米国オレゴン州ポートランド。

そのクリエイティブシティーとしての魅力はブームを超え、日本国内でもポートランドのまちづくりの仕組みを実践的に取り入れる動きが始まっています。

そんな中、昨年京都でポートランドに縁が深いゲストと一緒に、あらためてポートランドの魅力について考えてみようというイベントが開催されました。

タイトルは「Rethink Portland 〜再考のポートランド〜」

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ホストは、「まちとしごと総合研究所」の東信史さん。ポートランドを参考にしたまちづくりを進める和歌山県有田川町の「有田川という未来 ARIDAGAWA2040」などのプロジェクトを手掛けています。

ポートランドに縁が深いゲストスピーカーは、ポートランドの魅力を伝えるWEBマガジン「NorenPotrland」のライターで、現在はroomieのセレクターとしても活躍している大坪侑史さんと、roomie編集長の中島彩さんのふたりです。

ポートランドで暮らした経験を持つふたりが、ポートランドの素の魅力について、生活者の視点で話をきかせてくれました。

会場となったのは、京都市下京区にある元乾物屋のビルをリノベーションした職住一体型クリエイティブセンター「REDIY(リディ)」。以前roomieで大坪侑史さんが詳しく紹介していますので、こちらをご覧ください。

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今回は「EAT」「ACTION」「LIFE STYLE」という3つのテーマでポートランドについて話をしてくださいました。順を追って振り返ります。


《EAT》

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会場では複数のポートランドのロースター(コーヒー焙煎所)のコーヒーが振舞われました。参加者はコーヒーを飲みながら、リラックスした雰囲気で話を聴きます。

COFFEE

ポートランドには小さなロースターやカフェが街のいたるところにあって、それぞれが独特のスタイルを持っています。古い建物をリノベーションしてお店にしていたり、自転車でコーヒー豆を運んでくれたり、オリジナルグッズが充実していたり。客は自分たちの好み・スタイルに合わせてコーヒーを楽しむことができます。(大坪さん)

BEER

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また、クラフトビールもポートランドでは欠かせない存在です。ポートランドのあるオレゴン州と隣のワシントン州で全米の約8割のホップが生産されていて、ブリュワリー(醸造所)はポートランド市内だけで60以上もあるんです。多くのブリュワリーが気軽に中に入れてくれて、とてもフレンドリーなのもポートランドらしいところです。(大坪さん)

たとえば、GIGANTICというブリュワリーは製品のラベルを様々なアーティストに描いてもらっています。アーティストが衣食住という日常の生活とつながっているのもポートランドの特徴ですね。(中島さん)

BREAKFAST

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わたしがポートランドで好きなのは朝食文化です。街には美味しい朝食を食べさせてくれるお店がたくさんあって、朝早くから友人同士で朝食を食べている風景が日常的なんです。夜のお酒を飲みながらの交流も楽しいけれど、朝コーヒーを飲みながらおしゃべりをするのはとても神聖な時間で、気持ちが良いですよ。(中島さん)

日本でも美味しい朝食を食べさせてくれるお店が増えていますが、ポートランドではそれは当たり前のことのようです。


《ACTION》

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ポートランドではNPOの活動が盛んで、200以上のNPOがありその数は全米一とも言われます。たとえば、「Friends of Trees」というNPOは市民が街に木を植える活動をしています。ポートランドには緑が多く、人々を惹きつける要因のひとつになっていますが、これは行政だけでなく、彼らのような活動の成果でもあるんです。また、「City Repair」というプロジェクトではボランティアの人々が公園などの施設に絵を描くことで、自分たちの暮らす街をより良くしていこうという活動をしています。(大坪さん)

街に木を植えたり、絵を描いたりといったアナログな活動においても、インターネットをうまく活用して活動範囲を広げるなどしていて、デジタルの役割をしっかりと理解しているところも特徴のひとつです。クラフト感やアナログの良さを大切にしているポートランドですが、懐古主義に収まらず新しい技術をうまく取り入れて市民活動を生み出していると思います。(中島さん)


《LIFE STYLE》

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数多くあるファーマーズマーケットやフードカートは、ポートランドで生活する上で欠かせない存在です。フードカートは市内に500以上もあると言われていて、世界各国の料理を安い値段で食べることができます。それから、「First Thursday(ファースト・サーズデイ)」や「Last Thursday(ラスト・サーズデイ)」といったアートイベントが頻繁に行われていて、アートがとても身近な存在として受け入れられています。とりわけ「Last Thursday」では、路上で様々なアート作品やパフォーマンスが披露されていて、まさに「誰でもアーティスト」といった雰囲気です。(大坪さん)

ポートランドは何かをはじめようという人にとってはチャンスの多い街です。たとえば、レストランをはじめたいけれど資金の足りないシェフが、フードカートからスタートして人気を集め、レストランをオープンしたりする事例がいくつかあります。「ZINE」の文化が盛り上がっていることからもわかるように、自己表現のハードルがすごく低い。その表現者がメジャーかマイナーかに関わらず、自分が良いと思えば買う・サポートするという、住人たちのリベラルでフランクな姿勢がカギなのだと思います。(中島さん)

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地産地消の食文化、クラフトマンシップ、住民主体の地域活動、スモールビジネスなどなど。

ポートランドという街には、今の日本にとって大切な視点やアイデアがたくさん詰まっています。ポートランドを一過性のブームにしてしまってはもったいない。それぞれの暮らす街をより楽しく、より豊かにするためにこれからもこの街に注目していきたいですね。

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