門岡 明弥

門岡 明弥

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遠目から見ると、ぎゅぎゅっと多くの建物が詰まった街、東京。

その様子には息苦しさを覚えてしまう方もいるかもしれませんが、ちょっと近寄って眺めてみると、どこか余白を感じさせる街並みも存在することに気付かされます。

今回伺ったのは、世田谷区にある木村祐太さんと、パートナーである彩香さんのお住まいです。

玄関

ベランダ

天井

名前(職業):木村 祐太さん(自転車屋さん)、高野 彩香さん(お花屋さん)
場所:東京都世田谷区
面積(間取り):25㎡(1DK)
家賃:6.8万円
築年数:47年
間取り
編集部作成

25㎡、ふたり暮らし。字面だけ見ると、2人で生活するにはちょっと狭いのかも……と、感じませんか?

でも、2人の暮らしは“不自由”とは全くかけ離れたもの。むしろ、不自由から生まれた“自由”の中で遊んでいるような暮らしが、ここにはありました。

お気に入りの場所

植物に挟まれた、ふかふかのベッド

ベッド

玄関を入ってダイニングを抜けると、目に入ってくるのはたくさんの植物に囲まれた憩いのスペース

彩香さんが植物に関する仕事をしていることもあり、今では20~30種類もの植物と暮らしているのだとか。

緑に囲まれてるし、何より光がいっぱい入ってきて、気持ちいい〜!

ベッドの上でくつろぐ

「ここでゴロゴロしてるのが幸せなんです。朝はもう日当たりが強すぎて起きるくらいですが、陽がいっぱい入るのは嬉しいですね!」(彩香さん)

「寝る前とかは、壁にもたれ掛かって作業したりスマホをいじったりしているんですけど、映画見るときは横に並んでみることが多いです」(祐太さん)

でも、1人の時間が欲しいときにはどうするんだろう……?

趣味で作るカレーのレシピ本を読む彩香さん

趣味で作るカレーのレシピ本を読む彩香さん

「何も考えないときとか、ちょっと作業したいときとか、『プチ1人になりたい時間』が欲しいときはここに座っています。

仕切られてることで閉じ籠もれる感じがあって、ちょうどいいんですよね」(彩香さん)

完全に部屋を分けなくたって、仕切りがあるだけでパーソナルスペースを確保できるというわけですか。

25㎡とは思えないほどに物理的な開放感を感じるお部屋ですが、こういった部分には精神的な開放感を感じさせられます。

広くて開放感のあるベランダ

ベランダ

ベッド横の戸を開けると、そこに待っていたのは広さのあるベランダ!

「天気が良くて、あたたかい日にはここで朝ごはんを食べています。

去年9月から住み始めたこともあり、まだオールシーズン過ごしてないのはあるけど、今のところはとても快適です」(祐太さん)

ベランダで作業するふたり

ベランダにはミニテーブルや折りたたみチェアなどのアウトドアギアが収納してあり、それを広げてリラックスタイムを楽しむそう。

柵の部分に取り付けられたシートのおかげで、ご近所さんと目が合うこともないんですって。細かな工夫だけど、あるのとないのとでは大違いな気がします……。

オーニソガラムを植え替える彩香さん

オーニソガラムを植え替える彩香さん。どこか子どものお世話をしているみたいです

「そういえば、植え替えなきゃ!と思ってたところでした」(彩香さん)

ベランダで作業する彩香さんを見守る祐太さん

植物の植え替えや土の手入れはベランダで行うことが多く、そんな彩香さんの姿をベッドから見つめる祐太さん。

「ここで見て、『こうやってやるんだ〜』って思いながら、ぼーっとしています(笑)」(祐太さん)

彩香さんを見つめる視線と、その背中に感じる暖かさ。心がぽかぽかしますね〜。

この部屋に決めた理由

彩香さん

元々は彩香さんの同僚の方が住んでいたという、このお部屋

「私の同僚がここに住んでたときに、何回か遊びに来たことがあったんですよね。

開放感を感じるいい部屋だなと思っていたのですが、その家賃の安さにも驚いちゃって! 同僚が引っ越すタイミングで、そのまま入居しました」(彩香さん)

ここに2人で住む前はそれぞれバラバラに住んでいたそうで、彩香さんのご友人が引っ越すタイミングがちょうど同棲するきっかけにもなったとのこと。

植物

「あとはやっぱり、彼女の仕事柄、植物中心の生活になったことも大きくて。ここの日当たりと、窓が多くて風通しがいいことも、部屋の決め手になりました」(祐太さん)

「最初この部屋に入ったときに、なんか悪い気がしなかったというか。『なんかいいな』って直感的に思えたんですよね。ポジティブな空気があったというか」(彩香さん)

ベランダで作業するふたり

彩香さんとは違い、これまで多くの植物と共に生活して来たわけではなかった祐太さん。これだけ多くの植物と暮らすようになって、今ではすっかり植物との暮らしを楽しんでる様子!

