MYLOHASより転載:

太陽の光をたっぷり浴びて育った夏野菜たち。その恵みを一皿に凝縮した料理といえば、真っ先に思い浮かぶのが「ラタトゥイユ」ではないでしょうか。

南仏の郷土料理「ラタトゥイユ」は、日本における「肉じゃが」のような存在。親しみやすく、いつも食卓にのぼる家庭の味……。そんなラタトゥイユを自身のフランス料理店で提供しているのが、フランスのニースと東京を拠点に活躍するシェフ・松嶋啓介さんです。

松嶋シェフが、ラタトゥイユを通じて伝えたいのは「食べ進めるうちに、しみじみおいしいと感じる料理。そしてからだとこころにもいい料理」。ちょうど帰国していたシェフに、お話を伺い、目の前で料理を教えてもらいました。

「うまみと薬味の相乗効果」でしみる料理を作る

「うまみと薬味の相乗効果」でしみる料理を作る

松嶋シェフといえば、25歳でニースにオープンしたレストランが、外国人としては最年少で本場フランスミシュランの一ツ星を獲得し、さらに日本人初、そして最年少で「フランス芸術文化勲章」授与という快挙を成し遂げた人物。国内外での評価も高く、東京・原宿の「KEISUKE MATSUSHIMA」でも多くのゲストの舌をうならせています。

そんなシェフが目指すのは、意外にも口に入れた瞬間に「おいしい!」と目を見開く料理でも、あまりのインパクトに言葉を失う料理でもありません。

「食べてすぐおいしいと感じる料理を僕は”アッパー系の料理”と呼んでいます。強い塩や糖分、油分の力を借りた料理は確かにおいしいのですが、僕が作りたいのは”ダウナー系”。おばあちゃんの手料理のような、シンプルだけど手間のかかっている、うまみと薬味の相乗効果でおいしくヘルシーに食べられる料理なんです」と、松嶋シェフ。

シェフが作るラタトゥイユの場合、トマト、玉ねぎ、ニンニクが”うまみ”で、パプリカ、ズッキーニ、なす、タイム(バジルでもいい)が”薬味”となります。

手間と時間をかけ、心を凝らして作るラタトゥイユ

手間と時間をかけ、心を凝らして作るラタトゥイユ

シェフがラタトゥイユにこだわるのは、まず自身が拠点にする南仏ニースの旬野菜をおいしく食べられる郷土料理であること。そしてきちんとした歴史と文化を持つ料理であること。本来の「ラタトゥイユ」という定義を外れると、それはただの”ラタトゥイユ風”の料理になってしまう、と松嶋シェフは言います。

「忙しくしていると短時間でうまみを出すためにコンソメを加えたり、電子レンジを使って野菜に火を入れたりしたい気持ちもわかります。でも、ぜひ一度、手間と時間をかけて心を凝らして僕が教える”本当のラタトゥイユ”を作ってみてほしいんです。これを食べ続けていたらこころもからだも元気になれるはず。食べたらきっとそう実感してくれるんじゃないかな」

野菜のうまみを引き出すために使うのは、塩だけ。それぞれの特性を生かすために野菜ごとに火入れをして、最後にトマトとニンニクで作ったトマトソースにあわせて仕上げます。そしてもうひとつ、松嶋シェフならではの工夫が。

「僕がラタトゥイユを自分流にイノベーション(技術革新)しようと考えたときに思いついたのが、”切る”という日本人らしい技術でした」

野菜をサイコロ状に揃えたラタトゥイユが多いなか、松嶋シェフの場合は、”薬味”となるパプリカ、ズッキーニ、なすを細長く、そして薄くスライスしていきます。取材前に試食させていただいたとき、「お箸で食べたいラタトゥイユだなぁ」と思ったのですが、それは松嶋シェフが講じたイノベーションという策略にまんまとはまったのかもしれません。

松嶋シェフ直伝 「本当のラタトゥイユ」レシピ

松嶋シェフ直伝 「本当のラタトゥイユ」レシピ

今回、松嶋シェフが”本当の”と言い切るレシピを惜しげもなく公開してくれました。詳細なレシピですが、野菜の切り方や火入れの方法、塩のふり方ひとつひとつに、今後に生かせそうな大きな学びがあります。

<材料(4人分)>

・ニンニク 1/2片
・玉ねぎ 1/2個
・トマト 5個
・パプリカ(赤・緑) 各1個
・ズッキーニ 1本
・なす(大) 1本
・オリーブオイル 適量
・塩 適量
・タイム(もしくはバジル) 少々
・コショウ 適宜

