桜が咲いて初々しい新社会人を街で見かけたら「春だなぁ」と、道すがら蚊取り線香の匂いがすると「夏だなぁ」と、なんとなく思うことがあるものの、僕らが日常生活の中で季節の変化を意識することはそんなに多くない。

今から約150年以上前に暮らしていた人びとは、1年の季節を24分割にした「二十四節気」と呼ばれる区分けと、そこからさらに細分化された「七十二候」を暮らしに取り入れていた。72個の季節というと、だいたい5日に1つのペース。そのときの旬の食材を食べ、旬の花木を愛でる生活をし、自然の移り変わりとともに今よりずっと細分化された季節の移ろいを感じていたのだ。

七十二候の「意味」や旬の食材を知ることで、普段よりも敏感に季節の変化を意識できる。季節の移ろいを感じ、取り入れてみて、暮らしに深みをもたせよう。

前回の七十二候:「虹始見」雨上がりに見える春の知らせ

七十二候:葭始生(あしはじめてしょうず)

4月20日~24日ごろ
四季:春 二十四節気:穀雨(こくう)

水辺に自生する多年草「葭(葦)」が芽吹き始めるこの時期。山が緑に包まれ桜が咲き誇るだけでなく、水辺にも春は訪れている。葭は、夏から秋にかけてぐんぐん背が伸びる植物。奈良時代から使用されていたという暑い夏のアイテム「すだれ」を見れば、どれほど大きくなるか想像がつく。

かつてフランスの哲学者・パスカルは「人間は考える葦である」という言葉を残した。自然界の中では人間は弱い存在だが、「考える」力による人間の可能性を訴え、風に吹かれても元に戻る葭と照らし合わせて説いたものだ。これは17世紀のこと。

ちなみに太宰治もパスカルの言葉を下敷きに「もの思う葦」というエッセイを書いている。

21世紀の今でも、夏の暑い日差しを弱めるために、すだれを立て掛けている家庭は多い。葭はとても長い間、人々の暮らしに寄り添ってきたことがうかがえる。

※「葭(葦)」は「ヨシ」とも呼ばれる。

旬の食材

マアジ

マアジ

春から夏にかけて旬を迎えるが、1年中食べられる魚。どう調理していいか迷うほど、そのバリエーションは豊かで、一般的な開き、フライはもちろん、塩焼き、たたき、南蛮漬け、なめろうなどなど、日本人がこれまでどれだけ多くのアジを消費してきたかがメニューの多さからもよく分かる。

新ごぼう

新ごぼう

一般的に秋から冬にかけて旬を迎える「ごぼう」。一方、秋に植え、まだ成長しきっていない若いごぼうを「新ごぼう」といい、この時期に収穫する。

見た目からも一般的なごぼうとは異なり小さく、しかし、柔らかいのが特長。

本日の一句

故郷や どちらを見ても 山笑ふ

正岡子規

緑が生い茂るこの季節、冬の景色とは一変して山々が色づき始め、まるで笑っているようだと詠んだ一句。伊予国温泉郡藤原新町(いまの愛媛県松山市)で生まれた正岡子規が、自然豊かな故郷の春を想い、この句を詠んだと言われている。

illustrated by Kimiaki Yaegashi

参考文献:白井明大(2012)『日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―』東邦出版.
Japanese horse mackerel image via Shutterstock
burdock image via Shutterstock

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