髙阪正洋

髙阪正洋

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ぼくたちの生活に深く、身近に関わるさまざまな企業やブランド。

でも、そのブランドが生まれた背景やフィロソフィー、社会に対する想いって、あんまり深くは知らないような……。そしてそこには確実に、ぼくらの暮らしにまつわるヒントが隠れているはずだ!

そんな特集「ブランドとフィロソフィー」 今回は、他の追随を許さないクリエイティブな発想と遊び心溢れるマインドで時代を牽引するBEAMSの、コミュニケーションディレクター・土井地博さんにお話を聞いた。 

土井地博
1977年、島根県生まれ。BEAMS コミュニケーションディレクター。大阪のショップスタッフを経て、メンズPR担当として上京。現在は、コミュニケーションディレクターとして、ヒトとヒト、モノとコトを、さまざまな企業やブランドとのコラボ企画などを通じてつなげる。また、「フジロックフェスティバル」をはじめとする音楽イベントやアートイベント、出版物の企画のほか、現在はラジオ番組「BEAMS TOKYO CULTURE STORY」のDJも務める。

『BEAMS AT HOME』はどうやって生まれた?

ーーROOMIEでも「みんなの部屋」などインテリアにまつわる連載企画が人気で、BEAMSで働くみなさんの部屋を紹介する『BEAMS AT HOME』シリーズを愛読している読者も多いと思いますが、そもそもシリーズが生まれたきっかけは何だったのでしょうか?

「実はちょっとしたエピソードがあります。以前、雑誌『BRUTUS』の自転車特集が組まれた際に、BEAMSから誰かを紹介してほしいと声をかけられたんです。

ディレクターやプレス、バイヤーなどが出演する機会が多いのですが、僕は、社内STAFFが共有しているコミュニケーションツールで自薦他薦問わず応募を募ることにしたんです。すると、500件以上のリアクションがあった。

最終的に選んだのは、見た目にはまったく自転車が好きとは想像できなかった内勤の女性スタッフ。京都の老舗店のフレームに、VANSのワッフルソールでできたBMXのグリップ、海外で買ってきたラゲッジなんかを自分でカスタムしていて、意外性のすべてを持っていかれました

で、掲載されると、その子にとっては一生の思い出になるんですよね。編集部にも『よくこんな子見つけたね』なんて言われたし、僕としても、社内のいろんなひとを巻き込んでひとつの企画ができた実感があった。同時に、これ、一番BEAMSらしいんじゃない?って思ったんです。

そのような経験が多々あり、より多くのスタッフにフォーカスしたい気持ちで、『BEAMS AT HOME』をつくることにしました」

「スタッフの個性が会社をつくっている」

ーーそんなエピソードが発端だったとは。だから、単なるインテリア本ではなく、スタッフのライフスタイルを拾い上げるような内容になっているんですね。

「釣りでも、音楽でも、マラソンでも、なんでもいいから、ライフスタイルのクリエイターになれ、とよく話しています。

実は、社内でこんな動画をつくっていて……


およそ2分間の動画には、BEAMSで働くスタッフたちが、休日にツーリングを楽しんだり、SNSで好きなことを発信したり、店舗のウィンドウに絵を描いたり、思い思いに暮らしを楽しむ様子が詰まっていた。

社員を紹介する動画って、まず働いている風景を映してから、実はこんな趣味があります、と紹介するのが通常の流れだと思います。

ただ、BEAMSらしさって、オン/オフの区切りがない状態なんです。休日に自転車に乗るのも、家族で過ごすのもオン。個々のライフスタイルを活かして働くのも、そのままオンなんです。

『努力は夢中に勝てない』なんて、うちの代表はよく言っていますが。『BEAMS AT HOME』でも、スタッフの個性が会社をつくっていることが非常にわかりやすく表れているはずです」

個性の中に存在する“BEAMS”らしさ

ーーそのように誰もが個性的であると同時に、うまく言葉にできない“BEAMSっぽさ”みたいなものも一貫して感じられます。

「そうですね、『お前BEAMSっぽいよね』っていうのは、働いているスタッフにとっては褒め言葉かもしれません。

その『ぽさ』っていうのはそれぞれで違っていて、かつ、なんとなく似ていて共存してる。そこが面白いんですよね。モード、ストリート、トラッドなどスタイルはあれど、みんなBEAMSなんですよね。共通するのは、なんとなく楽しそう、ということかもしれません。

うちのスタッフって休日も気持ち悪いくらい一緒にいるんです(笑) しかも、家族や友人ぐるみで。それって、BEAMSで働くスタッフが、その周辺にいるひとも含めて面白いし、共通の価値観を持っているからだと思います」

ーー共通の価値観とは?

