緑が多く、穏やかな時間が流れる東京都・国立。一橋大学からほど近い70年代のマンションに、イラストレーター・柳智之さんのアトリエがあります。自宅よりも長い時間を過ごすという作業場。書籍の装丁や広告を中心に幅広くイラストを手がける柳さんの作品は、掴みどころのない線の動きに独特の美しさがあり、どこかノスタルジックな香りがします。そんな柳さんの作品が生まれる現場におじゃましました。
職業:イラストレーター
場所:東京都・国立
面積:1K 30平米
家賃:4万5000円
築年数:40年 マンション
お気に入りの場所
作業デスク
大きな作品以外はほぼここで描いているという、このアトリエのメインスペース。2つのデスクをL字型にくっつけて置くことで、画材を自由に広げながらも、十分な作業面積を確保している。紐で補強して使い続けるほど、このIKEAの椅子に愛着があるそう。
窓際
「西日が入る部屋だから、午後からがすごく明るくていいですよ」と窓ぎわに立つ柳さん。作業に疲れたらここでタバコをふかしながら外の景色を眺める。
周りに高い建物がなく、視界が抜けて開放的。近所に音大生が住んでいるようで、ときどきピアノの音色が流れてくるのも心地いいそう。
トイレ
「自己を解放して、頭を柔らかくするスペースです」と紹介してくれたのがトイレ。壁全面にイラストが貼られている。
タバコを吸いながら、壁に貼った紙に向かって気の向くままに描き殴るという。扉を閉めると四方を絵に囲まれて、まるで体験型アートのよう。狂気的である。
この部屋に決めた理由
部屋を選ぶとき、特にこだわったのが”周辺の静さ”。近所にどんな人がいるか事前にしっかりリサーチしたという。「ここは事務所が多いエリアで、周りからの生活音がほぼないんです。昼間は静かで集中できるし、朝方まで作業をするときは音楽を気にせず流せるのもいいですね」
残念なところ
ベランダの鳩の糞がひどい。「はじめはここでタバコを吸っていたんですけど、敷いていたすのこも割れてしまって。このスペースはもう放置状態です(笑)」
お気に入りのアイテム
自作の割り箸ペン
10年くらい使っているという、柳さん特製のペン。割り箸に割り箸を添えてマスキングテープで固定し、先にインクつけて描いている。使用頻度が高く、手放せないアイテム。
この割り箸ペンを使うと”不作意なかたち”が生まれるそう。こちらが割り箸ペンで書いた作品の一例。
SEIKOのデジタル時計
作業台の上で時を刻むセイコーのデジタル時計は、高校の卒業式で学校から配布されもの。電波時計だから時刻が狂わない。「本当はアナログの時計が好きなんですけど、秒針の音が気になっちゃうんです。これはデジタルだから無音でいいですよ。気づけば13年間愛用してます」
収納のコツ
最近買ったばかりで、柳さん一押しの家具メーカー〈マルゲリータ〉の「BLC収納ボックス」。10件ほど案件を同時進行している柳さんは、プロジェクトごとに書類を分けて入れています。「これを導入してから劇的に進行管理がしやすくなりました。このボックスを買う前は床に書類を置いていたので、部屋が広く使えるようになったのも嬉しいです」
これからの暮らし
このアトリエについては、十分に満足度が高いそう。さらにもうひとつ、広い第二アトリエを持てたらいいなと考えている。「もっと遠くて、安くて、広い土地に倉庫のような大きな空間がほしいですね。そこで巨大な作品を描きたいです」
番外編
自宅もアトリエも国立に構える柳さんは、静かな日常風景が流れるこの街をとても気に入っているとのこと。番外編として、柳さんがアトリエに向かう途中に通りかかるという、国立の名物店をご紹介。
ask a giraffe
ここは最近見つけたという、柳さんお気に入りのカフェ。アトリエに行く前に必ずカフェに立ち寄り、1日のスケジュールを確認する。「このコーヒータイムを入れることで、1日の予定が整理できて、その日がうまく回るんです。ここのテラス席は風が流れるのが気持ちがいいんですよね」
地球屋
国立に越してくる前から遊びに来ていたというライブハウス。「おもしろいバンドの演奏が多くていい音楽が聴けるし、オーナーである名物のおばちゃんもいいいんですよ」
Photographed by Ryuichiro Suzuki
「まるでホテルのような明るさと清潔感」(目黒)
「白い空間にアートを取り入れる」(府中市)
「アットホームな下町ルームシェア事情」(入谷)