柏原さんは7年前、当時築10年だった65平米ほどのマンションを購入し、リノベーションを行いました。見渡せるリビング・ダイニング・キッチンと、寝室や水回りの小部屋に分かれた構成です。
住宅メーカーに勤務されていた経験を活かし、独自のネットワークで大工さんや職人さんに直接発注することで、コストを抑えたそう。奥様はインテリア企業のキッチン部門で設計を担当されていたこともあり、家具やキッチンは奥様が設計されたものだそうです。
そんなご夫婦のセンスと経験を活かしたリノベーションについて、柏原さんにお話をうかがいました。
北欧にインスパイアされた、明るくて色に溢れた部屋
ベースとしては北欧の暮らしにインスパイアされています。外に出るのも好きですが、家の中にいるのも好きですね。
家の中はリラックスできることが大前提だけど、だらしないのは嫌なので、コタツを置くような暮らしは考えませんでした。
リビング・ダイニングは、白色をベースに、そこに調和するものを選んでいます。ちょっとくすんだ白い壁は、以前の仕事で扱ったホタテの貝をつぶした珪藻土を左官屋さんにお願いして塗りました。夏は湿気を吸ってくれるので快適です。それに、光が柔らかく反射するんですよね。
空間づくりにおいては、壁だけでなく床も、全体の構成を決める大事な要素だと思っています。なので、お金がかかっても床は絶対に無垢材にしようと決めてました。ミャンマーチークという木材を使っていて、傷はつきますがそれも魅力です。
“ストーリーを持つ”好きなモノだけを集める
家具も北欧系で、テーブルはフリッツ・ハンセンのスパンレッグ、椅子はハンス・J・ウェグナーのYチェアなどですね。ソファはとても悩んで、イタリアのMOLTENI & C.のREVERSIを買いました。当時はグレーが来ている感じがあり、「グレーなら飽きもこないし、ずっと廃れないだろう」と思って選びました。
暮らし始めた当初は「モノを増やさないようにしよう」と話していたんですけど、僕が色々と買い足してどんどんものが増えてきてます(笑)。
僕は好みのストライクゾーンが狭い方だから、置くモノはとても慎重に選んでいます。実家に帰ると親に「これを持って行って」とよく言われるんですけど「絶対いらない」と断るくらいです。
なんでこれを買ったのか、あとで自分への言い訳になるように“ストーリーがあるもの”を買うようにしてます。うんちくとセットで(笑)。
モノが生活に与える彩りと満足感を大切に
近頃はアートに凝っていて、少しずつ買い集めていますね。この前、嫁に内緒で映画『エイリアン』に登場するフェイスハガーをモチーフにしたアートを買ったんですけど「絶対に飾らないように」と言われてしまいました……(苦笑)。
これは、表参道のD&Departmentで購入した、ギャルソンとのコラボによるボックスです。毎シーズン違う色でリリースされるんですけど、コレクター気質なのでどんどん買っちゃうんですよね。“箱を買って、中に入れるために何か買う”っていう逆のパターンもあるくらいで……。
心地よく暮らすのに、広い家は必要ない
生まれ育った愛着がある土地ということもあり、このマンションを購入したんですけど、通勤に不便なので、これから引っ越しもあり得ると思います。もっと狭くていいから、天井の高い家に住みたいですね。
この家を購入した時には、なるべく広い家がいいと思っていましたが、今はダイニングテーブルはほぼ使っていなくて、食事からなにから、リビングのソファでしています。心地よく暮らすのに、広い家は必要ないことが分かりました。その分、吹き抜けなど天井の高い家にして、アートをもっと飾りたいですね。
リラックスすることために、空間のベースに北欧の暮らしを取り入れ、そのうえで自分たちの好きなものを選び抜いて生活に彩りを持たせているのがとても印象的でした。
シンプルにするだけでなく、本当に好きなものに囲まれて暮らすこと、アートを部屋に取り入れることが、さらに充実した自宅での過ごし方につながっているのですね。
部屋の印象を大きく左右させる壁と床にはこだわる、という基本のこだわりにも注目です。
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