これから迎える正月休みは、1年の中でも心の底からリラックスできる時間。だからこそ、普段はできないことをしたい。そこでおすすめするのが漫画の一気読み。
小説よりも気軽で、映画ほど疲れない。様々な価値観に一気に触れられて考え方が広がるのが漫画だ。
ということで、今回は正月休みに、時間を気にせず一気読みしたい漫画たちをカルチャーにも敏感なROOMIE編集部員たちがご紹介。
『ちひろさん』 BY武田
前作『ちひろ』は風俗嬢・ちひろと彼女に惹かれる人物らによる、オフビートな名作。なのに読んでこなかった。周囲の誰しもが両手放しでほめすぎたのだ。現代の生きづらさがメインテーマのように勝手にイメージしていたのも大きい。
それがひょんなことから今年続編である本作も含めて一気に読んだ。夜の社会から離れ、弁当屋で働き、廃墟で一人飲み、釣りを楽しむ「ちひろさん」は、人生のお手本ような人物だ。
周囲の下馬評やイメージなんて、まるで気にする必要なんてないことを教えてくれる作品を、ぼくもまた周囲に勧めてしまっている。
(既刊7巻)
『ニューヨークで考え中』 BY緑川
冬の寒そうな感じと、線のシンプルさが、今の季節にぴったり。アーティスト・近藤聡乃さんによる、のんびりマイペースニューヨークライフのコミックエッセイ。
見開き2ページ、一話完結なので読みやすいし、著者のお人柄が現れまくりの、あまりにたんたんとしたエッセイがおもしろい!
(既刊2巻)
『本田鹿の子の本棚 暗黒文学少女篇』 BY鈴木
人の本棚は気になる。「みんなの部屋」取材へ行くと、ほぼ毎回チラチラ見てしまう。友人や家族など、素性がわかっている人間の本棚ならなおさらだ。
このマンガは娘との距離を縮めるため、父親が娘の部屋に忍び込み、本棚から1冊手にとってみると……という作品。冷静な父親の解釈と、グロ・エロ・変化球満載な娘の本棚とのバランスがおもしろい。
私事だが、かつて父親の本棚から衝撃的な本を見つけてしまったことを思い出してしまった。
(1巻完結)
『地獄のガールフレンド』 BY野田
「みんな何かを抱えていきている。」 だけど、そんなことホントはみんな分かってて、問題はその抱えたものをどうするか。
この作品は部屋を片付けられない美女、恋愛するシングルマザー、真面目すぎるOLの3人がシェアハウスをする中で、お互いが抱える荷物や問題を少しずつシェアしていく物語。ゲスな会話もあるけれど、彼女たちが元気に前を向く姿はたまに涙腺にくる。
個人的な一押しは、「女が彼氏化し、男は彼女化している」というエピソード
(既刊3巻)
『海景酒店 新装版』 by武田
2017年は谷口ジローが亡くなってしまった年としても個人的には記録された。ぼく自身をより深く文学に誘ってくれた『「坊っちゃん」の時代』を読み返そうと思い、寄り道的再読をしたのが、盟友・関川夏央とのダブルネームによるこのアンソロジー。
ハードボイルドとは何か。ジャンルとしても色々な定義があるが、本作を読んでいてそれは「異邦人であること」の自覚と美学かもしれないと思った。この作者コンビによる、ちょっとした遊びが施されているのも楽しい1冊。
(1巻完結)
『きのう何食べた?』 by緑川
食事を基盤にした、何気ない日々の話。仕事や家族や恋人同士のイザコザとアレコレ。主人公は同棲中のゲイカップルだけれど、誰もが抱える日々の悩みや嬉しさに満ちている。
とにもかくにもごはんがおいしそうすぎるし、一話ずつレシピがきちんと載っているので、「今年はこんな料理作ろう」という決意と共に年初に読むのはどうだろう。
(既刊13巻)
『両国花錦闘士』 BY鈴木
「相撲界」は、いびつで、特殊で、外の人間からは想像できないことばかり起こっている。その相撲界を題材にした作品。リアリティある言葉のやりとりや行動を描写し、群像劇としても楽しめる内容になっている。
ライバル視している力士との意地の張り合いや、芸能事務所の女社長との恋愛沙汰など、現実にあるのかどうかわからないが、弟子たちのひそひそ話や力士の心の声は、現力士と重ね合わせて考えるとリアルに受け止められる。
改めて感じるのは「力士も一人の人間である」ということ。
(既刊2巻)
『スローモーションをもう一度』 BY野田
80年代ブームが再来している今こそ読みたい一作。
一見リア充な高校一年生・大滝くんは実は隠れ80年代マニア。ある日、クラスメイトで地味な薬師丸さんが同じく80年代が好きと発覚し、2人は周りに気づかれないようにしながら恋に落ちていく。
中森明菜やスケバン刑事など、80年代カルチャーを紹介しながら、少しずつ距離を縮める2人に、恋の楽しさを思い出さずにはいられない。
(既刊5巻)
さて、ROOMIE編集部員が選んだ正月に一気読みしたい漫画たちは以上で終了!
気になったものがあれば、ぜひ書店やwebでチェックしてみてほしい。