静岡市は、江戸時代、浅間神社の造営に際して日本各地から職人が集められたことなどをきっかけに、駿河雛人形や駿河漆器、駿河塗下駄、駿河和染、静岡挽物といった伝統工芸をはじめ、木製家具や仏壇、プラスチックモデル、金属製品など、様々なものづくりが発展してきた街として知られている。
「つなぐデザインしずおか」は、この地域で長年培われてきた技術力やものづくりの風土と、国内外で活躍するプロデューサーやデザイナーの力を融合し、静岡らしい魅力ある商品の開発をサポートしようというプロジェクトだ。
2016年度のプロジェクトでは、地元静岡市在住のデザイナー・日原佐知夫氏をプロデューサーに迎え、市周辺でものづくりにたずさわる企業やグループ7組と全国から公募で選ばれたデザイナー7組がコラボレーションし、新商品の開発に取り組んだ。このプロジェクトから生まれたばかりの“MADE IN SHIZUOKA”のプロダクトを紹介しよう。
するがクリエイティブ × studio yumakano 狩野佑真
静岡の若手職人集団として23年間にわたり活動している「するがクリエイティブ」は、「studio yumakano」の狩野佑真氏とコラボレーション。在籍する18名の職人とともに、染色、木工、蒔絵、陶芸、漆芸などの伝統工芸を現代らしく生かしたプロダクトを生み出している。
木工による鉛筆立てや箸、羽根の生えたような持ち手がかわいらしいマグカップが生まれた他、絶妙な和テイストのテキスタイルには伝統的な染色の技法が用いられている。
もちひこ × UMENODESIGN 梅野聡
テントハウスの設計や製造などを手がけるもちひこは、プロダクトデザインを中心に幅広い活動を展開する「UMENODESIGN」の梅野聡氏とのコラボレーションにより、ガジェットポーチを製作した。3サイズ、6色のバリエーションで展開されている。
エテ × mag design labo. 花澤啓太
エテは、子ども家具専門の家具メーカー。ロボット型の収納「ロビット」やコンセントを模した収納「コンセントボックス」など、カラフルでかわいらしいプロダクトは、子どもたちを自然と笑顔にさせる。
このプロジェクトでは、家具メーカーでの実務経験を持ち、家具・雑貨の企画デザインから製造まで、幅広くたずさわってきた「mag design labo.」の花澤啓太氏とタッグを組み、子ども用学習机を製作した。
DCS corp. × studio mufufu 水島直洋
照明器具専門メーカー・DCS corp.は、英国でデザインを学んだデザイナーが所属する国際派デザイン事務所「studio mufufu」とのコラボレーションにより、モダンなデザインのペンダントライトを製作。ランプシェードに映る電球の光は、無機質さと温かみが混在した独特のニュアンスを、空間にもたらしてくれる。
杉本家具 × KENICHIRO OOMORI MOVING DESIGN
素材や製法の観点から木の新しい可能性を探究してきたという共通点を持つ、静岡市の家具メーカー・杉本家具と、「KENICHIRO OOMORI MOVING DESIGN」の大森謙一郎氏は、多機能な木製の壁掛けを生み出した。
置き型としても飾ることができるプロダクトは、木の繊細な優しさが魅力的。
エンジェルック × つなぐデザインしずおか
防振や衝撃緩衝に優れた独自の高分子架橋GEL応用製品「engelook(エンジェルック)」を幅広い分野に展開するエンジェルックは、「つなぐデザインしずおか」と共同で、インシュレーター(絶縁材)の開発に取り組んでいる。商品化に向けて、プロジェクト期間終了後も開発を継続していく方針だ。
依田工業所 × アンノデザインオフィス 阿武優吉
真空成形法を用いたプラスチック製造に強みを持つ依田工業所は、プロダクトデザインをてがける「アンノデザインオフィス」の阿武優吉氏とともに、屋内ディスプレイ用の自転車カバーを製作。サイクルショップや自転車愛好家からの需要が見込まれている。
日本各地で広がる、ものづくりとデザインのコラボレーション
「つなぐデザインしずおか」のほか、山梨県富士吉田市の織物メーカーと東京造形大学との産学協同で商品開発に取り組む「富士山テキスタイルプロジェクト」や東京都墨田区の「ものづくりコラボレーション」など、近年日本各地で、メーカーとデザイナーのコラボレーションが広がっている。
商品開発をきっかけにメーカーとデザイナーが出会い、それぞれの技術やスキル、ノウハウの共有にとどまらず、思いや感性が触れ合い、商品に結実していくプロセスこそ、新しいものづくりに不可欠なものなのかもしれない。