建築事務所で働いていた経験を活かし、細かいディテールまでこだわって完成させた家は、新婚のふたりにとっての理想の空間。でも、なぜそれほど若くして家を買うことになったのでしょうか?
今回の「リノベーションストーリー」は、これまで登場していただいた中で最年少の小山さんに、リノベに関する話をいろいろとうかがいました。
家を購入することになった経緯は?
ここに来る前は千葉の市川に部屋を借りて、いまの奥さんと4年ほど一緒に暮らしていました。ふたりとも東京で仕事をしていたので、結婚を機に都内に引っ越したかったのですが、調べてみると家賃が高い……。
ローンを組んで購入したほうが毎月の支払いが安かったのと、もともと建築をやっていたので、ずっと自分の家が欲しかったのが大きな理由ですね。それに、将来的には実家の家を引き継ぐことになるので、今は好きな場所で暮らして、なるべく若いうちにローンを払い終える方がいいと思いました。
実家のある千葉に帰りやすく、値段も安いエリアが良かったので、物件探しは江東区にしぼりました。この物件はリノベ会社さんの紹介で見つけたのですが、それまでは一度も下車したことがない駅です。マンションがある北側エリアは再開発されていて、住みやすい印象ですね。
もちろん家を購入することに不安もありましたが、お金に関していえば、どうにかして稼げばいいと思いました。ただ、ここは築40年の古い建物なので、地震のことはなるべく考えないようにしてます(笑)。
完成までに苦労したことは?
ぼくが頼んだリノベ会社は、物件探しから施工まですべてをマネジメントしてくれましたが、物件を決めてからが大変でしたね。
こちらの要望を伝えてまずプランを提示してもらったのですが、それが微妙で……。面積は55㎡と広くないので覚悟はしていましたが、初回のプランを見てすごくテンションが下がりました(笑)。何度か図面を書き直してもらっても納得できなかったので「これはもうだめだ」と、結局ほとんど自分でプランを書き直しましたね。
工事が始まる前に「造作まわりの詳細図が欲しい」と何度もお願いしたのですが、「現場で合わせますから」というだけで全然取り合ってくれなかったんです。リノベってそういうものなのかなって思っていたのですが、いざ工事が始まると、壁の位置が図面と違っていたり、寸法ミスで納まりが悪くなったりとトラブルの連続(笑)。
エアコンは壁に埋め込むタイプにしたかったのですが、それもうまく付けられないといわれたので、自分でメーカーから詳細図をダウンロードして、現場でぼくが指示をしながら取り付けてもらいました。
そういうトラブルがあまりに多かったので、完成するまでは苦悩の日々でしたね。平日は仕事後に見積もりをチェックして、週末は現場で確認作業をして、という感じでした。設計の経験があったから間違いにも気づきましたが、もし一般の人だったら完成するまで分からなかったと思いますよ。
リノベを検討している人へアドバイスするとしたら?
業者を完全には信用しないことですね(笑)。
ぼくの経験が特別なのか、リノベがこういうものなのかは分かりませんが、図面通りにいかないと思っていたほうがいいかもしれません。「現場での変更もあり得る」というフレキシブルな気持ちは必要だと思います。
あと、最初から具体的なイメージを持っておくことも大切です。ただ漠然と「中古マンションをリノベしたい」だけでは失敗する気がします。ぼくの場合は、iPhoneのフォトストリームで奥さんと共有のフォルダをつくって、ウェブサイトで見つけた事例をストックしながらイメージを固めていきました。壁の色、窓や扉のアイデアもネットで見つけたものを参考にしています。
いろいろトラブルは多かったですが、最後までこだわって良かったと思います。いくらリノベだからといっても、すべて業者に丸投げしていたら、ハウスメーカーのつくる家と同じで、均一的でどこか既製品っぽい家になっていた気がします。
多くの人にとっては便利なスペースでも、自分たちには必要がない場合もあるわけですから、自分たちのわがままを実現してこそ本当のリノベだと思いますよ。
今後のプランは?
家のローンはまだまだ残っていますが、払い切るまでここに住もうとは思っていなくて、お金に困ったらここを貸し出すつもりでいます。
部屋の広さを55㎡にしたのもそういう意図があって、これ以上広い部屋だと、逆に借り手が少なくなるんですよね。本当は45~50㎡ぐらいが理想なんですが、それだとぼくたちが生活するのに狭すぎるので。このエリアにしたのも、時価が下がらないだろうという理由もあるんです。
ただ、ローンが払い続けられる限りはここに住むわけですから、がんばって稼がないとですね(笑)。
ミニマルでシンプルなデザインが好きな小山さん。シャープなプロダクトが多いですが、家づくりに関しては夫婦で何度も話し合って意見をすり合わせたそうです。そのおかげで、無機質過ぎる空間になることなく、どこかやわらかく力の抜けた居心地のいい空間になっているのが印象的でした。
2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東東京の注目度もさらに上がっていきそうな予感。もし中古マンションをお探しの人は、江戸川区、江東区あたりが狙い目かもしれませんよ。
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Photograghed by Kenya Chiba