京成電鉄・東京地下鉄メトロが交差し、都内では数少ない路面電車・都電荒川線が走る町屋。駅前には昔ながらの居酒屋が並び、ザ・下町な佇まいが魅力です。そんな町屋駅から徒歩5分の場所に、今回の主人公・平井龍之進さん、好美さんの家が。以前、ルーミーで結婚式を取材させていただいたおふたり、今はどんな家に住んでいるのでしょう。
住所の場所に訪れると、家が見つからない……。「おーい、ここですよ」と案内してもらった場所は、いや、ここ花屋か雑貨屋にしか見えません! それにはこんな理由がありました。
職業:建築デザイナー(龍之進さん) フラワーデザイナー(好美さん)
場所:荒川区・町屋
面積:約100平米 2LDK
家賃:15万円程度
築年数:築26年 店舗兼住宅
お気に入りの場所
ベッドとキッチンがあるプライベートスペース
「寝るのが好きなので(笑)」と言って紹介してくれたのは、ベッドがあるプライベートスペース。家の中で「プライベートスペース」というのもおかしな話だが、平井家は、店舗スペースと住居スペースが繋がってできている。
元々は、店舗利用+そのテナントの住居スペースの抱き合わせで募集がかけられていた物件。それを、どちらも合わせて住居として使う交渉をし、「商用利用しない」「現状復帰ができる改装のみ可」という条件で契約。龍之進さんは店舗スペースと住居スペースの間の壁を抜く許可を得て、動線を確保した。住居スペースには、ベッドルームとキッチンがコンパクトにまとまっている。
パレットで作ったリビングの小上がり
いつでもレイアウト変更可能なパレットを利用したリビングスペースは、時には30人の友人を招いてホームパーティをすることも可能。クリスマスにはリース作りのワークショップを開いたり、友人の結婚式の準備をしたり、いろいろと“使える”空間。パレットはパレット王で購入して、自分たちで組み立てた。
2人掛けのハンモック
ガラス張りの店舗スペースは、家でありながら半パブリックな空間。オランダを訪れた際に買ってきた2人掛けのハンモックは、龍之進さんのお気に入りスペース。休みの日は、ここで好美さんとふたりダラダラと過ごすのが平井家流。
喫煙スペース
植物を愛でながらタバコが吸える喫煙スペースは、格別にリラックスできる空間。
この部屋に決めた理由
「広さと安さ、それと大家さんの人柄で決めました」
開口一番、この部屋に決めた理由を語る龍之進さん。これまで、目黒区で35平米の物件、世田谷区で68平米の物件と、およそ1年ごとに住み替えてきた。今回も、1年を待たずに「見たい物件がある」と言い出した龍之進さんに対し、好美さんは「また……?」と半信半疑で内覧に同行したそう。インターネットで見つけて惹かれたその広さ、実に100平米。
前述の通り「現状復帰ができる改装のみ可」という条件のもと、いろいろなイベントやライフスタイルの変化に対応するために、内装デザインは「可変性」を意識。すぐに解体可能なシェルフや、積み重ねてベンチにできるパレットの床が、一味違うインテリアをつくり出している。
また大家さんの人柄も、入居を後押ししたポイントの1つ。大家さんは長いこと町屋で不動産屋を営んでいて、「デザインの力で町を盛り上げるような、何か新しいことをしたい」と前々から考えていたそう。それで平井家の計画に共感してくれ、ラッキーなことに契約までこぎつけられた。今も龍之進さん、好美さんの計画に前向きに協力してくれ、新しいプロジェクトも進行しているという。
残念なところ
広々としたリビングスペースは、以前は店舗があった場所。電気系統が住居と店舗で1系統しかなく、リビングスペースにエアコンがないのが悩み。また、ペット厳禁なので、大好きなネコが飼えないのも残念だ。
お気に入りのアイテム
紙風のキャンバス製バッグ
友人の紹介で知り合った滝川かずみさんが製作している、帆布を蝋引きしたバッグ。彫刻作品を制作する過程で生まれた作品で、クラフト紙の色を再現するために、帆布をコーヒーや紅茶で染めている。龍之進さんは普段からかなり活用しているそうで、使い込んだ風合いもいい感じ。
たくさんのプランツ
外から見ると「花屋かな」と思うほど、植物にあふれた家。その数およそ100鉢。元々は植物に興味がなかった龍之進さんだが、フラワーデザイナーの好美さんの影響で、どっぷりハマってしまったそう。
「半年間くらいで、ものすごく詳しくなっちゃいましたね(笑)。僕は大学時代はニューヨーク、大学院時代はセントルイスで暮らしていて、同じ場所に4年間以上住んだことがなかったので、植物やペットを共にする習慣がなかったんです。今は日本に戻ってきて仕事も決めて、しばらくは定住する予定なので、植物に接してみようと思ったら……ハマっちゃいました」
なるほど、毎朝晩には個体別に適した量&タイミングで水をあげている可愛がりっぷりで、取材の1/3は植物の話だった。
丸尾舞さんの陶器作品
名古屋をベースに陶芸作品を製作している丸尾舞さんの陶器類がお気に入り。ニューヨークの語学学校で出会ったそうで、おふたりの結婚式では、テーブルの花瓶や受付の小物入れなど、約30点をオリジナルカラーで製作してもらったほど。中でも“凹凸の”という意味を持つ「Concavo-convex」シリーズは、なんとも言えないマットな色合いと触りごこちが素敵。