ここ10年でレコードの生産数は急激に増加し、新譜がレコードで発売されるなど、アナログレコードに注目が集まっています。
インテリアとしても素敵なのでまずはプレーヤーが欲しいという方や、好きなアーティストのレコードを買ってはみたものの、プレーヤーがないので手軽に再生できるものが欲しい、という方、レコードは何枚か持っているけれど、DJを始めたのでもっと本格的なプレーヤーが欲しい、よりよい音を楽しみたいという方まで、数あるレコードプレーヤーの中からそれぞれの目的に合わせて選ぶのは至難の技です。
そこで、オーディオやDJ機材の専門家であるようすけ管理人さんに、レコードプレーヤーの基本的な知識や選び方を教えてもらいました。
インテリアに馴染むおしゃれなものや、アンプやスピーカーがいらないコンパクトなタイプ、本格的な一台までおすすめのレコードプレーヤーも紹介します。
OTAIRECORDようすけ管理人さん
オタイオーディオ株式会社 代表取締役社長。北名古屋市でハイエンドオーディオを中心としたオーディオ機器を扱う「OTAIAUDIO」、DJ機材・アナログレコード専門店「OTAIRECORD」を経営する傍ら、DJ学校の運営、動画配信やイベント企画まで、よりよいオーディオ環境の普及をめざして日々精力的に活動している。
OTAIRECORD
OTAIAUDIO
YouTube
レコードプレーヤーの選び方
初心者が手軽に始めるには1台完結型を
DJプレイを楽しみたい人
便利な機能で選ぶ
おすすめのレコードプレーヤー7選
エントリーモデルのおすすめ3選
ちょっと深掘りしたい人におすすめ4選
レコードプレーヤーの基礎知識
Image: GettyImages
「レコードは音がいい」と言われる理由
アナログレコードの表面にはV字形をした溝が刻まれていて、その表面を拡大すると凹凸があります。
これは音がそのまま振動として記録されているもので、回転させたレコードの盤面に針を置くと、デコボコした部分に針がぶつかり、音が発生します。
一般的なCDなどのデジタル音源は、音をデジタル化して記録しているので、人間に聞こえない高音域がカットされていたり、音の波形の細かな部分を完全には再現できなかったりするのですが、レコードは音をそのまま記録していることや、摩擦が生じて音が発生することなどから、より自然に近い音だといえるでしょう。
アナログレコードがすべてにおいて優れているわけではなく、歪みやノイズが発生するなど、再生環境に大きく左右されるというデメリットもあります。
デジタルの方が有利な面もたくさんあるのですが、レコードでなければ表現できない、自然でなめらかな音が聴き心地よさの秘密と言えるでしょう。
レコードの再生に必要なもの
レコードは、針との摩擦で生じた音を信号としてピックアップし、それを増幅させてスピーカーから流すことで再生されます。
レコードの音の信号はとても弱く、また溝に録音データをおさめるために特殊な記録方法を用いているので、再生するためにはいくつかの調整が必要になります。
具体的には、
①レコードに針(カートリッジ)が触れて生じた振動を電流としてピックアップする
②フォノイコライザーで①の出力レベルを上げて、音を復元する
③アンプでさらに②の電気信号を増幅する
④スピーカーから音が流れる
という手順を踏んでいます。
フォノイコライザーはレコードを再生するためには絶対に必要なものです。
1台でレコードが再生できるタイプのレコードプレーヤーにはフォノイコライザーが内蔵されていますし、プレーヤーまたはアンプのどちらかについているものも多くあります。そういった場合はフォノイコライザーを新たに買う必要はありません。
レコードプレーヤーの選び方

レコードプレーヤーの価格帯は数千円から数千万円と非常に幅広く、またプレーヤー以外にも機材が必要になるケースもあります。
どのような点に注目してレコードプレーヤーを選んでいけばよいのでしょうか。
初心者が手軽に始めるには1台完結型を
これまでレコードプレーヤーを買ったことがないという人が、いきなりすべての機材を選んでそろえることはハードルが高いもの。またどれだけ費用がかかるのかも気になるでしょう。
レコードプレーヤーを購入したら、すぐに聴きたいという場合は、1台あればプレーヤーとして機能する、フォノイコライザーやアンプ、スピーカーが一体になったタイプのものがおすすめです。
とにかく始めたい、面倒な手間を省きたい、コストをなるべく抑えたい、場所もあまり取りたくないという人の選択肢に、スピーカーまで一体になったレコードプレーヤーはおすすめです。
ただし、うますぎる話がないように、スピーカーやアンプが一体化していないものに比べると音の質が劣るという欠点はあります。
そういった点を踏まえても、まずは気軽に試してみたいという方にはおすすめです。
DJプレイを楽しみたい人

