黒糖焼酎は飲んだことがあるけれど、「れんと」や「里の曙」など、有名な銘柄しか知らない…。世の中には、まだまだおいしい黒糖焼酎がたくさんあるのでは!?
今回は、焼酎専門店「焼酎ダイニングだけん」の店主・井上亮さんに、まだまだ知られざる美味しい黒糖焼酎を紹介してもらいました。地元限定のお酒も購入できるオンラインならではのラインナップです。
ソーダ割りやロックなどの飲み方別におすすめの銘柄のほか、スッキリした味わいが好きな人、甘い黒糖焼酎が飲みたい人など、好みに合わせた商品をピックアップします!
井上 亮さん
焼酎を250種類取り扱う「焼酎ダイニングだけん」の店主。焼酎利酒師、泡盛マイスター。月一回、蔵元を呼んで地元の食材とのペアリングイベントを行うほか、年に3〜4回は各地の蔵を訪れるなど、造り手との交流を大切にしている。
▼黒糖焼酎以外も気になる人は、こちらの記事をチェック
①黒糖焼酎ってどんなお酒?
原料や製法
黒糖焼酎の3つの定義
味の特徴
糖質やプリン体、カロリーは?
②プロが選ぶ! 飲み方別・おすすめ黒糖焼酎10選
【ハイボール(ソーダ割り)】おすすめ
【ロック】おすすめ
【水割り】おすすめ
【お湯割り】おすすめ
【変わり種】おすすめ
②プロが選ぶ! タイプ別・おすすめ黒糖焼酎8選
【スッキリ】おすすめ
【甘い】おすすめ
【レア】おすすめ
【個性派】おすすめ
黒糖焼酎ってどんなお酒?
原料や製法
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黒糖焼酎とは、サトウキビを絞ってできる黒糖と、米麹で作った焼酎のこと。
麹に水と酵母を加えて発酵させたもろみに、黒糖を加えてさらに発酵させ、その後に蒸留するという流れで作ります。
蒸留には、気圧を下げて低温で蒸留する減圧蒸留と、気圧はそのまま高温で蒸留する常圧蒸留の2種類があり、それぞれ味わいの特徴が異なります。
黒糖焼酎の3つの定義
Image: Shutterstock
「黒糖焼酎」は、法律によって、以下のように定義されています。
- 米麹を併用して仕込む
- 奄美群島区の管轄区域内のみで造られている
- 純黒糖のみで造られている
同じ黒糖を原料とした蒸留酒でも、麹を使わない場合はラムと呼ばれます。
また、管轄区以外で造られた場合や、純黒糖以外の黒糖で造られた場合は、「黒糖焼酎」とラベルに書くことはできないため、「黒糖酒」などと呼ばれるそうです。
黒糖焼酎の味の特徴
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黒糖と聞くと甘そうなイメージが浮かびますが、一般的な黒糖焼酎はどんな味がするのでしょうか?
「黒糖らしい甘い香りはしますが、焼酎なので味はそこまで甘いわけではありません。ほんのり苦味があって、香ばしいニュアンスのある焼酎です。甘い香りが強いと、なんとなく味わいも甘く感じられることはあります」
また、(さきほど説明した)蒸留方法によって味わいが大きく変わるのも特徴です。
「黒糖は蒸留方法によって味わいが大きく変わります。減圧蒸留のほうが、飲みやすくて、優しい甘味になります。常圧蒸留は、原料の味わいがしっかり引き出されているので、初めての人には少し重く感じられてしまうかもしれません
また、麹の種類によっても特徴が出ます。黒麹を使うとどっしり系、白麹はマイルド、黄麹はフルーティな味わいに仕上がります」
糖質やプリン体、カロリーは?
名前を見ると糖分が含まれているように思えてしまいますが、黒糖焼酎は本格焼酎なので、糖質やプリン体は含まれていません。
これは、発酵の過程で、糖分がアルコールに変換され、さらに蒸留によってアルコールと香りの部分だけを抽出しているから。
黒糖の甘味は感じられますが、糖質はゼロ。ダイエットをしたい人にはうれしいお酒です。
プロが選ぶ! 飲み方別・おすすめ黒糖焼酎10選
ここからは、井上さんおすすめの黒糖焼酎をランキング形式でご紹介。さらに、焼酎ビギナーである編集部がテイスティングをおこない、各商品にコメントしました。
【ハイボール(ソーダ割り)】おすすめ2選
奄美大島にしかわ酒造/ざわわ
スッキリ軽やか、飲みやすい!
