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サステイナブル住宅、その本当の意味とは?

ROOMIEで数多くの家取材をしていると、施主との会話の中で、ミニマルな暮らし、リノベーション、デュアルライフ、移住など、時代を反映するキーワードがしばしば登場する。そのなかで、最近のROOMIEが特に注目しているのが「サステイナブル(持続可能性)住宅」という言葉だ。

サステイナブル住宅をなんとなく想像すると、長持ちする構造で、長く住み続けられる家。ただ、それが具体的にどのような家で、他の家と何が違うのかと聞かれたら、正確に答えられる人はそう多くない。

そこで、20年以上サステイナブルデザインを研究している近畿大学建築学部の木村文雄教授に、兵庫県伊丹市にある「ダイワハウス 伊丹xevoΣ(ジーヴォシグマ)展示場」でお話をうかがってみた。

サステイナブル住宅とは何か? そしてこれからの住まいづくりに必要なヒントとは?

ライフステージの変化に対応できるのが、サステイナブル住宅

近畿大学建築学部の木村文雄教授

──サステイナブル住宅とは、具体的にどんな家を指すのですか?

サステイナブル住宅では、パッシブデザインが大きな役割を果たします。パッシブデザインとは、家の中に自然の風を通し、太陽の光をうまく取り入れ、快適に暮らしながらも省エネを実現させる設計思想です。

また、サステイナブル住宅には「ずっと同じ家に住み続けられる」という意味が含まれます。建物は一度建てればそれまでですが、なかで暮らす居住者の年齢やライフステージはどんどん変化します。そうした住人の変化に対応できるような「可変性」、そういう要素もサステイナブル住宅には大切な視点です。

──丈夫な家だけが、サステイナブル住宅ではないというわけですね。

いまの家の構造自体は50年、100年と当たり前に持ちます。しかし、問題になりやすいのは内装設備(インフィル)の部分です。インフィルをメンテナンスしやすく、交換しやすくする配慮は、住宅の設計段階から考える必要があります。

──サステイナブル住宅で使われる素材は、他と違うのですか?

例えば、フローリングに本当の木ではなく「樹脂系の素材」を使うとすれば、長持ちはするかもしれませんが、それを生み出すまでにたくさんのエネルギーが必要になります。しかし、木材は再生可能資源であり、自然から生まれ自然に還ります。そう考えると、サステイナブル住宅では「木材を使ったほうがいいよね」という発想になるんです。

──環境を考慮すると「木材」のほうがサステイナブルな素材だと?

その上で、できることなら国産の木材を使いたいですね。海外から輸入した「安い木材」は簡単に手に入りますが、現場に運ばれるまでのCO2排出量を考えると、木材を輸入することはあまりサステイナブルとは言えません。

ダイワハウス 伊丹xevoΣ(ジーヴォシグマ)展示場のリビング

ダイワハウス 伊丹xevoΣ(ジーヴォシグマ)展示場

ただし、どこまで突き詰めるかはとても難しい問題です。サステイナブルという考えは自分自身のことだけではなく、近隣・街・地球のことまで含んだ考えです。生物多様性も重要ですから、すべての生物たちにとってもやさしいものでなければなりません。

遅かれ早かれ、化石燃料が枯渇するわけですから、いまからでもそういうことを考える必要はあると思います。

──そういう話からいえば、サステイナブル住宅は「省エネ住宅」といえます。

それがパッシブデザインのよさですね。日射や風を上手く取り込むことは、工夫次第で可能です。しかし、その前に大切になるのが「家の断熱性」。断熱性がしっかりしていれば、ヒートショックを防げるだけでなく、アレルギー疾患が抑えられることが分かっています。

──アレルギーと断熱性が関係あるのですか?

断熱性を高めると「結露」が起きにくくなり、結果的にカビの発生を抑えられるからです。カビはアレルギーの原因になりますからね。

パッシブデザインを利用するなら、まずはしっかりと断熱すること。その上で、自然の風を上手く取り込み、空気を対流させる。パッシブデザインのことをキチッと考えて設計すれば、建物も傷みにくく、快適で、省エネにもなる。結果的に「長く住みたくなる心地よい家」になるというわけです。

人はどういう空間を「心地よい」と感じるのか?

近畿大学建築学部の木村文雄教授によるお話

──ダイワハウスの「xevoΣ」では、天井高を2m40cm、2m72cm、3m8cm(1階のみ)の仕様を選ぶことができます(※1)。心地よい空間と天井の高さは、どのような関係があるのでしょうか?

天井が高いと人は開放的な気分になります。ただし、どんな場所でも「天井が高いほうが快適」というわけではありません。

一般的に、天井高を上げると「パブリック的な空間」になるといわれます。ホテルのロビーがそうですよね。住宅に置き換えると、リビングは家族が集まる場所という意味ではパブリック的な空間なので、天井は高くしたほうが心地よく感じるはずです。

※1:天井高については間取りや建設地、建築基準法(法令)などにより対応できない場合もある。

クリストファー・アレグザンダーによるパタン・ランゲージ―環境設計の手引の本

反対に、天井を低くすると「他者との親密度が高くなる」といわれています。人はそうした「親密度の変化」を住居に求めています。家族とはいえ、常にべったりした関係では居心地がよくないですからね。

ヨーロッパでは主寝室の天井がすごく高い場合もありますが、そういうところのベッドは天蓋付きにするなど、天井を低くすることで意識的に親密度を高めているのです。

──天井高によって親密度が変化する。おもしろい話ですね。

正確に言えば、天井の高さだけではありません。大切なのは「空間のプロポーション」で、幅・奥行・天井高、それらが複合的に関係しています。なので、それらのバランスが崩れると居心地が悪くなります。トイレの天井を高くしても、落ち着かないということです。

──心地いい空間プロポーションの「黄金比」ってあるんですか?

