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徳島の特産品として名高い「藍染め」。その藍を発酵し染料にするために使われる大型の龜(かめ)「藍甕」を作り発展してきたのが「大谷焼」です。

そんな大谷焼の里で最も古い歴史を持つ窯元「矢野陶苑」から誕生したのが、日本中の名高いセレクトショップが取り扱う陶器ブランド「SUEKI CERAMICS」です。

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OOTANI SERIES

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AOISHI SERIES

大谷の赤土や阿波の青石など地元産の材料を選び抜き、2万種類以上のテストを重ねて開発した釉薬(※ゆうやく)による色合いは、さまざまな料理に調和する逸品。

※陶磁器の表面をおおっているガラス質の部分

歴史ある窯元から、なぜ新たなブランドを立ち上げ、食器を作ることにしたのか? そんな疑問をもとに「SUEKI CERAMICS」の代表である矢野耕市郎さんにお話を伺いました。

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「SUEKI CERAMICS」代表・矢野耕市郎さん

──矢野さんは歴史ある窯元「矢野陶苑」の5代目ですが、大阪でウェブの仕事をされていたとか。もともと継ごうとは思っていなかったんですか?

徳島に帰ってくる2年くらい前まで、継ぐつもりはまったくありませんでした。もともと音楽をやっていて、ドラムを叩いていたのですが、それでは食べていくのが難しいということで、ウェブデザイナーとして大阪で3年くらい仕事をしてました。

──大阪に引っ越していた理由は?

大阪の大学に通っていたんです。大学ではデザインや映像等を勉強していました。そこでフォトショップやイラストレーター等を使えるようになったので、なんだかんだ今も役立っていますね。

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130年前から続く歴史ある矢野陶苑の登り窯。「ジブリの世界みたい」と言われるそう

──徳島に戻ってこようと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?

ウェブの仕事を3年ほど続けて、でも人生をこのまま終わるのもイヤだと思ったのがきっかけです。育った環境もあり、小さい頃は土を触って遊んでいて器用だったので、陶芸で勝負したほうが通用するんじゃないだろうかと思ったんです。…大阪での生活が苦しかったというのもありますけど(笑)。

そうやって戻ってきたわけですが、すべてが甘かったですね(笑)。30〜40年ほど前、父親の時代はバブルと陶芸ブームが10年間くらい続いていたので、とても良い時代でした。

僕も小学校低学年の頃にそうした時代を見ていたので、この業界がいま不調で、どんどん窯元が潰れていっている状況は知っていながらも、ある程度稼げるんじゃないかというイメージがあったんです。でも、全然ダメでしたね。

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大谷焼はもともと大型の龜を作ってきた徳島県の伝統工芸

──最初は作家として活動されていたそうですね

もともと父が作家だったので、自然と作家として活動を始めました。運良く早い段階で、東京でも展示会を開いたりできたのですが、最初からなにか違う感じがしていましたね。

だからプロダクトに移ろうと、一時期は作家とプロダクトの両方をやっていました。その頃は、磁器で作った商品を売って雑貨屋さんに卸していたけど、全然うまくいかず。

何が悪いのか考えていたところ、ショップ関係者など周りの人たちが「大谷焼の方がいい」って言うんです。みんな大谷焼を見たことがないのに(笑)。

つまりは、ストーリーがほしいということなんですよね。だから大谷の土や徳島産の青石を使って、”メイドイン徳島”のものづくりを始めたところ、渋谷ヒカリエの「8/04/d47 MUSEUM」の徳島代表として選んでもらうことができました。

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SUEKI CERAMICSのスタジオ

──そうしてSUEKIの土台ができたんですね

いえ、それも最初はうまくいきませんでした(笑)。というのも、1人でろくろを回して、プロダクトを作って、それを売るために営業して、となると追いつかなくて数がこなせないんです。

だから、ある程度の技術があれば作れる「型」に移るしかないと判断しました。型で作っても、そこに大谷の土を使うことで見え方が変わるのではないかと。かなりの挑戦でしたね。

せっかくやるなら、完全にプロの集まりとして汚点のない陶器メーカーを作るべきだなと思って、仕組みから商品から製造方法から全部考えたんです。そうして2年近くかけて最初のSUEKIを作りました。ずっと1人だから本当に大変で、まさに「闇」でしたね(笑)。

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土を流し込む型

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釉薬を作るための試作の数々。SUEKIの製品のためだけで2万以上のテストを重ねたそう

──SUEKIを始める前に、お父さまからアドバイスなどはありましたか?

