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とっておきの一台にと意気込んで、自分のこだわりをあまさず詰め込みたいと思ってしかるべき、初めてのカスタムバイク。

洋服についてはさることながら、あらゆるモノ選びに一家言あるビームススタッフなら、なおのことでしょう。でも、だからこそ。百々さんは、いっさいのこだわりをかなぐり捨て、あえてぜんぶを“人まかせ”に。

百々さん

プロに全幅の信頼を寄せて、身をゆだねてみること。それができたのは、彼自身がアパレル業界において、ほかならない“プロ”だったがゆえ。

自分では選ば(べ)なかったモノに触れることができるかもしれない。見えなかった世界が突如として眼前に広がるかもしれない。出会うはずのなかったひとに出会えるかもしれない。毎日の移動がもっと楽しくなるかもしれない。

そのことを、だれよりも知っていたから。

名前(職業):百々 南さん(PR)
年齢:25歳
愛車:SURLY 「Steamroller」
価格:およそ23万円
自転車歴:5年 

移動範囲のみならず、人間関係まで広がった

自転車を押しながら歩く百々さん

ビームスでプレスを務める百々さんが、ファーストバイクを手に入れたのはいまから5年前のこと。当時Pilgrim Surf+Supplyの店頭に立っていた彼は、BLUE LUGのポップアップイベントをきっけかにどっぷりとその世界にのめり込むようになったそうです。

とにかく、BLUE LUGのスタッフのみなさんの親身でフランクな人柄に惚れ込みました!

自転車にまたがる百々さん

ところでBLUE LUGのポップアップイベントといえば、先日当連載に登場してくれた西村さんも、たしかそのイベントをきっかけに自転車を買ったんじゃなかったっけ!

そうなんです。じつは、西村が自転車を買った直後に僕も欲しくなって。イベントが終わってしばらくしてから、彼にBLUE LUGに連れて行ってもらったんです。

かくして、いまでは仕事の日にもオフの日にも、移動ツールとして欠かせない相棒に。

買い物に出かけたり、河川敷を走ってみたり、ひとりでどこかに出かけるときにはもちろん、同じく自転車好きなビームススタッフたちと一緒に遠出したりすることもあるそうです。

すっかり、自転車がコミュニケーションツールになっています。年齢も職種も関係なく、これまでまったく関わりのなかったひとと交流する機会も、グッと増えましたね。

物理的な移動範囲がぐんと広がったのはさることながら、人間関係の境界線まで、自転車が軽々とっぱらってくれたようです。

初めてのカスタムバイクを、あえて“おまかせ”に

百々さんと自転車

フルオーダーにてカスタムした自転車のベースは、SURLYのなかでも人気の高い街乗りフレーム「Steamroller」。

なんといっても目を引くのは、独特のカラーリング。茶色とも、バーガンディとも、小豆色ともつかない、形容しがたいユニークな色。あまり多くのひとが選ぶ色ではなさそうだけど、どうしてこの色に塗装しようと思ったの?

洋服との相性がよさそうだな、と思ったんです。黒やシルバーも無骨でかっこいいですが、少し色を入れたかった。でも、けっこう明るい色の服を着ることが多いので、そうした洋服にも馴染むようにとこの色に行き着いたんです。

洋服との相性を優先したがゆえの最適解というわけ。言われてみると、この日着てきてくれた目が覚めるようなブルーのブルゾンも、二割り増しに引き立っている気がするな〜!

百々さん足元

ちなみに、自転車に乗るからといって、それに応じて身につけるものを制限しないのが百々さんのマイルール。

丈の長いコートだって、テーラードジャケットだって、革靴だって、気にせずなんでも着る。毎日乗る自転車だからこそ、そうした無理のなさが、なにより大事だったりするんだよね!

で、フレーム選びとカラーリング以外はというと、「ほかは、ぜんぶおまかせしました」とさらり。いまでもお世話になっているというBLUE LUG 幡ヶ谷店のスタッフ・かねやんさんに、カスタムは丸投げしちゃったのだとか。

腰掛ける百々さん

伝えたのは、「毎日乗ることのできる、タフでスタイリッシュな自転車」という最低限のイメージだけ。できあがった一台には、デイリーユースすることを想定した安心・安全のディテールが随所に散りばめられています。

タイヤ

たとえばタイヤは、道路の段差や隙間に持って行かれないように太めのものをチョイス。

ペダル

ペダルも、足をしっかり捉えて力が伝わりやすいワイドなものに。

フレーム

SURLYのブランドロゴは、百々さんの遊び心で、あえて逆さに。無二の作法で数々の定番品にアッと驚く別注をほどこしてきたビームスの精神が、こういうところに息づいているな〜!

ハンドル

最近付け替えたというハンドルは、かねやんさんが企画した商品だとか。

見た目はやんちゃな感じですが、乗り心地は抜群です!

かご

また、キャリアはもともと後ろにつけていたのを、最近オーバーホールに出したタイミングで前方に移動させてもらったのだとか。

年に1度はオーバーホールに出すようにしています。そのタイミングで気になっているところをカスタムすれば、工賃がかからないのでオススメです!

自分の理想への近道は、意外にも“他力本願”?

百々さん

ファーストバイクだからこそ、あらゆる細部まで自分のこだわりを詰め込みたくなってしまいそうなもの。

どうしておまかせにしようと思ったのか訊いてみると、返ってきたのは、「プロだから」というきっぱりよどみない答え。

彼らは自転車のプロなので、おまかせしてしまうのが、まず間違いないかなと。

単純明快。おまかせという選択に迷いがなかったのは、きっと、彼自身もひとりの“プロ”だから。

自転車前方

1年前までは僕も店頭に立っていました。

『なにを着ればいいかわからない』というお客さんも多くて、そんなときには、聞き出したイメージから、洋服のプロとして最適な提案する。それと同じだと思うんです。自転車については僕は素人だから、自分の感覚を頼りにするより、きっとプロにまかせてしまったほうがいい。

百々さん

かくして、いわば他力本願のたまものとしてできあがった百々さんの愛車。

自分の感覚だけを頼りにしないことが、遠回りなようで、じつは自分の理想に近づける最短距離になることもあるようです。

百々さんと自転車を押す後ろ姿

そしてそれは、なにも自転車や洋服だけに限ったハナシではありません。

家具に興味が湧いてくれば、社内の詳しいスタッフに訊いてみる。サーフィンをはじめてみたいと思えば、長年やっている先輩に海に連れていってもらう。なにかにつけて、入り口はいつも、その道のプロの手引き。

とりわけ、個性豊かなスタッフの集まるビームスには、どんなことにおいても専門家がいるはず。そんな環境に慣れ親しんでいるからこその、百々さんの自然な作法なのかもしれません。

Photographed by Masahiro Kosaka

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