そこで、さまざまなジャンルで活躍する方々に「10年後も手放さない」思い入れのあるモノを、31×34.5cmという限りのある『ROOMIE BOX』の中に詰め込んでもらいました。
なぜ、「10年後も持っている」と考えるのか―――。大切に持ち続けるモノについて語る姿から、その人の暮らしが徐々に見えてきます。
Homecomings・福富優樹

1991年5月生まれ石川県出身。Homecomingsのギター担当。最近のマイブームはランディ・ニューマン。好きな食べ物はかけ蕎麦と中華。パッと思いつく好きな映画は『ロイヤルテネンバウムス』『スモーク』『ファーゴ』『トュルーマン・ショウ』。ビルマーレイが大好き。シンプソンズも好き。映画の上映とバンドのライブ、zineの制作が一体となったイベント「NEW NEIGHBORS」をイラストレーターのサヌキナオヤとバンドの共催で定期的に行っている。これまでの上映作品は『アメリカン・スリープオーバー』『ヴィンセントが教えてくれたこと』『スモーク』『ゴーストワールド』。Homecomings・福富優樹がストーリーを、イラストレーター・サヌキナオヤが作画を手がけた漫画作品『CONFUSED!』の単行本が発売中。
5月には、メジャーデビューアルバム『Moving Days』をリリース。アルバムに収録される『Herge』(読み:エルジェ)がテレビ東京ドラマ25「ソロ活女子のススメ」のエンディングテーマに決定。
10年後も手放さないモノ
15年前から使い続けているコンポ
小学校を卒業したときに買ってもらった、CDが5枚、MD、カセットテープが入るコンポです。
購入当時、時代的にまわりのみんなは音楽をMDで聴いていたんですけど、僕はカセットテープだったんです。うちにあるのが、カセットテープとCDのデッキしかなかったので。それで、大好きなスピッツをカセットテープに移して聴いていたんですよ。
だから、買ってもらうとなったときは、カセットテープもCDも、MDも全部聴けるデッキじゃないとイヤだったんですよね。
ただ、カセットテープについては、当時は主流ではなかったので、デバイスとしてあんまり販売されていなくて。それで見つけたのが、このコンポでした。
でも、中学生になりお小遣いでCDを買うようになって、カセットテープはあまり使わなくなりました。いまは、スマホでカンタンに音楽を聴けるけど、当時はそんな感じじゃなかったから、CDが5枚入るのってとても画期的だったんです。寝る前にCDを5枚コンポに入れて、寝付くまでずっと聴いていましたね。その5枚を毎日選ぶのが楽しくなっていて。
カセットテープやMDはどんどん聴かなくなっていくんですけど、このコンポはずっと壊れなくて、ずっと使ってきました。それから、大学に入ったときにレコードプレーヤーを買ったんです。でも、レコードプレーヤーって赤白端子が必要だから、プレーヤー単体じゃ音が出ないんですよね。それで、このコンポにつないで聴いていたんです。
子どものころからカセットテープ、CD、MD、レコードって聴くメディアは変わっていくんですけど、ずっとこのコンポの音で聴いているからか、これが一番いい音な気がするんです。小学校卒業時だから……もう15年くらいずっと使っていますね。これからもずっと使いたいなって思います。
あ、余談なんですけど、カセットテープってレコードみたいにA面・B面に分かれているじゃないですか。だから当時、たぶん30分ずつとかで区切ってお母さんが曲を入れてくれていたんです。それからスピッツのレコードを集めるようになって気づいたんですけど、カセットテープのA面・B面で区切っていたのとまったく同じところでレコードのA面・B面が区切られているのがあるんです。
スピッツってアルバムによっては曲順を変えているものもあって、そうじゃないものは、大体僕のカセットテープと同じ並びになっていて。それがうれしくて。
CDのアルバムだと一続きで、最初から最後まで聴けるじゃないですか。でもカセットテープやレコードだと「たしかに、ここで区切れる感覚が昔からあったな」って思えるんです。
“ケアする楽しさ”を知ったレコードプレーヤー
このレコードプレーヤーは比較的新しいもの。
バンドとしての活動を始めるか始めないかくらいのときに、Homecomingsのライブをしているなかで出会う友達の多くがレコードを集めていて。その頃DJとバンドがといっしょに出るライブが多かったんですよね。
