「家は3軒建てて、はじめて理想的になる」
そんな言葉を地で行くように、すでに2度のリノベを経験された山岸さん。そこにはどんなストーリーが隠れているのでしょうか?
ここに住むことになった経緯は?
このマンションは北と南で2棟に分かれているのですが、昨年まで8年間、向かいの北棟に住んでいました。もともとは南棟に住みたかったというのがあったので、こちらの部屋が空く話を聞いたとき、夫婦の間ではすでに引っ越しする気になっていましたね。
三宿に来る前は横浜に住んでいました。そこは賃貸だったのですが、毎月の家賃を払うぐらいなら……と考えるようになって、思いきって家を購入することを決めたんです。特に三宿にこだわったわけではなく、いろいろなエリアを見て回った中で、物件ありきで選んだ感じです。
建物の築年数は30年以上で、駅からも距離がありますが、広さの割にはかなりおトクだと思います。メゾネットというのも決め手でした。部屋に階段があるだけで、ちょっとワクワクするんですよね(笑)。
築年数の古さは気になりませんでしたか?
私たちの場合「失敗してもいいから中古マンションを自分たちでリノベしたい」という気持ちがありました。外観の古さは全然気にならないですね。中に入ったら分からないですから。
ただ、中古マンションを検討するなら、築何年の建物で、どこの業者が工事して、どういう構造なのか、という基本事項は調べておいた方がいいですね。大規模修繕のことも考えておかないといけないし、計画通りに修繕積立金が貯まっているかなども重要だと思います。
リノベ業者はどのように決めましたか?
3カ所ぐらいに見積もりをお願いしました。いわゆるリノベーション系の会社と、リフォームもできる工務店と、その真ん中ぐらいの会社で、プランと見積もりをもらって比較しました。
リノベーション系の会社は、雑誌に出てきそうな斬新なプランだったのですが、やっぱり価格が高かったです。予算内だと下の階しかできないといわれ、最終的にはリフォーム系の工務店に頼んだのですが、金額だけでいえばリノベ会社の半額ぐらいだったと思います。
私たちが頼んだところは、リノベ会社が下請けで頼むような業者なので、工事費が安くなる反面、プランからデザイン、あらゆることを自分たちで決める必要がありました。こちらの指示通りにしっかり作ってくれるけど、デザインや使い勝手まできちんと考えてくれるわけではないので……。すべてを業者さんにお任せすると、家の中に「あれ?」っていう場所がいっぱい出てくるかと思います(笑)。
デザインはどのように決めたのですか?
前の家も、今回の家も、プランやデザインに関しては、ほとんど私の好きなようにしました。ときどき夫からは「それはちょっとやり過ぎじゃない?」って注意されるぐらいで(笑)。家づくりで言い合いになることは、ほとんどなかったですね。
前の家は、家具から床まで白に統一していました。家具を「とりあえず白」で揃えればいいので楽だったのですが、今回は少し違う雰囲気にしようと思って、シックな色の材料を取り入れています。2人ともインテリアや建築に特別詳しいわけではないので、ネットでインテリアの画像を集めながら、頭の中のイメージに近いものをつなぎ合わせていった感じです。
いちばん活用したのは、Googleの画像検索です。今回のリノベでは「白いタイルと黒い目地」をどうしても使いたかったので、そういった事例をGoogleでたくさん検索して、まわりの壁は濃い色のほうがいいとか、ステンレスが合うとか、空間のイメージを画像からつかんでいきました。あとは、そこを起点にして全体のデザインを決めていきましたね。
工務店とのやり取りは大変でしたか?
結局は、その業者がどれくらいの実績があって、どれくらいの物件数をこなしているかが大切だと思いました。今回頼んだ工務店は、たまたま同時期に売りに出されていた同じマンション内の部屋をリフォームした会社だったので、リフォーム中にのぞきに行ったり、完成した部屋を見たりして、「どういうことができる業者なのか」が事前にわかっていました。
うまくやり取りするコツは、業者のほうが良かれと思って勝手に決めることを、どれだけ上手く阻止できるか。ドアの取っ手ひとつにしても、向こうにとって都合のいいものが使われるので、もしデザインが気に入らないなどがあれば、自分たちで探したものに変更してもらうとか、そういうこだわりは必要ですね。
もし家の完成イメージがしっかりとあるなら、リフォームの実績がある工務店に頼むのはいいと思いますよ。デザイン費が入っていないので、価格はかなり抑えられます。でも、もし予算に余裕があるのなら、やっぱりリノベーション会社に頼んだ方が楽に素敵にはなると思います(笑)。
今後の予定は?
今回の引っ越しでは、新しい家電があまり買えなかったんです。エアコンも持ってきたし、テレビもそのまま。予算のこともあったので、あとから変更できるところは、すべてあと回しにしました。余裕ができたら、少しずつ買い足していきたいですね。
テレビ下のスペースも、本当は犬のケージが一体になったような収納兼サイドボードを設置する予定なんです。いまはイケアのキャビネットを仮で置いていますが、来年ぐらいには工事ができるとうれしいですね。
工務店を利用することで、相場よりもかなり予算を抑えることに成功した山岸さん。デザイン費としてかかる予算を節約し、専門的な経験がないにも関わらず、業者とうまくコミュニケーションをとりながら見事に完成させています。
すでにリノベーションの明確なイメージが固まっている人なら、山岸さんのような進め方もいいかもしれませんね。
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Photograghed by Daisuke Ishizaka