<作り方>

(1)ニンニクは芽を取り除き、包丁の腹でつぶしてから細かいみじん切りにする。鍋(松嶋シェフはSTAUBの鍋を使用)に入れ、オリーブオイル(大さじ1)と塩(ひとつまみ)を加えて弱火でじっくり火を入れる。

(2)みじん切りにした玉ねぎを(1)に加え、塩(ひとつまみ)を加える。

(3)トマトは皮つきのままひと口大にする。(2)に加え、火を強めて塩(ひとつまみ)を入れ、水分を飛ばすように焼く。焼けた香りがしてきたら弱火に戻して煮る。水分がほどよく飛んでなめらかになったら火からおろす。

(4)野菜を切り揃える。ズッキーニは縦を二等分、長さを三等分にしてから厚さ3ミリの薄切りに。なすも同様にして厚さ4ミリに切る。パプリカはヘタや種を取り除き、厚さ1ミリの細切りにする。

(5)フライパンにオリーブオイル(大さじ1)を熱し、赤パプリカを入れて強火で7割ほど火を入れる。焼き色がついたら火からおろし、ざるにあげる。フライパンを軽く洗い、同様にオリーブオイル(大さじ1)を熱し、緑のパプリカを入れて炒め、7割ほど火が入ったらざるにあげる。赤パプリカが入っているざるでよい。

(6)オリーブオイル(大さじ1)を熱したフライパンにズッキーニと塩(ひとつまみ)を入れて、中火にかける。ズッキーニは重ならないように広げながら炒め、7割ほど火が入ったらざるにあげる。フライパンを洗って同様になすも炒める。

(7)ざるであわせた野菜をよく混ぜあわせ、(3)のトマトソースに入れ、ふたをして弱火にかける。ときどきへらを使って混ぜる。水分が程よく飛びなじんだら火を止める。

(8)叩いて刻んだタイムを入れ、混ぜたらできあがり。好みでコショウを。

ラタトゥイユがおいしくなる調理のポイント

・手順(1)(2)みじん切りしたニンニクや玉ねぎを炒めるときは、塩を入れることで甘みを引き出すことができる。
・手順(4)野菜の厚さを変えるのは、できあがったときに形が揃うようにするため。炒めることで縮みにくいパプリカは薄く、縮みやすいズッキーニやなすは厚めに。
・手順(5)焼き色がつくとコクが増すので、怖がらずにしっかり焼く。

うまみとコクが凝縮した野菜は歯ごたえよく、すっきりとして食べ飽きない松嶋シェフのラタトゥイユ。

まとめて作っておけば、1日目はできたてのアツアツをいただき、2日目は冷たくして食べてみて、3日目はポーチドエッグを添えるなど、食べ方のバリエーションも豊富に楽しめるのがラタトゥイユ。お肉のソース代わりにしてもおいしそう。

これからますます夏野菜がおいしくなる季節。疲れ知らずの夏を過ごすためにも「本当のラタトゥイユ」をマスターしてみたいものです。そしてラタトゥイユをひとつのきっかけに、自分のため、家族のために、「食べ進めるうちにしみじみおいしいと感じる料理」のレパートリーを増やしていけたらいいなと感じました。

KEISUKE MATSUSHIMA
住所:東京都渋谷区神宮前1-4-20 パークコート神宮前1F
電話:予約03-5772-2091/予約以外03-5772-2151
営業時間:ランチ11:30~15:00(LO 13:30)/ディナー18:00~23:00(LO 21:00※日曜日はLO 20:00)

お話を伺った方:松嶋 啓介さん

1977年福岡県生まれ。料理専門学校卒業後、レストラン勤務を経て20歳で渡仏。2002年にフランス・ニースにてレストラン「Kei’s passion」をオープン。2006年に外国人としては最年少でフランスのミシュラン一ツ星を獲得。2009年、東京・原宿に”東京で取り組む地産地消”をテーマにした「Restaurant-I」をオープン(現在はニースと東京のレストランを「KEISUKE MATSUSHIMA」と店名を変更して営業中)。フランス政府から2010年にシェフとしては初の芸術文化勲章を、2016年には農事功労章をそれぞれ受勲している。ニースを拠点にしながら、月に1週間ほど帰国し、東京ほか各地をまわって活動を続けている。

text by 大森りえ

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