桜が咲いて初々しい新社会人を街で見かけたら「春だなぁ」と、道すがら蚊取り線香の匂いがすると「夏だなぁ」と、なんとなく思うことがあるものの、僕らが日常生活の中で季節の変化を意識することはそんなに多くない。

今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。

七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。

前回の七十二候:「葭始生」水辺の植物も、芽吹き始める

七十二候:霜止苗出(しもやんでなえいず)

4月25日~29日ごろ
四季:春 二十四節気:穀雨(こくう)

気温20℃を超える日も出てきて、すっかり春の暖かさが目立つようになってきた。この時期は霜が出ることもなくなり、稲の苗が育ち始める。

もうすぐ、「田植え」の季節がやってくる。関東では、おおかた6月頃に田植えシーズンを迎える。小さい頃、毎年6月初旬に行われる町内会の田植え会によく出たものだが、地域によって時期が異なる。北海道は5月頃と関東地方とそんなに変わらないが、沖縄県や九州地方の一部の地域では3月頃に行われるのだそう。

旬の食材

いとより

いとより

ピンクに近い色をした、本州中部以南の西日本や南日本などで獲れる魚。「いとよりだい」とも呼ばれ、ふっくらとしていて上品な味の白身魚で、高級な魚に分類される。

尾びれの先端が金色で、糸のように伸びている。「糸撚鯛」と漢字で書かれることもあるが、これは尾びれが「金色の糸を撚っている」ように見えたことからその名が付いたという。

よもぎ

よもぎ

独特な香りがある多年草の植物。蒸しあがった餅によもぎを練り込んで作る「よもぎ餅」は、日本で有名な和菓子のひとつ。よもぎを始めとする「草を餅に練り込む」という風習は中国から伝わったというが、草の香りが邪気を祓ってくれると考えられていたそう。

本日の一句

ゆく春や おもたき琵琶の 抱きごころ

与謝蕪村

あまり手に取る機会は少ない「琵琶」。かつて見た歴史の教科書や画像検索で出てくるものを見る限りは、そこまで重そうに感じない。蕪村にとって、春が過ぎ去ってしまう物寂しい気持ちは、琵琶さえ重く感じるほど強かったことだろう。

次回は「牡丹華」。

illustrated by Kimiaki Yaegashi

参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
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