埼玉県川越市、その家を訪ねたのは日曜日の昼時。どこからともなく漂ってくる昼食のにおいがなんとも懐かしく、実家に帰ったような不思議な感覚を覚える。この築43年の家に住み、4年にわたってセルフリノベーションに取り組んでいるのが、プロダクトメーカーのデザイナーとして働く安田太陽さんだ。安田さんにとって、通勤時間は1時間以上かかるというのこの家に住む理由と、セルフリノベーションのおもしろさについてうかがった。

なぜ、川越で暮らすことを決めたんですか?

DIYで靴箱を作ったおしゃれな玄関

この家はもともと、母方の祖父母が住んでいた家なんです。祖父母が亡くなり、母は処分することも考えたようですが、壊すのにもお金がかかるし、できれば誰かに住んでもらいたい思いがあったようで。ちょうど僕が家を探しているタイミングだったので、それなら自分が住もうと思ったんです。

おしゃれなソファと無垢材の床が素敵な部屋

生まれ育った家がすぐ近くで、街に愛着もあるし、友人も多いし。通勤1時間は大変と言われるんですけど、慣れてしまえばあんまり苦じゃないですね。それ以上に、自分が好きなように家をリノベーションできることに魅力を感じてます。

セルフリノベーションすることを選んだ理由は?

レトロな一軒家をDIYでリノベーションしたおしゃれな家
レトロモダンでかわいいDIY部屋

賃貸のアパートやマンションはどうしても制約があるので、本当の意味で自分に合った居心地のよさは見つけられない気がしてます。まあ、もともと古いものが好きというのも大きな理由ですね。

川越の家に決める前は、空き家があったら家主さんを尋ねて直接交渉してみたり、決まった後は、解体中の現場があったら譲ってもらえそうな建具や資材を探したり。リノベ物件って、不動産会社や専門業者に探してもらう人がほとんどだと思いますが、固定概念を捨てて街を歩いていると、おもしろい空き家や材料が見つかったりしますよ。

一軒家をリノベーションする上で大切なことは?

レトロな一軒家をリノベーション
水回りをおしゃれにDIY
可愛い電気スイッチ

基本的にリノベーションは業者さん任せではなく、自分でやろうと思っていたんです。とはいえ、耐震や構造については、お金をケチらずに専門家の方に依頼しました。結果、耐震補強をしてもらったり、天井に梁を追加してもらったり。構造に関しては、耐震に影響する壁や柱を調べてもらうことで、自分で手をかけていい範囲を把握できましたね。耐震補強と断熱材の追加、配管工事を含めると、100万円くらいはかかったと思います。それでも新築を買うことを考えれば破格ですよね。

DIYしたサンルーム
北欧風な白いスタンド照明

あと、これは僕のやり方ですが、まだ使えるものはできるだけ残したり、古い雰囲気をきちんと残していくことですかね。せっかく一軒家をリノベーションするのだから、かつての家の雰囲気をすべて払拭したら家のよさが生きないと思うんです。祖父母が作った日当たり抜群のサンルームはそのまま生かしているし、僕の場合、母の実家でもあるので、母が子どもの頃使っていたスタンドなんかはそのまま使っています。

特にこだわってリノベーションしたところはどこですか?

白のタイルがおしゃれなキッチン
白のタイルでDIYした素敵なキッチン

この家に友だちを呼ぶことが多く、料理も好きなので、とにかく広いキッチン作りにこだわりました。キッチンと居間は壁で仕切られていたのですが、壁を取り払ってひとつの空間に。作業台は木のカウンターにして、友だちに手伝ってもらいながらタイルを貼りました。もともと持っていた調理器具や食器に合わせて大きさやデザインを決められるので、注文住宅と同じ完成度にできますよ。まあ素人なので、職人さんのように上手には貼れないですけど、それもまた楽しめましたね。

セルフリノベーションって、大変でしたか?

一軒家をリノベーション

どの程度まで自分でやるかにもよりますが、タイルにしろ塗装にしろ地道な作業なので、途中で飽きてしまうこともありました。それに、祖父母が使っていた物の整理から始めなければならなかったので、その仕分け作業が一番大変だったと思います。

でも、いつまでに仕上げなくちゃいけないという制約はなかったので、マイペースに進められた点はよかったですね。ただ、実はまだ2階の寝室とアトリエ部分が手付かずで……。どんな空間にしようか、あれこれ考える時間も楽しいです。

おしゃれな小道具で部屋をコーディネート
デザイナーが住むおしゃれな部屋
タイル張りのレトロなお風呂
古道具を部屋に
古民家を生かしたDIY本棚

編集部ノート

生まれ育った川越の街と、家族の思い出がつまった家を大切にしている安田さん。その思いがそこかしこから感じられるレトロな一軒家には、温もりがあふれている気がした。柱の傷や落書きはあえて残し、家族の歴史を語り継ぐような安田さんのリノベーションは、固定概念を捨て、作業工程そのものを楽しむことを教えてくれる。それこそリノベーションの真骨頂と言えるのかもしれない。

古いものをおもしろく、自分らしくデザインすることは、まるで宝探しのようだ。

サンルームに降り注ぐ日差しを感じながら、この築43年の家の居心地よさに、すっかりくつろいでいる自分がいた。

Photographed by Kenya Chiba

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