イラストレーター・漫画家の小山健さんへのインタビュー企画の後編。
『手足をのばしてパタパタする』や『死ぬ前に1回やっとこう』などの書籍をはじめ、雑誌、マイナビ、中2イズムなどのウェブメディアでの連載を手がけています。
自分自身が主人公となり、女性への欲望や仕事にまつわるリアルな体験を作品にし、読んでいる人をドキっとさせてしまうストレートな表現と愛くるしいイラストのギャップが魅力です。
前編の「欲望ド直球な漫画家、小山健ってどんな人?」では、これまでの経歴や漫画作品について、ストレートな漫画の内容による仕事の影響などをお聞きしました。後編では、私生活について聞いていきます。
1984年奈良生まれ。東京都在住。
会社員時代に趣味でブログに描いていたマンガ「手足をのばしてパタパタする」をきっかけにマンガやイラストを様々なところで執筆。2013年に独立以降、雑誌・書籍・WEBなどで幅広く活動中。
東京での生活について
ー東京に引っ越しされて半年ほどとのことですが、好きな場所、お気に入りのスポットはできました?
いや、なんかすごい、イカンところに引っ越してしまったので。新宿から向こう側になかなか行けてないんですけど。でも、渋谷を歩いていると、東京だなって思いますね。中心だなって思います。
ーそれは人の多さですか?
そうですね。好きな街を見つけたいとは思っているんですけど、まだまだ何が何やらわからないですね。ずっとGoogle Mapsを見て歩いてるんで、街並みは全然見えてないですね(笑)
ーそれでは、お気に入りのお店はありますか?
それも全然まだ。いい店知ってるって言えるようにならなきゃダメなんですけど(笑)。まったく。
ー仕事以外だと、あまり出歩かれないんですか?
そうですね。あんまりまだ出てないですね。
奥さんについて
ー好きな女優さんはいますか?
好きな女優さん…。女優さんていうと、蒼井優とか池脇千鶴とか。
ーナチュラル系がお好きなんですね。
そうですね。ナチュラル系っていうんですかね。ああいうの。
ー奥さんもナチュラルな方なんですか?
そうですね。ナチュラル過ぎても困るんですけど(笑)。メイクもしないんですよね、奥さん。32なのに。そこまでなっちゃうとちょっと困るんですけど。
ー漫画を読んでいると、すごい女性が好きって出てくるんですけど、今の奥さんとの結婚を決めた理由は?
四面楚歌というか。すごいこう、囲まれた感じで。
ー奥さんのほうが、結婚したいみたいな?
そうですね。奥さんのほうが結婚はまだなのかっていうのと、奥さんの実家からもまだなのかっていうので(笑)。ほんとはいろいろな人と付き合って、結婚したかったんですけど、許されない状況で(笑)
ー彼女はその前には何人かいらっしゃったんですか?
いや、高校のときに4ヶ月だけ付き合った子がいますけど、それ入れなかったら0ですね。
ーそうなんですか? じゃあ二人目に出会った人と?
そうなんですよ。
ー結婚式のスピーチの動画をみたんですよ。それが感動して。
ああ、あの全米が泣いたやつですね。
ーあれは泣くかもしれない(笑)。すごい奥さんへの愛が伝わってきて。
いや、情はね、すごいんですけどね。愛なのか情なのか。かといってね、奥さんに結婚する前にいろんな女の味を知りたいとは言えず(笑)。
ーいまはもうその思いは出しているんですか?
そうですね。もういいかなと思って。
ー何か言われないんですか?
奥さんは女性といえばこういうみたいな、嫉妬してみたいな感じじゃなくって。ちょっとね、特殊なんですよ。
ー奥さんは本当に漫画にでてくるようなキャラなんですか?
そうですね。まんまだと思いますよ。
ー小柄で、丸顔で。
そうですね。ドラえもん的な感じですね。
ー絵描きさんでしたっけ?
