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家にこだわり始めると、“モノにこだわる”ことになってくる。家を快適に、自分の気に入ったようにしたいという想いは、家の中に自分が気に入ったモノ、愛着が感じられるアイテムを置きたい想いにつながる。

部屋のレイアウト、ひとつひとつの家具へのこだわりはもちろん、日々手に触れるものも大切にしたい。僕もかなり若い頃は出かけるときの服やカバンに特にお金をかけていたけれど、マンションを購入してリノベーションし、家に居る時間が増えた最近では、昼下がりに楽しむコーヒーグッズや、週末マルシェで買った食材を妻と調理して食べる時にテンションが上がるアイテムが気になるようになった。

そうやってモノに注目してみると、職人の高い技術に裏打ちされた国内のアイテムに、魅力的なものが多いように思う。特に、ハイクオリティな金属加工で有名な新潟県燕市つばめしのものづくりをフォーカスしてみたい。

スプーン・フォーク・ナイフなど金属洋食器の国内シェア90%以上を誇る燕市

スプーン・フォーク・ナイフなど金属洋食器の国内シェア90%以上を誇る燕市の職人さん

名前が印象的で覚えやすい燕市は、古くからの“ものづくり”の街だ。なんと、スプーン・フォーク・ナイフなど金属洋食器の国内シェアは90%以上を誇るという。現在まで続く金属加工の技術は江戸時代頃から培われ、その歴史は400年近い。

金属加工の高い技術は世界的な評価を得ており、戦後は進駐軍向けの製品や輸出産業で活躍。近年では、背面が「ステンレスの鏡面仕上げ」だったiPodの磨き加工も燕市内の企業が受注していた。あのAppleにも認められた高い技術力が、ここ燕市にはある。

ただし、技術力だけで食べていくのは難しい時代。日本の伝統的なメーカーはどこも“技術を活かして何をするか”に注力している。そのひとつがデザインを活かしたプロダクトの開発だ。

燕市では、『ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール』というデザインコンペティションを1978年から開催。歴史的な技術を生かし、デザイン性の高さと市場トレンドも配慮したオリジナリティあふれる製品の展開を通し、生活文化の資質向上や発信を目指している。

燕市の伝統と革新が生む、プロダクトの数々

株式会社トーダイによるカトラリーXM-7(18−8)ソフィーシリーズ

今年で40年目の節目となった2017年、この歴史あるコンペティションでは金属洋食器・金属ハウスウェア部門と、関連商品・新分野開発製品部門の2部門で全7種の製品が受賞した。

グランプリは両部門を通してひとつ。栄えあるグランプリを飾ったのは株式会社トーダイによるカトラリー『XM-7(18−8)ソフィーシリーズ』だ。製品名はギリシャ神話で「知恵」を象徴する女神「聖ソフィア」に由来。

ナイフは縦置きすることで自立し、先端が卓上につかない。カトラリーメーカーとして長年トーダイが培ってきた技術と叡智を集結し、シンプルでありながら上品さと力強さも併せもつプロダクトに仕上がった。

金属洋食器・金属ハウスウェア部門

株式会社新越ワークスの油切れのよいカス揚げ

金属洋食器・金属ハウスウェア部門の準グランプリを受賞したのは、株式会社新越ワークスの『油切れのよいカス揚げ』。ひと繋ぎで作られたシンプルなデザインで、細長い穴が放射状に空いており、油や水切れのよさが魅力的なアイテムだ。しかも、洗いやすく汚れが溜まりにくいので衛生的。

株式会社ヨシカワのバターナイフ、EAトCO Nulu(イイトコヌル)

優秀賞を受賞したのは株式会社ヨシカワのバターナイフ『EAトCO Nulu(イイトコヌル)』。一般的なバターナイフのように面でバターを切るのではなく糸状に削ることで、バターをふんわりと塗れる。置いたときには刃部が少し上向きになり、テーブルを汚さないのも嬉しいポイントだ。

株式会社アサヒのカップ『漆磨 箔銅華(シーマ ハクドウカ

審査委員特別賞を受賞したのは株式会社アサヒのカップ『漆磨 箔銅華(シーマ ハクドウカ)』。燕市でつくられた純銅のカップに、石川県の金沢箔をほどこした、日本の伝統技術を融合させた一品。ひとつの技術にこだわらず、よいものを積極的に取り入れていく思想が、伝統技術をアップデートしてくれることを感じさせる。

関連商品・新分野開発製品部門

株式会社富田刃物の園芸用ナイフ『HORI HORI KNIFE

関連商品・新分野開発製品部門の準グランプリを受賞したのは、株式会社富田刃物の園芸用ナイフ『HORI HORI KNIFE』だ。北米で人気を集めていた富田刃物の園芸用ナイフを、高剛性化、高品質化。フルメタル型も開発し、性能面もビジュアル面もより魅力的に仕上げている。

戸塚金属工業株式会社のフォールディングカウンター『ドコデモ☆クックオープン

優秀賞を受賞したのは戸塚金属工業株式会社のフォールディングカウンター『ドコデモ☆クックオープン』。展示会やイベントなどどこでも好きな場所に持ち込み、調理や盛り付け、受けわたしなどお客様とのコミュニケーションの場をつくりだせる。

約30分で組立・分解が可能で、ガタつきなく簡単に組み立てられる。しかも、燕市が誇る0.1mm単位の精密板金加工技術によって、ネジや工具は一切不要。

下村企販株式会社による水切りバスケット『TSUBAME水切りバスケット

審査委員特別賞を受賞したのは、下村企販株式会社による水切りバスケット『TSUBAME水切りバスケット』。長年の試行錯誤の中で発見した最適な隙間幅や角度により、水切れのよさと食器の取り出しやすさを実現している。細やかな調整がものをいうだけに、金属加工技術の高さが活きるプロダクトだろう。

つくり手の想いと培った時間の長さが、製品の力になる

ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール

ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール』は毎年革新的なプロダクトを世に送り出してきた。来年2018年の募集もすでに始まっており、同年3月23日に受賞作品が発表されるので、燕市のニュープロダクトに注目したい人は要チェックだ。

つくり手がこだわった時間の長さやその製品に込めた想いは、定量的には測れない。だが、こだわりの詰まったプロダクトは、目にするだけで、手に取るだけでその違いがわかる。その定性的な力こそがプロダクトの力になり、その力こそがプロダクトの魅力に繋がるのだろう。

ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール[燕市]
ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール 2017年受賞製品[燕市]
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