東京スカイツリーへ向かう人で賑わう押上駅から歩いて数分。下町情緒を残した静かな住宅街に、インテリアショップ「unico」でバイヤーを務める千葉一孝さんの住まいがある。
アパレルメーカーで8年間販売を経験した後、もともと好きだった雑貨のバイヤーを目指して、unicoを運営するミサワに入社。販売からスタートし、現在はバイヤーとして働く千葉さんの部屋にお邪魔した。イタリア語で「たったひとつの」「ユニークな」という意味を持つ“unico”で働く千葉さんの部屋は、その言葉通り、骨董品や偶然の出会いに彩られている。
お気に入りの場所
食事や晩酌、読書の時間を楽しむunicoのソファ
シンプルで落ち着いた印象のソファはunicoのMOLN(モルン)。明るいナチュラルカラーレザーが、部屋の印象を明るくしている。千葉さんは好きなデザインを選ぶだけでなく、部屋がどう見えるかによって家具を選ぶそう。
「ここで食事をしたり、友達とお酒を飲んだり、休日には寝転がって本を読んだりします。ダークトーンの家具が多いので、ソファは主役にして明るいカラーを選びました」
好きな食器や工芸品を並べる棚まわり
天板がガラスになっているレトロな什器は、近所のタバコ屋さんが閉店する際にお願いして譲ってもらったもの。この部屋に来るまでにどんな歴史があったのだろうと思いを馳せてしてしまう、年季の入った見た目が印象的だ。
「器を集めるのが好きなので、食器棚として使ってます」
この部屋に決めた理由
広島県生まれ、千葉県育ちの千葉さん。3年ほど前に本八幡から押上のこの部屋に移り住んだ。
「下町が好きなんです。浅草もいいなぁと思ったんですけど家賃が高いし、ちょうどいいところがなくて。押上は浅草ほど高くないし、職場がある渋谷に電車1本で出られます。千葉に地元の友達が多いから離れすぎたくないと思っていたので、押上はちょうどよかったんですよね」
「このマンションは全部で6世帯しかないので、ひと部屋ずつがゆったり作られてて。天井が高いし、ベランダも広くて、収納も多いので気に入ってます」
残念なところ
壁紙の柄のセンスが謎
「住み始めたときは気にならなかったんですけど、壁紙の模様がだんだん気になってきました。真っ白でもいいのに……(笑)。できれば全部変えたいですね。あと、水まわり近くの天井から時々水漏れすることや、ユニットバスがちょっと使いにくかったりして、水まわりの悩みがありますね」
お気に入りのアイテム
趣味で集めている和食器や工芸品の器
「器が好き」という千葉さん。特に沖縄のやちむんがお気に入りだ。中目黒にある器店・SMLや鎌倉、器関連のイベントにふらっと出かけて買っているそう。美しいペルシャブルーの器、金継ぎした器、すりガラスのようなグラスが並んでいる。
DIYしたアウトドア用テーブル、ローテーブル、ブックラック
千葉さんの部屋には、自分でDIYしたテーブルやシェルフが置いてある。木製ハンドバッグのようなこれは、開いて組み立てるとアウトドア用テーブルに変身する。ピクニックにちょうどよさそうなサイズ。
「キャンプに行く時に持って行きます。お酒とおつまみが乗るちょうどいいサイズなんですよ」
食事をするテーブルや、気に入って安く譲ってもらったアンティークの脚に天板をつけたAVボードもDIY。
「DIYを始めたきっかけは、ちょうどいいテーブルがなかったことですね。デザインは本を参考にして決めて、ものによっては簡単な設計図を書いてから作ります。そのまま作りだしちゃうこともありますが。板はホームセンターでカットしてもらえば楽だし、トンカチなど最低限の道具があればできますよ」
加賀美健さんのイラストと、平山昌尚さんの下敷き
ソファの近くに飾っているアーティスト・加賀美健さんのイラストと、平山昌尚さんの下敷き。「はんかち持った?」という文字がインパクト大すぎる加賀美さんのハンカチは、部屋のインテリアになっている。
soto ceramicsの湯のみ