レコードを回すターンテーブルの回転方式には、ベルトドライブ方式とダイレクトドライブ方式の二つがあります。
ベルトドライブ方式 | ターンテーブルの中心から少し離れたところにモーターがついていて、ベルトを用いてターンテーブルを回転させる。モーターが小さく、振動が少ない。 |
ダイレクトドライブ方式 | ターンテーブルの下にモーターが入っていて、モーターが直接ターンテーブルを回転させる。 |
DJプレイはリズムが命。ズレなく音をスタートさせるためにはレコードを回すための強いモーターが必要です。
将来DJプレイで使用したいと考えている人は、ダイレクトドライブ方式のものを選ぶようにしましょう。
レコードを聴くためのプレーヤーとしてだけでなく、DJにも挑戦したいと考えている人は、ダイレクトドライブ方式のレコードプレーヤーを。
ミキサーとターンテーブルをもう一台揃えるとDJプレイができます。
便利な機能で選ぶ
レコードプレーヤーの中には、レコードの音を取り込むことができる機能がついているものや、ヘッドフォンで聴けるもの、Bluetooth対応のものなど、便利な機能がついたものもあります。
レコードプレーヤーがない場所に音源を持ち出したい、家族に気兼ねなく一人で音楽を楽しみたいなど、生活スタイルに合わせた機能にも注目して選びましょう。
おすすめのレコードプレーヤー7選
エントリーモデルのおすすめ3選
どれも一台あれば再生が可能なタイプのレコードプレーヤーです。価格帯も手頃で初心者が使いやすいものと言えるでしょう。
ION Audio Archive LP

ステレオ・スピーカーが内蔵されているオールインワン・ターンテーブル。USB端子がついているので、レコードの音をコンピューターなどに取り込み・出力することもできます。部屋のインテリアとしてもマッチしやすい天然木を使用したデザイン。
サイズ(幅 × 高さ × 奥行) | 約406 × 88 × 360 mm |
重さ | 約2.7kg |
レコードを置いて針を落とすだけで聴けるという、これ一台で完結する手軽さと価格、おしゃれな外見がよい一台。とても売れています。
プラス2,000円程度でカバーとヘッドフォン端子を備えたMAX LPもあります。
ION Audio Vinyl Transport

トランク型のレコードプレーヤー。本体にはスピーカーが搭載されているので、すぐにレコードを楽しむことができます。ACアダプターが付属していますが単3電池でも動くので、好きな場所でアナログレコードを楽しむことができます。レトロな水色、黒、赤の3色展開。
サイズ(幅 × 高さ × 奥行) | 約349 × 114 × 254 mm |
重さ | 約2.8kg |
外でも音楽を楽しみたいときにおすすめの一台です。トランク型なので、持ち運びやすく、収納もしやすくなっています。
ION Audio Superior LP

レコードプレーヤーとしてだけでなく、カセットテープ、CD、USBメモリ内の音楽も再生できるほか、ラジオチューナーもついているオールインワン・ミュージックプレーヤー。 レコードやカセットテープ、CD、ラジオなどをUSBメモリ内に直接デジタルファイルとして録音できます。Bluetoothワイヤレス再生にも対応。
サイズ(幅 × 高さ × 奥行) | 約470 × 243 × 381 mm |
重さ | 約8.6kg |
このプレーヤーのおすすめポイントはレコードでもCDでもカセットでもMP3でもラジオでもなんでも聴けるというところ。それに加えてレトロな外見がかわいい一台です。
ちょっと深掘りしたい人におすすめ4選
DJプレイをする人や、音にこだわりたい人に向けたより本格的なタイプをご紹介します。
【中級者向け】
Pioneer DJ PLX-500

