りにも愛飲されるようになりました。
▼ラム酒が美味しく進化
お酒としては粗悪なものだったラム酒に転機が訪れたのは1693年のこと。カリブのマルティニーク島に渡った修道士が、フランス本国からコニャックの蒸留器と技士を持ち込み、コニャック造りと同じ製法でラム酒造りを始めました。その結果、ラム酒の品質は現在とほぼ同じレベルまで向上。
他の島々でもスペイン植民地ではシェリーやシェリーブランデー、イギリス植民地ではスコッチウイスキーの蒸留技術が持ち込まれ、砂糖とともに一級の貿易品として輸出されるようになりました。
▼ラム酒の味わいを分ける、宗主国
こうして植民地を支配していた宗主国であるフランス、スペイン、イギリスがそれぞれの国の代表的な酒造りの技術を持ち込んだ結果、ラム酒は宗主国によって味わいの傾向が分かれるようになったのです。
ちなみに宗主国とは、古くは従属させている他国に対して宗主権(外交の主権の一部)をもつ国のことを指しましたが、現在では植民地を所有している国などを宗主国と呼ぶこともあるため、本記事では後者の意味で宗主国という言葉を用いています。
参考文献:日本ラム協会著『ラム酒大全』誠文堂新光社、写真:アラタケンジ(最初の1枚と最後の1枚)