良くも悪くもあのバブルと陶芸ブームの時代を過ごしてきた人だし、鑑賞物を作ってきた「作家」からすると、雑貨やプロダクトなんて下っ端の仕事なんですよ。だから、それぞれが別の言語で会話をしているくらい、話が噛み合わないですね。

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巨大な電子レンジのようなものだという、電気式の窯

──歴史ある窯元なのに、プロダクト志向のものづくりをされているのには、ウェブ業界にいたバックグラウンドが影響していると思ったのですが、必要に迫られてのことだったんですね。

そうなんです。もう良くも悪くも、全部周りの状況を考えてからでないと動けなくなりましたね。「これを作りたい」という気持ちからは動けないんです。

──それは時代的に?

時代的にも、性格的にも。どのバイヤーの目に止まってお客さんはどういう人が買うのか想定しないと、作れないんです。そういう性格だったところもありまして、作家は結局できなかったんですよね。フィーリングでいける人は作家にもなれるんだろうけど。

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これから釜に入る食器たち

──SUEKIの製品には、徳島というストーリーがありつつも、ミニマルかつ柔らかい雰囲気に北欧っぽさも感じます。これは矢野さんのテイストなのでしょうか。

僕自身の好みでいうと、もともと北欧のものが好きで、北欧の食器もけっこう持っています。

そしてSUEKIは、アメリカのヒースセラミックスとよく比較されるし、実際に参考にしている部分はあります。ヒースセラミックスはアート性があってかっこ良く売り出せていて、そんな陶器メーカーは世界を見ても他にはアラビア社くらいしかないと思います。

僕はなんでも間を狙いたがる部分があって、今も「プロダクト」と「アート」の間、「北欧」と「アメリカ」の間というニュアンスにずっといると思っています。そういう落としこみが得意なんですね。

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SUEKI製品の裏にある手描きのマーク。量産の「型」と手描きの「クラフト」との間を大切にしている。

──今回は、徳島の藍染めブランド「BUAISOU」からの紹介でお伺いしたのですが、徳島県内での他業種との交流は盛んですか?

僕としてはそこまで多く交流していませんが、クラフトに関していうと徳島は良い時代が来ていると思います。東京など日本中で評価されている新しいマインドを持ったブランドが増えていますね。

──今後、海外進出の狙いはありますか?

海外展開は少しずつ始まっているんですけど、難しいんですよね。というのも、陶器を輸出するというリスクとコストはすごいものがあるんです。アパレルなら箱にギュウギュウに詰めても、たいした送料にもならないし割れたりしない。

でも、食器はひと箱に何万円分くらいしか入らないし、割れる可能性もある。それに重いので送料も高くなる。そうなると単価が上がってしまって売れなくなってしまうんです。難しいですね。

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素焼きした植木鉢に色付けをする作業。この後もう一度焼き上げる

──今後のSUEKIとしての目標を教えてください

始めてから1年で一流の人たちが仕事で関わってくれて、一流のセレクトショップに取り扱いをいただけて、ある程度の目標に到達した部分もあるんです。よく「もとから知り合いだったんですか?」と言われますが、知り合いなんてひとりもいなかったですからね。

このポジションに来れば変わるかなと思っていたけど、状況はほとんど変わらなかった。だから最近、食器の枠から一歩でて、植木鉢「GREEN POT」を始めました。植木鉢の方が食器よりも需要があるんです。

次は大型植物のポットの需要が来て、どんどん大型のものが求められていく気がしていて、そうなると巨大な藍甕を作っていた本来の大谷焼に戻っていくんじゃないかと思っています。

長期的な目標としてはファクトリーショップやゲストハウスをこの敷地内に作りたいですね。そうすれば、人が集まって、観光的な流れも作ることができる。そのためにがんばっていきたいです。

──今後も楽しみにしています。本日はありがとうございました。


SUEKIの製品は、全国のセレクトショップを中心に取り扱われています。ショップ一覧はこちらからご覧ください。

食器作りだけにとどまらない、矢野さんとSUEKI CERAMICSの今後に注目です。

SUEKI CERAMICS

ウェブサイト:http://sue-ki.com/
Instagram @sueki_ceramics:https://instagram.com/sueki_ceramics/
Facebookページ:https://www.facebook.com/suekiceramics?fref=ts

SUEKI CERAMICSとコラボレーションした、藍染の新星「BUAISOU」のインタビューもあわせてご覧ください。

 『NYでも活動する「藍染」の新星、BUAISOUってどんな人たちなんだろう?』
 https://www.roomie.jp/2015/09/288627/

Photograph by Kenta Terunuma

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