さわやかな香りで、ソーダ割りにするとすっきり飲みやすい一本です。これは、白麹仕込み&減圧蒸留だから。
有名銘柄の『れんと』も焼酎に音楽を聞かせる『音響熟成』をおこなっていますが、こちらの焼酎は島唄を聞かせながら熟成しているそうです
▼編集部の試飲コメント
ソーダで割って飲むと、和梨のような爽やかな香りが。すっきりとしていますが、余韻のある甘さがあるので飲みごたえもあり、デイリーに楽しく飲めそう。
西平酒造/加那
樽の香りがあり、ハイボール感覚で味わえる
樽で熟成させているので、木の香りが溶け込んでいて、ソーダで割ると少しハイボールみたいになります。『ざわわ』と同じく減圧蒸留で飲みやすいですが、より味わい深さが欲しい人はこちらがおすすめです
▼編集部の試飲コメント
ソーダで割って飲むと、確かにハイボールのよう。井上さんの解説通り、ざわわよりも味に深さや複雑味があります。さつま揚げなど油分のある食べ物にぴったり。
※上記写真は25度のものですが、ソーダ割りには30度がおすすめです
【ロック】おすすめ2選
富田酒造場/龍宮蔵和水
薄めずスムースに飲める、低アルコールタイプ
アルコール度数15度という低アルコールの焼酎です。そのまま冷やして飲んでも日本酒と同じくらいの強さなんですが、氷を入れると、口あたりがスムースになります。
普通の焼酎を自分で15度まで薄めようとすると、味が薄まってしまいますが、蔵元が仕込み水で割ってくれているので、黒糖の甘味もしっかり味わえます
▼編集部の試飲コメント
「ざわわ」や「加那」とは明らかに方向性が違う味。洋酒の雰囲気があります。度数が低いぶん口当たりがよく飲みやすいのですが、黒糖の甘みがしっかり残るので満足感あり。
奄美酒類/黒奄美
黒糖焼酎らしい「王道」の味わい
こちらは、オーソドックスな焼酎らしい味わい深さがある商品。黒糖の風味もきちんと感じられつつ、キレ上がりがいいのでしつこくありません。『龍宮蔵和水』より通向きですね
▼編集部の試飲コメント
「龍宮蔵和水」に比べると度数も違うので、かなりどっしりとした印象です。アルコール感、甘み、サトウキビのような青い香りなど、「オーソドックスな黒糖焼酎」の味わいを体感しました。
【水割り】おすすめ2選
山田酒造/長雲
「優しい味」の代表選手。水割りで一層ふくよかに
ひと言でいうと、”優しい”黒糖焼酎。水で割ったとき、薄まらず、むしろ味が伸びてふくよかになるんです。製造の過程で麹をしっかり作っているから、黒糖の旨味を十分に引き出せるんですよね
▼編集部の試飲コメント
ストレートでも飲めるくらい優しい味わいです。水で割ると、ふくよかに口の中で広がる味や甘みが。強いお酒がちょっと苦手でも、ゆるゆる楽しめそうな1本。
原田酒造/三種の神氣 昇龍 40度(赤ラベル)
度数も樽香もまるでウイスキー!

仲のよいバーテンダーから勧められて飲んだ焼酎なんですが、バーテンダーが勧めるだけあって、ちょっとウイスキーみたいなニュアンスがあります。
樽熟成で、アルコール度数が40度というのもウイスキーのよう。水で割っても負けないので、好みの薄さに調整してみてください
【お湯割り】おすすめ2選
有村酒造/島有泉黒麹
蜜芋のようなやわらかな甘みと余韻
やわらかい甘味が芋焼酎のようで、初めて飲んだときは『こんな黒糖焼酎があるのか』と衝撃を受けました。仕込み水をわざわざ軟水器にかけているらしいんですが、ふわりとした甘味はお湯割りにぴったり。
もともと、奄美大島の与論島でしか流通していなかったんですが、最近はネットでも買えるようになったようです
▼編集部の試飲コメント
「おぉやさしい…」がお湯割りの第一印象。まろやかな口当たりで、蜜芋やはちみつのような余韻がふんわり残ります。
朝日酒造/朝日飛乃流
お湯割り好き以外にもおすすめの、まろやかな甘み
ほんのりフルーティな香りがする黒糖焼酎で、50度くらいのお湯割りにすると、ほどよいまろやかな甘みが楽しめます。
沸騰させたあと、2回ほどグラスを移し替えて冷ましたお湯で割るのがポイント。お湯割りをあまり飲まない人にも試していただきたいほど飲みやすいです
▼編集部の試飲コメント
薄めのお湯割りにすると、甘酒のような米麹の香りを感じました。やや華やかな甘みもあり、後味がきれいな印象。
【変わり種】おすすめ2選
【レモンサワー】弥生焼酎醸造所/まんこい
ソーダ+レモンで割って、日本一のレモンサワーに
樽貯蔵なので、ソーダで割るとハイボールみたいになって、レモンを絞るとキュッと引き締まります。蔵元が、『日本一おいしいレモンサワー』と謳っているほどおすすめの飲み方。甲類焼酎で作るのと比べて、黒糖の甘味がプラスされるので、味わい深くなりますよ!
