ROOMIE編集部

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高い商品力とサービス力で、私たちにワクワクとドキドキを届けてくれる「LIVING HOUSE」。

大阪きっての家具の街・堀江で前身が産声を挙げてから約80年の月日が経ち、現在は3代目となる北村甲介さんがブランドを守っています。

コロナ禍でみんなの意識が住まいや暮らしに向かうなか、インテリアブランドとして取り組んでいきたいことは。そしてその思いはどのようにして社員たちに共有されているかも気になります。

今回は、「LIVING HOUSE」のブランドとフィロソフィーについてお話をうかがいました。

1,000軒ものお宅に家具を配送した修業時代の経験がブランドコンセプトに

LIVING HOUSEの北村社長

──おじいさまの代からすると、3代目。北村さんが家業を継いだ経緯を教えてください。

祖父が大阪でリビングハウスの原点となる会社を作ったのは1942年のことです。祖父は当時としてはめずらしくソファやダイニングチェアなどの、いわゆる「張り物」といわれる洋家具を作る職人でした。

後を継いだ父は、職人としてではなく家具の小売業を始めました。父のときは家業を継いで当たり前の時代でしたが、父は僕に家を継げなんて一度も言ったことはありませんでした。

僕もその気はなかったので、東京の大学を出てからアパレルのベンチャー企業に就職。でも続かなかった。この先どうしようかなと考えたときに、父が以前から言っていた「日本のインテリアビジネスは遅れているから、いいチャンスになる」という言葉を思い出し、父に相談したのがこの道に入ることになった経緯です。

しかし、残念ながら僕は家具に興味がなかったんです。父に打ち明けたら「お父さんもそうやった」と(笑)

父には「やってみて、やっぱり家具に興味が持てない、そしてビジネスにはならないと感じたら辞める」という交換条件を出しました。自分から継ぐと言い出したくせにね(笑)。でも、家具への興味とビジネスへの期待、その2つを十分に感じられたので今に至っています。

──厳しい修業も経験したそうですね。

家業を継ぐ前に家具の世界を見たほうがいいだろうと、父が以前取引していた高級家具ブランドに話をつけてくれました。

インテリアの修業なら販売かなと思っていたら、入社の3日前に父から電話があって「どうやら配送らしいぞ」と。免許こそ持っていましたが長く運転をしていなかったので、教習所の講習を受け直し、入社から2週間後には2tトラックに乗っていましたね(笑)。

配送といっても家具を届けるだけではありません。組立・設置までをおこなうので、長いときは1件4~5時間になることも。大学時代の友人は一流企業に勤めて高いお給料をもらうなか、片や僕はタンクトップに短パン、汗だく(笑)。腐りかけたこともありました。

LIVING HOUSEの北村社長

でも思ったんです。タダで人様の家に上がらせてもらって、家具だけでなく間取りや収納まで見せてもらえる経験は大きな学びになると。

また、たくさんのご家庭へ伺うなかで、せっかく立派なマンションに住んでいるのに「家の中は案外そうでもないな」と感じることが多かったんです。

これが父が言っていた「日本の家具ビジネスは遅れているということか」と腑に落ちてからは、頭を切り替えることができました。

1年半で1,000軒を超えるお宅をまわらせてもらったと思います。家具は買っても持ち帰ることはできませんから、お客様の喜びはお届けしたときがMAXです。そんな瞬間に立ちあえたことも含め、僕にとっては大きな財産になっていますね。そんな修業を経て2004年に入社し、2011年、33歳のときに社長になりました。

自分が目指す生き方でもある。「品のある混沌」がテーマの店づくりとは

LIVING HOUSEの北村社長

──現在は全国に28店舗を展開していますね。

社長になったときは6~7店舗でしたから、そうですね。大きくなりましたね。家具は人生で何度も買い替えるものではありません。それでも足を運んでいただけるように、身近なスリッパを販売したりして家具屋の垣根を下げる工夫をしてきました。

僕たちは会社のことを説明する機会には、「リビングハウスは空間時間価値創造企業である」とお伝えしています。つまり、空間で過ごす時間の価値をつくる会社でありたいということ。

現在は家具だけでなく、家電や花のサブスクリプションサービスも行っていますし、それ以外にもさまざまに派生した展開をしています。大きな変化というよりは、バージョンアップしていきたいという感じです。

LIVING HOUSE

第1号店となる堀江店


よく「そのアイデアはどこから?」なんて聞かれたりするのですが、僕は家具が好きでこの世界に入ったのではないことがかえってよかったのかなとは思っています。

この業界で働く人は、かなりの確率で「好き」で入ってくるでしょう? 3度の飯より家具が好きっていう人が多い。僕はそうではないぶんビジネスを客観的に展開できますし、常に健全な危機感を持っているので俯瞰して見ざるを得ないんですよね。

──リビングハウスのコンセプト「あなたの暮らしに魔法をかける」の「魔法」とは?

