ハナサキヒロキ

ハナサキヒロキ

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New Balanceと言えば、グレーカラー。
グレーカラーのブランドと言えば、New Balance。

わたしたち消費者からみて、相思相愛のイメージがある両者ですが、勝手なイメージかと思っていたところ……。

ブランドの代名詞ともなっている「グレー」でブランドの伝統を祝います。

これは去る2021年5月15日の「Grey Day」において、1906年に誕生したNew Balanceを祝うコレクションを発表した際にいただいたニュースレターにあった一文です。

拝読したぼくは、すかさずニューバランスジャパンのマーケティング部PRシニアスペシャリストを務める小澤真琴さんに「New Balanceってグレーを代名詞として認識しているんですか!? ぜひ取材させてください!」と、ひとり勝手に興奮しながらコンタクトを取り、取材させていただくことになりました。

New Balanceにとってのグレーの秘密をはじめ、モデル名のナンバリングについてなど、あれこれ伺いました。

New Balanceにとってのグレーの存在とは?

ニューバランスジャパンの小澤真琴さん

── 「Grey Day」コレクションについてのニュースレターをいただいた時に目に入った一文を拝見して、おそらくは世間的にも認識しているイメージと、ブランドの認識が合致していることを確信して、思わず興奮して前のめりでご連絡してしまいました。

いえ、読んでいただいてうれしいです。

New Balanceは、スタートした1906年当時、矯正靴を作っていました。ほかにも、アーチサポートインソールという、足に故障がある方向けのサポート器具を作って提供していたんです。

そのアーチサポートインソールを靴に入れると新しいバランス感覚が生まれるというのが由来となって「New Balance」というブランド名になったんです。

── なるほど。そうすると、いまのようなスポーツシーンでのシューズではなかったんですね。

そういった取り組みを経て、ランニングシューズのカスタムオーダーをスタートしたのが1960年代。当時は、世界的にランニングが徐々に盛り上がり、1970年代〜80年代には空前の市民マラソンブームになりました。

その頃は、ブルーやイエローなど、発色が良いランニングシューズが主流だったと聞いています。New Balanceのランニングシューズで言うと「320」や「SUPER COMP(スーパーコンプ)」というモデルも、イエローやオレンジなど、カラフルなカラーでした。

── そういったカラフルだった時代を経て、いまやブランドにとって特別な色でもあるグレーにシフトしたきっかけはあったのでしょうか?

諸説あるのですが、New Balanceが発祥したボストンの街並みはレンガの建物と石畳、という景観。そういった街中を走るのに、当時主流だったカラフルなランニングシューズよりもグレーのシューズのほうが馴染むのではないかということで、ブランドとして初めてグレーにチャレンジしたという話があります。

New Balance原宿本店内にあるブランドのロゴ

── なんと、街の景観に合わせての発想だったんですか! なんともしゃれたアイデアですね。

でも、「そんな地味な色のシューズは誰も買わない!」という反対意見もあったそうですが、絶対にグレーはかっこいいということで発売したそうです。

1980年当時、もっとも軽いランニングシューズとして発売した「620」にグレーカラーを採用したのが始まりですが、結果的に当時すごく売れたようです。

── まさにエポックメイキングな出来事ですね。そうすると、グレーのブランディングにシフトしてから40年以上も経っているんですね。

そうなんです。たとえば、1982年に「990」の初代モデルを発売した際もグレーを採用しました。900シリーズや1000シリーズといったブランドのアイコニックなモデルは必ずグレーを採用しています。

グレーと言っても、New Balanceのグレーは多彩なんです

ニューバランスジャパンの小澤真琴さん

── New Balanceで採用しているグレーは、シューズによって濃淡だけではない絶妙な違いがあるように見えます。おそらくあえてそうしているのかなと思いますが、それぞれ呼び名はあるのでしょうか?

