京都府北部、丹後半島の付け根に位置する街、与謝野町は、江戸時代に地場織物「丹後ちりめん」を中心に栄え、その後も織物業の町として知られています。

いま与謝野町では、「与謝野ブランド戦略」を掲げ、自治体と住民がさまざまな取り組みを始めているのです。そのひとつとして、町が1月からスタートさせたのが「YOSANO OPEN TEXTILE PROJECT(ヨサノオープンテキスタイルプロジェクト)」。

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与謝野町の若手織物職人とさまざまな分野のクリエイターが協働し、「織」の未来をみんなで描き出そうというもの。クリエイティブエージェンシーのロフトワークをパートナーとして、3月までにリサーチやプロトタイピングを行います。1月25日に行われたこちらのプロジェクトのアイデアソン「YOSANO TEXTILE IDEA-THON」の模様をレポートします。

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会場は、ロフトワーク京都が昨年12月にオープンにしたドロップイン型のコワーキングスペース「MTRL KYOTO(マテリアル京都)」。

木材・金属・布などに加え、最先端のセンサーなど、さまざまな素材(マテリアル)を直接触って、動かすことができるクリエイター向けのワーキングスペースです。

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当日は、与謝野町の若手織物職人やプロダクトデザイナー、ファブディレクターなどのクリエイター陣を中心に、一般参加者も加えて総勢およそ25名が集まりました。アイデアソンは若手織物職人の自己紹介からスタート、続いてクリエイター4名がプレゼンテーションを行います。

実は彼らは1月14日〜15日に与謝野町を訪れ、織物の各工程を実際に現場で見て、現場の声を聞いていたそうです。そのツアーを通して生まれたアイデアの種を発表していきます。(ツアーの様子はこちらでレポートが読めます)

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印象的だったのは、クリエイターたちは現場を訪れることで、直接的な「織物の技術」に対してのみではなく、その周辺の物事に対しても強い興味を持っていたという点。

例えば、デザインリサーチャーの浅野 翔さんは、織物の原材料となる絹を生み出す「カイコ」に注目していたり、デザイナーのカークコナーさんは稼働中の織機が発する規則的な「音」をマイクで収集し、それをビジュアル化する試みを始めていました。

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プレゼンテーション終了後は、クリエイターごとにチームを組んで参加者全員でさらなるアイデア出しのディスカッションを行いました。議論しながらアイデアを練るチームもあれば、とにかく手を動かして可能性を探るチームもあり、その方法も自由自在。

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会場には与謝野町から持ち寄られた織物のサンプルがたくさん並べられていて、アイデアの元として活用します。

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こうして生まれたのは、多彩なアイディアたち。「カイコにまつわる実験室(カイコFab-Lab)」、「織機のフリマ」、「織物の構造の再構築」など、異なる分野で活動する人々がチームになったからこそ生まれた独創的なものばかり。これらのアイディアをカテゴライズして整理し、最終的に3つのチームを構成。チームごとにプロジェクトにおける目標設定と今後の展開を発表しました。

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「日々の仕事・作業の中にレギュラーとイレギュラーを入れ込み、その中で生まれたアイデアや試作品をチームメンバーで交換しあいながら、可能性を探りたい」(吉行亮平さん/プロダクトデザイナー、高岡徹さん/織物職人)

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「これまで職人は裏方に徹してきたため、最終的なお客さん(織物を買って使う人)の顔を見ないで仕事をしてきた。これからはお客さんを見て、お客さんに求められる製品を作れるようにしたい」(由里直樹さん/織物職人)

「それを可能にするよう、インターネットやFabツールを使った新しい仕組みを考えたい」(高松一理さん/ファブディレクター)

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「生機(きばた)から仕上げまでの「織」の工程の一部を飛ばすなど、「工程の再編集」を行うことでこれまでになかったものを生み出すことを試みたい」(浅野 翔さん/デザインリサーチャー、羽賀信彦さん/織物職人、今井裕二さん/織物職人)

この3チームは、3月末に向けてさらなる試行錯誤を繰り返していきます。

最後に、このプロジェクトのディレクターを務める水野大二郎さん(慶応義塾大学環境情報学部准教授/芸術博士(ファッションデザイン))によるまとめです。

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「残り約2ヶ月という限られた時間の中で、市場調査やデータ分析といったことに時間をかけるのはもったいない。職人とクリエイターというチームなのだから、できることを実際に試し、新たな「織」の可能性を見つけ出してほしい。

会場で一連の作業を見ていた与謝野町商工観光課の松本潤也さんにお話を伺ったところ、印象的な言葉をいただきました。

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「わたしたちがこのプロジェクトで目指しているのは、新しい製品といった具体的なモノではありません。それよりも、若い職人たちがこのプロジェクトを通じて新たな経験や視点を得ることの方が重要だと考えています。そしてプロジェクト終了後、それらを活かして与謝野町でこれまでにない場づくりや仕事づくりなど、活動を広げてくれることを期待しています」

日本中の多くの町で課題となる産業と町の衰退。でも、そこには多くの可能性が残されています。伝統とクリエイティブが交錯するこのプロジェクトが、3月にどのような成果を見せてくれるのか。そしてその後、与謝野町にどのような変化が生まれるのか、ぜひ注目してください。

photographed by Mayumi Nakamura & Keita Nakamura

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