ライフハッカーからの転載。
マイホームの取得に憧れを抱く人は多いもの。一方、実際に入居してみたら、想定外の不具合があった……といった「欠陥住宅」に遭遇することも、残念ながら「ない」とは言い切れません。
納得のいく住まいを手に入れるためには、実際に起きたトラブル事例や対処法、回避する方法などを事前に知っておくことが大切。
そこで今回は、一級建築士の井上恵子さんに住宅取得後に起こり得るトラブル事例を対処法とともに教えてもらいました。
井上 恵子(いのうえ・けいこ)
住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所 所長。All About「住まいの性能・安全」ガイド。安心・安全な住まいを見極め、女性視点でサポートする一級建築士。著書に『大震災・大災害に強い家づくり、家選び』(朝日新聞出版社)ほか。
知っておきたい「住宅取得・リフォーム」のトラブルとは?

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マイホームの取得は、暮らしを左右する高額な買い物です。それだけに、不運にもトラブルが起きた時の精神的ダメージは大きいもの。
「どう対応したらいいのかわからない」と途方に暮れる人も少なくないのではないでしょうか?
住宅の建築にあたっては、大前提として、施工者も設計者もお客様に喜んでいただけるように、大きな瑕疵(欠陥)や不具合が起こらないようにと、細心の注意を払って懸命に取り組んでいます。
しかし、多くの人が関わるだけに、ミスやトラブルの発生もあり得ます。そんな時は、同じような事例の知識があると解決の糸口を見つけやすくなります(井上さん、以下同)
ここでは実際の事例をもとに、住宅取得後やリフォーム工事の際のトラブル対策について考えてみました。
ケース1.「築3年の家にひび割れ、水染みが発生!」

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築3年の木造戸建て住宅の外壁に細かなひび割れが多数発生。雨が降ると玄関脇の基礎の立ち上がりにも水染みが生じるようになった。
施工業者に相談したところ、「経年劣化」と説明されたが納得できない。
参考:住まいるダイヤル
このケースのように、築3年で外壁にひび割れが生じた場合、単なる経年劣化とは考えにくい、と井上さん。
地震や台風などにより建物に大きな力がかかったか、地盤沈下の発生、または施工の際の不手際の可能性があると話します。
建物が同一に沈下せず、傾きながら沈下する“不同沈下”が起きると、建物が歪んで建具が開かなくなったり、外壁にひびが入ったりします。
ただし、2009年10月1日以降に引き渡される新築住宅については、『住宅瑕疵担保履行法』という法律に基づき、『住宅瑕疵担保責任保険(かし保険)』への加入または保証金の供託が義務づけられています。
この保険に入るためには、地盤を調査してその土地に合った建物を設計する必要がありますので、現在はこの手の事故は減ったはず。大きな地震や台風がなかったとなると、施工不良の可能性も考えられます
雨が降ると玄関脇の基礎の立ち上がりに水染みができる原因としては、外壁の部材をつなぐ目地部分のコーキングに不具合があり、そのひびから水が入るケースなどが考えられる、と井上さん。
雨漏りは、「住宅品確法」が適用される“瑕疵”に当たります。この法律では、住宅の工事を担当した工務店のほか、分譲住宅販売会社などの住宅事業者は、柱や基礎といった住宅の構造耐力上主要な部分または外壁や屋根などの雨水の浸入を防止する部分について、引き渡しから10年間の瑕疵担保責任を負うことになっています。
仮に構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分に瑕疵があった場合、かし保険に加入している住宅は、補修費用などが保険金として住宅事業者に支払われます。
また、万が一住宅事業者が倒産した場合は、住宅取得者に直接保険金が支払われるので安心です。
このケースでは、『施工業者の対応が納得いかない』ということなので、まずは建築士などの専門家がいる第三者機関などに相談することをおすすめします
ケース2.「中古住宅のリフォーム工事。業者が指示通りの工事をしてくれなかった」

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築34年のメゾネット式共同住宅の1住戸を昨年購入。売主が紹介してくれたリフォーム業者に550万円の内装改修工事を発注した。
さらに135万円の追加工事を口頭で依頼したが、仕上がりを見ると頼んだ内容になっておらず、見積書の明細も現場の工事内容と異なっていた。
不具合箇所の修正をリフォーム業者に求めたところ、さらに作業費を請求されて困っている。
参考:住まいるダイヤル
リフォームは新築に比べて少額工事が多いため、建設業の届け出をしていない施工会社も工事をすることができます。
「そこがトラブルの芽になる場合がある」と井上さんは指摘します。
具体的には、工事1件の請負金額が500万円未満の場合、建設業許可を取得していない事業者であってもリフォーム工事が可能です。
近年はリフォームが人気で新規参入の施工事業者も増えており、たとえば頼んだ設備がついていなかったり、工事金額が見積もり以上に高額になったりと、想定外のトラブルが起きる事例も残念ながら出てきています
このケースの場合、リフォーム業者が見積書・契約書を作成するのを怠り、口頭とはいえ依頼された通りに工事する義務も怠ったことがトラブルの原因。
口約束でも契約は成立しますが、もし「依頼した通りの工事内容になっていない」と施工会社に対して主張する場合には、客観的な証拠は必要。
こうしたトラブルが起きないよう、着工前に書面で工事内容とかかる費用、工事期間のやり取りをすべきでしょう。また、メモを残しておくことも有効、と井上さん。
リフォーム工事中に、現場で『ここにコンセントを1つ増やしてほしい』といった依頼を気軽にする方もいますが、すでに配線が完了しており、壁や床を一部壊さなければいけなかったりすると、費用がかさむ場合もあります。
リフォーム工事の場合、後から追加したり、変更を加えたりしたところにミスが起こりやすいので注意が必要。追加・変更が出た場合も、その都度、内容やかかる費用を書面に残し、お互いに確認しながら進めていくことが大前提です
ケース3. 「中古マンションのリフォームでシックハウス被害に」

