ROOMIE編集部

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キャンプ場の生い立ちを知れば、キャンプはもっと楽しくなる――。その理由を知るために、ROOMIE編集部がお邪魔している埼玉県ときがわ町にあるキャンプ場「ときたまひみつきちCOMORIVER(コモリバ)」。

前回は、「ときがわ町観光振興計画」(以下、第一次計画)が終了以降、町の観光が頭打ちとなった状況の中で、どんな期待を込めてオープンしたのか、「コモリバ」の誕生秘話をお伝えしました。

左から國學院大學法学部 准教授 稲垣浩先生、ときがわ町役場 観光推進室 伊得浩さん、企画財政課 荻野実さん

今回も、地方自治がご専門の國學院大學・稲垣浩教授と一緒にときがわ町職員の伊得さんと荻野さんにお話をうかがい、キャンプやBBQもできるグランピングリゾートのオープンをきっかけとして、ときがわ町がどのような観光戦略に取り組んでいるのか町の目指す未来とキャンプ場の関係を探っていきます。

持続可能な取り組みを実現するために必要なことは

写真提供:コモリバ

ときがわ町では、観光振興により町を盛り上げるために「第二次ときがわ町観光振興計画」(以下、第二次計画)に取り組んでいるとのことです。豊かな自然を生かした観光コンテンツの整備にも力を入れているそうですが、実際に訪れた稲垣先生はどのような印象を持ったでしょうか。

今日は、かしこまってスーツを着てきてしまったのですが、実は私も山登りやウィンタースポーツなどのアウトドアが好きなんです。ときがわ町の自然は魅力的ですよね。都心からもアクセスが良いですし、こんなことならもっとラフな格好で帰りに自然を満喫していけばよかったと少し後悔しています(笑)(稲垣先生)

ときがわ町の最大の魅力は「自然の豊かさ、景観のすばらしさ」。とくに、ベストシーズンの春と夏には多くの観光客が訪れています。

写真提供:コモリバ

第一次計画ではその時期に合わせて誘客イベントを開催していましたが、一時的な盛り上がりの反面、運営側が疲弊しがちだったという反省もありました。今後は、観光の取り組みがもたらす効果と負担のバランスを保ちながら、持続可能な仕組みを作っていく必要があると思います(伊得さん)

さまざまな分野で持続可能な取り組みがおこなわれていますが、それは「観光」も例外ではありません。

他の自治体でも持続可能な取り組みに苦心されていると聞きます。イベント運営などは、どうしても無償で労働力を提供してくれるボランティアに頼る体制になってしまいます。それだとやはりどこかで無理が生じて継続が困難になることもあります。

訪れる人から、無理なくお金をいただく仕組みづくりも必要ですよね。お金を払ってまで来る人たちは潜在的にその町に好感を抱いているはずなので、マナーも良く、何度も訪れてくれるような町の応援団になってくれるでしょう。お金を受け取ることで、町や地域の人々にも責任感のようなものが生まれるかもしれませんし、まちづくりへの意欲やアイデアも活発になりそうです。

全国的な少子高齢化の中では、このような“関係人口”を増やしていく取り組みは重要です(稲垣先生)

確かに先生のおっしゃる通りだと思います。第一次計画に掲げていた『ひとづくり・ものづくり・ことづくり』に、第二次計画ではプロモーション(情報発信)を加え『ときがわ町を応援したい、関わりたいという人材と一緒になった観光のまちづくり』を掲げています(伊得さん)

行政と民間、町内の連携プレーが必要

ときがわ町の周辺には、隣の秩父・長瀞や、もう少し先の群馬の沼田や水上など、自然の豊かな地域が多くあります。他の魅力ある地域とどう差別化を図ってときがわ町の魅力を打ち出しているか、「研究者の立場からしても、自治体の取り組みに関心がある」と稲垣先生。

そのことについては、『いかにして観光客の町内滞在時間を増やしていくのか』がカギになると感じています。キャンプ場内だけで楽しむのではなく、周辺でも楽しむことがたくさんあって、ときがわ町をもっと好きになってもらう。そのためには町内での連携プレーも必要になってきます。

幸いなことに、ときがわ町には町が整備した観光施設がすでにそろっていますが、それを動かすのは人です。人材の横のつながりが欠かせないと感じています(荻野さん)

最近は、町内にお洒落なカフェが誕生したり、温泉施設とコラボした低山ハイクのイベントが立ち上がったり、人材の連携もよく見られるようになったのだとか。

町の活性化は行政だけの力ではどうにもならないところがあります。例えば横のつながりのきっかけを行政が担い、実際に観光に携わる人たちが実現できそうなアイデアを出し合うなど、行政ができること、民間ならできることをお互いに認識して連携を取りつつひとつずつ進めています。そうすることで、町が目指すゴールが観光に関わる人や住民にしっかり伝わっていくのではないかと思っています(伊得さん)

