田園都市線で渋谷から3分。飲食店が豊富な人気エリア、三軒茶屋の駅から徒歩数分のワンルームで暮らす漆原さんは、毎日1冊のペースで本を読む読書家。数ヶ月前に「読書」と「安全」をテーマに部屋を大改造したばかりです。会社員の他、認知心理学者の顔をもつ漆原さんの部屋は、心理学を生かしたロジカルな視点と、本への多大な愛情に溢れていました。
職業:スマートニュース勤務、認知心理学者
場所:東京都世田谷区・三軒茶屋
面積:23平米
家賃:8万9000円
築年数:12年 マンション
お気に入りの場所
DIYしたデスク
基本的に家ではここで読書をしている。無印良品で買った椅子の座りごごちが抜群のため、この椅子に合わせて机を設計してもらったという。外を歩く人の顔が見えないよう、目線の高さを計算してベランダに植物が置かれている。
DIYしたベッド
就寝前にはこのベッドに座り読書をする。ヘッドボードが斜めになっていることで、背もたれの役割を担うという優れもの。
この部屋に決めた理由
とにかく駅から近くて便利で、日当たりがいい場所を探していたという漆原さん。三軒茶屋を選んだ理由は「TSUTAYA」があるから。「引っ越してからは毎日、TSUTAYAに通っています。コーヒーは家でいれずに、定期券を購入している隣のカフェへ。あえて自分の部屋で完結させないようにしてるんです」生活の機能を街へ拡張するという、実に都会的なライフスタイルである。
気に入ってないところ
もともと物件に備わっている収納スペースが少ない。そのために、ベッドの下に大きな収納スペースを作り、冬用の布団や大きな荷物を収められるようにした。問題解決型のDIYがここでも発揮されている。
お気に入りのアイテム
DIYした照明
読書をするためにベッド上に設置された照明。3本のケーブルを針金でまとめ天井に吊り下げてある。ハーフミラー電球は上に反射するため、明るいのに眩しくならず読書に最適だという。
「光 石膏ボード用フック」という商品を使い細いピンを四方から刺すことで、しっかり固定しつつも壁の穴が目立たない。賃貸に有効なワザ。
B&Oのスピーカー
B&O BeoPlay A2のスピーカー。Bluetoothでつながるため、壁にかけてすっきりと使える。静かなタイプのエレクトロニカをよく聞くという。
暮らしのティップス
セキュリティーのために、あえて窓を開けっ放しに
人通りが多い道路に面した1階の部屋にもかかわらず、窓を開け放しにして出かけることがあるという。これは心理学にのっとった考えで、とある海外の実験から着想を得た。「侵入する立場になったら、こんなにオープンな空間には入れませんよね。 かならず中には誰かがいるだろう、もしくは誰かに見られてしまう、という心理が働きます」
窓をオープンにすることで、明るく風通しのいい空間になり、このように外を歩く人と目が合って部屋の中から挨拶をするといったコミュニケーションも生まれたという。
これからの暮らし
いまの都会的な暮らしとは真逆の発想で、都市から離れた自然がいっぱいの環境にも憧れている。「将来は奈良に住みたいです。歴史にまつわるものが多い一方で、観光化されすぎず、山が低くて開けていて落ち着くんです。そんな環境でゆっくり読書ができたらいいですね」
番外編「賃貸でできるDIYのコツ」
以前は、この部屋の四隅に高い本棚を設置して、地震に怯えながら暮らしていたという漆原さん。同僚がDIYで部屋をがらっと変えたのを見て、改修の決意をしました。奥村直子建築設計のアドバイスのもと、世田谷にあるシェアハウスの中庭を借り、漆原さんも含め2〜3人で家具作りをしたそうです。
トータルの材料費は約13万円。現状復帰できる壁紙を使い、壁に固定する必要がない家具を自作することで、賃貸でも思い通りの空間を完成させました。
「読書と安全の両立」という課題を、DIYすることで見事に解決した漆原さんの部屋から「狭い部屋を快適にするアイデア」をご紹介します。
空間を「斜め」に使う
こちらは漆原さん宅の模型。既存の家具で斜めのデザインはなかなか見かけないが、DIYすれば、思い通りのカタチをつくることができる。デスクを斜めに切ることで、ドアの開閉につっかえることなく、奥では広く作業面がとれる。ベッドも斜めに切ることで、動線をしっかり確保しつつ、サイドをテーブルにしたり椅子にしたりと多様に使える。狭い空間で、機能性とデザイン性を同時に実現した。
収納は部屋の3分の1以下に
天井高の3分の1より下に収納を集中させて、それより上はすっきり開放的に。壁紙もダークカラーから白に張り替えた。「上の方が空っぽで白くなると、部屋が広く見えるんです」と、心理学を取り入れた漆原さんならではの部屋作りである。
棚をカスタマイズすることで、収納効率が格段に上がる
「棚のサイズをカスタマイズできるのは、思った以上に効果的でした」と語る漆原さん。ハードカバー、文庫など、それぞれの本を採寸して棚の高さを調整したことで、収納数が格段にあがり、いまはこの7畳の部屋に本が1000冊以上収まっている。
玄関には大きな本棚が2つ。収納だけでなく、安全面も確保されているのがポイントである。床から天井の高さぴったりに合わせて本棚をつくることで、地震でも斜めに倒れる余地がない。「高すぎて手が届かないという弱点もあるんですけどね(笑)」
Photographed by Daisuke Ishizaka