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築40年の中古マンションを購入し、キッチン、浴室、トイレ、洗面所などのリフォームを200万円で行なった。
しかし、工事の直後からキッチンの前に立つとめまいがしたり、目がはれぼったくなったりするように。換気をしているが効果がなく、シックハ
ウス症候群と思われる。
参考:住まいるダイヤル
このケースの場合、新調したキッチンキャビネットなどからシックハウスの原因となる化学物質が放散されている恐れが。
リフォーム業者と相談し、原因となる化学物質の発散場所、その種類および濃度を調査して、必要な対策を施す必要があります。
室内の空気中に、体調不良の原因となる化学物質が含まれているかどうかは、専門機関による測定調査で確認することができます。
以前、遠方にお住まいの方から私の事務所に同様のご相談があった際には、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが公開している『室内空気中の化学物質濃度、建材・住宅の部位からの化学物質発散量(放散量)の測定機関一覧』をご案内しました。
所在地検索もできるので、お住まいに近い調査機関を調べることもできます
なお、調査の内容や調査費用の負担については、あらかじめよく確認したうえで依頼するようにしましょう。
また、健康被害がある場合は、まずはシックハウスの専門医に診断書の作成を依頼し、仮住まいなどに早めに転居することも検討してください。
住まいの「困った」に遭遇したら。頼れる相談先は?
夢のマイホームに、入居後のトラブルは事前に想像しにくいもの。でも、「トラブルに巻き込まれている」自覚がなかったら? トラブルに気づいたとしても、第一に取るべき手段がわからなかったら?
そんな時の相談先として、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが運営する、国土交通大臣指定の住宅専門の電話相談窓口「住まいるダイヤル」があります。

Image: 住まいるダイヤル
「住まいるダイヤル」の公式サイトでは、住宅取得者はもちろん、リフォームやこれからマイホームを……と考えている人に、ぜひ知っておいてほしい情報の数々が紹介されています。
住宅に問題が発生した時は、データベース化された豊富な相談事例が強い味方になります。
ここでは新築住宅だけでなく、中古住宅、リフォーム工事、マンションをはじめとする共同住宅など、さまざまな住宅に関する相談が網羅されており、キーワード検索で自分の悩みに近い事例を探すことができます。
それぞれの事例には、相談に対する回答も載っているので、きっと解決のヒントが見つかるはず。
相談事例を参照し、それでも対処に悩む場合には、一級建築士の相談員に無料で相談できる「住まいるダイヤル」を利用してみてください。
これから住宅のリフォーム工事を予定している方であれば、契約前の見積書などを送付し、内容を確認してもらう「リフォーム見積チェックサービス」も無料で利用可能です。
また、「評価住宅(※1)」、「保険付き住宅(※2)」の取得者・供給者または、リフォーム工事の発注者・発注予定者であれば、弁護士・建築士のペアによる原則無料の対面相談(専門家相談)が利用できます。
さらに次のステップとして、評価住宅または保険付き住宅の取得者・供給者は、住宅紛争審査会(弁護士会)による紛争処理を申請手数料1万円のみで利用することも可能です。
大きな買い物だからこそ、住宅取得後にトラブルが起きたら焦りが生じるのは当然のこと。
そんな時、実際に起きたトラブル事例と対策の知識をつけておくとともに、頼もしい第三者機関として「住まいるダイヤル」の存在をぜひ覚えておきたいところです。
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(住宅品確法)に基づく住宅性能表示制度を利用して、建設住宅性能評価書が交付された住宅。
※2:保険付き住宅
「住宅瑕疵担保履行法」に基づく住宅瑕疵担保責任保険が付された新築住宅。新築住宅を供給する事業者(建設業者・宅建業者)には、住宅瑕疵担保責任保険への加入または保証金の供託が義務付けられている。
保険付き住宅の場合、構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分に瑕疵(欠陥)があった場合は、補修費用などが保険会社から事業者に保険金として支払われる。また、事業者が倒産した場合などは、住宅取得者に対して保険金が直接支払われるので安心。
Sponsored by 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター
Source: 住まいるダイヤル(1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10)
Text by Airi Tanabe