「手軽さ」という点で圧倒的に便利なスマートフォンのカメラ(以下「スマホカメラ」)。いまでは雑誌の表紙にも使われるほど、そのクオリティはますます上がっている。だけども画質がいくら向上したところで、そのスマホを使えば印象的な写真が撮れるというわけではない……。よりきれいな写真を撮るには、当然ながらテクニックやコツが必要だ。
今回は、化粧品広告や雑誌の撮影で活躍するフォトグラファー・今井広一さんに、普段、スマホカメラをどのように活用しているのか、お話をうかがった。撮影テクニックからプリントした写真の装飾方法まで、すぐに使えるアイディアが満載だ。
仕事で使用するような大きいカメラが荷物になるときや、打ち合わせ中に見つけた料理の写真を撮るときは、スマホカメラを活用しているという今井さん。ときにはスマホで撮影した写真をA3で出力したり、フォトブックにすることもあるのだとか。
旅行中なんかは結構使ってます。やっぱり一眼レフカメラと違って、サッと取り出せて、サクッと撮れるからいいですよね。深くこだわればこだわるほど、テクニックについては研究できます。ですが、まずは2つのことを注意するだけで、これまでと印象がガラリと変わるようなきれいな写真を撮ることができますよ。ちなみにスマホ全般に通じるものなので、どんなOSでも、よほど古いものでなければ問題ありません。
スマホカメラで注意すべき2つのこと
その一:自然光で撮影できる場所を探し、不要な光は“隠す”
自然光って、撮影をする上で最強のツールなんですよ。撮影する対象は問わず。なので、まずは自然光で撮れる場所を探してみてください。窓際に移動するとかね。それだけでもだいぶ変わります。とにかく圧倒的に明るいんです、太陽の光って。人間が“自然に感じられる光”だから、写真にもそれが表れます。
まずは、対象は何であれ自然光を探すことが必要だ。実際に、自宅の光を利用し「OK例」「NG例」を撮影してもらった。
見ていただいて明らかだと思いますが、上がNG例、下がOK例です。
室内での撮影に多いことですが、蛍光灯や電球、窓から来る光など、複数の光が混ざってしまうことがあります。そういった環境だと、被写体がすべての光を受け止めるんです。そうなると色が混じり合ってしまうため、写真の印象としては気持ち悪さが出てしまいます。
また種類の異なる光が多方面から被写体に届いているので、写真に“方向性”がなくなり、平坦でのっぺりした写真になってしまうんです。
一方「OK例」では、蛍光灯を消して、写真左側にある窓から差し込む自然光のみで撮影したという。確かに、印象が大きく異なる。
光が一方向から届くときれいに写りやすいですよ。カーテンとかブラインドがあれば、優しい光にしたりとか、もっとディティールにこだわった調節が可能になります。蛍光灯を消すだけでもこれだけ変わりますからね。
でも、自然光が常にあるわけではない。レストランなどの自由度が少ない(場所を選べない)施設内で、スマホで撮るときだってある。そんなときは、身近なものを使えば対応できるという。
布や紙で覆って隠すだけでも、複数の光が被写体に侵入するのを防げます。仕事で飲食店での撮影があるときは、僕もよくやっていて。要は複数の光が混ざってしまうのを避けることで、印象的な写真にすることができるんです。
その二:“水平・垂直”が、美しい構図の写真を作り出す
もうひとつは、構図。これはもうシンプルで『水平・垂直を意識』するのが最大のコツです。カメラの性質上しょうがないことではありますが、広角レンズって、どうしても線が歪んでしまうんですよ。この歪みをなるべく発生させないために、構図を調整してカバーします。
ちなみに広角レンズのこの性質は、よい部分もあるのだとか。例えば、大きな建物を撮影するとき。下から見上げるように撮影すると、人間の目には写らないようなかたちになり(=建物の上部が小さくなる)、ドラマチックな雰囲気を表現できる。もしくは食べ物を撮る際、寄って撮影すると写真の奥側が小さくなり迫力が出る、といったメリットもあるのだ。
それでは構図の違いがわかるOK・NG例も見てみよう。
NG例の左の写真は、ドアの左端の線が歪んでいて真っ直ぐにはなっていません。このアンバランスな感じが、どこか気持ち悪い印象に。被写体に対して水平・垂直にカメラを向けていないために、違和感のある写真になってしまっています。
右のOK例のように撮影するには、たいていのスマホカメラに付いている『グリッド機能』を活用するのがおすすめです。グリッドの線と被写体が平行・垂直になるように調節します。同時に大切なことは、カメラの面を傾けないこと。傾けていくと歪みがどんどん出てきてしまいますので、被写体に対して、スマホを平行に持って撮影してください。
グリッド機能を使用しても、撮影する環境によってはどうしても傾きが出てきてしまうことも多い。最近の写真アプリでは水平・垂直を直す機能が入っているので、どうしても傾いてしまうようだったら(最終手段として)アプリで調整しよう。
撮った写真データ、どうしてますか?