あるにはあるのですが、家づくりでそれを応用していたら、部屋ごとに天井高をすべて変えなくてはいけないので、ちょっと現実的ではありませんね。

近畿大学建築学部の木村文雄教授による講義

兵庫県芦屋市にあるフランク・ロイド・ライト設計の「旧山邑家住宅」は、各部屋の天井高を意識的に変化させた建物です。空間プロポーションの実験所みたいな建築で、心地よさや親密度の変化を肌で体感できると思います。

──すべての部屋は無理でも、寝室やリビングぐらいは天井の高さを変えたくなりますね。

xevoΣ」の場合、天井高は標準2m72cm。2m40cmや3m8cm(1階のみ)の仕様を選ぶこともできます。これまでは天井高2m40cmを標準とする家が多い中で、これほど高い天井をつくれるのは、設計側からしてもとても画期的なことです。

何も天井が高いからいいのではなく、重要なのは「天井高に変化」がつけられることです。みんなが集まるリビングを2m72cmにして、寝室は通常の2m40cmにする。逆に2階がリビングなら、1階を2m40cmの寝室にして2階を2m72cmにすることも可能です。

天井が高いダイワハウスの展示場にいる近畿大学建築学部の木村文雄教授

──空間プロポーションの話以外で、人はどのような空間を心地よく感じるのですか?

空間の中において「人の視線が届く距離」が重要ということはわかっています。その距離は、長ければ長いほど広々として心地よく感じるものです。

──視線が届く距離、ですか?

具体的には、同じ空間にいても視線が届く距離が長いほうが空間に広がりを感じ、届く距離が短くなると空間は狭く感じる、というものです。

ダイワハウスのこの家は「視線が届く距離」という側面から見ても、とてもうまく設計されています。いくつか具体的な例を出しながら説明してみましょう。

木村教授が語る「心地いい家の秘密」とは

木の雰囲気が落ち着く小さな書斎

例えば、テレビ背面のレンガ壁の奥には、椅子が1脚置ける「小さな趣味スペース」があります。

レンガ壁の右側に扉をつけて閉じることもできますが、この家ではオープンなままです。そのためソファに座っていても、家の角に視線を伸ばすことができます。もしあそこが壁だったら、このリビングはもっと狭く感じるはずです。

──なるほど。視線が届く距離が大切というわけですね。

xevoΣ」の場合、開口部を7m10cm取ることが可能です(※2)。本当はそれだけでも十分開放的なリビングになりますが、この家では「リビング外のウッドデッキ」があることで、リビングをさらに広く見せています。

部屋から「デッキの先端」が見えると思いますが、もしデッキが存在せずに窓の向こうが庭になっていると想像してみてください。どんな感じがしますか?

※2:幅3m45cmの窓を2枚連続で配置可能(中間に柱が入る)。

ダイワハウスによる開放的な窓の大きさ

──そういわれたら、部屋が少し狭く感じるかも……。

デッキの先端が見えることで視線が届く距離が長くなり、空間に広がりを持たせています。この家では、フローリングとデッキの高さをあわせて連続性を持たせているので、さらに違和感なく広く感じられるのです。

空間が広いことと、広く感じるというのは、実は別の話だったりするわけです。

──おもしろいですね。他にもこの家の中にそういった工夫はありますか?

この家は、リビングのうしろに水回りやパントリーを設けていて、ぐるぐると回遊できる間取りです。動線の中に行き止まりがないというのは、精神的にも広がりを感じさせます。スペースは同じでも、壁をひとつ取るだけで感覚的な解放感は大きく変化してくれます。

ダイワハウスによるオープン欄間付き障子

「空間の可変性」を高める、オープン欄間付き障子

和室の上部がオープンになっているのも、いいアイデアですね。普通だと障子の上は「垂れ壁」を付けて、閉じるのが一般的です。しかし、ここでは上をオープンにしています。これには風と光を取り込みながら、視線はさえぎる狙いがあります。さらに、上をオープンにすることで視点間距離が部屋の奥に伸びるので、障子を閉じていても開放感が得られるメリットがあります。

障子の上に垂れ壁をつくってしまうと、リビングの2m72cmという天井高のよさが活かされません。それは空間のプロポーションがおかしくなるからなんです。この家は「xevoΣ」の天井高を活かしながら、うまく設計されていると思います。

日本人にあった最適な「天井の高さ」とは?

木村文雄教授とダイワハウスの横江麻実さん

ダイワハウスの担当者・横江麻実さんと「xevoΣ」について語る木村教授

サステイナブルの話からパッシブデザインの重要性、さらには空間をより広く見せるテクニックまで、木村教授の話は「未来の住宅」を考える上で、大きなヒントになるものばかり。

木村教授いわく「現代の家づくりでは、“天井の高さ”をあらためて考え直すことが大切」といい、ライフスタイルの変化を考慮しながら家を設計することが必要だと話してくれた。ダイワハウスの住まいづくり情報サイト「TRY家コラム」では、快適な家づくりのカギといえる「天井の高さ」によりフォーカスし、さらに具体的で興味深い話が展開されている。

ここ60年で約10cmも平均身長が伸びたといわれる日本人。その日本人にあった最適な「天井の高さ」とはいったいどれぐらいなのだろうか? 現代人が心地よく暮らせる天井のあり方についての興味深い考察は、TRY家コラムで公開中。

xevoΣ(ジーヴォシグマ)[ダイワハウス]

Photographed by Miki Matsuura

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