髙阪正洋(CORNELL)

髙阪正洋(CORNELL)

10年という月日が経つと、いま住んでいる部屋も、立場や環境も大きく変わってきます。ただ、たとえ環境が変わっても「これだけはずっと持っていたい」というモノが、ひとつはある……。

そこで、さまざまなジャンルで活躍する方々に「10年後も手放さない」思い入れのあるモノを、31×34.5cmという限りのある『ROOMIE BOX』の中に詰め込んでもらいました。

なぜ、「10年後も持っている」と考えるのか―――。大切に持ち続けるモノについて語る姿から、その人の暮らしが徐々に見えてきます。

BEAMSコミュニケーションディレクター 土井地博

株式会社ビームス 執行役員 経営企画室グローバルアライアンス部 部長 兼 コミュニケーションディレクター
ショップスタッフを経て、20年以上BEAMSグループの宣伝PR業務を行う。現在はグローバルアライアンス部長としてグローバルプラットフォームを持つ国内外の企業や組織、ブランド、人などと次世代に向けた新たなビジネスモデルを構築している。ラジオパーソナリティーの他、大学非常勤講師、 司会業、各講演など仕事は多岐にわたる。新たな試みとして「BE AT TOKYO」を手掛ける。
Instagram:@hiroshi_doiji

10年後も手放さないモノ

モノを通して、ストーリーを受け取る。エルメスもそのひとつ

革小物って、好きなんです。なかでも、10年といった長い年月使うことを考えたときに浮かぶのは、やはりエルメス。ファーストエルメスのブレスにはじまり、リングや財布と、さまざまなアイテムを使っています。

もちろん頻繁に買えるものではないので、仕事がうまくいったときのご褒美や記念日の品として、ちょっとしたものを買うようにしています。トレンドに左右されることもないですし、いずれ娘たちに譲れるものでもあるのかなと、最近は考えるようになりました。

見てのとおり、この名刺入れはすでにかなり長く愛用しています。でも、縫製なんかも全然ほつれてこないんですよね。小銭入れは、日本ではあまり使っている人を見かけない色。フタが小銭受けになっていて、個人的にはかなり使いやすい。

最近は大げさな財布もそれほど必要なくなってきているので、名刺入れと小銭入れ、そしてiPhone、それくらいで事足りる。もちろんひとつにまとめてもいいのですが、エルメスの名刺入れや小銭入れが、単純にモノとして好きなんですよね。

こうしたアイテムを所有したいと思うのは、それにまつわる背景や歴史といったストーリーを受け取るのが好きだからでもあります。僕は基本的にはミーハーなのですが、みんなが注目するものには、やはりそれだけの理由や背景がある。ヒットしているモノを読み解いていくと、何かしら、仕事へのヒントも隠れていたりします。そうやってビームスで働くなかで気づいたこともある。

食や音楽など、心を豊かにしてくれるものはさまざまありますが、僕にとっては、“モノ”もそのひとつなんです。

やちむん・琉球ガラスといった品は、歴史と文化を残すきっかけに

沖縄には、かれこれ30回以上訪れていますfennicaの仕事でもそうですし、以前沖縄の本の監修をしたこともあります。もちろん、プライベートでも大好きな場所。

移動距離も含めて、日本にいながらにして、ちょっと違った文化体験ができるのがいいですよね。沖縄とひとくちに言っても、八重山諸島、石垣島といったそれぞれの離島によって、まるで異なる文化がある。もちろん、悲しい歴史も。ぜんぶひっくるめて、多民族国家である日本の一面として残していかなければならないと思っています。

今日持ってきたやちむんは、読谷村にある北窯のもの。もともと焼き物は好きなのですが、なかでもやちむんは本当に使いやすくて、料理を置いたときのバランスもいいんですよね。一方、琉球ガラスはガラス工房清天のもの。コバルトブルーは、沖縄を彷彿とさせて美しい。

多くの人が沖縄を好きだから、やちむんや琉球ガラスといった品は、会話としても盛り上がります。だから、ギフトとして渡すことも多い。そうやって誰かと共有することで、その土地の文化を残そう、守ろうという気持ちが伝播していくと嬉しいですね。

僕は、親に連れられて、小学6年生のときまでに47都道府県を回っているんです。小さい頃から日本地図を開くのが趣味だった。そんな風に育ってきたので、いまでも、47都道府県ぜんぶに自分なりのストーリーを持っています。その土地の歴史・文化をモノを通じて届けたいという思いは、なにも沖縄に限ったことではないんです。

重いし、持ち歩きにくいけど、ライカを使いたかった

40歳を過ぎた頃に改めて考えてみると、僕には趣味がありませんでした。もちろん、旅行、アート、車、ゴルフ、洋服、好きなものはたくさんあります。ただ、周りの人と比べると、どれも“趣味”と呼べるほどではなくて。