そもそも、植物にハマったきっかけはなんだったのでしょう?

「これまで家に唯一いた植物がすごい弱ってて、そのとき彼女に助けてもらったのが最初のきっかけです(笑)。

それを見たときにちゃんとかわいがらなきゃなって思って、定期的に水を上げたり、土の様子を見たりするようになりました。そしたらすごい勢いで芽がくるようになって。

それで感動したというか、今まで感じなかった植物の生命力を感じたんです」(祐太さん)

吊り下げている植物

約10年前に出会ったこの子のおかげで、彩香さんは植物にハマったそう。今も元気に生きているのは、日々の愛情あってこそですね

「実際植物と暮らしてみると、やっぱり生き物なんだなぁと感じました。毎日、ちゃんと反応があるんですよ!

今まで植物は『状態の変わらないもの』と思っていたけど、やっぱり人間と同じで、ずっと暗い場所にいたら落ち込んでくるし、水分足りてなかったらしわしわになっちゃうし、そういうダイレクトな反応があるのが面白いところです」(祐太さん)

「でも、今は私よりも先に変化に気付くくらい、しっかり植物のこと見てるんですよ(笑)」(彩香さん)

お気に入りのアイテム

たくさんのスパイス

スパイス

多くの植物に囲まれたお部屋ですが、キッチンに足を運んでみるとたくさんの調味料が目に付きました。

「カレーを作るのが趣味なんです。5年前くらいからなんとなくやり始めたところから、ハマっちゃいました」(彩香さん)

あ、パーソナルスペースでカレーの本、読んでましたもんね(笑)。

調味料

「基本的にでき合わせのものは使わないようにしていて、気づいたらこんなに調味料が増えていました。素を使わないチャレンジです」(祐太さん)

自転車とは買うものではなく、つくるもの。そんな思いを持って自転車屋さんの仕事をしている、祐太さん。そして、毎日手を掛けて植物の手入れをし、愛情一杯に育てる彩香さん。

そんな2人の哲学が、「素を使わないチャレンジ」という言葉に表れているような気がします。

キッチンで作業する二人

「窓を開けてカレーを作ってると、そこの道の角を曲がった辺りまでカレーの香りが漂うんです。カレー屋さんみたいだよね」(彩香さん)

「ね。帰ってるときにカレーの香りがすると、『あ、作ってんな〜』みたいな(笑)」(祐太さん)

ちなみに、祐太さんの得意料理はオムライス。なんだか、かわいいです。

食器棚

食器棚

スパイスや食器が入ってる棚は、彩香さんのお爺さんが使っていたもの

「元々はお爺ちゃんが使っていた山の道具が入っていました。コップとかアイゼンとか……いろいろ。

お爺ちゃんは山の写真を撮ったりする仕事をしていて、絵を描くのが趣味だったんです」(彩香さん)

絵

自粛期間中に、ふと思い立って描いた絵
左:彩香さんの弟さん作 真ん中:彩香さん作 右:祐太さん作

ここで思い返してみると、ベランダと部屋を繋ぐ戸の上に何やら絵が飾られていたような! ……これはもしかしたら、お爺さんの影響もあるということですね!?

「私達は絵をやっていたとか全くそういうのじゃないんですけど、確かにお爺ちゃんと私は誕生日も一緒で!