まあまあ絵も描いたり描いてなかったり。
ーそれでは同じような仕事をされているんですね。
いやぁ、なんかねえ、カレー屋でバイトしてるんですけどね。ふらふらしてますね。
ーどちらで出会ったんですか?
えっと最初は奥さんがアートイベントに出展していて、自分の描いた絵を並べてちっちゃいブースのところに。それにたまたま行って、いいなと思って。奥さんを。で、名刺を持って帰って電話を掛けたっていうことなんですけど。
ーそれはいつぐらいですか?
5〜6年前ですかね。25だったと思うんですけど。
ー電話するなんてすごいですね。SNSじゃないんですね。
SNSじゃなかったですね。パソコンの導入がほんとうに遅くて。そのときはまだパソコンを持ってないですね。SNSも何もやってない。
ーそうなると電話しかないですよね。いまは、パソコンやスマートフォンを持ってたり、SNSはやられているんですか?
そうですね。使いこなしてますね(笑)
学生時代について
ー学生時代は部活とかされていました?
部活は演劇部でしたね。
ー演劇部?
ええ、高校は。
ー演出ではなく、出演する方ですか?
そうですね。裏方をやったりとかもあるんですけど。文化祭しかやらないと思われがちなんですけど、年3回くらいお芝居するっていうのがあって、結構忙しくって。3ヶ月4ヶ月かけて作って、終わったらまた次みたいな。
ーソフトボール部っぽいって思いました。
たしかに運動してそうとは言われるんですけど、全然運動はできなくって。かといって、美術部に入るのはちょっと違う、モテないんじゃないかと思って。
ーモテは結構意識されてるんですね。
そうですね。
ー学生時代のヒエラルキーって足の速い人が上に来るじゃないですか。
あとは球技ですね。絵が描けたとて別にでしたね。
ーあとは不良っぽい人はモテましたよね。
特に地方は。
ー不良ではなかったんですか?
まったくもって、違いましたね。タバコも吸ったことないですね。まあ、暗い方でしたね。
ー繁華街に遊びに行くみたいなのはなかった?
違いますね。だから、どうしたらモテるんだろうっていうのを3年間続けた感じでしたね。
ーどうやったらモテるっていうのは見つかりました?
たぶん今が一番モテてるとは思うんですけど。
ー奥さんいる人ってモテますしね。
まあ意味のないモテではあるんですけどね。奥さんの出てる漫画読んでますっていう感じなんで。それをすごいかわいい子が言ってくるんで。
意味が無いと思いますね(笑)
ーおぎやはぎの小木さんも言ってましたね。結婚したらモテるって聞いたのに、全然モテないって。
『メガネびいき』ですか?
ーそうです。大好きなんです。
ぼくもです。クソメン※なんで(笑)(※『おぎやはぎのめがねびいき』内で使われる、モテない人の総称)
ーもしかして、メッセージを送ったりしてますか?
いや、送ってないです(笑)
ーわたし2回読まれたことあるんです。
あ、すごい。クソガールじゃないですか。
ーずっと言い難かったんですけど、さっきのオシャレを鼻で笑う感じとか、すごいクソメンを感じてました。
いやー誇らしいですよ(笑)。くそですねー。完全にクソメンで、当てはまりまくりですよ(笑)。
ーラジオはよく聞かれるんですか?
ああでもね、いろいろ聞いてみたなかでやっぱりおぎやはぎが一番で。伊集院とかも聞いてみたんですけど、全然ダメで。
ーバナナマンとかはだめでした?
あ、ダメですね。壁がありますよね。机に向かう作業が多いので、いっぱい聞ければ聞けるほどいいんですけど、なかなか無くって。おぎやはぎくらいしか聞いてないんじゃないですかね。
休みの日について
ー休みの日は何されてますか?
休みの日っていうのがはっきりしてないですね。
ー机に向かわない日を設けたりはするんですか?
