甲斐みのり

甲斐みのり

4
口に入れたときのハイな気分、収集欲をかき立てるパッケージ、なんだったらメッセージ性。連載「スナック・タイム」では、文筆家・甲斐みのりさんが、男の空腹を満たすためだけではない「嗜好品」としての食べものを紹介。第3回は、「八雲製菓」のウイスキーボンボン。

ウイスキーボンボンは、甘い砂糖製の殻やビターなチョコレートで、とろんと芳醇な洋酒を包み込んだ不思議なお菓子。言葉の響きもきらびやかな見た目も、どことなくセピア色のフィルターをまとったような昭和の香りが漂う。

本来ならば甘いものと縁遠いような落ち着いた紳士と相性よく思えるのは、内に秘めたるウイスキーのためだろうか。少女時代、バレンタインに父がもらってきたウイスキー入りのチョコレートを、こっそりほんの少しだけカリッと口に含んだことがあったけれど、甘くて苦くてツンと鼻の奥をくすぐり、子どもの私にはあまりに難解な味がした。

お菓子界で、不思議に威厳を放つのは

お菓子界で不思議に威厳を放つウイスキーボンボンも、最近では身近なところで目にする機会は少ない。それだからなおさら日常の中でふと出合うと、妙に気になり手に取らずにいられない。

お菓子界で不思議に威厳を放つウイスキーボンボンも、最近では身近なところで目にする機会は少ない。それだからなおさら日常の中でふと出合うと、妙に気になり手に取らずにいられない。

華やかで色っぽい。ヤグモのボンボン

山梨県に所在する「八雲製菓」のウイスキーボンボンを見つけたのは、静岡市にある駄菓子問屋。私が子どもだった30年前から変わらずあった懐かしい駄菓子たちの中、ことさら華やかで色っぽい輝きを放っていた。

山梨県に所在する「八雲製菓」のウイスキーボンボンを見つけたのは、静岡市にある駄菓子問屋。私が子どもだった30年前から変わらずあった懐かしい駄菓子たちの中、ことさら華やかで色っぽい輝きを放っていた。

赤。白。緑。黄。コロンとまるい色鮮やかな粒。そのまま食べても、冷蔵庫で冷やしても。砂糖代わりに紅茶やコーヒーに沈めれば、ほんのりふくよかなウイスキーが香り、まろやかな味わいに。

。コロンとまるい色鮮やかな粒。そのまま食べても、冷蔵庫で冷やしても。砂糖代わりに紅茶やコーヒーに沈めれば、ほんのりふくよかなウイスキーが香り、まろやかな味わいに。

それから、ウイスキーやフルーツに添えても。ウイスキーボンボン一つで、昭和の時代の渋い映画に、もぐりこんだような気がしてくる。

ウイスキーボンボン[八雲製菓]

photo by Suzuki Ryuichiro

甲斐みのり

文筆家。静岡生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業後、京都で過ごし、その後に東京へ。旅、散歩、お菓子、手土産、クラシックホテルや建築、雑貨に暮らしなど、女性の憧れを主な題材に書籍や雑誌に執筆。東京や関西で、まち歩きや手土産などカルチャースクールの講師もつとめる。雑貨やイベントの監修をおこなう「Loule(ロル)」を主宰。近著に『お菓子の包み紙』(グラフィック社)、『一泊二日 観光ホテル旅案内』(京阪神Lマガジン)『地元パン手帖』(グラフィック社)など、著書は20冊以上。

あわせて読みたい

powered by cxense

Ranking