甲斐みのり

甲斐みのり

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口に入れたときのハイな気分、収集欲をかき立てるパッケージ、なんだったらメッセージ性。連載「スナック・タイム」では、文筆家・甲斐みのりさんが、男の空腹を満たすためだけではない「嗜好品」としての食べものを紹介。第13回は、「ルコント」のスウリーとスワン。

口に入れたときのハイな気分、収集欲をかき立てるパッケージ、なんだったらメッセージ性。連載「スナック・タイム」では、文筆家・甲斐みのりさんが、男の空腹を満たすためだけではない「嗜好品」としての食べものを紹介。第13回は、「ルコント」のスウリーとスワン。

気持ちがゆるむ。「かお」や「動物」の食べ物

小学3年生の甥っ子と長期休暇を過ごすさなか。育ち盛りのはずなのに、どうしてだか食が細く、朝も昼も夜もこちらが思ったようにたっぷりごはんを食べてくれない。特に間食するでもなく、極端に好き嫌いがあるわけでもないから、どうしたものかと考えた。

翌朝、起きたばかりの甥っ子に「今からパンケーキ焼くよ」と言うと、寝ぼけ顔が一瞬でしゃきっと引き締まり、頬に赤く色がさしてにっこり。お皿に大小の丸いパンケーキを配置して、チョコレートソースで顔を描き、動物の形に仕上げた。

猫とネズミ!」はつらつとした甥っ子の朝の姿に、こちらもふっと笑みがこぼれる。勢いよくパンケーキを口に運び、あっという間に完食したのを見計らい、「これもね」と味噌汁を差し出すと、すんなり口をつけてくれた。私が子どもの頃から我が家では、和食でも洋食でも朝食に味噌汁を飲む習慣があって、昨日までは甥っ子に拒否されていたのだ。

その後、お昼ごはんのオムライスにはケチャップ、茶碗にもった白米には海苔で、顔を描くと甥っ子は喜んで口にした。

「ルコント」の子ねずみ、白鳥!

食べものに顔が描かれていたり動物の形をしていると、親しみがぐっと増して、口にするのが楽しくなる。近所のパン屋にも、カメやウサギのパンがあって、お店の人が「動物の形にすると、子どもたちが喜んでくれるからね」と話してくれた。私は小学生の頃、近所の洋菓子屋のショーケースにぞろりと並ぶ「たぬきケーキ」が大好物だった。おとなは子どもと同じようにむやみに無邪気にはできないけれど、“かお”や“動物”の食べものを前に、密かに気持ちがゆるむ人もきっといるはず。

口に入れたときのハイな気分、収集欲をかき立てるパッケージ、なんだったらメッセージ性。連載「スナック・タイム」では、文筆家・甲斐みのりさんが、男の空腹を満たすためだけではない「嗜好品」としての食べものを紹介。第13回は、「ルコント」のスウリーとスワン。

瞳が、つぶら

1968年に、日本初のフランス菓子専門店として誕生した「ルコント」のスウリーも、“子どもたちが楽しくなるお菓子を”と考案されたそう。アーモンドの耳がちょこんとついた子ねずみ型のシュークリームには、バニラが香る濃厚なカスタードクリームがたっぷり。子どもや女性はもちろんだけれど、甘党の男性にも響くはずと、よく手みやげに選ぶ。

口に入れたときのハイな気分、収集欲をかき立てるパッケージ、なんだったらメッセージ性。連載「スナック・タイム」では、文筆家・甲斐みのりさんが、男の空腹を満たすためだけではない「嗜好品」としての食べものを紹介。第13回は、「ルコント」のスウリーとスワン。

スウリーと合わせて箱に詰めてもらうのが、白鳥型のシュークリーム・スワン。ほんのり塩味のシュー生地と、コクのある生クリームが合間って、品よく洗練された味わい。

ふたつをお皿に並べて机に置くと、たちまち部屋に童話的な気配が満ちて、人の心もその場の空気も、ふうわり緩んで優しくなる。

Photo by Ryuichiro Suzuki

甲斐みのり

文筆家。静岡生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業後、京都で過ごし、その後に東京へ。旅、散歩、お菓子、手土産、クラシックホテルや建築、雑貨に暮らしなど、女性の憧れを主な題材に書籍や雑誌に執筆。東京や関西で、まち歩きや手土産などカルチャースクールの講師もつとめる。雑貨やイベントの監修をおこなう「Loule(ロル)」を主宰。近著に『お菓子の包み紙』(グラフィック社)、『一泊二日 観光ホテル旅案内』(京阪神Lマガジン)『地元パン手帖』(グラフィック社)など、著書は20冊以上。

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