宿泊者へ提供する料理やBBQメニューには、ときがわ町の食材が使用されています。
写真提供:コモリバ

そこへ、稲垣先生が日本有数の温泉地である湯布院の再生例を紹介してくれました。

湯布院も同じように地域に元からある資源と人々のつながりを通じて再生した地域です。住民の間でさまざまなアイデアを出し合いながら映画祭の企画や、まちなみの保存を進めたことが、湯布院の価値を高めていったわけです。ときがわの資源を見つけて人々に届けることができる仕組みづくりは重要です(稲垣先生)

実際、昨年はコロナ禍の影響からか、アウトドア目的の観光客が予想以上にときがわ町を訪れたのだそうです。「人材の連携も生まれつつあるので、県外のお客さんが町内の施設を周遊して楽しんでくださるといった好循環も生まれています」と荻野さんは話します。

町の観光施設「都幾川四季彩館」では、露天風呂や足湯を楽しむことができます。

写真提供:ときがわ町

林業や観光、人材などいくつもの要素がもともとあったわけですよね。それが、コモリバというキャンプ場ができたことで、それぞれの要素を横につなぐ収束点としての役割を担い始めているのだと思います。キャンプ自体も、キャンプ場で家族や友人同士による夏場のバーベキュー、といったものから、そのスタイルは変わってきています。

例えば、冬場でも季節を選ばずにキャンプを楽しむ愛好家も増えていますし、ソロキャンパーも多く見られます。最近では、山を買う人たちも現れました。このように、キャンプ文化が多様化することによって、ときがわ町のような中山間地域に訪れる機会が多くなり、その地域や人々との接点が増え、関わり方も変わってきているように思います。

キャンプを通じて、ただキャンプをする場所を超えた、その町のバックグラウンドがわかると面白いですよね。その点でも、ときがわ町やコモリバが、キャンプに着目したことは良かったのではないかと思います(稲垣先生)

観光客も住民も、魅力や楽しさが感じられるまちに

始まったばかりの第二次計画。この計画のゴールである2027年までに、どのような町の姿を目指しているのでしょうか。

そうですね、私はときがわ生まれときがわ育ちなので、計画の推進により住民が誇りに感じる町にしていきたいと思います。例えば県外から訪れた友人やお客さんを山に案内したり、おいしい食事ができるお店を紹介したり、そんな気軽にまち自慢ができる人が増えたら素敵だなと思います(伊得さん)

コモリバのような民間のアイデアの柔軟さは行政にも必要だなと感じました。これをひとつのモデルとして、さまざまな分野に広げ、キャンプに訪れた人たちも、住民も魅力や楽しさを感じられる町に発展してくれたらよいなと思います(荻野さん)

写真提供:コモリバ

前後編にわたってお送りした埼玉県ときがわ町とグランピング施設「ときたまひみつきちCOMORIVER(コモリバ)」のお話。皆さんの“お気に入りキャンプ場”も、もしかすると地元の人たちに支えられているのかもしれません

キャンプ場を訪れる時は、いつものメニューにひとつ地元食材を加えてみたり、キャンプの前後で少しだけ町を探索してみたりするのはいかがでしょうか。

取材に同行してくれた稲垣先生が教鞭を執る國學院大學のオウンドメディアでは、アウトドアをアカデミックな立場から考える連載企画「ランタントーク」を掲載中です。子育てと自然の関係性や、なぜ人は焚き火に見せられるのかといったテーマを、さまざまな研究分野の専門家が解説します。こちらもぜひご覧ください。

稲垣浩先生

國學院大學法学部准教授。専門は行政学・地方自治論。東京都立大学大学院社会科学研究科政治学専攻博士課程単位修得退学。北海学園大学法学部講師を経て現職。博士(政治学)。主著に『 戦後地方自治と組織編成 「不確実」な制度と地方の「自己制約」 』(吉田書店)などがある。

ランタントーク vol.1 自然<前編>『キャンプブームの中で探る 自然との調和を大切にする「日本的アウトドア」とは』(連載第1回)
ランタントーク vol.1 自然<後編>『なぜ今、キャンプに惹かれるのか 自然の中で育まれる「感性」が、人生にもたらすもの』(連載第2回)
ランタントーク vol.2 成長<前編>『キャンプと子ども アウトドアで知恵を絞る「冒険教育」の重要性』(連載第3回)
ランタントーク vol.2 成長<後編>『キャンプが大人にもたらすもの サードプレイスとしてのアウトドア(連載第4回)』
ランタントーク vol.3 焚き火<前編>『なぜ焚き火に癒されるのか 人類の進化と火の意外な関係とは』(連載第5回)
ランタントーク vol.3 焚き火<後編>『焚き火がこれほど魅力的な理由  「囲む火」から「向き合う火」への変化とは』(連載第6回)

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Sponsored by 学校法人國學院大學

Photographed by Kaoru Mochida
Text by Rie Omori

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