「1400」シリーズと「1300」シリーズは“スティールブルー”と呼んでいて、グレーに少し青みがあるんです。そういうブルー系のグレーと、ほかに「996」のグレーのように、ちょっとベージュっぽい感じで、ウォームグレーのような色味もあります。

それぞれのモデルによって少しずつ違うグレーを採用しているんです。濃淡だけではなく、寒色系や暖色系などさまざまです。

── ファンとしては、シューズによってニュアンスの違いを楽しむのもおもしろいですね。

そうですね。ブランドを象徴するモデルを中心に必ずグレーを採用したことで、New Balanceがグレーのイメージとして認識していただいていると思います。

New Balance原宿本店にて並んだスニーカー

New Balance原宿本店内には、全モデルに近いスニーカーが勢揃い

── イメージ付けは個性が引き立つというメリットがある一方で、デメリットもあるように思うんです。New Balanceで例えるならば、グレーのイメージが先行することで、他の色にチャレンジしたくてもできないとか。そのあたりについてはいかがですか?

New Balanceにとってのグレーは重要な色であることは間違いありません。グレーのスニーカーと言えばNew Balanceという自負もあります。

ファンの方々にはグレーが良いイメージとして定着していると感じているので、New Balanceとしては特にデメリットに感じていることはありません。

グレーのスニーカーはNew Balanceの専売特許ではありませんが、私たちがこれまで積み重ねてきた結果なので、とても大切な財産です。

── そういえば、スマホで「スニーカー」と打った時に表れる絵文字が、グレーのスニーカーですよね。そういったところにもスニーカーと言えばグレーと認知されている気がします。

そうだとしたらうれしいですね。

海外でも人気のグレー。そしてコロナ禍でグレーがまた見直されている

ニューバランスジャパンの小澤真琴さん

── スニーカーにおいてグレーがブランドの定番色として認識され、人気があるのは海外も同じですか?

はい、日本に限らず、海外でも注目されていますし、実際に売れています。

ただ、日本のように日常的にこんなに履いていただいているのは珍しいかもしれません。ファッション視点で着こなしにうまく取り入れていらっしゃる方が多いですね。

── 確かに日本のファッションシーンにおいて、アクティビティ以外でスニーカーをコーディネイトするのは、日本人は上手ですね。

最近、グレーのシューズを求める方の理由として、ビジネスシーンでのコーデに合わせたいと考える方が増えたと思います。テレワークが増えましたけど、オフィスカジュアルのひとつに軽めのセットアップを着用し、足元はグレーのNew Balanceを合わせたスタイルですね。

New Balanceの「W990 v5」

この日小澤さんが履いていたのは「990」のアップデートモデルの「W990 v5」 30,800円(税込)

── 確かにそのコーデのイメージはありますね。小澤さんの今日のコーデもジャケットにグレーの「990」を合わせていらっしゃいますよね。

いま私が着ているような「MET24(メットトゥエンティフォー)」というコレクションのジャケットをはじめ、スニーカーがカッコよく見えるパンツを毎シーズン作っています。いまの時代の流れを汲んでライフスタイルのほうからもいろいろ提案をしているんですよ。

── いま働き方の変化にともない、着こなしも変化している中で、やはりグレーを求めている方もジャケットに合わせたいなどのニーズがあるんですね。

まさに、ビジネス時のジャケットスタイルでも、普段着でも、日常的にNew Balanceを履いていただいている方は、グレーだから合わせやすいと思ってくださる方が多いのかなと思いますね。

ニューバランスジャパンの小澤真琴さん

── そういったオフィスカジュアルのようなコーデや、普段着コーデに合わせられるのはNew Balanceの強みでもありますよね。

とてもありがたいことですが、ブランドとしては、グレーをはじめとするルックスの良さだけではなく、ブランドが大事にしているクラフトマンシップがみなさんに伝わっているからこそだと感じているんです。

── というと?