なんか常に「あれはしたほうがいいよなあ」とか、進めておいたほうがいいよなっていうのがあって。
ー結構忙しいんですね。
そうなんです。売れっ子なんですよ。でも、すごい時間の使い方が下手で、やらなきゃなあってずっと家にいることが多いですね。何もやらないんですけど(笑)。「あ、出掛けれたなあ」って夜6時7時に思うことが多いですね。
ーそういうときって何やってるんですか?
いや、ほんとに、鼻毛抜いたりとか。つめ切ったりとかですかね。
ー身づくろいですね。
そうですね。ネコのつめ切って、自分のつめ切って。
ー奥さんと出掛けたりはしないんですか?
あんまりしてないですね。
好きなものについて
ー好きな本は?
桜玉吉さん以外やったら、ジョジョと後は、福満しげゆきさんていう、日記漫画を描いている漫画家さんが好きですね。あ、あと小説で言うと、森見登美彦っていう人と、豊島ミホっていう人ですね。言っておこうと思って。小説も読む、賢さもあるって(笑)。
ー好きな映画は?
映画は、『キューブ』っていうのが。サスペンスの映画なんですけど、忘れられないです。密室サスペンスみたいなものですね。
ー『SAW(ソウ)』みたいな?
そうですね。あとは『アイアンマン』の1が好きです。ホットトイズっていうメーカーの3万4万するフィギュアがあるんですけど、欲しすぎて。ずっと我慢してたんですけど、買いましたね。
ーそんなに好きなんですね。マーベルが好きなんですか?
いや、アイアンマンだけが好きですね。
ー機械的なものが好きだったりするんですか?
ガンダムとか好きですね。鳥山明のやつも好きですし。
ードラゴンボールとか読んでいました?
世代というわけではないと思いますが、リアルタイムでセルぐらいまでは読んでましたね。小学生くらいのときでした。『鳥山明のHETAPPIマンガ研究所』は、手垢でベッタベタになるくらい読みましたね。漫画家さん向けに描かれた、漫画の描き方みたいな。とりあえずGペンを買いに行って、うまく使えなくて挫折しましたけど。
好きなご飯について
ー肉の部位でいうとどこが好きですか?
めっちゃグルメの人専門の質問じゃないですか。ぼく全然グルメじゃなくって。問題外ですね(笑)。
ー食にあまり関心はないんですか?
興味持たなきゃいけないなって思うんですけど。おぎやはぎのメガネびいき聴いてるので「あそこの店がうまいんだよな」とかっていう感じにならなきゃいけないんですけど。
ー焼き鳥に行ったら何を頼みます?
いやー他の人が頼んだものを食べるっていう。
ーあまり自分から頼まないんですね。
そうですね。全然ですね、その辺は。
ーあまり好き嫌いがないのですね。
意味が分からないのは、あの店がおいしかったっていう文言の意味がわからなくって。どこもおいしいじゃないかって思う。あそこの店よかったなあとか、おいしい店知ってる?って聞かれたときとかに、どこ入ってもおいしいじゃないかって。
ーお料理はしますか?
しないですね。
ー外食が多いんですか?
ずっとガストですよ。近所のガストが第二のお母さん(笑)
ー母の味なんですね(笑)
500円のランチが。あと、すき家ですね。
100万円の使い道
ー100万円あったら何に使いますか?
海外旅行(笑)。
ー旅行は好きなんですか?
いや、1回も海外に出たことがなくって。いまそれがすごいコンプレックスで。もう31なんですけど、それぐらいの年になると、みんな1回や2回は行っていて。あとは、『死ぬ前に1回やっとこう』っていう本を出すぐらいなので、なんか見ときたい、やっときたいっていう欲求がすごい強くって。なので、テレビでしか観てない少数民族を見に行ったりとかしてみたいですね。『イッテQ』みたいなところに行きたいですね。アフリカとか。
ー海外に行く機会は、仕事だとあまりないんですか?
