連載「RENOVATION STORY」は、リノベーションをした家を訪れ、家が完成するまでの経緯や苦労した点、今後の生活についてをうかがいます。今回は第6回目です。


東京都港区麻布十番のレトロマンションで暮らす土居さん夫妻。

音楽の演奏とレコーディングが趣味のおふたりには、家にどうしても欲しいものがありました。

縁やタイミングに恵まれ、できないだろうと諦めていたリノベーションが実現したおふたりは、今とても満足して生活されています。

東京のど真ん中に位置する高級住宅街、暮らすにはどうなのかなと思いましたが、どこに行くにも便利で、庶民的な商店街もあって、案外暮らしやすい場所みたいです。

「ぼくたち、特別にお給料が高いわけではないんですよ」

そう土居さんはおっしゃいますが、麻布十番なんて高そう……そんなに簡単に家が買えるんですか?


なぜここに住むことを決めたんですか?

東京都港区麻布十番の中古レトロマンションをリノベーションをし、趣味の音楽が楽しめる防音室を完備して趣味に生きる土居さん夫妻_1

リノベーションしようと思った1番の理由は、防音室が欲しかったからですね。ふたりとも音楽が趣味で、奥さんには結婚指輪の代わりにプレゼントしたくらいです。

以前の家では、奥さんは布団を被って歌ったり、ぼくは片隅でヘッドホンしたりと、とにかく音を出さないよう、静かに暮らしていました。

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若い頃に家を買おうとしたことがあったんですけど、過去に1度クレジットカードの支払いが遅れたので、これじゃ審査を通らないだろうと言われたんです。

それから、ずっと無理だろうなと思っていたんですけど、もう1回探してみようと不動産屋さんへ行ったら、あっさり「問題ないよ」と言われて、驚きました(笑)。

ぼくらは新築にこだわりはなくて、何より重視したかったのはロケーションと平米数でした。その上、部屋のなかに防音室を組み込みたいと考えたら、リノベーションしか選択肢はありませんでしたね。

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広いテラス

麻布十番を選んだのは、ほんとうに偶然です。最初は目黒エリアで探していたんですけど、なかなかいいところが見つからず、不動産屋さんから勧められたのがこの家でした。

ふたりでこれまで4回くらい引っ越していて、ぼくらの生活には50平米以上必要だと考えていたので、47平米しかないこの家はあまり気が進みませんでした。でも、不動産屋さんから「とにかく1回見てくれ」と言われて内見したら、テラスが広くて、立地もよくて、すごく気に入ってしまいました。

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奥に見えるのがベッドルーム

ラッキーだったのは、相場よりもかなり安かったことです。オーナーがこのマンションの設計に関わった建築家で、この部屋はもともとその方のアトリエだったそうなんです。業者に転売されたくないから、売らずに残していた部屋でした。

最初は、ぼくたちが転売するかもしれないから売りたくないって言われて、実際に会ったらその疑いも晴れて、購入させてもらえることになりました。


リノベーションの過程を教えてください

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リノベーション会社を自分たちでネットで調べたり、不動産屋さんが紹介してくれたりしましたが、最終的に奥さんが10年来のファンだった建築設計事務所「ブルースタジオ」にデザインをお願いしました。

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ブルースタジオに依頼するなんて高額で無理だろうと思っていたんですけど、セレクトオーダー式のプラン「TOKYO*STANDARD」なら、予算にハマることが分かりました。むしろ、相見積を取ったら1番安かったのには驚きました。セレクトオーダー式でも、こちらの希望に合わせてデザインしてくれるし、すごくオススメですね。

初め、部屋の真ん中に防音室があるプランがあがってきたときには驚きましたけど、ふたりの生活の中心にこの防音室があって、部屋を仕切る役割もしていて、いいなと思いました。そこからさらに、いろいろな図面を見たり、現地調査するなかで、細かく調整していきました。


設計時に、こだわってよかった点はどこですか?

