まつい ただゆき

まつい ただゆき

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登山用バックパックでおなじみの「カリマー」。2020年にブランド初となる直営店を原宿と名古屋にオープンし、街でも着やすいアパレルラインも精力的に展開中です。ROOMIE世代でもおなじみの、おしゃれなアウトドアブランドの筆頭格です。

イギリスで生まれ75年もの歴史を誇る老舗ですが、現在のブランディングの拠点はなんと日本にあるとのこと。ブランドの現在地について、カリマーインターナショナルの松浦 洋さんに直撃してきました。

ブランド名の語源は「carry more」

カリマーインターナショナルの松浦 洋さん

── カリマー=リュックサックという印象が強いですが、まずはブランドの歴史から教えてもらえますか?

イギリスのランカシャー地方というところで、1946年に誕生しました。創始者のチャールズ&メアリー・パーソン夫妻はもともとサイクルバッグの製造を行っていたのですが、ある時、クライマーから登山用のリュックサックの依頼を受けて作り始めたのがブランドの始まりとなります。

── 自転車バッグの堅牢性や機能性が、当時のクライマーの琴線に触れたわけですね。

はい。その後もふたりが製作するリュックサックは評判を呼び、多くの登山家や冒険家たちの要望を取り入れていったそうです。各国の遠征隊などのバックアップ活動も行っていて、そこからのフィードバックは製品開発にも活かされていきました。

ブランド名のkarrimor(カリマー)の語源は「carry more」、もっと運べるという意味です。移動装備の拡張ということをコンセプトにしていて、その軸は現在でも変わっていません。

カリマーを代表する名品リュックサック

── 長い歴史を経ても、もの作りの姿勢やコンセプトは変わらないということですが、特にブランドを象徴するアイテムはありますか?

ridge 30 medium」19,800円(税込)

カリマーのバッグパック

女性からも人気の「ridge」。カリマー生誕70周年の2016年にリニューアルされ、2020年には機能性がさらにアップデートされました。写真のSea GreyのほかにRescue Orange、Limoges Blue、Blackの全4色展開。※サイズ展開によりカラバリは異なります。

定番として人気なのが「ridge(リッジ)」です。今年で22年目になるバックパックで、初心者から上級者まで、幅広い登山家から愛用されているモデルです。

── これは、よく山で見かけるモデルですね。カラーもピンクとかあって、ほかのメーカーでは見かけない色使いが新鮮ですね。

cougar grace 45-60」32,450円(税込)

カリマーのcougar grace 45-60

こちらは女性用。テント泊や長期縦走向けに開発された大容量モデル。

あとはもう少し大型になりますが、cougar(クーガー)というモデル

これにはSA(サイズアジャスト)システムといって、大柄な方から小柄な方まで幅広い方にフィットさせる機能が搭載されています

背面に付いているパッド部分が上下に可動する仕組みで、ここを調整することで小柄な女性から大柄の男性まで、ひとつのバックパックで対応することもできるんです

── つまり、家族でもシェアできるということですか?

はい、背中の長さや体格の制限はあるにせよ可能です。背面のテープを引っ張ることで簡単に(無段階で)調整できるので、実際にそういう使い方をされている人もいますね。あとは大学の山岳部で、先輩から代々受け継がれている話はよく耳にします。

cougarに搭載されたアジャスター機能

背面パッドに装着されたストラップを調節することで、パッド部分が上下する仕組み。背負った状態でも調節できるため、山行中でも微調整が可能。

2019年からは日本がブランディングの拠点に

── 名刺を拝見して気になっていたのですが、会社名がカリマーインターナショナルになっていますね。確か、以前はカリマージャパンだったと思うのですが。

そうなんです、2019年からカリマーインターナショナルに変わりまして、その年から日本がグローバルでの拠点となりました。

カリマーインターナショナルの松浦 洋さん

── え!? ということは、商品の企画やブランディングをすべて日本主導で行っているということですか?