DJプレイにも使用できるダイレクトドライブターンテーブル。USB-B端子をコンピューターにつないで、レコードをデータ化することもできます。ブラックとホワイトの2色展開。
サイズ(幅 × 高さ × 奥行) | 450 × 159 × 368 mm |
重さ | 10.7 kg |
DJ機材として使っている人もいますが、レコードプレーヤーとしても売れている一台です。
ものがしっかりしているので、音楽をしっかり聴きたいという方はこの辺りのものを選ぶのがよいのではないでしょうか。フォノイコライザーがついていているタイプです。針は購入する必要があります。
ダストカバーにレコードを載せて飾れるところや、色が選べるところも◎。
DENON DP-300F

サイズを選択すると簡単な操作で自動でアームが移動、再生が終わった後は自動でアームが戻る、本格派のフルオートレコードプレーヤーです。色はシルバーとブラックの2色。キャビネット部分が光沢塗装で仕上げられた洗練されたデザインの一台です。
サイズ(幅 × 高さ × 奥行) | 434 × 122 × 381 mm(フット含む) |
重さ | 5.5kg |
機能と価格のバランスもちょうどよく、デザインもかっこいい一台。
カートリッジが最初から付いていますが、交換することも可能です。
【上級者向け】
Technics ダイレクトドライブターンテーブルシステム SL-1200MK7

長年クラブなどでDJを支えてきたSL-1200シリーズの操作性を継承しながら、最新の技術を取り入れ進化したターンテーブル。スタート・ストップのタイミングをはじめとしたプレイスタイルに合わせた細かなカスタマイズも可能なので、DJプレイの幅を広げてくれます。
サイズ(幅 × 高さ × 奥行) | 453 × 169 × 353 mm |
重さ | 約9.6kg |
ターンテーブルといったらこれ、という一台。全世界で300万台以上売れている、アイコン的存在です。
DJをする場合にも対応できますし、リスニング用としても対応できます。
Technics ダイレクトドライブターンテーブルシステム SL-1500c

専用に開発されたコアレス・ダイレクトドライブモーターを採用し、安定した回転を実現したモデル。シルバーとブラックの2色があります。
サイズ(幅 × 高さ × 奥行) | 453 × 169 × 372 mm |
重さ | 約9.9kg |
ピッチコントローラーがついていないので、DJをやらない人はこちらのモデルもおすすめ。
金属の磨きが部分ごとに違っていて、実際見るととてもかっこいい一台です
アナログレコードの種類
現在流通しているアナログレコードには、大きく分けて2種類のサイズがあります。
Image: GettyImages
・12インチレコード
レコードといえばまず想像するサイズ(直径約30cm)のもので、LPとも呼ばれます。LPとはLong Playingの略。長時間の記録ができることを表しています。
同じ12インチでも次に紹介するEPの記録方法を採用することで、より高音質で記録された12インチシングル(マキシシングル)もあります。
・7インチレコード
Image: GettyImages
直径約17cmのレコード。EPとも呼ばれます。EPとはExtend Playingの略で、これはレコードの記録方法を表しています。
中心の穴が大きく開いたドーナツ盤と呼ばれるタイプもあり、このタイプのレコードを再生する場合は専用のアダプターが必要です。
アダプターはレコードプレーヤーに付属していることがほとんどですが、レコードにとって大切な水平が確認できるものや、ドーナッツやワッフルなどのかわいい形状をしたものなど、様々なタイプのものがあります。
ほかにSPレコードと言われるものもありますが、非常にもろく、100回程度の再生で溝が削れて聴けなくなってしまいます。
これを再生するには専用の針が必要なこともあり、今ではかなり特殊なタイプのレコードと言えるでしょう。
音の質にこだわった生活を
日本人はまだまだ音の質にこだわる人は少ないイメージがあり、お店づくりでも部屋づくりでも音響は一番最後になりがちですが、いいプレーヤーで音楽を聴くと、そうでないもので聴いたときと比べて、時間や空間の質まで変わってくるように感じます。
日々の生活をより豊かにしたいときは、ぜひ、部屋のインテリアや香りにこだわるのと同じくらい音の質にもこだわってみてください。