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奥さんがモルタルの床を希望していたんですが、大通りに面しているので、ヒビが入る可能性があることが現地調査で判明しました。

それで、モルタルの代わりに大判サイズのタイルを敷くことになったんですけど、あまりイメージが湧かなかったんですよ。タイルは小さいサイズがいいかなと話していたら、「絶対に大きい方がいい。絵を描いて送るから見てください」ってデザイナーさんに言われて。見てみるとすごく格好よくて、とても気に入りました。

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特に、デッドスペースがないこと、機能的であることを希望しました。

奥さんが雑誌で見つけた「玄関を入ってすぐに洗面台があるプラン」を提案したり、担当の方が「壁はないけど床の素材で空間が切り替わる」ようにしてくれたり、効率的で、広く感じられる空間ができ上がりました。

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もっともこだわりがあったのはもちろん防音室ですが、この平米数で防音室を2個入れてくれって、おかしいですよね。デザイナーさんもやっぱりビックリしたみたいです(笑)。

すごく快適に、お互いの趣味ライフを満喫できています。

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ちなみに、防音室を覆う青い壁は、結婚10周年で行ったモロッコのマジョレル庭園からインスパイアを受けて決めました。

イヴ・サンローランが愛した庭園で、青い建物と植物が融合した、すごく素敵な場所なんです。ちょっと奇抜な感じもしますが、ぼくらはすごく気に入っています。

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モノ自体はすくないほうだと思います。スッキリ暮らしたいので、収納を増やすのではなく、この家の機能に合わせて暮らそうと思い、この家に引っ越す前にかなり断捨離したので。

細々したモノをディスプレイするのは、ビジュアルノイズになりそうで……最初から置かないようにしています。

この家が好きだからこそ、モノが溢れないようにしたいですね。


リノベをしてみて、どんなところが大変でしたか?

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古いマンションなので、部屋の中に大きな梁(はり)があって、取り除けないことで制約があるのは大変でしたね。

例えば、お風呂は3社くらいショールームをまわったなかでリクシルのものがよかったんですけど、希望したものがサイズ的に入りませんでしたね……。結果的には、これならいいというのが入ったので、よかったんですけど。

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キッチンの梁も変な出方をしていたのを、職人さんが手作りの換気扇でクリアしてくれました。

床も、ちょっと下げて天井までの高さを出す予定だったんですけど、簡単に剥がせないコンクリートがびっしり敷き詰めてあって……。「これを剥がすとなると、2日間ずっとドリルで壊すから、ご近所トラブルになるかも。その覚悟があるならやるけど」って言われました。もちろん、そんな覚悟はなかったです(笑)。


家を持ってみて、心境の変化はありますか?

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とくに気負いもないですし、割とフラットですね。家賃的に得か、得じゃないかくらいの感じです。ずっと賃貸に住むつもりもなかったので、月々の家賃と同じくらいの金額を払って、レイアウトも自由自在にできるんだったら、買ったほうがいいかなと思います。

それに、ぼくらは音楽好きなので、スタジオの近くに住んで毎日そこを何時間か使うことを考えれば、プライスレス。

今ではこの家が気に入りすぎて、ここに賃貸で住むとしても、月2、30万までは出しますよ。

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結果的によかったのは、駅近で、ぼくの会社からも近くて、周りが楽しい場所だったことですかね。都心なのに商店街も充実していて、どこに行くにも自転車圏内の立地は大満足です。

ぼくがサーファーだったら海の近くに住むんですけど、信じられないくらいインドアなので(笑)。


リノベを検討している人に向けて、魅力を教えてください

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ちょっと変わった趣味を持っているとか、変な間取りにしたいとか、自分のスタイルがきちんと固まっている人なら、絶対にマンションのリノベーションをオススメしますね。

選ぶポイントとしては、住みたい街の駅近で探した方がいいということ。

僕はずっと住むつもりでこの家を購入していますけど、ご近所トラブルもあるかしれないし、いざ売ろうと思っても郊外だと売りづらいですよね。都心で、かつ駅近だったら売りやすいですから。

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編集部ノート

家は、自分たちの考え方や趣味を最大限に生かせる場所。

賃貸物件に暮らしていると忘れがちな、そんな当たり前のことを、土居さん夫妻から改めて教わりました。

絶対と思っている希望の広さや立地も、もしかしたら思い込みの部分もあるかもしれません。すこしだけ視点をずらせば、都心でも快適に暮らせる場所はたくさんあるんですね。

「もしこんな部屋が賃貸で出ていたら、絶対借りたい」そう思える家づくりがしたいなら、リノベーションを検討する価値アリです。

Photograghed by Michito Goto



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