撮影したデータを、スマホ内にどんどん溜め込んでいる人は多い。ただ一眼レフに引けを取らないクオリティの写真を、活用せずに残しているのはもったいない気も……。
その点、今井さんは生活にうまく馴染む、写真の活用方法を持っている。
写真のプリントは、「ファミマフォト」を使ってサクッと簡単に
スマホカメラで撮影した写真は、セレクトして、ファミリーマートのマルチコピー機で出力しています。L判1枚で30円ですし、『Famiポートアプリ』の「ファミマフォト」を使えばサクッとできるんですよ。仕事だとじっくりやりますが、プライベートのものはなるべく時間をかけず簡単に出力したいので……。
ファミリーマートの店舗にあるマルチコピー機を利用するプリントサービス「ファミマフォト」は、L判や2L判サイズでの写真プリントのほか、写真の引き伸ばし印刷(普通紙B5~A3サイズまで)にも対応している(※一部、L判・2L判写真プリントに対応していない店舗があります)。
使い方は至ってシンプルだ。『Famiポートアプリ』の「フォト」項目を起動させ、ライブラリから写真を選択。右下に現れる「プリント番号取得」ボタンをタップすると「プリント番号(ユーザー番号)」が出てくるので、印刷可能期限内(8日間ほど)に「ファミリーマート」のマルチコピー機でプリント。または「サークルK」「サンクス」のマルチコピー機でも印刷することができる。
店舗のマルチコピー機では、タッチパネル上で「プリントサービス」→「ネットワークプリント」と選び、先ほど取得した「プリント番号(ユーザー番号)」を入力するだけ。
余白も付けられるので、だいたい余白を入れて出力しています。『これは!』という写真があったとき以外は、L判サイズで統一させてますね。
L判サイズということもありますが、結構きれいにプリントできるんですよね、これ。1枚あたり1分以内でプリントできますから、外出先でもたまに使ってます。
スマホカメラで撮影したようには見えないほどの写真クオリティ。もちろん、引き伸ばせばそれだけ写真は粗くなるが、写真によってはきれいにプリントできる。A4サイズなら光沢紙も選べるので、好みに合わせてプリントを楽しみたいサービスだ。
入れ替えることも想定し、最低限のアイテムで写真を飾る
プリントした写真は部屋に飾りますが、写真をメインにしたいので、紐とクリップ、隙間にマスキングテープを使っています。そこまで大がかりなことはしていませんね。というのも一応理由はあって、新しい写真をどんどん撮影してプリントするので、すぐに入れ替えができるように工夫しているんです。
2枚目は、より簡易的なバージョン。大きめの写真額をうまく使い、シンプルながらも部屋の壁に合った装飾を施している。
昨年子どもが生まれたので、これからもっともっと写真を撮って、プリントする機会が増えると思います。毎日毎日子どもを撮っているので、写真を並べて成長記録としてもいいですよね。
そうした楽しみ方もできるのがプリント写真のいいところ。今後もスマホカメラを活用していきます。
普段、写真と向き合う時間の多いプロカメラマン。プライベートでは、むしろ時間をかけず手軽にプリントできる『Famiポートアプリ』の「ファミマフォト」を活用することで時間短縮をしている。
部屋に飾るときも意外と簡易的ではあるものの、写真のクオリティが高くそれを全く感じさせない……! スマホカメラを活かしきれていない人は、ぜひ参考にしてみてほしい。
Photographed by Natsuki Kuroda