そこで、もしこれからの人生で何かしらの趣味を持てるのであれば、それはカメラにしようと決めたんです。自分なりに、一度カメラと向き合ってみようと

これまでも、オリンパス、コンタックス、リコー、ソニーなど、フィルム、デジタル問わずさまざまなカメラを使ってきました。でも、ライカを使ってみたかった。重いし、持ち歩きにくいので、けっして理にかなっているプロダクトではありません。ただ、自分の中の気持ちも含めて、ライカで撮る写真って、やはり全然違うんですよね。

一方、iPhone 12 Proについては、同じようにデジタルの写真を撮るのでも、ライカで撮るのとはまったく異なる。その振り幅が面白いんですよね。余談ですが、純正カードケースにカード類をしまっておけるので、小銭入れと合わせれば財布要らず。いままで持っていた荷物が減った分、スマホを持ちながらにして、無理なくカメラを携帯できるようになりました。

直しながら10年以上着続けた、ライダースジャケット

すでに10年以上使っている、リック オウエンスのライダースジャケットです。

International Gallery BEAMSで買って、新品の状態から、ボロボロになっても直しながら着続けてきた。恥ずかしいほど体のかたちに沿ってしまっていて、もはや僕の抜け殻みたいですね(笑)。デザイナー本人が見たら、びっくりすることでしょう。

マルジェラやショットといった多数のブランドのライダースも持っているなか、これを持ってきたのは、本当に毎年欠かさず着ているから。リック オウエンスらしいデザインは効いているのですが、僕の中では、わりと定番的アイテムなんですよね。どんなアイテムも合わせられて、邪魔にならない。無地のキャンバスのような存在です。

アメリカを象徴する、大きいマグと小さいマグ

仕事で一番よく行く国はアメリカです。ビームスのルーツでもありますし、この会社に入って20数年経ちますが、いまだに興味は尽きません。

僕の中では、アメリカといえば、規格外の大きなマグカップ。家にあると場所を取るし、一度にこんな量のコーヒーを飲むこともない。でも、向こうに行くと、つい買ってきてしまうんですよね。

家にいくつかある中から持ってきたのは、シアトルのパイクプレイスにあるスターバックス一号店の限定マグ。過去にも行ったことがあるのですが、2月に仕事で行ったときに、また買っちゃいました(笑)。

一方、アメリカの都市で一番好きなのはサンフランシスコなんです。季節の感覚が日本に近くて、もともと移民が多かったため文化的な交流もある。海峡があって、幻想的な霧が出る。そんなサンフランシスコにほど近いサウサリートというところに、ヒースセラミックのファクトリーがあります。近くに行くと、必ず立ち寄る場所。

そんなヒースセラミックの中でも、このマグは、かの有名なレストラン「シェ・パニーズ」のためにつくられたもの。つまり、別注ですね。ビームスでも長く取り扱っていたブランドなので、思い入れがあります。

セイコーが刻む「時間」から感じる、スポーツ特有のストーリー

スポーツ選手のストーリーについてお話している際、土井地さんの目に涙が…

小さい頃から、とにかくスポーツが大好きなんです。これまでの人生において涙を流した映像トップ10を挙げたとしたら、たぶん半分以上はスポーツシーン。それくらい、掛け値なしに好き。

そこにおいても、やはりストーリーなんですよね。表面的な強い・弱いじゃなくて、「こういう経緯があって、ここまで結果を出した」とか。選手寿命という限られた時間の中で、自分の旬を読み取り記録を出し、そして、記録が塗り替えられていく……そういうのに弱いんです。ズルいですよ。ほら、話してるだけで、ウルっときちゃってますから(笑)。

セイコーさんとはこれまでにも何度か別注を手がけてきましたが、そこにおいては、うちのバイヤーやディレクターが本当にいい仕事をしてくれたなと。尊敬しています。

インテリアを邪魔せず、それでいて、「何それ?」っていう話題性もある。かつ、デザインもいい。もともと完成されているプロダクトなのに、でも、あえてそれをいじってしまうという発想も含めて、感服です。

BEAMSコミュニケーションディレクター 土井地博さんの10年後

月並みな言い方ですが、こういう状況に直面して、自分のモノサシや価値観が変わりました。いい意味で、森羅万象に対する意識や興味、価値が、誰の中でも変わってきていると思います。だからこそ10年後も、多様な目線でモノを見つめ、次の世代にシェアできる知識を得て、いろんな人と会話していく。それを大切にしたいと思っています。

わたくしごととしては、改めて、健康でいなきゃいけないなと。ただただモノを買えばストレスがなくなるわけではありませんが、モノを大切にすることによって何かが得られることは多い。きっと、心も豊かにしてくれる。

そういう意味では、美味しいものを食べることと一緒で、モノを手に入れるのって、すごく健康的なことだと思います。これからも、ずっと続けていきたいですね。

Photographed by Kosumo Hashimoto

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衣食住にまつわるもの、こと、ひとを、取材・執筆します。CORNELL。

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さまざまなジャンルで活躍する方々が「10年後も手放さない」思い入れのあるモノをご紹介。大切に持ち続けるモノについて語る姿から、その人の暮らしが徐々に見えてきます。

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