最近では家に和室を設けたり障子や襖(ふすま)を間仕切りに取り入れたりと、日本の伝統的な様式が再び注目を集めています。
襖の魅力を生かした創作和風家具「fuscoma(ふすこま)」は、襖や掛け軸などを仕立てる「表具師」が手がけた和と洋のコラボレーション。建具の一部である襖を独立させることで実現した、新しい和モダンのかたちです。
手がけたのは、神奈川県相模原市で表具店を営む黒羽雄二さん。
家業である表具店を継ぐ前は、長きに渡って建築デザインに携わっていました。その経験を生かして誕生した「fuscoma」は、いわば建築デザインと伝統技術継承の融合。単に戸の部分に和紙を使用しただけではなく、襖のデザイン性と実用性を活かした家具を制作しています。
「和室離れが進み、襖工事の需要が少なくなって行くなか、新しい方向性を模索していましました。そこで考えついたのが襖の技術を利用した創作和風家具の開発です。」(黒羽さん)
「fuscoma」は骨組み部分に「敷居・鴨居」を用いています。鴨居とは、和室に引き戸状の襖や障子を立てるために、上枠として取り付ける木のこと。下部に取り付ける敷居と対になって、戸を滑らせる役割を果たします。
日本古来の建具の技術を応用することで、建築の付属としての襖を独立させ、あらゆる空間に配置することができるのです。
ひと口に襖といっても襖紙、縁、取っ手などの素材はさまざまで、組み合わせ次第で何通りものデザインを作ることができます。部屋の雰囲気やインテリアに合わせ、自由なデザインが可能です。
「縁に機能をもたせるコンセプトや、取手がおさまる窪みに採用した襖の引手の技法「塵落とし」など、発想と流用を柔軟に取り入れることを心がけました。日本の和紙文化がこの製品に新しさのあるあたたかいオリジナリティを与えてくれればと思っています」(黒羽さん)
昨年初出展した「DESIGN TOKYO」では、MoMAニューヨーク近代美術館のキュレトリアル・スタッフ、ルーク・ベーカーさんと日本の技能や芸術について語った黒羽さん。「fuscomaのデザインは、ニューヨーカーに受け入れられるチカラがある」と高い評価を得ました。
そのことからも、日本の伝統美は今後ますます発展していくことが予想されます。
戸を取り外せばディスプレイにも。奥の面に貼る襖紙は豊富なバリエーションから選ぶことができますよ。
襖紙のデザインは、フローリングや北欧家具との相性が抜群。日本が誇る襖は、和室はもちろん洋室にも映えます。
雰囲気を変えたいときや、破れてしまったときは、戸の襖紙を張り替えることもできます。縁・枠はそのままに、襖紙や障子紙だけを張り替えてきた日本の暮らしそのもの。「fuscoma」は良いものを長く使う日本人の心を継承しています。
日本の伝統美がもたらす「和のちから」を、日々の暮らしに取り入れたいですね。