渋谷駅から京王井の頭線で15分、東京都杉並区の高井戸駅から徒歩10分ほどの住宅地。畳屋さんを営んでいたおじいさん、おばあさんの店舗兼住宅を引き継いだ太田さんは、お兄さんとそれぞれの技術と感性を活かしながら、セルフリノベを進めています。
リノベを始めて3ヶ月、「残されたものをなるべく活かしたい」思いで少しずつ進んでいく施工には、たくさんの思い出とエピソードと、個性が溢れていました。
職業:イラスト、および会場設営のアルバイト
場所:東京都杉並区・高井戸
面積:一軒家 2DK+倉庫+ロフト+屋根裏部屋 50平米程度
家賃:なし
築年数:30年程度(一度建て替え済み)
お気に入りの場所
床タイルを敷いた、くつろぎのロフト
仕上げ材がむき出しだったロフトに、コルク素材の床タイルを貼ったことで、ゴロゴロしやすくなったそうだ。草原のようなカーペットや切り株のクッション、家に残っていた古い漫画本(手塚治虫さんのものが多い)、自分で描いた絵などを置いて、充実のくつろぎスペースが完成している。
元倉庫の土間スペース
土間の床は、倉庫だったときのまま。元から置いてあったミシンやバイクが残っている。自転車の修理も、リノベの作業も、植物に水をあげるのも、気を使わずに行えるのがいい。車も入れられる。ツタのようなのれんは、グリーン感を演出するためコペンハーゲンの雑貨ストア「フライングタイガー」で購入したもの。
自分で組み立てたシャワースペース
イタリア製のシャワースペースは、自分たちで組み立て、配管のみ業者さんにやってもらった。扉や壁の塗装も、もちろん自分たちで。色のセレクトは、絵を描くのが得意な太田さんが担当。
この部屋に決めた理由
もともと太田さんは武蔵野市に住んでいたが、おじいさんの亡き後1人暮らしをしていたおばあさんが亡くなったことがきっかけで、この家のセルフリノベを始めた。
「祖母が父に残した家を受け継いで、兄とリノベーションを始めました。最低限の修復と補強の工事は業者さんにお願いして、残してもらった使える部材を利用して、新しい空間を作っています」
残念なところ
元倉庫の入り口
元倉庫の大きな入り口はシャッターになっていて、網戸がない。昼間はここを開けっ放しにしているため、前の通りから土ぼこりと蚊が入ってくるのが気になるそうだ。前の通りを歩く近所の人からは「今日もやってるね」と声がかかることもあり、それは悪くないという。
「夏になったら蚊帳を吊ってみようかと思っています」
お気に入りのアイテム
趣味の自転車
自転車は、「GIOS」のミニベロと「ブリジストン」のロードバイクを愛用。趣味の自転車の修理がしやすい環境が気に入っているという。この家と実家を自転車で行き来しながら、日々セルフリノベに励んでいる。
プロジェクター
もともと持っていたプロジェクターをロフトに設置し、スクリーンは天井から吊った。テレビを見たり、パーティをする際には映画を流すことができて、実に快適。
ハンモック
ロフトにはハンモックも設置。乗ると地面についてしまうが、ゴロゴロするのに最適そうだ。ちなみに、1階は海、ロフトは大地、2階は空、屋根裏部屋は天国、1階のトイレは地獄をコンセプトにセルフリノベを進めているらしい。
地球儀型の照明
「球儀は光らないものが多いのに、これは光るからそれだけで楽しいんですよ。暗闇にポッカリ光ってたら、宇宙の神秘も感じられるし。なんでも光ったら大体うれしいんですよね、イルミネーションも好きだし。そもそも地球儀も好きだし。地図と一緒で、できた年代で国名とか国境も違うし……(以下略)」
熱く語っていただいた。
レコードプレーヤー
もともと持っていた古いレコードプレーヤーは、いち早くこの家に持ち込んだアイテム。お兄さんとそれぞれ集めたレコードをこの家に持ち寄った。壁に展示することで、部屋のアクセントにもなっている。
暮らしのアイデア
梁の衝突防止に、ツタの装飾を
ロフトは天井が低く、梁によく頭をぶつけてしまう。そこで、フェイクのツタを絡ませることで、ぶつかる前に梁の存在に気づくことができるという。
「生活の知恵ですね」
これからの暮らし
まずは、セルフリノベを完成させることが目標だ。個室2つと広いバルコニーがある2階はまだ手をつけられていない状態で、今後リノベに入っていく予定だという。
「完成がいつになるのか、まだ見えていないですね。ここで暮らすのか、兄と2人で店舗にするのか、完成してから決めたいと思っています」
番外編:DIYのアイデア
あまったタイルの再活用
湿気で駄目になってしまっていたキッチンの床板は、一部タイルに貼り直した。キッチン台もタイルで造作している。
また、崩れてしまっていた玄関先のコンクリートを、同様のタイルで補修した。ここは以前店舗だったスペースで、解体して前庭にした。植栽を購入して一から整備し、今では多種類の花が咲くまでになった。
タイルは、お風呂場で使われていたものと、近所の家からもらったものを使用し、その他の素材の多くも、この家にあったものか、実家の近所の工務店からもらった余りものでまかなわれている。
「祖母が残してくれた家なので、いろいろなものを捨てずに、できるだけ再活用したいと思っています」
キッチンの空間づくり
もともと壁の上部に作り付けられていた戸棚は、部屋が圧迫されるため、外して床に下ろしたそうだ。棚の中には、お兄さんが制作したガラスのコップなどが納まっている。一部壊れていた天井は自分たちで張り替えたため、色が切り替わっているのがユニーク。
古釘の再活用
グラスを陳列するオープン収納に、古釘と針金で落下防止の柵を設けた。ビール瓶は、太田さんが海外を放浪していたときに集めたもの。
ドアの再活用
家を一部解体して使わなくなったドアを、キッチンのドアに再活用。古い風合いのすりガラスがいい。
番外編2:兄弟それぞれの制作物
ホグワーツ魔法学校の廊下をイメージした絵画
たくさんの絵画たちは、ロフトから2階への廊下に飾る予定で、太田さんが描いているもの。『ハリー・ポッター』に出てくるホグワーツ魔法魔術学校の廊下に掛かる「しゃべる絵画」をイメージしているという。
かわいい苔たち
苔のテラリウムや、家のいたるところにあるコケ玉は、お兄さんが制作したもの。学生時代に植物について学び、かつガラス工芸もしていたそうだ。以前からそこにあったかのように、自然が家や庭になじんでいる。
Photographed by KUMAGAI ATSUSHI
「子どもとオフィス兼自宅でスッキリ暮らすには?」(新宿区)
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