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ルーミーがお届けする「家具にまつわる物語」。デザイナーズ家具やアンティークなど、家具の周りには必ずストーリーがあります。フィンクション、ノンフィクション織り交ぜてショートストーリーでご紹介。ぜひお楽しみください。

vol.01はコチラから。


ほんと、なんか素敵カップルですよねー

北欧家具のお店で、スタッフがそう言ったのを聞いた時、ただ買わせたいがためのサービストークとは、ふたりともまったく思わなかった。なぜなら彼らも自分たちのことを、どこかでそう感じていたから。

いや、正確には自分よりも、相手のほうが間違いなく「素敵」だと思っていた。

彼は彼女の、まつ毛がくりんと上を向いていて、肌はつるつるで、もこもこのニット帽が似合って、いつもなんか「ルンッ」としてる感じが、マジ本気マジでかわいくてやべぇと思っていた.

一方、彼女は彼女で、彼の黒目がちな目と無精ひげの生え具合、シャツを着た時にピッと肩幅の張る感じとか、一瞬クールっぽいけれど、何かの拍子にいきなり破顔するところとかが、ありえないくらい超イケてると思っていた。

だから「素敵なカップル」と言われたことによって、これから自分たちは、これからいっそう素敵カップルでなきゃ! という、よくわからない決意のようなものが、身体じゅうにみなぎっていた。

そして、素敵カップルが暮らす家なんだから、とうぜん素敵インテリアでなければならない、とも。スタッフのひと言は、図らずも彼らの家具選びにボッと火をつけてしまった。

「50年代から70年代くらいにつくられた北欧の家具って、素材もつくりもデザインも、今じゃできないくらすごい良質なんで、ヴィンテージとしての価値が下がらないんですよ。むしろこれからどんどん枯渇してく一方なんで、上がっていく可能性も大いにある。なんで家具というよりも、ひと財産持つって感じで考えてくださってもいいかもしれませんね。」

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そんなスタッフの言葉を聞いて、彼らは自分たちの価値観にもぴったりだと、思いを確かにした。いつか子どもが生まれて、大きくなって、いつか結婚することになったとしても(すでに号泣もの)、引き継げるような家具がいい。

そうしてディスプレイされてある家具をひとつひとつ見ながら、あれこれ話をした。

ねぇねぇ、これベッドサイドによくない?

いいねー。っつーか、ベッドはどうするよ。別々? それともでっかいのひとつにする?

もう、そんな話ここでしないでよ。

えっ!? 何エロいこと考えてんの?

もちろん考えてるワよ、1日中。

お前はエロメンか……。

こんな風に、すぐに脱線してしまうので、なかなか家具選びが進まない。

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そんな中、一脚のダイニングチェアを見て、彼女が「おっ」とほんの少しだけのけぞった。

それはデンマークで一番有名で、一番すごいと言われている家具デザイナー、ハンス・J・ウェグナーによってデザインされた、ハートチェアと呼ばれるもの。3本脚が特徴で、その愛らしいネーミングは、座面のほんのりとした三角の形状が由来だ。

んっ、どした?

ううん、なんでもない。

素っ気なく言い、すり抜けるようにして歩いていく彼女は、しかしその実、めちゃくちゃドキドキしていた。そして心の中で思いっきり叫んだ。うお~出た! 私が一番欲しかった椅子がある~! と。

ハートチェアのことを教えてくれたのは、2年ちょっと前まで付き合っていた元彼だった。

vol.03(最終話)に続く。
vol.01はコチラからどうぞ。

illustration by Shoko Kaido

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