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ルーミーがお届けする「家具にまつわる物語」。デザイナーズ家具やアンティークなど、家具の周りには必ずストーリーがあります。フィンクション、ノンフィクション織り交ぜてショートストーリーでご紹介。ぜひお楽しみください。

そのやっと合わせた休日、ふたりは秋葉原の駅ビルにあるスターバックスで待ち合わせをした。

ふたりともそのスターバックスには行ったことがなかった。なかったけれど、たいていの場合、駅前にあるスターバックスは、目立つところにあると決まっている。


だってスタバだよ

見逃すとかマジないってきっと。

だよね。じゃあそこで。


と、ふたりは昨日の夜、LINEで約束を交わしあった。

ただ実際は、あろうことか、そのスタバはビルの3階のとても奥まった、目立たないところにあった。しかも3階だけでなく、4階にも席がある。待ち合わせ場所としては、もっとも厄介だった。

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案の定、それを知ったふたりはそれぞれにキョドった。3階にいないと、4階にいるかもしれないと不安になって階段を上がる。そこにもいないと、3階に来ているかもしれないと、慌ててまた下りる。おたがいそうこうしているうち、階段でばったり出くわした。

おたがい、緑の棒みたいなものがささった紙カップを片手に、眉間にシワを寄せた工藤静香のような不安げな表情をしていて、それがあまりにも同じだったので、目が合った瞬間、大爆笑した。

そんなささいなことさえも面白くってしょうがないほど、ふたりは死ぬほど幸せだった。4ヶ月後に結婚を控えた彼らは、まさに例のアレ、俗に言う幸せの絶頂めがけて、もっか猪突猛進中ってヤツだった。

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彼らが秋葉原に来たのは、新居で使う家具の下見だった。駅から歩いて5分ほどのところにある北欧家具のお店がお目当て。このお店はあらかじめネットで調べて場所は把握していた。

ふたりとも、インテリアには詳しい方ではなかったけれど、それなりに興味があった。そして、何よりも憧れを抱いていた。というのも、彼女のほうはずっと実家暮らしで、生まれてこの方、自分の家具を買ったことがなかったのだ。

いつかこんな部屋でこんな暮らしをしてみたい。雑誌をパラパラめくりながら、ずっとずっと妄想していた。

一方で彼は一人暮らしだったけれど、住んでいるのは6畳+ロフトのある小さな部屋で、そのロフトもすでに物置と化している。とてもじゃないが、いい家具が置けるようなスペースはない。というか、そういう気すらも起こらなかった。できるだけ安い、ただ機能を果たすためだけの「とりあえず」の家具ですましていた。

そして彼女と同じく、妄想していた。「いい家具は、いつか結婚したら欲しい。結婚するまでは欲しくない」と。要するに、ふたりはの家具欲しい欲は、MAXまで「たまって」いた。

なもので、中途半端な家具では済ませたくなかった。どうせ買うならば、長く長く、なんなら一生、子どもを育てるように大事に使い込んで、どんどんみるみる愛着の湧いてくる本物を、慌てずじっくり、少しずつ揃えていこうと。

それはふたりの合致した意見で、そのことについて話をした夜、LINEのスレッドは記録的に長大なものになった。

vol.02に続く。

illustration by Shoko Kaido

ハートチェア[haluta]

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