そのライブで「7インチレコードで曲をかけていく」っていう、そういうカルチャーに初めて出会ったんです。それで、「なるほど、レコードってかっこいいな」って。
そこから、当時1,000円くらいだったスピッツのレコードを集めていきました。最初は安いレコードプレーヤーを使っていたんですけど、東京に引っ越すときにちゃんといいのを買おうと思って、買ったのがこれ。定価だといいお値段するんですけど、たまたまハードオフでお得に買えました。
あと、いままで、“レコードプレーヤーをケアする”ってイメージがあまりなかったんです。ほこりを取って綺麗にしたり、針を変えたり、その針をそーっと落とすみたいな感覚がなくて。でもこのレコードプレーヤーにしてから、そういう楽しさも知りました。この1年くらいの話なんですけどね。
「レコードプレーヤー」っていうモノの接し方が変わって、それが楽しくて。
ウェス・アンダーソンのDVD
僕、「物」がすごい好きで、映画にしても音楽にしても。
映画や音楽はひとつひとつ買わなくても見たり、聴いたりできるじゃないですか。でも、できれば「物」で持っておきたくて。Netflixの映画でもサントラがレコードで出ていたらそれは欲しいし、映画もレンタルで観たものがよかったらDVDで持っていたい。
そんななかでもウェス・アンダーソンのDVDはとても大切。ウェス・アンダーソン2作目の『天才マックスの世界』が大好きで、たくさん思い出が詰まっているんです。たぶん、10年後とかも見続けるだろうし、パートナーができたらいっしょに観たいし、おじいちゃんになっても観続けたい大好きな作品です。
最近の彼の作品は、結構スケールが大きいんです。最初から3作品目くらいまでは街のことやその家のこと、家族のことのような小さい世界が描かれていて。そのスモールワールドみたいな世界観が好きなんです。
モノづくりにおいても、すごく影響を受けていて。ウェス・アンダーソンから受けた影響って計り知れないなって思います。音楽をやるうえでも。
ファンタジーじゃないのがいい『タンタンの冒険』
図書館とかにあるイメージですよね、『タンタンの冒険』って。でも大人になってから読んでみてもすごくおもしろくて、色づかいもとっても素敵なんですよ。
とくに、月のシリーズが好きで。60年代とかってたぶん人類が初めて月に行くみたいなとき。その「月に行く」ということに世界が注目していたころだから、それをストーリーに反映させていて、ファンタジーじゃないのがいいなって思います。
『タンタンの冒険』って結構現実にリンクさせている部分があって、実際に起こっていた世界情勢とかも描いているんですよ。
冷戦のことや差別のことをリアルに取り扱っていて、いまでこそ、そういった作品ってたくさんあると思うんですけど、『タンタンの冒険』が販売された当時だとなかなかなかったんじゃないかって思います。
福富さんの10年後
小学校のころからサブカルみたいなのは好きだったんですけど、当時の写真を見たら着ている服が『PIKO』とかだったんです。そんな感じの子どもが家に帰ってスピッツやくるりを聴いてたんやなって思うと不思議ですよね(笑)。
でも音楽だけじゃなくて、ポケモンとかもやったり、毎週オンエアバトルみたりしてたし、金曜ロードショーも楽しみにしていたり、いまと好きなものは変わらない気がします。これからも好きなものは変わらない気がしますし、コンポやレコード、大切な映画ともいっしょに過ごしていきたいなって。
福富さんのお部屋はコチラから↓
2021年5月12日に映画『愛がなんだ』の主題歌「Cakes」やすき家CMソングとなった「Pedal」等が収録されるメジャーデビューAL『Moving Days』をリリース。収録曲「Herge」が4月から放送中のテレビ東京の新ドラマ『ソロ活女子のススメ』のエンディングに。
Homecomings 公式サイト:
https://homecomings.jp/
Instagram:
https://www.instagram.com/_homecomings_/
Twitter:
https://twitter.com/homcomi
Photographed by Kaoru Mochida
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