自転車とピザが描いてある器は、千葉さんのご友人が手がけるNYのブランド・soto ceramicsのもの。NYをイメージして作った限定サンプルだという。
料理家・たかはしよしこさんの書籍と塩
キッチンには料理家・たかはしよしこさんの「つまみ塩」「もろっこ胡椒」が。本棚には、同じくたかはしさんが大好きな雑貨を写真で綴った本『SPRING / SUMMER / AUTUMN / WINTER ZAKKA』も並んでいる。
「塩も胡椒もおいしいんですよ! 本は、インテリアの参考にしてます」
キャンプで活躍する「Tetra Drip」
キャンプ&コーヒー好きな千葉さんが愛用しているのが、薄型のドリッパー「Tetra Drip」。薄くて携帯するのに便利で、アウトドアで活躍する。
「unicoでも販売していますが、アウトドアでコーヒーを楽しみたいひとに特に人気ですね」
ナガノチサトさんのカレンダー
猫のイラストがかわいらしい、イラストレーター・ナガノチサトさんのカレンダー。「来月の猫のほうがかわいい」と言いながらカレンダーをめくっていた。
ANYWHERE CHAIRのミニサンドチェア
アウトドアで活躍するANYWHERE CHAIRのチェアは、小さいながらもゆったりしたサイズ感。鮮やかなイエローが部屋のポイントになっていて、目をひく。
「友達が来るとここに座って、一緒にお酒を飲んでます」
暮らしのアイデア
家具選びは全体のバランスを見て
家具選びに困っている人にアドバイスをもらった。
「どの家具を部屋のメインにするか決めて、バランスを見るのがいいですよ。僕の部屋ならソファですね。
家具を選ぶときは、使い方によって決めるのがいいと思います。例えばソファなら、寝転がりたいのか、本を読みたいのか、食事をしたいのか。食事をしたいなら脚はちょっと高めがいいし、寝転がりたいならアームがしっかりして頭を預けられるものがいいし。ちなみに、脚つきのソファの方が部屋がスッキリ見えたりします」
「あとは色の選び方。部屋のメインになるものを決めて、そこから色のバランスを考えるといいかも。濃い色の家具は汚れが目立ちづらいし、明るい色の家具なら部屋も明るくなり、バランスが取りやすいです」
家でちょっとでもテンションが上がるようにする
「食べたり呑むことが好きなので、仕事から疲れて帰ってきても、惣菜は器に移し替えるようにしてます。ちょっとしたことでテンションが上がりますからね」
いいと思ったアイテムはまず買う、買ってからどう使うか考える
器や植物、本、調理器具など、たくさんのこだわりアイテムに囲まれた千葉さんの部屋は、ものは多くてもスッキリとした印象。その秘訣と、自社以外でオススメのショップを聞いてみた。
「置き場所がなくなるとか、増えて邪魔になるとか考えないですね。とりあえず買ってきて、後でどうするか考える。器とか植物はいいと思ったら増やしています。
オススメのショップは、稲村ヶ崎の『R old Furniture』は、休みの日に行きます。江ノ電の稲村ヶ崎駅から近いんですが、線路沿いにある古民家を改築したお店です。縁側があって雰囲気がいいですし、骨董品が好きな僕好みのものが置いてあるので気に入っています」
これからの暮らし
「来年の2月で更新なので引っ越すかどうか迷っています。次住むなら、この部屋と同じくらいの広さでユニットバスじゃないところがいいですね。あと、食べることが好きなので明るいダイニングにテーブルを置いて食事をしたいです。押上か浅草か、鳥越あたりもいいかなぁ。いずれにしろ下町ですね」
骨董品が好きで、下町が好きで、食べることとお酒が好きな千葉さん。肩の力が抜けた一期一会を楽しみながら、住まいを形作っていく千葉さんは、来年どこで暮らすのか。新たな下町の魅力と、新しく出会った雑貨をまた紹介してもらいたい。
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Photographed by Kenya Chiba