家族の中で唯一ふたりだけ左利きってことも同じだから、もしかしたら生まれ変わりなのかも?(笑)」(彩香さん)

世界各国の花瓶

DIYした棚

花瓶

彩香さん

「旅先で巡り合った骨董屋さんで花瓶を買うことが多くて、ここには世界各国の花瓶があります。

これはパリの蚤の市で買って、日本円で大体500円くらいでした」(彩香さん)

日々の気分に合わせて、花と花瓶をチョイス。でも、最近は祐太さんに選んでもらうことも多いんですって。

祐太さんが選んだ花瓶に生けた花

こちら、祐太さんチョイス

「大体OK出してくれるんですけど、試されてる感がありますね(笑)。どんな花瓶が合うか聞かれたときから、自然とセンスを問われるゲームみたいになってきています」(祐太さん)

暮らしのアイデア

植物を置く場所には高さを出す

植物の棚

「平置きすると植物にあんまり日光が当たらなくなるから、ブロックを置いて高さを持たせています

風通しをよくするためにもよくて。蒸れると虫が出るので、風通し・日当たりを確保してあげることは1番大切です」(彩香さん)

簡単に模様替えできる作りの収納

DIYした棚に植物を置く

ダイニングなどにあった段差式の収納。なんとこれ、ホームセンターで売ってるものを組み合わせた祐太さんお手製のもの!

「棚の高さや横幅を自在に変えられます。飽きたら簡単に配置を変えられるので、気分転換に模様替えを楽しめるのはいいなと思います」(祐太さん)

DIYし棚

「でもそれも、この狭さだからこそやりやすいっていうのもあるかもしれないね」(彩香さん)

狭さを感じるからこそ、むしろ模様替えを楽しみやすい。その考え方も、限られたスペースを最大限楽しむためのアイデアですね!

残念なところ

壁が薄くて気になる生活音

どんなに快適な暮らしであれ、「もうちょっとこうだったらいいなぁ」と思う部分は多少なりはあるもの。

祐太さんと彩香さんの場合は、音と水周りでした。

ダイニングにいるふたり

「隣や上の方の生活音が聞こえてくることがあるので、自分たちも日頃ガサガサしてないか気を遣います。建物は鉄筋なんですけど、やっぱり古いから……」(祐太さん)

「でも、みんなお互い様!みたいなところが建物全体の雰囲気としてはあるんですよね。ここに住まわれている方はみなさんとてもおおらかなので、そういった意味ではゆったり過ごしやすいなと感じる部分もあります」(彩香さん)

バス・トイレ別だったらよかったけど…いい面も?

祐太さん

ユニットバスなので、シャワーを浴びたあとに靴下でお手洗いに行けないのはちょっとストレスかなぁ。それにシャワーの水圧はめちゃくちゃ強いんですけど、排水が追いつかないこともあるんですよね」(祐太さん)

「あとは、空間自体は狭くないんですけど、バスが小さいので湯船に入りづらいところもあります。すごい疲れたときとか、やっぱりお湯に浸かりたいなと思うので」(彩香さん)

ふたり

「でも、逆にそれで銭湯に行く機会も増えたりして。それ自体が楽しみになったり、トイレ掃除は風呂掃除の延長で一気に水浸しにできるから、ある意味ラクだな〜と思える面もあるんですよね。

欲を言えば、やっぱりバス・トイレ別がよかったかもしれないけど、ユニットバスだからこそ見えてきた楽しい部分も確実にある気がします」(祐太さん)

これからの暮らし

ダイニングで団欒するふたり

「基本的にはノープランですが、いつか田舎に住みたいとは思っています。具体的には、長野の松本らへんです。

何より自然が好きだから田舎に住んでみたいと思いますが、僕は東京でしか住んだことがないから、今はちょっと東京で満足しちゃってる部分があるというか。だから、1度ここから離れた場所に住んでみたい願望があります」(祐太さん)

「古いお家を手入れして、住んでみたいよね。ちょっと癖のある家というか、手のかかる家の方が住みがいがある……というか」(彩香さん)

ベランダとリビングにいるふたり

一見ネガティブに思えることでも、見方を変えたり、ひと手間加えることでポジティブなものへと変換していく。

祐太さんと彩香さんの暮らしには、多くの行動が制限されている世の中でもストレスフリーに生きるヒントが詰まっていました。

Photographed by Kayoko Yamamoto

木村 祐太さんの自転車記事はコチラから↓

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門岡 明弥

音楽と言葉の仕事をしながら、ときどき山に登ったりスキレットで燻製作ったりするピアニスト。音大生のwebマガジン『オトラボ』を不定期で更新しています。

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北欧、ストリート、DIY、アウトドア。リアルでさまざまな「暮らしのあり方」にフォーカスすることで、「自分にとって、一番いい暮らし」を探っていく…。連載「みんなの部屋」はスタイルを探求する旅です。

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