どんなにルックスが良くても、履いていてストレスを感じるようでは意味がありませんよね。

もともと医療的な背景を持ってスタートしたこともあり、履き心地の良さはとても大切だと考えています

New Balanceにはアメリカ、イギリスに自社工場があり経験豊富な職人さんたちがシューズを作り続けています。

New Balance原宿本店

ニューバランス原宿店内には、MADE IN U.S.A.のスニーカーが並ぶ棚にはアイコンとしてわかりやすくモニュメントが設置。反対側はMADE IN U.K.の目印も。

現代ではできるだけ機械で効率化するという方向もありますが、New Balanceのアメリカ・イギリス工場では職人による製造を大切にしています。素材となる革のどの部分をどう使うか、シューズの形を吊り込む技術、「N」ロゴの縫い付けひとつとっても職人による技術力が大切になります。

そういったブランドが大切にしているクラフトマンシップを、スニーカーを通して感じて頂くことでリピーターになっていただけているのかなと思っています。

── なるほど、根底にクラフトマンシップがあるからこそ、履きやすさとデザイン性の高さがいつの時代においても注目される理由なのかもしれませんね。

クラフトマンシップを大切にするのと同時に、新しい機能の開発についてもNew Balanceとしては重要に考えています。ラボがあるボストンの工場では、アスリートの協力を得てデータを取り、開発や研究を重ねています。そうして生まれた新機能をランニングシューズなどに搭載し、アスリートやスポーツを楽しむ方々のパフォーマンス向上に役立てています。

モデル名がナンバリングになっている理由

New Balance原宿本店内に飾られたスニーカーのナンバリングを模したモニュメント

── ところで、ずっと気になっていたんですが、New Balanceのモデル名はどうして番号なんですか?

ブランドがスタートした初めの頃は番号ではない名前がついてたモデルもあったんですが、途中からナンバリングに変わりました。

実はある程度、規則性がありまして、数字でどういう類のシューズかわかるようになっています。たとえば、「500」シリーズは基本的にトレイルランニング用で、たとえば「576」は安定感を出すために前足部は幅広く少し丸みがあります。ソールは舗装されていない場所を走るので、滑らないようにグリップのためにちょっとごつごつしています。

ほかに「900」シリーズですと、舗装されたロードのためのランニングシューズのため、割とソールはフラットで、前足部の形も丸くはなく細身です。また、「1000」シリーズは値段も含めて、エクスクルーシブといいますか、他とはちょっと立ち位置が違います。

── 「1001」、「1002」、「1003」みたいなのはないですよね?番号が飛び飛びのように思いますが、いかがですか?

そういった番号はありませんね。謎なんですが(笑)。

「990」も「900」というモデルがあってできたわけではなくて、実は「990」から始まっています。これは、1000点満点中990点くらい完成度が高いシューズができたという意味があるんですけど、「990」の次がなぜか「995」なんです。

そのあとに「996」になって、「997」、「998」、「999」。そして、またもう一回「990」になって、「991」、「992」、「993」と続くんですが、次は「994」だろうと思いきやその順番をやめました。

「990」については、3回目になったタイミングで「990」モデルだという方向転換をしまして、そこから「Ver.3」、「Ver.4」、「Ver.5」というように続きます。

── 確かにそう聞くと、一回覚えてしまえばわかりやすいですね。ナンバリングにすることで、コレクター魂はくすぐられる気もします。2000番台はどういう立ち位置になりますか?

1000番台の続きですね。

1700の次は飛んで、2000年になって発売した2000番になります。以降は、バージョンアップして2001、2002と続きまして、そのあとは2040ですね。

New Balance「ML574」

New Balanceの定番シューズとも言える「ML574」。グレーシューズと言えば思い出すモデルの方もいるだろう。10,890円(税込)

── ちなみに5月のグレーデーでは推していた型番はあるんですか?

