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10年という月日が経つと、いま住んでいる部屋も、立場や環境も大きく変わってきます。ただ、たとえ環境が変わっても「これだけはずっと持っていたい」というモノが、ひとつはある……。

そこで、さまざまなジャンルで活躍する方々に「10年後も手放さない」思い入れのあるモノを、31×34.5cmという限りのある『ROOMIE BOX』の中に詰め込んでもらいました。

なぜ、「10年後も持っている」と考えるのか―――。大切に持ち続けるモノについて語る姿から、その人の暮らしが徐々に見えてきます。

モデル/RUBY AND YOUディレクター・AMO

モデル/RUBY AND YOUディレクター。1991年生まれ。2005年から、青文字系雑誌を代表するモデルとして活動を始める。2014年、結婚。現在、2児の母。2015年より、ファッションブランド「RUBY AND YOU」を始動した。
Instagram:amo_whale

はじめて買った子ども服

息子と娘それぞれの、最初に買った服です。

赤ちゃんがお腹にいるってわかったときにうれしくてたまらなくて、ドキドキしながら初めて子ども服のお店に入って選びました。

手に取るたびに「ああ、こんなにちっちゃかったんだな」って、生まれたときの子どもたちの姿とそのときの幸せな気持ちが、はっきりと思い出せるんですよね。

息子は夏生まれなので、夏らしい洋服がいいな、と思ってこれにしました。プチバトー(Petit Bateau)っていうブランドの服で、ヨットの絵とセーラー襟が夏らしくて気に入ってます。

もう3歳なので、もちろん今は着られないですけど、ずっと手放せない。ずっと、とっておきたいです。

娘のときは、検診で女の子だって先生に教えてもらった瞬間、目の前にパアーっとお花やピンクの世界が広がって……。

「ああ、もうこのお花柄のお洋服も白いレースのお洋服も、こういうものも私、選んでいいんだ……」って、「私、女の子のママになるんだ」と思ったらもう……。

それで、検診の帰りにそのまま、子ども服屋さんに直行して選びました。

このワンピースは、キャラメル(CARAMEL)というブランドのお洋服で、「これをまだ見ぬ娘に、生まれてきたら着せてあげたいなぁ」って、ずっと思っていた1枚です。

ある程度のことは、1人目のときよりも2人目の方が、“どうにかなる”精神になれています。だけど私も母親になって3年ちょっとなので、わからないことだらけなのは今も変わらずで……。

上の子はやんちゃ盛りだし、下の子もまだまだ赤ちゃんなので、両方の欲求に同時に答えてあげることが物理的に難しくて、モヤモヤしてしまうこともあります。

成長するにつれて新たな子育ての疑問や葛藤がどんどん降ってくるので、まだまだですね。

ずっと憧れていたレペットの靴

結婚式で履いたレペット(Repetto)の靴です。

ずっと欲しいと思っていたんですけど、自分の特別な瞬間に手に入れたいっていう憧れがあって。それで、結婚式のときに初めて買いました。

流行に関係なく履けるベーシックなアイテムでもあるので、いつか娘にも譲れるんじゃないかなぁって思っています。

ウエディングっていうと、きっとキラキラのヒールとかを選ぶ方が多いと思うんですけど……。

私は自分のキャラクター的に、きらびやかな靴よりは素朴なものがいいなと思って。だけど特別感のある靴が良かったので、レペットしかない!と思って買いに行きました。

変わりながら自分を見つけていく

ちょうど10年くらい前から『Zipper(ジッパー)』っていう雑誌に出はじめて。

20歳前後くらいまでは、ファッションの中にアイデンティティがあったし、自分を飾りつけることで、自分っていう存在を確認していたような気がします。

当時は当時で自分の格好が大好きだったし、やっぱり一度好きだったものはずっと好きだから、今でもそういうテイストが好きなことに変わりはなくて。

だけど結婚して子供が生まれて、生活っていう部分がリアルに見えて来たときに、ファッションだけに情熱を注ぐことが難しくなってきたんですよね。

これから私は、お腹の中にいる子と人生を歩んでいく上で、ぎゅうぎゅうにクローゼットに入れている洋服たち——例えばミニスカートだったり、フリフリのお洋服だったり……

そういうものを、大事にしていけるんだろうかって思ったときに、それはできないと思ったんです。

自分の貫いて来たスタイルよりも、新たにこの子と築いていくスタイルを私は見つけていきたい、って。

そのときに、自分の中で「捨てなきゃいけない」、「変わらなきゃいけない」っていう気持ちよりも、「変わりたい」っていう気持ちが大きかったんですよね。

子どもを産んで、自分のアイデンティティだと思っていたスタイルが変わって、「女性ってこんなに変わるんだ」って、自分でもびっくりして。それまで本当に、派手だったから(笑)。

だからきっと世の中の女性たちは、こうやって大人になって生きていくんだなって。そういう岐路に立った女性たちの気持ちに寄り添えるようなお洋服を、私は作りたいと思ったんです。

それで、ちょうど息子を妊娠していたときに、自分の好きな“かわいいもの”と“ライフスタイル”をファッションに組み込めるような、「RUBY AND YOU」というブランドを立ち上げました

自分自身の年齢を重ねていくにつれて、自分の中での新しい引き出しも見つかり、好きなものが変わるというよりは、増えていったんだと思います。

『Zipper』とかの読者だった方からすると、「変わったね」って言われることも今でもあるんですけど……。

でも、女性ってそういうものだと思うので。変わりながら、自分らしさを見つけていく生き物だと思うから

後編につづく

Photographed by Motoki Adachi

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