▼編集部の試飲コメント
ハイボールのようではありますが、樽香が強すぎず口にそこまで香りが残らないのでスルッと飲めます。しっかりとした甘みも美味。
【パッションフルーツ】町田酒造/奄美の杜
南国フルーツのような果実感
パッションフルーツを半分に切って、そこに黒糖焼酎をそのまま注ぎ入れると……たまりません。『里の曙』の酒蔵の商品。奄美大島はパッションフルーツの名産地なんですが、さわやかな甘酸っぱさに南国気分を味わえます。
グラスにパッションフルーツを入れてソーダ割りにしてもOKです
▼編集部の試飲コメント
パッションフルーツは準備できなかったため、ソーダ割りに。桃のような果実感あり、トロピカルな雰囲気を感じました。
プロが選ぶ! タイプ別おすすめ黒糖焼酎8選
【スッキリ】おすすめ2選
新納酒造/をちみず
すっきりさわやか!ビギナー向きの飲みやすさ
私の中で”さわやか”といえば『をちみず』。黒糖らしい華やかなフルーティー感があって、ビギナーにも飲みやすいです。ロックや水割りでもおいしいですが、ソーダ割りがいちばんスッキリします
▼編集部の試飲コメント
黒糖焼酎らしい青々しさやアルコール感は控えめですっきり。確かにこれは初心者にも飲みやすそう。ベッコウ飴のような少し香ばしい甘みが口に残ります。
奄美大島酒造/じょうご
水質のよさを感じる、なめらかな口当たり
口あたりがとてもやわらかくて、すっと飲みやすい焼酎です。奄美大島にじょうご川という川があって、その水質のよさを詰め込んだような一品。おすすめは水割り。カラフルなパッケージも目を引きますよね
▼編集部の試飲コメント
マンゴーやパッションフルーツのような南国果実の印象を受けました。ボディ感もあります。をちみずほどではありませんが、飲みやすい!
【甘い】おすすめ2選
喜界島酒造/三年寝太蔵
熟成による骨太な甘みとやわらかさ
黒糖焼酎は、熟成させることで甘い香りが強く、やわらかくなります。こちらは、3年熟成の黒糖焼酎をベースに、5年から10年の古酒をブレンドしています。
ロックで飲んでほしいですが、アルコール度数が30度あるので、きついという人は水割りでも!
▼編集部の試飲コメント
第一印象は「ワイルド!」。30度あることによるキツさはありますが、嫌な感じではないので、じっくり向き合いたくなる1本。
西平本家/わのらむ
バニラ香+黒糖の甘みで、初心者にも飲みやすい
白麹で造り、樫樽で熟成させた黒糖焼酎と、黒麹で造った黒糖焼酎をブレンドしています。名前は”和のラム”という意味なんですが、樽貯蔵ならではのバニラ香と、黒糖の甘味のバランスが絶妙。
焼酎に飲み慣れていない人は水割り、味を楽しみたい人はロックで飲んでみてください
▼編集部の試飲コメント
やさしい甘さにニッコリしたくなる、親しみやすい味。初心者は水割りだとより飲みやすいですが、強すぎないのでロックでも楽しめました。
【レア】おすすめ2選
山田酒造/山田川
原料からこだわった限定750本の希少銘柄

「長雲」の酒蔵が、無農薬で自家栽培し、手刈りで収穫したサトウキビで仕込んだ黒糖焼酎。麹にも、地元のお米を使うというこだわりようで、製造量が年間750本しかないんです。レギュラーの『長雲』よりしっかりした味わいで、香ばしさはひかえめです
弥生焼酎醸造所/弥生原酒
食後にちびちび飲みたい樫樽熟成
バーで初めて飲んだときは、洋酒かと思うほどでした。原酒の古酒を樫樽で熟成させているので、ウイスキーのような感じで、食後にちびちび楽しめる逸品。
もともと、公式ECサイトでしか販売されていなかったもので、流通が限られているレアアイテムです
▼編集部の試飲コメント
ロックで飲むと、甘みがデザートのように感じました。塩気のあるチーズやナッツと一緒にゆっくり楽しみたい。
【個性派】おすすめ2選
富田酒造場/無濾過原酒まーらん舟
大人にこそ飲んでほしい、無濾過のビターな味わい

黒糖ならではの甘味と渋みの中に、無濾過ならではの苦味が感じられます。黒糖焼酎で無濾過の原酒ってあまりないんですよね。ビギナーの人にはあまりおすすめできない、大人のビターな黒糖焼酎です
朝日酒造/南の島の貴婦人
「初垂れ」の圧倒的なフレッシュさを味わって
一番初めに蒸留される『初垂れ(はなたれ)』の部分なんですが、黒糖焼酎で初垂れってあまり出回っていないんですよ。熟していないメロンのような香りがあって、甘味が強い。
冷凍庫でキンキンに冷やして、とろみをつけて飲んでもいいですし、バニラアイスにかけてもおいしいです
▼編集部の試飲コメント
サトウキビ畑に降り立ったような清々しさに圧倒されました。お酒が好きな人へのギフトにしてもいいかも。