今年は「574」をもっとも注力しています。

このモデルの発売は1990年代ですが、汎用性があり、手頃な価格もあって、おかげさまでロングセラー商品ですね。New Balanceのシューズで世界でもっとも売れています。

定番モデルである「574」にも、やはりグレーを提案しています。おそらく、街中で見かけるNew Balanceのシューズとして思い浮かべるのは、「574」のように大きな「N」のロゴがあるルックスになりますよね。

このモデルはいまも変わらず、みなさんに愛されているNew Balanceを代表するシューズですね。

グレーデーが過ぎても、見逃せないグレーシューズ

New Balanceの「CM1600」

日本限定となるNew Balanceの「CM1600」。今後が楽しみなモデルだ。19,800円(税込)

── 「574」は定番シューズという認識はありますが、これぞ定番! と言えるモデルがたくさんあるのもNew Balanceの魅力のひとつですよね。そんな中で、「1600」というモデルはこれからそういう立ち位置になるんじゃないかというポテンシャルを感じました。

そうですね、ファンならずとも私たちのシューズをちょっとでも手に取っていただいたことがあるなら、おそらく「1500」も「1700」も割と有名だと思うんです。でも「1600」は、その間にいながら割と地味な存在です(笑)。

今回は、アジアメイドによる日本限定として復刻しました。実は昨年から「2002」をはじめとする2000番台の人気が高まる一方で、「1300」を発売したことを機に、1000番シリーズの盛り上げを期待して「1600」を復刻したんです。

── 最後に、New Balanceと言えばランニングシューズも欠かせないと思うんですが、そのカテゴリーでグレーはありますか?

グレーのランニングシューズですと「LERATO」というモデルがあります。反発性の高いミッドソールを採用し、中にプレートを組み込んでいます。

カーボンファイバー製のプレートを内蔵した高性能ミッドソールを搭載し、軽く弾むようなライド感のシューズで、ランニングはもちろんですが、このグレーカラーもあってデイリーユースにもフィットします

New Balanceの「LERATO」

New Balanceのランニングシューズ「LERATO」。カーボンソールを搭載したシューズ。29,700円(税込)

── ランニングシューズでグレーというのは珍しいですよね。

ファッション性も鑑みて、街中で履けるように普段使いを意識してグレーを採用しています。シーンを選ばずに履けるランニングシューズということで、本気で作っている自負がありますね。

── グレーの強みを活かせると、ハイテクシューズでもより自然に街中でも履きこなせるのは素敵ですね。

ハイスペックなランニングシューズほど、走るときだけに限られてしまいがちですが、「LERATO」の場合は、ランナーではない方でも、着こなしやすいカラーとデザインですので、モダンな着こなしになると思いますよ。

── ぼくもたまに実践していますが、帰宅ランをするなら少しでも荷物を少なくしたい。そんな時、バッグにランニングシューズを持ち歩くことなく、オンもランも同じシューズを履いて移動できるというのは、とてもありがたいですね。グレーだからこそなせる技と言えると思います。

両方のシーンにおいて1足で事足りるなら、そういった荷物問題は解消されますよね。ぜひお仕事に、ランニングに履いてみてください。

── 「LERATO」で自己ベスト更新できるように、がんばります。今日はありがとうございました!

長年に渡りグレーをキーカラーにチャレンジをし続け、わたしたちを魅了するNew Balance。ブランドにとって欠かせないカラーであることに間違いはありませんが、暮らしの中にあるグレーの重要性が垣間見えた貴重なお話を聞かせていただきました。

さてROOMIEでは、今後もグレーが暮らしにどのような影響を与えるかを探っていきます。

Photographed by Sayama Junmaru Special Thanx Yanagisawa Satoru

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サッカー、ランニング、読書、お酒、買い物など、好きなことやりたいことが多すぎて、時に何もできなくなっちゃうことも。「人生、楽しんだ者勝ち」をモットーに、オンオフ関わらずおもしろそうなことを探しては日々を楽しんでます。

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ROOMIEのキーカラー変更を機に、「グレー」にまつわるあれこれをご紹介。「グレー」は、汎用性に優れているカラーであることは認識の通り。そこで、私たちの暮らしの中に普通にあるグレーをあらためて考察してみました。みなさんにとってのグレーは、どんなイメージですか?

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