西原理恵子とか漫画にする取材のために、経費で海外旅行しているのがすごいうらやましくって。めちゃめちゃそれは狙ってますね。取材したいです、会社の金で(笑)。3日取材、3日休みみたいなのがいいですね(笑)。
過去の作品について
ー過去の作品で、すごく気に入ってるとか、思い入れがある作品はありますか?
あんまりなくってですね。いつも一番最近のものが面白いなと思って。
ー常に越えていってると。
まあかっこよくいえばそうなんですけど。常に昨日の自分を越えていってるっていう(笑)。昔のを見てもあんまりいい気分しないですね。「うわっ」て思いますね。
ーそれではあまり振り返らないタイプですか?
そうですね。
ーこれまでで叩かれたり、クレームが入った作品はありますか?
まじでまずいことっていうのは、描いてなくって、ぎりぎりアウトを狙ってるんですけど(笑)。ほんとにやばいことは描かないですし、そんなにダメージをくらうほどのクレームや攻撃もないですね。ほぼ全部。
あ、でも1回女の人がキレイだなっていう、女の人の綺麗さをめちゃめちゃ長いコマで描いたやつは、「2ちゃんねるで取り上げられてるぞ」って教えてもらって。見たら横のスクロールバーがものすごくちっちゃくなるくらい、「きもい、きもい、きもい、きもい」って全編(笑)。おおって思いましたね。女に気に入られようとしているとか。
ーネットの反応は結構見られますか?
そうですね。2ちゃんねるはあんまり見ないですけど、ツイッターとかですかね。
ーぎりぎりアウトが仕事になっているんですか?
いやー仕事にはなりにくいですね。企業の仕事だとああいう思い切ったことはできないですし。仕事はそんなに面白いことはできないですね。
ーやっぱりクライアント仕事になるとそうですよね。
やっぱそうなんですよね。「ぼくはいいと思うんですけど、上の人が」みたいなのはよくありますね。
今後やっていきたいこと
ー今後やっていきたい仕事はありますか?
いまはいろいろなことを手広くしすぎているので、それはいまは東京に来たばっかりなので、いいと思うんですけど。漫画がやっぱり面白がられ方がすごいので、イラストよりも。『モーニング2』とか、めちゃめちゃメジャーじゃないけど、コンビニには1冊あるみたいな、『スピリッツ』とか、そういうところで4ページくらいもらって描きたいですね。ちゃんとした紙のね、雑誌に載りたいですね。
ーウェブが中心ですが、紙をやりたい思いはあるんですね。
ウェブもいいんですけど、漫画家さんと会ったときとかに、胸を張れないというか、「どこで連載してるの?」って聞かれた時に、ウェブだと酒も美味しく飲めないなと。
ーウェブ出身というと強引かもしれないですが、今日マチ子さんや、地獄のミサワさんなど、ウェブで活動していた人が、紙に行ったケースもありますよね。そういう人で意識している漫画家さんはいますか?
いっぱいいますよ。すごいニューな感じの人とか、ジェネレーションの人が。でも山本さほは思いますね。ウェブで最初描いてて雑誌で描いていたりする人なんですけど。羨ましいことだらけですね。憧れの『ファミ通』2ページ枠にも連載してて。
ーそれでは、『ファミ通』はやってみたいなと?
憧れすぎて(笑)。やっぱ自分の好きな作家さんが載ってるところがいいですね。桜玉吉さんもコミックビームっていうのにずっと連載しているときがあって。本当にそういうのがいいなと。持ち込みしに行かなきゃなと。
ー営業するっていうケースもあるんですね。
ウェブの仕事はできるかもしれないですけど、持ち込みにいかないと、出版社の雑誌というのは難しそうな雰囲気がしますね。
ー『ファミ通』への思いをどうぞ。
いやあ、でも山本さほがすごいゲームが好きで。ぼくはあんまりゲームをしなくなっちゃったので、山本さほがぴったりだなと。
ボクはゲームをあんまりしないのでね(笑)
ーたくさんの質問にお答えいただき、ありがとうございました。
Photographed by Kenta Terunuma