「たとえば、『千円、3千円、5千円、1万円それぞれで美味しい鮨屋を友達にオススメせよ』ってお題、面白くないですか?

たぶん僕らって、『3万円以下の鮨なんて、鮨じゃない』なんて言うひととは合わないと思うんです。『千円でこんだけ美味いとこがあるんだよ』っていう提案をできたり、それを聞ける耳を持っているかどうかが、共通している価値観だと思います。

だから、目先の利益より、BEAMSで生まれるひととのつながりに価値を置いていたり、将来の期待を抱いているひとが多いのかもしれない。離職率が3%と非常に低いのも事実ですし、たとえBEAMSを一度離れて別の環境に身を置いても、それほど経たないうちにここに戻ってくるスタッフも少なくありません

“働く人が幸せなこと”を大切にする

ーー自分の会社に誇りを持ち、好きだと言える。言葉にすると簡単ですが、なかなかできることじゃないですよね。

「モノ・コト・ヒトをつくる集団でありたい、これはBEAMSが常々考えていること。なかでも、ここで働くひとたちがいかに幸せか、を真ん中に据えています。

いまでこそ働き方改革なんて叫ばれるようになりましたが、僕たちはもう40年以上前からそれを実現しようとしているんです。社内では『ハッピーライフソリューションカンパニー』なんて標語もあります」

ーー創業から変わらない考え方もありつつ、時代に応じて変化させていることもありますか?

「原宿の本社オフィスでは、ひな壇でミーティングができたり、テラスで朝ヨガができたりと、働く環境における新しい試みは行っています。

ただ、決して、欧米の真似をして形だけ取り入れればいいと考えているワケではありません。働き方における考えがまず土台にあって、それを具現化するためにスペースを用意してあげる。その前提がなにより大切だと思っています」

半歩先の情報を届ける

ーー話は変わりますが、ECやAI、SNSなどが急速にアパレル業界を変えつつあります。そこにも、BEAMSならではの接し方はありますか?

「EC、アウトレット、駅ナカと、いまは販路もさまざまであればお客さんもしかり。とはいえ、会社として基盤にしていることはやはり変わりません

『ビッグマイナースピリット』という言葉があります。プロの目線ではなく、より生活者の目線で、いまのトレンドや定番とはちょっと違った提案をすること。しっかりとプロ意識は持ちつつ、ただ、提供する情報は“半歩先くらい”のものにする

ーーたしかに、憧れの存在であってほしいけど、あまりにかけ離れているとリアリティーがありませんよね。

「ECやSNS、AIなどについてはどうしても否定的に語られがちですが、僕は好きだし肯定的に見ています。実際、ここ何年かで飛躍的にひととひととの距離を近づけているのは紛れもなくAIやSNSですからね。

ただ最後には、信頼できるスタッフによる後押しや、体験が必要だと思う。そういう意味でも、やはり、うちのスタッフにはなにかに夢中でいてほしいですよ」

ーー会社としての、これからの目標はありますか?

「世の中を楽しく、幸せにする集団でいたいと思っています。BEAMSっていうドアを開けたら、昨日より楽しくなったじゃん、と思ってもらえるような。

このところ代表がよく言っているのは、ある駅に降り立ったとき、十指に入りたい、と。カフェにも行く、ネイルもする、映画も観る、BEAMSにも行くし、あそこにも行くし……。と、多種多様な選択肢があるライフスタイルのなかに、BEAMSも入っていければ嬉しいです」

働き方の選択肢が急速に増え、会社に属さずにやりたいことができてしまう現代。BEAMSで働くスタッフたちのように、秀でた個性をもってすればなおのことです。

そんななか3%の離職率が表すのは、まぎれもなく、そこにいることの面白さや未来への期待値の高さでしょう。上も下もなく、オンもオフもなく、スタッフの個性を受け入れて伸ばすBEAMSならではのスタンスが、それを支えているのだと感じました。

Photographed by Yutaro Yamaguchi

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髙阪正洋

ファッション、ライフスタイルまわりで、編集・ライターのいろはを学び、ひた走る日々。いつの日かROOMIEアイス部員に抜擢されんと、就寝前のアイスが20年以上やめられないでいることをココにしかと明言しておく。

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