そこで、さまざまなジャンルで活躍する方々に「10年後も手放さない」思い入れのあるモノを、31×34.5cmという限りのある『ROOMIE BOX』の中に詰め込んでもらいました。
なぜ、「10年後も持っている」と考えるのか―――。大切に持ち続けるモノについて語る姿から、その人の暮らしが徐々に見えてきます。
モデル/RUBY AND YOUディレクター・AMO

モデル/RUBY AND YOUディレクター。1991年生まれ。2005年から、青文字系雑誌を代表するモデルとして活動を始める。2014年、結婚。現在、2児の母。2015年より、ファッションブランド「RUBY AND YOU」を始動した。
Instagram:amo_whale
前編はこちらから。
スタイルに影響を与えた『ヴァージン・スーサイズ』
20歳前後の自分のスタイルに大きく影響を与えてくれたのが、『ヴァージン・スーサイズ』という映画です。
高校生のときに、ソフィア・コッポラ監督の『マリー・アントワネット』という映画を見て、アンニュイな空気感やファッション、インテリア、音楽といったガーリーカルチャーにすごく惹かれて……。
マカロンとかパステルカラーとか、見た目の美しさだけでなく、甘さの中に毒っ気や切なさや脆さ、女性の芯の強さが詰まっていて……全てが新しくて、センセーショナルだったんです。
そこから監督のファンになり、過去の作品を追っていって、18歳くらいのときに『ヴァージン・スーサイズ』にたどり着きました。
公開されたのは90年代で、公開当時私は、ギャルに憧れていた田舎の普通の小学生だったんですけど(笑)でも、今、この年齢で出会えたことにきっと意味があるって思えました。
監督の作品は全部見たけど、その中でもやっぱりこれは特別かなぁ。
初めての長編監督作品ということもあって、ソフィア自身の無骨さや不器用さ、若い頃の初期衝動みたいなものが詰め込まれている気がします。
最近はあんまり見ることができていないんですけど、ふと、自分が本当に好きなものってなんだっけ、って思ったときにこれを見ると、すっぴんの自分に戻れる気がする。
自分のスタイルってなんだろうって思っていたような頃の、18歳くらいの少女の気持ちに戻れるような、そんな作品です。
映画の中に居場所を探していた
映画や音楽からファッションの影響を受けることが多いんですけど、今期の「RUBY AND YOU」のテーマである『アメリ』も、中学生のときに見て以来、すごく好きな作品なんですよね。
自分自身も学生のころ、主人公のアメリのように人とのコミュニケーションがあまり上手くなくて、割とはみ出ている方ではあって……。
でも『アメリ』を見ていると、そういった自分の欠点だと思っていたような、変わっているって言われていた部分がすごくチャーミングに思えてくるんです。
中学生の頃は特に、学校の中に自分の居場所を見つけられずにいて、映画や漫画の世界に共感できるキャラクターを見つけたり、そのキャラクターになりきったりしていました。
そういうふうに、自分の中で納得できる世界を探していたんだと思います。
だけど高校生になってからはバイトを始めて、自分の力でどんどん外に出ていって世界を広げられるようになったんですよね。
当時、80年代のファンシーな格好をした女の子たちが集まる「スパンク」っていう古着屋さんが高円寺にあって。そこに飛び込んだら、同じような趣味の子たちを見つけることができた。
狭い、田舎のカルチャーの中では変わり者扱いだったのが、ファッションで自分を表現することで、他人にも認めてもらえて。
今までいた世界だけが世界だと思っていたけど、そうじゃなかったんだ、と思いました。
“誰かにとっての何かになりたい”
多分、私みたいに、狭い世界の中で居場所を見つけられずにいたり、共感できる人を見つけられずにいる人はきっといっぱいいるだろうなぁって思っていたところに、雑誌の方が「読者モデルになってみないか」って声をかけてくださって。
雑誌に載ったら私が好きなファッションももっと広まっていくし、地方に住んでいる人たちにも届くんじゃないかと思って、読者モデルとしての活動を始めたんです。
10代の頃からは好きなものが増えてスタイルも変わったし、きっとこの先もまた徐々に変わっていくと思うんですけど……。
でも、10代の頃にモデルとしての活動を始めたときの「どこかにいる誰かにとっての何かになりたい」って気持ちは、今もずっと変わらなくて。
「RUBY AND YOU」を始めたときも、私みたいにライフスタイルの変化が訪れた女性たちに向けて服を作りたいっていう思いがあったから。
そういう気持ちでこの先も、誰かの味方になれるような存在でい続けたいなって思います。
夫から毎月もらっていたレコードのアルバム
夫からもらった、レコードのアルバムです。
お付き合いを始めてから2年間、毎月1枚ずつレコードをプレゼントしてくれて……。それをアルバムにまとめたモノです。ちょっと恥ずかしい話ではあるんですけど……(笑)
夫と知り合う前から音楽は好きだったんですけど、彼が私に「もっといろんな音楽に触れて欲しい」と思ったのと、「自分自身がやっている音楽のルーツをもっと知って欲しい」と思ったことから、プレゼントしてくれました。
ほとんど60年代のソウルミュージックのもので、ジャクソン5みたいな聞きなじみのある曲から、私が好きそうだなってイメージしてくれた曲が入っています。
夫のおかげで、自分の音楽が好きな気持ちも深まったし、知識も増えました。1枚1枚、くれたときの思い出もあって、ずっと大事にしたいなぁと思っています。
一番思い入れのあるレコードは……どれかなぁ。うーん、でも、ザ・ロネッツの「BE MY BABY」っていう曲かな。
有名な曲で、誰もが聞いたことのある曲だと思うんですけど、レコードプレイヤーで針を落として聞いてみると、すごく新しく感じたり、深みを感じたり……。
曲自体もかわいらしくて、私好みで、うれしかった。でも、やっぱり1枚1枚に思い出があるから、全部大事です。
これからの10年について
10年後は、上の子が反抗期にさしかかっているくらいなので、葛藤だらけの10年になるだろうと予想はしているんですけど……でも、お仕事は続けていると思います。
私のことを応援してくださっている方とか、「RUBY AND YOU」を着てくださっている方たち1人1人の生活の中に、自分自身が存在できているっていうことが、本当にうれしくて。
誰かの生活の一部になれているということが、自分の中ですごく原動力になっている気がするんです。
子育てにもそれはリンクしていて、自分がこの子たちに何かをしてあげることで、私自身も成長するし、感動するし、喜んだり、楽しいと思えたり……。
人に何かをしてあげることって、こんなに素晴らしいんだなって、子育てをしながら日々思っているので、お仕事は、そういう気持ちとどこか似ているような気がします。
だからこの先10年も変わらず、母としても頑張りながら仕事も頑張って、マイペースにやっていきたいです。
Photographed by Motoki Adachi