はい。でも、コロナ禍もあって、まだ各国との連携がしっかりとれていないので、いまはできることを少しずつ整えていっている状況です。

本国イギリスのカリマーでは、価格競争のあおりもあって、低価格帯の商品が中心になっているんです。ブランドとしては、品質や価格を揃えるべきという考えがあり、もの作りの設計やクオリティが往年のカリマーに近い日本が主導しようという流れになったんです。

── なるほど。現状は日本で買えるカリマーが、創業時のフィロソフィーを一番受け継いでいるというわけですね。

もともとヨーロッパで作られた製品は日本人の体型に合わないというところから、日本独自で商品企画を行っていました。

日本では本国のデザイナーから引き継いだ設計でいまも作り続けているので、日本企画のものが往年のカリマーにもっとも近い設計になっているんです。

また、縫製ひとつとっても、日本で作られたものは検査基準も他国より厳しいので、しっかりしています。一部、日本企画のものをグローバル展開しているのですが、そういった取り組みも日本=高品質というブランディングの現れですね。

カリマーインターナショナルの松浦 洋さん

── 2019年以降はタウンユース向けのラインナップをレーベルとして明文化し、ファッション的なアプローチも精力的にやっていますよね。

昔からカリマーは、長年愛用されている高年代のユーザーが多かったのと、リュックサックのブランドというイメージが強かったんです。

2019年からファッション性を持たせたタウン向けのアパレルを精力的に展開したことで、若年層やアウトドアに興味がない人たちからも認知してもらえるようになりました。

あとは、コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マンからお声がけいただいたコラボレーション企画も、新たな顧客接点を作るきっかけになりました。

── 現在、商品は「ネイチャースタイル」と「ライフスタイル」のレーベルで展開されていますが、それぞれどういったラインナップなのでしょうか?

根底にあるのは、ブランドのアイデンティティでもある移動装備の拡張です。この概念を、「ネイチャースタイル」と「ライフスタイル」に大別して展開しています。

「ネイチャースタイル」は、本格的なアルパインからトレッキングやハイキングを中心に対応する、冒険・探求のためのプロダクト。

「ライフスタイル」は、トラベルやキャンプ、ビジネスなど、暮らしを豊かにするカジュアルラインになっています。

カリマー流のサステナブル

カリマーインターナショナルの松浦 洋さん

── 話は変わりますが、ブランドとしてSDGsな取り組みがあれば教えて下さい。

もの作りで言えば、アパレル素材を中心に環境に配慮した素材を採用することで、少しずつ取り組みをはじめています。

今季のモデルですと、リサイクルダウンや植物由来の原料を使った素材sorona(ソロナ)を使っています。

wander storage coat」¥25,300(税込)

カリマーの

sorona素材を使った新作アウターは一般的なルックスに見えますが……

A4サイズにパッカブルになるだけではなく、バッグとして機能します。

あとはサステナブルという言葉ができる前から、アフターサポートとして修理を受け付けています。特にリュックサックに関しては長く使ってくださるユーザーさんが多いので。

trail down parka」¥35,200(税込)

カリマーのダウンジャケット

リサイクル素材にはっ水加工を施したストレッチダウンパーカー。パッカブル仕様のため持ち運びもしやすい。

── 長く使ってもらうのが一番!という発想ですね。

そうですね。過去には「山とともに」というキャンペーンにて、先に紹介したridgeを購入いただいた方に、先着順で修理無料券というのを付けていました。

その修理券の有効期限は2024年9月30日までで、有効期限内であればカリマーのどのリュックサックでも1枚に付き1回無償修理が可能なんです。(修理可否はコンディションにより判断)

カリマーインターナショナルの松浦 洋さん

── ユーザーに寄り添ったよい企画ですね。壊れたから買い替えるのではなく、壊れたら直すという考え方がサステナブルですね。

ブランドとしては、本当にブランドを愛してくれるユーザーさんと、もっと密にコミュニケーションをとっていきたいんです。それを目的に、昨年原宿に直営店をオープンしたのですが、その途端に緊急事態宣言が発令されてしまって……。

店頭でのイベントとか、状況が落ち着いたらいろいろと企画していきますので、楽しみにしていてください。

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まつい ただゆき

まつい ただゆき

フリーランスエディター/ライター。雑誌で10年、web媒体で10年のキャリアを経て2017年に独立。現在はアウトドア関連の企画・取材・執筆から、webメディアのプロデュース&コンサルティングまで、“編集スキル”を軸に活動中。趣味はキャンプと部屋改造。

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価値観が多様化する現代、ブランドはどのようなフィロソフィーの下に、モノやサービスを提供しているのか? 彼らが描く未来像やあり方を解き明かすことで、我々もまた、未来に向けてどのようにあり得るのかを考えていきます。

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