あなたは「東京」が好きですか?
僕は、東京が好きです。いや、正確には、“好きでした”。
少し前の東京では、いつも活火山のようなエネルギーが渦巻き、多くの人間ドラマがあちこちで交錯し、あらゆるものを受け入れる包容力があった。
ときに悪そうな笑みを浮かべた大人たちが、こちらを手招きすることもあったし、そこに何が待っているかは、勇気を出して踏み込んだものだけが知ることができた。
“日常”と“非日常”の境界線が、まったく違和感なく優等生の仮面をつけたまま生活の中に潜んでいる、それが僕の知る「東京」だった。
でも、いつの頃からか、僕の知っている「東京」は影をひそめ、新しい「東京」が出現しはじめた。
渋谷のスクランブル交差点では人々のバカ騒ぎがはじまり、原宿は裏も表もない観光スポットになった。谷根千には外国人が集まり、東京のシンボルはLEDで光るスカイツリーに取って代わった。
東京は、変わりつつある。
そんなことを改めて気づかせてくれたのは、EINSTEIN STUDIOが手掛けた「Tokyo/Japan」という写真集を見たときだった。
東京オリンピック開催決定後、めまぐるしく変わる東京の姿を写真で残し、それらを世界の人々と共有できないかという思いでスタートした「Tokyo/Japan」プロジェクト。一般人参加型のドキュメンタリーフォトマガジンである。
「Tokyo/Japan」は毎月1回の発行で、“先月”東京で撮影された写真のみを厳選して掲載。写真集は国内外の美術書店、Amazon、アートブックフェアなどで販売され、変化を続ける東京の1ヶ月前の姿を僕たちに届けてくれる。
そこには東京の“いま”がストックされている。
未来は誰にもわからない。
でも、多くの人が漠然と感じていることは、いまの東京は2020年を区切りに新しいステージに進むだろうということ。
あなたは「東京」が好きですか?
そのとき、僕はもういちど自分に問いかけようと思う。