LIVING HOUSE

本社の会議室には、商品でもあるアートが飾られていました。手に届く価格でアートが買えるというのも、リビングハウスの魅力です。

これも修業時代の配送の体験に基づいています。家具を入れ、配置をかえると、空間の雰囲気がガラリと変わる。そのビフォーとアフターを比較したときに、「魔法」のようだと思いました。そんな体験を、家具を通じてご提供したいという思いをコンセプトに込めました。

ちょうど今、リブランディングをおこなっているんです。キーワードは「品のある混沌」。

店づくりに際し、僕は以前から「いい意味のごちゃごちゃ感を出せ」と言ってきました。カオスを整理しながら品を出すって、言葉では説明しにくいですが、それなりにできていると思います。

品があるといっても、ごちゃごちゃ感は否めないので、万人受けはしないと思います。でもそれが独自性であり、差別化。理解し、共感してくれる人にアプローチして、それを磨き続けるのがブランドだと思っていますし、万人に受け入れられようとして個性をなくすことはしたくないですね。「品のある混沌」は、僕がそう生きたいというテーマでもあるんです。

SNSでは学べない。時間とお金と労力をかけて「自己投資」をせよ

LIVING HOUSEの北村社長

──社員やスタッフには、どんな思いを共有していますか?

接客に関して言えば、礼儀作法はきちんとわきまえつつ、仲のいい友達にアドバイスするような親身さを忘れないでほしいと伝えています。

先ほどもお話ししたように、家具は購入頻度が低いものですし、うちで扱うものは松竹梅の「梅」ではありません。決して安い買い物ではないからこそ、売り上げが下がったとしても、プロの目線を持ちながらその方の暮らしや思いにあったものを親身に提案してほしいと思っています。

若いスタッフたちには「自己投資はすべき」とよく話しますね。自分に時間とお金と労力をかけようということです。たしかに今は雑誌やSNSで世界中の素晴らしい情報や写真にはいくらでもふれることができます。しかし、体感しているかといえばそうではありません。知っているつもりでも、二次元の写真と三次元でとらえるインテリアでは大きな違いがあります。

そこですすめているのが「超一流ホテルへお茶を飲みに行きなさい」ということ。ホテルはインテリアの最高峰であり、サービスの最高峰でもあります。泊まると高いですが、お茶なら2,000円で済みます。2,000円を高いと思うか、たった2,000円で世界のお金持ちと同じ空間とサービスが体感できると考えるか。高いと思うなら、この仕事はやめたほうがいいですね。

LIVING HOUSEの北村社長

「自己投資しろ」と言うだけでなく、会社では福利厚生で自己投資を後押しする仕組みも提供しています。「インテリアLOVE制度」は、店で扱う家具を給与天引きで買える社員販売制度。支払い金額を月々1万円以下に設定することで、若い世代でもいわゆる“いい家具”にふれることができ、結果、接客にも生かせます。

また、「海外逃亡制度」は、1年に一度イタリアで開催されるインテリア業界最大の展示会「ミラノサローネ」についてきてもいいよという制度。渡航費や宿泊費の一部を負担し、差額は会社が立て替えて、分割で天引きします。この業界にいるならば、一流のものを見たほうがいいに決まっています。他の会社では社長やバイヤーレベルしか行けませんが、うちはけっこうな人数で行くので「どんな会社だ」って驚かれますよ(笑)。

人生で二度とないビジネスチャンス。製品力とサービス力で期待に応えたい

LIVING HOUSEの北村社長

──コロナ禍の「おうち需要」は、ビジネスチャンスと考えていますか?

それはもうめちゃめちゃ考えています。生きている間にこんなチャンスはもう二度とないというぐらい。緊急事態宣言下の昨年春に新店舗を2つ出すことを決め、秋にオープンしました。

僕たちのビジネスという点はもちろんですが、世の中の流れや多くの人の意識が、これほど住まいや生き方に向かうことになるとは思ってもみませんでした。だからこそ、僕たちは製品力、接客力、サービス力を磨き続け、その期待に応えなければいけないと感じています。

──現在は、小売はもとより、店舗プロデュースやマンション販売支援、同業の再生支援までおこなっています。事業を展開するなかで、変わらない哲学は?

家具・インテリア業界は一部で盛り上がりを見せる一方で、地方では落ち込みを続けています。住宅着工数や婚姻件数の減少や、それに伴う家具需要の低下、低価格帯のブランドの台頭によるデフレの加速で、業界全体を見ても疲弊しているなという印象を受けます。

そこへ、リビングハウスが持つソフトとハードが生かせないかと取り組みをおこなっているところです。業界を盛り上げながら、自分たちも成長していけたらと願っています。

大切にしているのは「挑戦と革新」です。それがないと企業は衰退してしまうと考えるからです。失敗したら会社が倒産してしまうというレベルになると、それは挑戦ではなく「博打」ですけど(笑)、複雑骨折ぐらいなら挑戦したい。ましてや、捻挫やかすりキズだったら買ってでも挑みたい。そして、今あることを良くしていく「革新」との両軸で、会社を成長させていきたいですね。

リビングハウスのフィロソフィーは「挑戦と革新」。きっとこれからも変わらないと今日はお話ししておきますね。

LIVING HOUSE

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Photographed by Kosumo Hashimoto
Text by Rie Omori

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価値観が多様化する現代、ブランドはどのようなフィロソフィーの下に、モノやサービスを提供しているのか? 彼らが描く未来像やあり方を解き明かすことで、我々もまた、未来に向けてどのようにあり得るのかを考えていきます。

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